2014年2月14日金曜日

高速炉「もんじゅ」の開発推進 今度こそやめるべき

  高速増殖炉(FBR)原型炉「もんじゅ」について、開発計画を全面的に見直す案がやっと浮上したということです。現在の装置はまだ実証炉の一つ手前の段階のものですが、それでも開発を始めてから数十年にもなるというのに全く動いていません。本来であれば20年前くらいに動いていなければいけない筈でしたが、トラブル続きで遅れに遅れ、最近では完成予定を2050年まで延長したいとする話もでていました。
 
 発電用原子炉の初期の形式は高速増殖炉であったのだそうですが、プルトニウムという危険な核燃料を用いるのに加えて、熱媒体である液化ナトリウムは水に触れれば爆発し、空気に触れれば発火するという極めて危険なものであるために、各国はすべて開発を中止しました。
 日本だけは、一旦役人が策定した計画は余ほどのことがないと変更しないという仕組みになっているため、世界で唯一開発を継続してきました。この間投じられた国の予算の総額は1兆1000億円に及びました。
 
 開発を担当したのは旧動力炉・核燃料開発事業団で、最近旧原子力研究所と合併して日本原子力研究開発機構(人員:3800人・年間予算:1900億円)に衣替えしました。当然 役人の有力な天下り先になっています。こうした関係も、実はこの不毛な計画をずっと継続させてきた有力な要因になっているものと思われます。
 
 「もんじゅ」の計画を見直す機会は昨年もあったのですが、昨年4月ごろに出された有識者の結論は、何んと「有益な研究なので今後も継続する」というものでした。桁外れに危険な装置である上に成功するという技術的な展望もなく、採算性は当初から全くないものを、これまで通り漫然と継続させるという「究極の無責任さ」でした。
 
 こうした方針の決定を主管省庁の文科省に任せていては、いつまで経っても埒があかないものなのですが、全面的に見直す案が浮上したというのは、例の「除染」事業の主管で莫大な安定収入の道が得られたからでしょうか。(^○^)
   
 河北新報が13日、「高速炉「もんじゅ」/開発推進はもはや無理筋」とする社説を掲げましたので紹介します。 
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(社説) 高速炉「もんじゅ」/開発推進はもはや無理筋
河北新報 2014年02月13日
 策定中の国のエネルギー基本計画で、(FBR)原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の開発計画の全面見直し案が浮上している。
 確かにもんじゅを存続させてFBR実現を目指しても、いつ商業化できるのかほとんど見通しは立たないだろう。
 ウランを使う通常の原発(軽水炉)の使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを取り出してFBRに使用するのが本来の核燃料サイクルの設計図。もんじゅの役割を大幅に見直せば、プルトニウムの使い道はますますなくなる。
 研究を進めてきた旧動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)の体質も問題だった。1995年に液体ナトリウム漏えい事故を起こした際、現場を撮影した映像を隠していたことが発覚し、強い非難を浴びた。
 もんじゅでは昨年も重要機器の点検漏れが見つかり、国の原子力規制委員会から運転再開に向けた準備の禁止命令を受けている。
 もんじゅの全面的な見直しは実証炉、商業炉と続くはずのFBR開発路線の頓挫を意味する。遅すぎるくらいだが、この際、FBRや核燃料サイクルからの撤退も視野に真剣な議論を進めるべきだ。
 発電しながら、消費した以上の核燃料(プルトニウム)を新たに生み出すとされるのがFBRで、もんじゅは1994年に初めて核反応が持続する「臨界」に達した。
 だがその翌年、冷却に使うナトリウムの漏えい事故を起こし14年間も運転が止まった。
 FBR開発には以前からさまざまな疑問点が指摘されてきた。たとえ技術的な問題を解決し増殖に成功しても、プルトニウム抽出にはFBR用の新たな再処理工場が必要になる。サイクル全体では膨大な負担を強いられるのが確実だった。
 エネルギー基本計画の議論の中では、放射性廃棄物の量を減らす「減容化」研究のために、もんじゅを活用する案も浮かんでいるという。
 放射性物質を含む廃棄物に中性子などを照射し、別のより放射能が低い物質に変化させることを狙うとみられる。
 原理的には可能だろうが、それを大規模に行うのもまた大変な困難が伴うはずだ。地道な基礎研究を積み重ねていくのが先決ではないか。
 減容化研究をこれから本格化させるにしても、もんじゅが不可欠なのかどうか慎重にチェックして最終的に判断すべきだ。間違っても、もんじゅとその推進組織の「延命策」と受け止められないようにしなければならない。
 仮にもんじゅがFBR原型炉としての役割を終えれば、プルトニウム利用を目指す現在の核燃料サイクル路線も根本から問われる。
 FBRと核燃料サイクルはいわば表裏一体の関係であり、一方がなくなったら、もう一方も消え去るしかない。