2013年6月15日土曜日

渡辺町長が「全員の大熊町帰還」を断念

 福島県やその県境付近では、放射能の心配やその地域から転居したいという希望を口に出来ない雰囲気があるということが以前から言われていました。自治体首長の側には住民を囲い込みたい、国の側には移転の費用(補償)を抑制したいという意図があるからだといわれてます。
 そうしたことを批判する武田邦彦教授が、福島の子どもを持つ家庭の約50%が現在でも移住を希望しているというアンケート結果を紹介しています。
 
調査データ(移住したいと希望している世帯)
    『妊婦をもつ世帯』     59世帯のうち   34世帯で  57.6%、
    『乳幼児をもつ世帯』   396世帯のうち 215世帯で  54.3%、
    『小学生をもつ世帯』   432世帯のうち 218世帯で  50.5%、
    『中学生をもつ世帯』   266世帯のうち 119世帯で  44.7%、
    『高校生を持つ世帯』   282世帯のうち 108世帯で  38.3%、
    『大学生等をもつ世帯』  158世帯のうち  48世帯で  30.4%。
 福島県大熊町の渡辺町長はこれまで、帰りたい人がいる以上は時間をかけても除染して帰れる環境をつくるという姿勢を貫いてきましたが、現実には一向に除染は進まないし、また除染してもあまり放射能レベルが下がらないということが明らかになっている中で、帰還居住を諦めざるを得ない区域が発生する可能性があることを明らかにしました。
 「年間20ミリシーベルトまでは居住可能」などは勿論問題外ですが、そうした見通しのない中でいつまでも避難生活を続けているよりも、そろそろ見切りをつけて新たな生活(地)を模索することの方が現実路線であるように思われます。

 以下に福島民友ニュースと除染に関するNHKニュースを紹介します。
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渡辺町長「大熊帰還断念」に言及 一部区域、高線量の壁
福島民友ニュース2013年6月14日
 (福島県)大熊町の渡辺利綱町長は13日、6月町議会の一般質問で東京電力福島第1原発事故に伴う町民帰還について「場合によっては居住、帰還を諦めざるを得ない区域が発生する可能性があるかもしれない」と答弁、一部区域の帰還断念の可能性に初めて言及した。除染しても効果が薄い高線量地区の存在や、中間貯蔵施設の行方、長期に及ぶ原発廃炉作業など、帰還を拒む障壁が目に見える形になり、「みんなで一緒に行動」として町民を束ねてきた渡辺町長が、現実路線にかじを切らざるを得なくなったことを示唆した形だ。
 渡辺町長はこれまで、帰りたい人がいる以上は時間をかけても除染して帰れる環境をつくる―という姿勢を貫いてきた。しかし、この日の一般質問では「高線量地域は除染が進んでも帰還が難しいところが発生する可能性があるかもしれない」と答弁、さらに「居住可能なまでに(除染の)目的が達成しても、それが遠い将来ならば、今を生きるわれわれにとって帰還できるということではない」とまで言い切った。

除染作業「業者に数値目標なし」明らかに
NHK NEWS WEB  2013年6月14日

原発事故で拡散した放射性物質を取り除く除染について、国と、福島県の市町村の90%近くが、作業に当たる業者との契約で、どこまで放射線量を下げるか具体的な数値目標を盛り込んでいないことがNHKの取材で分かりました。専門家は目標がないことで、不適切な作業につながる可能性があり、改善が必要だと指摘しています。

原発事故のあと、福島県内では各地で除染が進められていて、NHKは国と32の市町村に、ことし4月までの業者との契約内容について情報公開請求やアンケートを行いました。
その結果、国と、全体の90%近くに当たる28の市町村が、除染でどこまで放射線量を下げるか、具体的な数値目標を盛り込んでいないことが分かりました。
その理由について、国や市町村は、除染は、国内で例がない事業で、どの程度効果があるのか知見が乏しいため、数値目標を業者に求めることは難しいなどとしています。
除染作業に当たる複数の作業員は、NHKの取材に対し、「数値目標がないために作業に十分、力を入れず、ずさんな作業が出てきている」として数値目標がないことが不適切な作業につながる可能性があると指摘しています。
公共工事に詳しい慶応大学の土居丈朗教授は「除染は、放射線量を下げるところまできちんとやって初めて作業をした意味がある。現場の作業に対し、目標に向かって作業することを徹底させ、除染の効果を上げるよう改善すべきだ」と指摘しています。
環境省は、「除染の作業現場で、抜き打ちの調査などを行っていて、今後も、不適切な作業を防ぐための取り組みを進めたい」としています。