2013年5月5日日曜日

原発事故被災者支援法をなぜ早く施行しないのか

 
 昨年月全会一致の議員立法で成立した「原発被災者支援法」が、いまだに棚ざらしになっています。支援法は日本版「チェルノブイリ法」と呼ばれ、一定の線量以上の放射線被曝が予想される「支援対象地域」からの避難、居住、帰還といった選択を、被災者が自らの意思によって行うことができるよう、国が責任をもって支援しなければならないと定めたものです。
     ※ 「平和の輪HP] 3月20日記事「原発被災支援法の早急な施行を」 
 現在公的支援を受けられないでいる自主避難者にとっても頼みの綱であり、被災者にとっては死活にかかわる法律であるにもかかわらず、支援法に基づいて決められる筈の諸々の具体策・具体案の策定が全く進んでいません
 何よりも同法によって支援が受けられる人々=対象地域を指定する基準となる「放射線量」がいまだに決められていません。これでは絵に描いた餅、政府は一体何を考えているのでしょうか。

 以下に河北新報の記事を紹介します。
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昨年成立の原発事故被災者支援法 線量基準や地域、不明確
河北新報 2013年5月5日
 福島第1原発事故で被災した福島県内外の住民支援が目的の「子ども・被災者支援法」は昨年6月の成立後、支援策を具体化し対象地域を指定する基本方針がたなざらしになっている。政府は地域指定の前提として放射線量基準の見直しを新たに打ち出し、方針策定はさらに先送りされた。政府の本気度を疑う見方も出ている。(若林雅人)

 子ども・被災者支援法は、原発事故の影響を受けた地域の住民や避難者の意見を反映した施策の方向性、具体的な計画、対象地域を定めた基本方針を策定するよう政府に義務づけている。
 住民の声を吸い上げる手法は意見聴取会やパブリックコメント(意見公募)が一般的。政府が行ったのは避難者支援団体などからの間接的な聞き取りにとどまる。復興庁は「海外避難者もいて、きりがない。時間も経費もかかる」と意見聴取会の開催には消極的だ。
 基本方針策定で最大の課題が支援の対象範囲。支援法は避難区域以外の対象を「一定基準以上の線量が計測される地域に居住または居住していた者」と定めるが、「一定の基準」は明確でない。
 政府が除染目標とする年1ミリシーベルト以上の空間放射線量がある汚染状況重点調査地域=図=が1つの目安になり、8県計101市町村が指定されている。年1ミリシーベルトを一定基準とすると対象者は10万人単位に膨れあがる。
 根本匠復興相は3月、政府の原子力災害対策本部で「適切な地域指定の在り方を検討するため」として、線量に応じた被ばく防護措置を年内をめどにまとめるよう関係省庁に指示した。一定の結論が出るまでは地域指定せず、基本方針の策定も先送りした格好だ。
 その直後、復興庁は計93の支援策を盛り込んだ施策パッケージを発表。基本方針代替の意味合いがあり、根本復興相は「基本方針の中身となる施策は全て出した」と強調したが、新味は夫婦や親子が離れ離れで生活している自主避難者対象の高速道路無料化くらい。内実は実施済みの事業や制度の羅列だった。
 日弁連は「施策パッケージの内容は不十分だ」として、政府に被災者の意見聴取会を開くよう求める声明を発表した。日弁連東日本大震災・原発事故対策本部副本部長の海渡雄一弁護士(第二東京弁護士会)は「復興相の発言は、基本方針でこれ以上の支援策が出ないとも受け取れる」と真意をいぶかしがる。
 線量基準の見直しは、今も具体的な検討手順が決まっていない。政府の原子力災害対策本部事務局の原子力規制庁は「年内が期限であまり時間がない。早急にやりたい」と話す。

 [線量基準見直し]現行基準は避難の必要がなくなる目安を年20ミリシーベルト以下、除染目標を年1ミリシーベルト以下とする。福島県は1ミリシーベルト以下の早期達成が難しい地域が多く現行基準が住民帰還を妨げているとして2月、政府に見直しを要請。根本復興相は県要請と子ども・被災者支援法の対象地域指定の参考とすることを理由に、線量に応じた被ばく防護措置を検討する形で見直す方針を表明した。