2020年6月30日火曜日

再処理工場 意見公募に心配や慎重な声

 青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場について、原子力規制委員会が行ったパブリックコメント今月12日で終了しました。
 全部で約760意見が寄せられ再処理工場は高レベルの放射性物質を扱うことなどから、事故を心配する声のほか、プルトニウムの利用先が限られる中、政策は行き詰まっていて工場を動かす意味があるのかなど慎重な意見が多かったということです
 規制委員会は意見をどう審査に反映させるか検討を進めていて、この夏ごろには審査書を取りまとめる方針です。
お知らせ
都合により7月1日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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使用済み核燃料の再処理工場 意見公募に心配や慎重な声 青森 
NHK NEWS WEB 2020年6月27日
青森県にある使用済み核燃料の再処理工場について、原子力規制委員会が行ったパブリックコメントには700を超える意見が寄せられ、事故のリスクや政策の課題などを指摘する声が多かったということです。規制委員会は意見をどう審査に反映させるか検討を進めていて、この夏ごろには審査書を取りまとめる方針です。
日本原燃が本格操業を目指している青森県の再処理工場について、原子力規制委員会は先月、新しい規制基準に事実上合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。

そして、今月12日まで一般から意見を募るパブリックコメントを行い、およそ760の意見が寄せられました
原発で使い終わった核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する再処理工場は、高レベルの放射性物質を扱うことなどから、事故を心配する声のほか、プルトニウムの利用先が限られる中、政策は行き詰まっていて、工場を動かす意味があるのかなど慎重な意見が多かったということです。
一方、電力事業者を所管する経済産業大臣は今月、「資源の有効利用、廃棄物の減容などの観点から、工場を完成させ、理解が得られるように取り組む」などとする回答を規制委員会に伝えています。
規制委員会はこれらの意見を、審査の合格を示す最終的な審査書にどう反映させるか、現在、検討作業を進めていて、この夏ごろには審査書を取りまとめる方針です。

フランス最古の原発 30日に閉鎖 初の廃炉

 1977年に運転を開始したフランス最古のフェッセンハイム原発が30日、運転を終えます。大国フランスは、原発依存度を現状の約7割を2035年までに5割まで引き下げる計画で、その第1号です。
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フランス最古の原発、30日に閉鎖 依存低下計画で初の廃炉 8年越し実現
毎日新聞 2020年6月29日
 フランス最古のフェッセンハイム原発が30日、運転を終える。国内の発電量の約7割を原子力に依存する原子力大国フランスで、原発依存度を2035年までに5割まで引き下げる国の計画に基づいた最初の廃炉となる。オランド前大統領が12年、同原発の廃炉を公約に掲げてから実現までに8年かかった。 
 仏北東部でドイツとスイスの国境付近に位置するフェッセンハイム原発は1977年に運転を開始し、出力90万キロワットの原子炉2基を備えた。1号機は2月22日にすでに停止された。11年の東京電力福島第1原発事故を受けて、オランド氏が12年の大統領選で老朽化した同原発の廃炉を公約。オランド氏は任期中に廃炉にするとしていたが実現しなかった。 
 オランド氏は任期中の15年、発電量に原発が占める割合を25年に50%まで引き下げる目標を掲げた。しかし… 
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30- 女川原発30キロ圏内住民説明会 8月に7ヵ所で

女川原発30キロ圏内住民説明会 宮城県、8月に7ヵ所で開催へ
河北新報 2020年06月27日
 東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働を巡り、宮城県は26日、原発30キロ圏内を中心とした住民説明会を8月1~19日に開くと発表した。会場は石巻、東松島、女川、南三陸4市町の7カ所。7月22日まで参加者を募集している。
 国や東北電の担当者が
(1)2号機の新規制基準への適合を認めた原子力規制委員会の審査結果
(2)政府が了承した重大事故時の広域避難計画
(3)同原発の安全対策
(4)国のエネルギー政策
-を説明。参加者の質問にも応じる。各回3時間半の予定。
 説明会は、村井嘉浩知事が再稼働の可否を判断する「地元同意」手続きの一環。2月の審査合格を受け、政府から3月に同意を求められたが、県は新型コロナウイルス感染症の影響で開催を見合わせていた。
 各会場の定員は200人か400人。30キロ圏外の県民も参加できる。30キロ圏内の住民に配る案内冊子の申込書、県ホームページから申し込む。希望者が多い場合は抽選。当日は運転免許証などの本人確認書類が必要となる。
 連絡先は運営事務局の県原子力安全対策課022(211)2332(平日午前9時~午後5時)。開催日と会場は次の通り。

2020年6月29日月曜日

「家族写真 3・11原発事故と忘れられた津波」刊行

 福島原発事故に関するドキュメンタリー映画「Life 生きてゆく」の監督を務め、「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」を受賞した笠井千晶さんが、7年をかけて作った写真集「家族写真 311原発事故と忘れられた津波」小学館から刊行されました。 
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原発事故と津波題材に書籍 ドキュメンタリー監督 笠井さん
福島民報 2020/06/29
 第二十六回小学館ノンフィクション大賞を受けた、ドキュメンタリー監督でジャーナリストの笠井千晶さん(45)の「家族写真 3・11原発事故と忘れられた津波」は、小学館から刊行された。 
 南相馬市で津波にさらわれたわが子を捜す父親の心の変遷を、七年にも及ぶ取材をもとにつづった。家族や一緒に捜索した仲間との歩みも描いた。 
 笠井さんは、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に関するドキュメンタリー映画「Life 生きてゆく」の監督を務め、同作で「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」を受賞した。 
 四六判、三百六十八ページ。千七百六十円。

東京大、広野に「がん研究拠点」

 広野町と東大アイソトープ総合センター25日、広野町に拠点を置き、放射線を使ってがんや新型コロナウイルスなどの感染症の治療薬開発に向けた研究に取り組む連携・協力協定を結びました。
 準備が整い次第、医薬品の効果や副作用を調べるために動物や細胞を使う実験と、体内に取り込まれた医薬品がどのような働きをするかを計算機で想定する実験、それに放射線を用いて病気を治す研究などに取り組みます。
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東京大、広野に「がん研究拠点」 コロナなど感染症治療薬開発
福島民友 2020年06月26日
 東京大は広野町に拠点を置き、放射線を使ってがんや新型コロナウイルスなどの感染症の治療薬開発に向けた研究に取り組む。拠点の整備を担う町は旧広野幼稚園の建物を軸に検討しており、早ければ本年度中に町内での活動が始まる。東大から教員や研究員、機器を扱う要員として数人が常駐する見込みだ。
 町と東大アイソトープ総合センターが25日、医薬品開発についての連携・協力協定を結んだ。同センターは放射線のうちアルファ線を出す核種を活用し、医薬品の開発に必要な基礎研究を独自に進めている。
 東大の和田洋一郎教授によると、医薬品の効果や副作用を調べるために動物や細胞を使う実験と、体内に取り込まれた医薬品がどのような働きをするかを計算機で想定する実験があり、環境が整い次第、町内で研究に着手するという。整備費は主に町が負担する。

 東京都内の同センターで行われた締結式で、遠藤智町長と鍵裕之センター長が協定書を取り交わした。鍵氏は「放射線が脅威だった原発事故の被災地で、放射線を生かして病気を治す研究が進むことにより、地域が明るくなってほしい」と拠点開設の意義を語った。遠藤町長は「福島の復興を飛躍させるための潜在力の一つになれば」と期待した。
 同センターは東京電力福島第1原発事故を受け、浜通りの復興支援に力を入れている。これまで除染や汚染土壌の調査、放射線が健康に及ぼす影響の知見を提供するなどして、町と協力してきた。
 今後は人材育成での連携も視野に入れる。

凍結中の英原発プロジェクト 中国に売らないと日立

日立、凍結中の英原発プロジェクト「中国に売却する計画ない」
ロイター通信 2020/6/29
[東京 28日 ロイター] - 日立製作所<6501.T>は28日、凍結中の英国での原子力発電プロジェクトについて、中国に売却する計画はないと発表した。
トランプ米政権が日立に対し、同原発プロジェクトの建設場所を中国に売却しないよう求めたとする英サンデー・タイムズ紙の報道を受けた。
日立は「中国に売却するとの話については承知していない」とした。
同紙によると、中国広核電力が取得に関心を示しているという。
日立は昨年、英国のウェールズで進めていた原発の建設計画を凍結すると発表した。事業規模が3兆円に膨らみ、出資者集めが難航。採算も見込めず、早期の事業化は難しいと判断した。これに伴い、2019年3月期連結決算で約3000億円の損失を計上した。

29- 原発事業を拠出対象外に EU脱化石燃料基金

EUの脱化石燃料基金、原発・天然ガス事業を拠出対象外に
ロイター通信 2020/6/26
[25日 ロイター] - 欧州連合(EU)27カ国の大使は24日、脱化石燃料の影響を受ける国を支援する「公正な移行基金」について、原発・天然ガス事業を資金拠出の対象から外すことを決定した。
25日発表の文書で明らかになった。一部の東欧諸国はこうした動きに反対している。
EUの欧州委員会は、EU新型コロナウイルス復興基金から300億ユーロ、2021-27年のEU予算から100億ユーロを拠出して、400億ユーロ規模の「公正な移行基金」を設置する意向を示している。
同基金は、脱化石燃料で影響を受ける炭鉱労働者の再訓練・転職を支援したり、化石燃料産業への依存度が高い地域で新産業の開発を支援する予定。

今回のEU大使の決定は、欧州委員会の意向にも沿っており、加盟国・欧州委・欧州議会の協議を経て最終決定される見通し。
ただ、東欧8カ国は先月、石炭火力発電からの移行を進めるためには天然ガスの開発が必要だと主張。資金拠出の対象に天然ガス事業を含めるようEUに要請していた。
天然ガス発電で排出される二酸化炭素は石炭火力発電の半分程度だが、天然ガスの生産過程で漏出するメタンが温暖化の大きな原因になる。
また環境団体は天然ガス発電所を新設すれば、数十年間は稼働が可能で、2050年までに温暖化ガスの実質排出量をゼロにする目標の達成が危ぶまれると主張している。

2020年6月28日日曜日

原発ゼロへ金曜デモ400回 福井県庁前

 毎週金曜夕、福井市の県庁前交差点付近で原発ゼロを訴える市民行動が626日、400回を迎えました。主婦や元教員、嶺南住民らさまざまな立場の参加者がプラカードを持ち、マイクを握ってきました。
 1271関西電力大飯原発3号機が再稼働した12日後の13県庁前交差点付近で市民行動が始まりました
 原発銀座と呼ばれる地域柄か、デモ行進では罵声を浴びたり、空き缶を投げられたりしたこともあったということです。
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原発ゼロへ金曜デモ400回、思いは 福井県庁前「敵を作りたいわけじゃない」
福井新聞 2020年6月27日
 毎週金曜夕、福井県福井市の県庁前交差点付近で原発ゼロを訴える市民行動が6月26日、400回を迎えた。主婦や元教員、嶺南住民らさまざまな立場の参加者がプラカードを持ち、マイクを握っている。
 2012年7月1日。関西電力大飯原発3号機が再稼働した。東京電力福島第1原発事故後、定期検査で停止していた国内原発の再稼働は初めてだった。12日後の13日。県庁前交差点付近で市民行動が始まった。

 現在は▽午後4時~同6時50分にスピーチと県庁の周囲をデモ行進▽午後6時~7時半にスピーチや歌の集会―の2グループが活動し、毎回計20~30人が参加している。
 400回目となった26日夕、中心メンバーで福井市の林広員さん(60)は訴えた。「原発のない社会を一日も早く実現するために、一層の力を結集しよう」
 参加者はどんな思いでアピールを続けているのか。「古里を追われた福島を見て恐ろしさを感じた」と話すのは若狭町の主婦(68)。「原発関連の仕事をしている知り合いもいるけど、心の奥には事故の不安があると思う。地元では声を上げられない。でもここでなら」。「原発のない福井をつくろう」と書かれたプラカードを静かに掲げた。

 「退職した今、福島の次は福井かもしれないと思って参加している」と語るのは坂井市の元小学教諭、高岡ひとみさん(64)。福井市の自営業男性(69)は母親の介護のため半周の行進で帰宅しているものの、毎週参加している常連だ。
 2017年3月には「音量が大きく不快」「美観上好ましくない」などの声が寄せられているとして、県が活動自粛を要請した。当時文書を受け取った坂井市の石森修一郎さん(73)らは憲法21条の「表現の自由」に反すると抗議した。今も常に胸ポケットに憲法の冊子を入れ、マイクを握る。「組織や党派は関係ない。自由闊達(かったつ)に議論することで新たな視点が生まれる。敵を作りたいわけじゃない」。石森さんはそう力を込める。
 デモ行進では、罵声を浴びたり、空き缶を投げられたりしたこともあると語るのは越前市の若泉政人さん(53)。「自分の意見を自由に街頭で言える文化をつくりたい」と先頭に立ってきた。原発推進の学生が議論しに来たこともあるという。「うれしかった。賛成でも反対でも、意見を交わすことが大事だから」

福島県 復興事業費1・1兆円 県試算 国に要望

 福島県は、原発事故の復興・創生期間後の21年度から25年度までの5年間に県内で必要になる復興事業費は、11千億円程度と見込み、国に十分な予算確保を継続的に求めることとしました。
 復興庁の担当者は福島民報社の取材に対し、「被災自治体からの要望などを踏まえ、関係省庁と調整を進める」と述べました。
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復興事業費11兆円 福島県試算、国に要望
福島民報 2020/06/27
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の復興・創生期間後の二〇二一(令和三)年度から二〇二五年度までの五年間に県内で必要になる復興事業費は、一兆一千億円程度となる。県が二十六日、試算を示した。政府の新たな復興基本方針では福島県、岩手、宮城三県を含む被災地全体における五年間の復興事業規模を「一兆円台半ば」としている。県は原発事故からの復興という福島県特有の中長期的な課題を踏まえ、震災から十年が過ぎた後も大幅な財源が必要と判断し、国に十分な予算確保を継続的に求める

 二十六日の六月定例県議会代表質問で内堀雅雄知事が自民党の西山尚利議員(福島市)の質問に明らかにした。 
 試算に含まれる主な事業は【表(1)】の通り。県は各市町村からの聞き取りなどを基に、事業費の概算を積み上げた。事業費の内訳や詳細について、復興庁と交渉を進めている。 
 被災地での心のケアや地域コミュニティーの再生に取り組んできた被災者支援、インフラ復旧など避難区域の復興を盛り込んだ。 
 県内全域に及ぶ観光業や農林水産業への影響を考慮し、風評払拭(ふっしょく)、風化防止対策も重要だとして組み込んだ。 
 ロボット研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド(南相馬市・浪江町)」の開所などの福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想も含めた。 

■中長期の予算も求める
 県は一兆一千億円程度の事業とは別に、新たな課題に対応する中長期的な予算の確保を国に求めていく。 
 今後必要になる事業は【表(2)】の通り。避難指示解除の時期が明示されていない帰還困難区域の対応や国際教育研究拠点の構築、改正福島復興再生特措法に基づく移住・定住の促進は現段階で算定が難しく、さらに事業費が膨らむとしている。 

 復興庁は二〇二一年度から五年間の復興事業費の事業規模と財源の枠組みの詳細を、夏ごろに示す予定。復興庁の担当者は福島民報社の取材に対し、「被災自治体からの要望などを踏まえ、関係省庁と調整を進める」としている。 
 内堀知事は答弁で「復興・創生期間後も安心感を持って復興に専念できるよう、中長期的な視点からの財源の確保が不可欠だ」との認識を示し、「国が最後まで前面に立って福島の復興に責任を果たすようしっかり求めていく」と強調した。 
 政府は震災から十年間の事業財源として三十二兆円を確保し、二〇一一(平成二十三)年度から二〇一八年度までに二十八兆七千億円の使途が固まっている。

28- 新型コロナウイルス感染拡大中の今、原子力発電所の即時運転停止を求める

 日本科学者会議幹事会日本科学者会議原子力問題研究委員会は、423日、「新型コロナウイルス感染拡大中の今、原子力発電所の即時運転停止を求める」とする声明を出しました。
 遅くなりましたが紹介します。
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【声明】
新型コロナウイルス感染拡大中の今、原子力発電所の即時運転停止を求める 

新型コロナウイルスとのたたかいは全人類的な課題 
 日本では新型コロナウイルス感染拡大を食い止めることができず 4 月 16 日に全国に緊急事態宣言が だされた。4 月 23 日現在、懸命な医療従事者達の尽力にもかかわらず感染者 11,919 人、死者 287 人を 出した注1)。今や、感染爆発、医療崩壊の危機に総力を挙げた対応が求められている。いうまでもなく、 日本にとどまらず、アメリカやヨーロッパを含む 180 を超える国で感染が急速に拡大している。世界の 感染症専門家達、医療従事者達、製薬研究者達の奮闘が続けられてはいるが、今なお、新型ウイルス「災 害」を制圧・収束する見通しは立っていない。世界では累計感染者数 258 万人超、死者数 18 万 2 千人 に及ぼうとしており(4 月 23 日現在注1))、この新型コロナウイルスとのたたかいは全人類的な課題と なり国際的な連携も強く求められている。 

感染拡大の中での自然災害避難は万全か 
 さて、濃厚接触による感染を未然防止するために、もっか「3密」(密閉、密集、密接)を回避する ことが求められている。「新型コロナ感染拡大の中での災害避難 75%が‘行動に影響’」(防災専門家 のアンケート結果)注2)によると新型コロナウイルス感染拡大の中で自然災害が発生した時、避難所へ の行動に大きな影響が出ると報道されている。頻繁に起きている洪水、震災等自然災害時の避難所の多 くは「3密」である。今後はこの問題を視野に入れた万全の自然災害対策が求められる。 

感染拡大の中での原発事故の危険性
 原子力施設がひとたび事故を起こせば、放射性物質の防護のために屋内退避が不可欠で、「密室」 をつくらなければならない。社会的距離(または身体的距離)を確保しなければならない新型コロナ ウイルス対応とは相反する条件となる。原発事故からの避難が極めて困難であることは、福島第一原 発事故で浮き彫りになった。ましてや、コロナ禍のもとでの原発事故からの避難となると、仮に避難 できたとしても、避難場所そのもので感染爆発、修羅場となりかねない。また、当然ながら正常な運 転の阻害要因に直結するとともに、原発を直接支える100~200社を超える地元の工事会社・技術支援 会社(計1,000~3,000人超)の一つにでもクラスターが起きれば原発の操業に大きな影響を与えること になる。高浜原発を例にとると「重大事故時の発電所の緊急時対応体制」として、関西電力が初動対 応要員(常駐)70人、緊急安全対策要員48人、地元工事会社の支援要員110人、技術支援会社:炉心・ 安全評価支援、放射線測定等40人を想定している3)」が、先ごろ発生した「玄海原発のテロ対策施設 ‘特定重大事故対処施設’(特重施設)の工事では4月14日、請負業者・大林組の50代男性社員の感染 が判明、17日には同じ事務所に勤務していた40代男性社員も感染が確認された。九電や大林組、関連 会社の社員ら合わせて約510人が一時自宅待機注4)」と膨大な人数の作業員が自宅待機を迫られた。こ れは原発内ではなかったというが、閉鎖空間で働かなければならない上述の緊急安全対策要員の総勢2 68人を軽く飲み込んでしまい、機能不全に陥る危険性を孕んでいる。原発内では、原子炉運転員、巡 視点検員、設備メンテナンス員・保守点検員、放射線管理業務員、警備員等が昼夜を分かたず作業に 取り組んでおり、感染が発生すれば勤務体制がたちどころに崩壊し、クラスターが発生する。原発従 業員の減少傾向注5)の中で熟練した従業員の補充は困難な状況にあり注6)。医療崩壊ならぬ緊急時対応 体制ばかりか「安全運転体制」の崩壊につながりかねない。 
稼働中の原発の即時運転停止を求める 
 日本科学者会議は脱原発を掲げているが、新興感染症の危機にある今、喫緊の対応として、現にある 原子力発電所についてはリスク対策とともに、そのリスク対策にあたる要員の感染対策や、感染症が発症した場合の対策がいかに立てられているのかを明らかにすることを求める。
 加えて、感染対応を含む リスクコミュニケーションの確立を周辺住民や関連企業群等々との間で早急に進めることを求める。 
 日本科学者会議は、このような緊急事態であるがゆえに、原子力発電施設に内在する上記の破局的な リスクが「万が一にも」発生しないために以下のことを求める。
 ・電力会社および政府が、正確かつ安全側に余裕のある、予防的観点からのリスクアセスメントに基 づいて、その危険が顕在化しないためのリスクマネジメントを実施すること。
 ・いったん危険事象が発生した場合には、その危険事象が「絶対に」外部に漏出しない対策をとるこ と。
 ・そしてその対策状況を、周辺住民等にも時々刻々と正確に情報提供すること。
 ・したがって、最低でも運転中の原発 6 基(関西電力 3 基、九州電力 3 基)の運転の停止を求める。 私たちは、人類と社会への責任を果たすことを願う科学者組織として、このことに重大な懸念を表明 し、緊急の対策を政府と関係機関に求めるとともに、広く社会に訴える 
2020 年 4 月 23 日 
日本科学者会議幹事会 
日本科学者会議原子力問題研究委員会 

注1)厚労省 HP「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」(2020 年 4 月 23 日)日本の検査数が少ないこと、国によって感染者の定義もことなっていることに留意しておきた い。 
注2) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200418/k10012394431000.html(2020 年 4 月 18 日 17 時 22 分) 
注 3)「原子力技術・人材の維持について」電気事業連合会、2018 年 3 月 6 日 
注4)佐賀新聞 Live  https://www.saga-s.co.jp/articles/-/515233 
注5)「原子力発電に係る産業動向調査 2019 年報告書」一般社団法人 日本原子力産業協会、2019 年 11 月 

2020年6月27日土曜日

再処理工場の有様が示す原発の現状(田中弁護士の“つれづれ語り”)

 田中淳哉弁護士が、新規制基準に適合するとされた六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場について、「再処理工場の有様が示す原発の現状」を明らかにしました。
 当ブログの様に「再処理工場」は無意味と頭ごなしにけなすのではなく、いつもながら限られた字数の中でその問題点を簡潔に分かりやすく説明しています。
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つれづれ語り(再処理工場の有様が示す原発の現状)
田中弁護士のつれづれ語り 2020年6月24日
『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」
2020年6月24日付に掲載された第86回は、「再処理工場の有様が示す原発の現状」です。
破綻していることが明らかな核燃料サイクルがどうして続けられているのか、それにはどのようなリスクや弊害があるのかといったことについて、書きました。
私は個人的に、核燃料サイクル、辺野古新基地、イージスアショアを、「日本三大無駄遣い」と呼んでいます。イージスアショアに続いて、他の2つも見直すべきではないかと思います。

再処理工場の有様が示す原発の現状
先月、原子力規制委員会が、日本原燃の六ケ所再処理工場について、新規制基準に適合するとの審査書案を了承した。

当初の想定が狂う
再処理工場は、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを分離・抽出するための工場である。抽出されたウランとプルトニウムは燃料加工工場で加工され、再度原発で使用される。こうした「核燃料サイクル」によって、核燃料を節約できる、との説明がなされていた。
計画当初、核燃料の「再利用」は、高速増殖炉で行うことが想定されていた。ところが、高速増殖炉の原型炉である「もんじゅ」は、ナトリウム漏れ事故を起こしたこと等から、2016年に廃炉となることが決まった。その後継にあたる実証炉、実用炉の見通しはまったく立っていない。

撤退できない事情
本来なら、高速増殖炉の見通しが立たなくなった時点で再処理工場の計画自体を断念すべきだったが、電力業界としては簡単に撤退を決められない事情があった。
日本原燃は地元自治体との覚書で、「再処理事業が著しく困難になった場合は、使用済み燃料の施設外への搬出などの措置を講ずる」ことを約束している。再処理事業を断念すれば、再処理工場のプールに運び込まれている約3000トンの使用済み核燃料が各地の原発に戻されることとなる。各原発の使用済み燃料プールは、ただでさえ満杯に近い状態であるから、再処理工場から使用済み核燃料が戻されれば原発内のプールはたちどころに容量オーバーとなり、原発は即時停止せざるを得ない。
つまり再処理工場は、「燃料を再利用するための施設」ではなく、「原子力発電を続けていくために辞められない施設」となっているのだ。

フル稼働できない事情
他方で、再処理工場が完成しても、フル稼働できない事情もある。
日本はこれまで、イギリスやフランスの工場で使用済み核燃料を再処理してもらっており、これにより抽出されたプルトニウムを約47トン保有している。これは核兵器6000発分にも相当する量だ。軍事転用を企図しているのではないかとの国際的な批判や懸念の高まりを受けて、原子力委員会は、2018年7月、「プルトニウム保有量を減少させる」内容の基本指針を決定・表明した。
保有量を減らすためには消費しなければならないが、その要と位置づけられていた高速増殖炉は暗礁に乗り上げてしまった。それに代わるプルトニウム消費手段としてひねり出された苦肉の策が、プルサーマルだ。プルサーマルでは、通常の原子炉(軽水炉)でウランとプルトニウムを混合したMOX燃料が使用されるため、プルトニウムを消費することとなるのだ。
しかし、プルサーマルは、ウラン燃料のみを使用する通常の原発と比べ、技術的な困難が多く危険性も高いことから、現在4基しか実施されていない。プルトニウムの消費量は、4基分を合計しても年間で約2トン程度に過ぎない。
これに対し六ケ所村の再処理工場がフル稼働すると、年間約7トンのプルトニウムが抽出されることとなる。プルトニウム保有量を増やさないためには、稼働を制限せざるを得ない

問題の先送り
再利用のあてはないが、ゴミが戻ってくると困るので再処理をする。でも再処理しすぎるのもマズイので、再処理の分量を制限せざるを得ない。こんな馬鹿げた有様では、事業の破綻は明らかだ。
しかし、政府と電力業界は、問題を取り繕い、ごまかしを重ねながら、必要性が失われた事業を継続するようだ。

2つの重大問題
再処理事業を継続することには、看過できない重大問題が多々あるが、紙幅の関係で2点のみ指摘する。
1つ目は、再処理工程の危険性だ。再処理工場では、高レベルの放射性物質が硝酸等の化学物質とともに、広大な施設内の至るところに行き渡ることとなる。「放射性物質の化学プラント」とも呼ばれ、原発以上に未熟で危険な技術とされている。実際、イギリスやロシア等、海外の再処理工場では、臨界事故・爆発事故・火災事故が度々起こっている。
六ケ所再処理工場は1993年に着工し、当初は97年に竣工予定だった。しかし、設計ミスや施工ミス、管理不備による事故やトラブルが相次いだため、実に24度にわたって工期が延長され、未だに完成に至っていない。日本原燃に、危険な施設を管理する能力があるとは到底思われない
2つ目は、費用の問題だ。再処理事業全体にかかる費用は約14兆円と試算されている。この費用は最終的には、電気料金に上乗せされる形で国民が負担することとなる。
原子力発電をやめれば、このように高度の危険を抱える必要も、高額の費用を負担する必要もない。原子力発電はそこまでして維持しなければならないものなのだろうか。冷静な判断と、勇気ある決断が求められている。
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処理水の海洋放出断固反対 福島県漁連が決議

 福島県漁連は26日、いわき市で通常総会を開き、福島原発にたまり続けるトリチウム汚染水の処分方法について「海洋放出に断固反対する」とする特別決議を全会一致で承認しました。
 海洋放出は風評被害のさらなる拡大を招き、「わが国の漁業の将来にとって壊滅的な影響を与えかねない」とするとともに、「国民全体で議論すべき重要な問題が一部の関係者で進められていることに強い不信と憤りを禁じ得ない」と、政府の進め方を強く非難しました。
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処理水の海洋放出断固反対 福島県漁連が決議
河北新報 2020年06月27日
 福島県漁連は26日、いわき市で通常総会を開き、東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水の処分方法について「海洋放出に断固反対する」とする特別決議を全会一致で承認した。
 決議では、政府の議論の進め方に関して「新型コロナウイルスの感染拡大防止に国民が努力する中、国民全体で議論すべき重要な問題が一部の関係者で進められていることに強い不信と憤りを禁じ得ない」と強く非難した。
 海洋放出は風評被害のさらなる拡大を招くと指摘し「わが国の漁業の将来にとって壊滅的な影響を与えかねない」と懸念を表明。これまで国が示してきた「関係者の理解なしに放出は行わない」との方針を守るように求めた。
 野崎哲会長は取材に「コロナ禍で十分な議論ができているかどうか疑問だ。決議をしたことでより確固たる立場で反対していく」と述べた。総会で承認された本年度の事業計画にも「反対の立場を堅持する」と盛り込んだ。
 処理水の海洋放出を巡っては、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が23日の通常総会で反対を特別決議している。