2022年12月4日日曜日

運転禁止命令の解除判断の材料に 原子力規制委が柏崎刈羽原発を視察

 原子力規制委の伴信彦委員、杉山智之委員や片山啓原子力規制庁長官ら7人2日、柏崎刈羽原発に入り、核セキュリティ設備の追加検査の状況を調査しました。
 視察後 伴委員「検査チームの報告間違いなく、検査が的確に進んでいると改めて認識した」全体としての評価はまだまだこれから先のことだと思う」と述べました。
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運転禁止命令の解除判断の材料に 原子力規制委が柏崎刈羽原発を視察
                        UX新潟テレビ21 2022/12/2
セキュリティの本人確認などを視察
原子力規制委員会のメンバーが柏崎刈羽原発に入り、核セキュリティ設備の追加検査の状況を調査しました。
現地調査を行ったのは原子力規制委員会の伴 信彦委員、杉山 智之委員や片山 啓原子力規制庁長官ら7人です。メンバーはまず原発職員が入構する際の本人確認がどう行われているかを視察。続いて、建屋の外に出て、誤った警報を防ぐ対策を確認しました。さらに杭の損傷が判明している6号機・大物搬入建屋の基礎部分の状況も見ました。

■伴信彦委員
「検査チームの会議で報告を受けてきたが、そこで受けた内容が間違いないことを確認できたので、検査が的確に進んでいると改めて認識した
柏崎刈羽原発に出されている運転禁止命令の解除について原子力規制委員会の山中委員長は先月、「追加検査の結果や東京電力の改善措置計画を踏まえて来年春ごろに判断する」との見方を示しています。今回の視察も判断の材料となる見込みです。


柏崎刈羽原発のテロ対策の不備 改善状況を視察 原子力規制委員会
                       NST新潟総合テレビ 2022/12/3
柏崎刈羽原発でテロ対策の不備が相次いで発覚した問題。
原子力規制委員会の伴信彦委員と杉山智之委員は2日、東京電力が進める改善措置を視察しました
原発構内に入るゲートでは、IDカードの不正使用を受け、生体認証装置が導入されました。
ここで2人は、「エラーが出た際に対応する社員を新たに配置し、警備員の負担を軽くしている」などといった説明を受けました。
原子力規制委員会・伴信彦委員「(ゲートで)滞ることは少なくなってきたと感じた。(それは)ごく小さな氷山の一角のことでしかないので、全体としての評価はまだまだこれから先のことだと思う」
原子力規制委員会は2023年春までに、5人の委員全員が柏崎刈羽原発を視察することにしています。

福島県などが国に要望 精神的損害も考慮に 損害賠償基準見直しに

 鈴木・福島県副知事2日関係省庁を訪問し、同県の原子力損害対策協議会の要求として「賠償紛争審査会」が議論する賠償基準の見直しについて、原発事故でふるさとでの生活が変わったことへの精神的損害を新たに賠償の対象とする」ように求めました。
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福島県などが国に要望 精神的損害も考慮に 原発事故損害賠償基準の見直し
                           福島テレビ 2022/12/2
12月2日た鈴木副知事など福島県内の市町村や関係団体で構成する原子力損害対策協議会。
11月から「原子力損害賠償紛争審査会」が議論する国の賠償基準の見直しについて、被害の実態を十分に反映するよう求めた。
審査会は、原発事故でふるさとでの生活が変わったことへの精神的損害を新たに賠償の対象とする方針で、今後は自主避難による精神的損害などが議論される予定
福島県・鈴木正晃副知事:「今回、自主的避難地域について、最終報告において、県北・県中地域を追加ということでありますが、我々とすれば県内全域にわたって被害を受けているということで、そこも考慮して頂いて、指針決定頂きたい」

賠償基準の見直しは2013年12月以来で、審査会は今後、第5次追補として示すことにしている。 

04- 全機停止中の浜岡原発で防災訓練=静岡・御前崎市

 浜岡原発は地震の震央地に立地されている最も危険な原発として、福島原発事故の後、直ちに当時の菅直人首相によって運転を停止させられました。

 その浜岡原発で1日、南海トラフ巨大地震に備えた防災訓練われました訓練のシナリオは参加者に伝えられずに行われたということです。
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「緊急時の対応能力整えていかないと」原発の運転期間延長議論が進む中、全機停止中の浜岡原発で防災訓練=静岡・御前崎市
                         静岡放送(SBS) 2022/12/1
原子力発電所の運転期間の延長が検討されている中の訓練です。中部電力は静岡県御前崎市の浜岡原発で12月1日、南海トラフ巨大地震に備えた防災訓練を行いました
<訓練の様子>
「地震発生」
「安全確保」
1日の訓練は、震度7の南海トラフ巨大地震が起きたことを想定し、行われました。中央制御室を模したシミュレーター室では、原子炉が緊急停止したとして、原子炉を冷やすための装置を動かす方法などを確認しました。
また、地震の被害で原子炉を冷やす機能が一部失われたことを想定し、敷地内の放射線の監視を強化するための「可搬型モニタリングポスト」を海側に設置する訓練も行いました。
原発の運転期間をめぐっては、「原則40年、最長60年」と定められていますが、これを60年以上運転できるようにする検討が現在、続いています。福島第一原発事故以降、すべての原子炉が止まったままの浜岡原発。原発の稼働を経験していない社員の割合も増えているといいます。
<中部電力浜岡原子力発電所 浜岡地域事務所 榊原浩之専門部長>
「プラントは止まっていますが、使用済み燃料はプールの中にあります。しっかりと緊急時の対応能力は整えていかないと、と思っております」
原発を取り巻く状況が変わりつつある中、中部電力は再稼働を視野に、着々と準備を進めているようにみえます。


原子炉を冷やせ!南海トラフ巨大地震に備え緊急時対応訓練 静岡・浜岡原子力発電所
                           テレビ静岡 2022/12/1
静岡県御前崎市の浜岡原発で南海トラフ巨大地震に備え防災訓練が行われ、380人の作業員が緊急事態での対応を確認しました。
訓練は震度7の揺れで浜岡原発の複数の号機が同時に被災し、原子炉を冷やすための注水機能がいくつか失われたとの想定で行われました。
アナウンス 「地震発生!地震発生!」
運転員 「安全確保!(了解!)」
中央制御室を再現した「シミュレーター室」では、運転員が水位や圧力に注意しながら原子炉を冷やす手段を検討し、操作にあたります。
1日は放射性物質が外部に放出された場合に備え、放射線量を測定する可搬型モニタリングポストを設置する訓練も行われ、作業員たちが手順を確認していました。
中部電力 浜岡地域事務所・榊原 浩之 専門部長
「いまプラントは止まっていますが、まだ使用済み燃料はプールの中にあります。緊急時の対応能力は、しっかりと整えていかなければいけない」
訓練のシナリオは参加者に伝えられずに行われ、中部電力は「訓練目的に沿って評価を行い、改善を図っていく」としています。

2022年12月3日土曜日

関西電、中国電、中部電、九電が事業用電力販売カルテル

 2000年以降、電力が段階的に自由化されたことに伴って、西日本ある大手4社が顧客獲得競争をやめるためのカルテルを21年7月までに結んだとして公正取引委員会から1000億円超の課徴金納付を求める処分案を通知されました(カルテルの構造は読売新聞の「図解」を参照してください)。公取委の幹部は「電力自由化の理念をゆがめる行為悪質だ」と指摘しました。

 課徴金の内訳は中国電力が約707億円、中部電力が約275億円、九州電力が約27億円です。このカルテルを首謀した関西電力は違反の自主申告により処分を免れる見通しで、各社からは不満が漏れています。
 関西電力が自主申告した背景には、19年9月に高浜町の元助役(故人)から、複数の関電幹部が金品を受領していた問題が発覚した際に、カルテルも明るみに出る惧れがあったためということですが、何の言い訳にもなっていません。
 中国電、中部電、九電各社の課徴金に関する記事は別立てで紹介します。
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関電主導のカルテルなのに…電力各社、関電の「無罪放免」に怒り
                            読売新聞 2022/12/2
 顧客獲得競争をやめるためのカルテルを結んだとして、西日本などにある大手電力各社が1日、計1000億円超の課徴金納付を求める処分案を通知されたカルテルの中心になったという関西電力(大阪市)は違反の自主申告により処分を免れる見通しで、各社からは不満が漏れるが、公正取引委員会の幹部は「電力自由化の理念をゆがめる行為をした各社は、いずれも悪質だ」と指摘する。
   【図解】ひと目でわかる「事業用電気販売」を巡るカルテルの構図
 電力の販売は長年、各地域の大手が独占していたが、2000年以降、段階的に自由化され、新規参入や他地域への販売ができるようになった
 関係者によると、関電は17年以降、1件あたりの売り上げが大きい「特別高圧」や「高圧」の契約を取るため、中部電力(名古屋市)、中国電力(広島市)、九州電力(福岡市)の各エリアで営業を強化。顧客の獲得や価格面での競争が激化し、各社の収益も悪化したため、関電の役員らが各社の役員クラスの幹部らに、カルテルを持ちかける形で「手打ち」を行ったという。
 一方、公取委に最初にカルテルを申告したのも関電で、課徴金納付などの処分は免れるとみられる。
 中国電の関係者は「関電主導なのに、課徴金がないのは納得ができない」と話し、九電の関係者も「うちは関電から持ちかけられ、カルテルに応じた。関電がおとがめなしなのはおかしい」と怒りをあらわにした。
 ただ、公取委幹部は「国民生活に欠かせないインフラを担う電力各社が、自由化の流れに逆行するカルテルを結んでいた」と言及。さらに「コンプライアンスを重視すべき役員らが主導して行ったカルテルで、悪質だ」と指摘する。
 中国電は1日、公取委から処分案の通知を受けたことを公表し、「今後の対応は公取委から証拠などに関する説明を受けた上で、慎重に検討する」とコメント。中部電は「通知の内容を精査し、対応を慎重に検討する」、九電は「通知を厳粛に受け止め、今後の対応を検討する」などとした。
 関電は読売新聞の取材に「公取委の調査に全面的に協力している」とコメント。関電の関係者は「他地域で利益が出なければ撤退すれば良かった。手打ちにしてカルテルを結んだのはまずかった」と話した。公取委は昨年、関電と中部電、中国電、九電などに対し、独占禁止法違反容疑で立ち入り検査を実施していた


値下げ競争から方針転換 カルテル主導の関電 他社幹部「もらい事故」
                             時事通信 2022/2/2
 大手電力会社のカルテル問題で、電気料金の値下げ競争が激化し、利益率の低下を懸念した関西電力がカルテルを主導していたことが1日、関係者への取材で分かった。
 関電は2017年7月、高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働を受け、電気料金を値下げすると明らかにした。企業向けの値下げ率は平均4.9%。東京電力福島第1原発事故後、2度にわたり値上げを実施し、顧客の流出が続いていた関電にとって、反転攻勢のきっかけとなった。
 18年春にはセブン―イレブン・ジャパンが中部、中国、四国地方で3000店以上構えるコンビニへの電力供給を開始。他社の大口取引先を奪うなど顧客獲得競争に注力する一方、「利益率は値下げの影響で薄くなっていた」(関係者)という。
 業界関係者によると、さらなる競争は経営に響くとみた関電は、他社エリアへの進出を抑制する方針に転換した。中部電力や九州電力などの幹部に対し、互いのエリア外での営業を見合わせるよう持ち掛けたとされる。
 しかし、19年9月に高浜原発が立地する高浜町の元助役(故人)から、複数の関電幹部が金品を受領していた問題が発覚。社内では、カルテルも意図しない形で明るみに出る事態を懸念する声が上がり、課徴金減免制度に基づき違反を自主申告する判断に傾いたという。
 関電が自主申告で課徴金を免れる見込みとなったことについて、処分案の通知を受けた他社の幹部は「釈然としないというか、われわれからしたらもらい事故みたいなものだ」と話した。

03- 中国電、中部電、九電にカルテル課徴金納付命令

 顧客獲得競争を制限するカルテルを結んでいたとされる問題で公正取引委員会から独占禁止法に基づく課徴金納付命令が、中国電力、中部電力、九州電力の3社に出されました。

 課徴金の内訳は、中国電力が約707億円、中部電力が約275億円、九州電力が約27億円です。
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中国電、赤字2097億円に カルテルで過去最大 23年3月期
                            時事通信 2022/12/2
 中国電力は2日、顧客獲得競争を制限するカルテルを結んでいたとされる問題で公正取引委員会から独占禁止法に基づく課徴金納付命令の処分案通知を受けたことに絡み、707億円の特別損失を計上すると発表した。
 これにより2023年3月期の連結純損益は過去最大となる2097億円の赤字になる見通し。
 中国電は、ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格高騰を背景に1390億円の赤字を見込んでいたが、カルテル問題で赤字額が膨らむ格好。前月には一般家庭向け規制料金の値上げを経済産業省に申請しており、利用者の反発も招きそうだ。 


カルテル問題で中電が275億円の課徴金命令へ 公正取引委員会
                          名古屋テレビ 2022/12/1
 事業者向けの電力供給をめぐってカルテルを結んだとして中部電力は公正取引員会から1日、およそ275億円の課徴金を納めるよう命じる案の通知を受けました。
 公正取引委員会は2021年4月から7月にかけ事業所への電力販売について互いのエリアで積極的に営業しないよう「カルテル」を結んだ疑いで中部電力や中国電力、九州電力に立ち入り検査を行っていました
 中国電力と九州電力によりますと両社にも1日、課徴金を納めるよう命じる案の通知があったということです。
 中部電力は課徴金に相当する額を2023年3月期第3四半期の連結決算で特別損失として計上する予定です。


電力販売でカルテル 公正取引委員会が九州電力などに課徴金
                          FBS福岡放送 2022/12/2
事業者向けの電力販売でカルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は、九州電力などに課徴金の納付を含む処分案を通知しました。
この問題は、事業者向けの電力販売をめぐり、九州電力や中国電力など大手電力会社が、お互いの供給エリアに参入しないよう、カルテルを結んでいた疑いが持たれているものです。
公正取引委員会は、独占禁止法違反にあたるとして、九州電力や中国電力などに対し、課徴金の納付を含む処分案を事前通知したということです。
関係者によりますと、課徴金は九州電力に約27億円、中国電力に対しては700億円を超えていて、総額は1000億円を超え、過去最高額になるということです。
九州電力は「内容を精査・確認し、今後の対応を検討していく」などとコメントしています。

2022年12月2日金曜日

喉元過ぎればアッケラカン 姑息な原発延長を許す国民も問題だ

 経産省は28日、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会で、今後の原子力政策の方向性を示す「行動計画案」を公表しましたこれには既存の原発が60年を超えて運転できるよう制度を変更するほか、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を進めていく」「廃止決定した炉の建て替えを対象とする」との方針が盛り込まれた。

 これについては直近のブログでも紹介していますが、原子力小委員会のメンバーである長崎大学教授の鈴木達治郎委員は、「明らかに『原子力回帰』で、2050年までは原発を間違いなく使い続けるという宣言だ。長期的に見てすべて必要なことかというと説明ができていないと思う。なぜいま維持、拡大するのか説明が必要だ(要旨)」と指摘しています。
  (11月29日)原発の最大限活用へ経産省が行動計画案 政府方針明確に転換

 また、辛坊治郎氏は29日のニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」で、「現実味のない話が暴走している岸田政権が1基の出力が30万キロワット規模と現行の100万キロワットの標準型より小さいものを考えていることについては、それでは従来の3倍以上の基数が必要になるので、現在の国内環境を見渡せばまず無理である。そして安全対策のコストを考えても原発は圧倒的に経済的に見合わないので、トータルのコストで安い再生エネ(自然エネ)の方に切り替えるべきであり、岸田政権のやり方は同政権がなぜ駄目かを端的に象徴している」と全否定しています
  (11月30日)政府が原子力政策大転換 「現実味のない話が暴走」と辛坊治郎氏が批判
 
 今回の日刊ゲンダイの記事も基本的には同様の趣旨ですが、それに加えて、政府にそれを許している国民の側にも責任があるのではないかと指摘しています。
 敢えて紹介させていただきます。
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喉元過ぎればアッケラカン 姑息な原発延長を許す国民も問題だ
                      日刊ゲンダイ 2022年11月30日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 国民が望む政策には腰が重いが、世論の反対が強い政策を決めるのはやたらと早い。第2次安倍政権以降、嫌というほど見せつけられてきたとはいえ、今度ばかりは正気の沙汰とは思えない。ウクライナ危機に乗じて岸田政権が原発政策の大転換を企んでいることだ。
 経産省は28日、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会で、今後の原子力政策の方向性を示す「行動計画案」を公表。既存の原発が60年を超えて運転できるよう制度を変更するほか、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を進めていく」「廃止決定した炉の建て替えを対象とする」との方針が盛り込まれた。
 2011年の東電福島第1原発事故後に改正された原子炉等規制法では、原発の運転期間は原則40年、原子力規制委員会の認可で1回に限り最長20年延長できることが決まった。
 ところが今回、経産省は「最長60年」では稼働できる原発が減ることや、電力の安定供給や岸田政権が掲げる脱炭素化には既存原発の最大限の活用が必要──などとして、安全審査や運転差し止め命令などで停止していた期間を運転期間のカウントから除外することで、事実上「60年超」運転を可能とする仕組みを整備する方針を打ち出したのだ。
 年内に「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長・岸田首相)で行動計画を決定し、政府は来年の通常国会に電気事業法改正案を提出するという。

40年制限は安全性を確保するために必要な制度
 計画案では、次世代型原発の建設に伴う初期投資を電力会社が着実に回収できる制度や、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを原発燃料として再利用する「プルサーマル発電」を推進するため、立地自治体向けの交付金を新設する方針も打ち出されたのだが、まるで時計の針が事故前に逆戻りしているかのような原発回帰の策ばかり。11年前に起きた福島原発事故という大惨事を忘れたかのようだ。
 大体、原子炉等規制法で原発の運転期間が原則40年と決まったのは理由がある。2012年6月の衆院環境委で、当時の細野環境大臣(現自民党)は運転期間を40年とした理由について、「作動するそれぞれの機器の耐用年数というものも考慮にした中で40年というところの数字を導き出した」と答弁。
 さらに、同年8月の衆院議院運営委では、参考人として答弁した、後の初代原子力規制委員会委員長、田中俊一氏が「40年運転制限制は、古い原子力発電所の安全性を確保するために必要な制度」「40年を超えた原発は、厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させないという姿勢で臨むべき」と説明していた。
 それなのに今回、これまでの国会審議を反故にするかのような方針転換が許されるはずがないだろう。国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花・事務局長がこう言う。
「(経年劣化などの)原発のリスクは11年前と変わっていません。にもかかわらず、原子力規制委は運転期間の上限を『規制ではなく利用政策』などと言って経産省任せにしたのです。おそらく、次は運転期間の上限規定の削除を電気事業法に盛り込むつもりでしょう。国民の安全を犠牲にする行為であり、撤回を求めたいと考えています」

福島事故を振り返り、再稼働や運転延長の是非を問い直すべき
 原発は停止期間中でも原子炉や配管、ケーブルなどの経年劣化は進む。実際、東電柏崎刈羽原発(新潟県)で10月末、再稼働を目指す7号機のタービン設備の配管に直径6センチの穴が開いていることが判明。
 配管内部に傷がつき、腐食が進んで損傷していたというのだが、原発ではどんな小さな損傷も大事故につながる可能性があり、いったん事故が起きれば制御不能になりかねない。だからこそ、福島原発の事故を踏まえて運転期間の厳格化を決めたのではないのか。
 福島原発事故後に厳格化された新規制基準の下で再稼働した原発は10基にとどまり、残り17基は停止期間が長期化。安全対策費も膨らみ、柏崎刈羽原発では1兆円を超えたという。
 経産省は、再稼働後も残余の運転期間が短いと、各電力会社が費やした巨額投資の費用対効果がうしなわれると判断したらしいが、冗談ではない。
 そもそも政府や電力会社は再稼働の前にやることがあるだろう。福島原発ではいまだにメルトダウンしたデブリが残り、手付かず状態のまま。たまり続けている汚染水についても、東電は地元の漁協などとの約束を無視する形で強引に海洋放出を進めようとしているのだ。
 まずは全力で福島原発の廃炉作業に取り組むべきなのに、ウクライナ危機や燃料高、脱炭素社会──などとさまざまな理屈をこねくり上げ、原発回帰を推し進めようとしているのだから言語道断ではないか。

事故が起きればコスト負担が計り知れない
 過去に積み重ねてきた国会審議や政府答弁を反故にし、閣議決定という名のもとにやりたい放題。「国民の声を聞く」とか言っていた岸田も結局、安倍・菅政権と同じで、自分たちと電力会社の都合で勝手にルールを変える暴挙に出ていると言っていい。
 そして、そんな姑息な手段に出ている岸田政権の姿勢を黙認している国民も国民だろう。原発を再稼働しないと電気代が上がり続ける、などと説明されると「はい分かりました」と何も考えず受け入れてしまう。
 だが、果たしてそうなのか。福島原発事故から学んだように、原発はいったん事故が起きれば、国民生活に与える影響や賠償額は将来にわたって増大する上、捨て場のない核のゴミ処理費用や廃炉費なども含めれば、火力コストなどとは比べものにならないほど高いだろう
 だからこそ、事故後、太陽光や水力、風力、地熱……など自然エネルギーの開発に力を入れるべき──といった声が高まったのではないか。
 本来であれば政府や電力会社は原発再稼働や運転期間延長に力を入れるのではなく、福島原発事故をきっかけとして新たな電源開発を進めるべきだったのだ。それなのに積極的に取り組むこともなく、「ウクライナ危機だから」「円安だから」と責任転嫁して国民に負担をツケ回し。
 挙げ句、やっぱり原発しかないよ──とあおっているわけで、まともな感覚を持った国民であれば「ふざけるな」と怒って当然。何でも政府や電力会社の言いなり。喉元過ぎれば何とやら。アッケラカンとしているのだから唖然呆然としか言いようがない
 こんな思考停止の状態では、この国の国民は恐らく、もう一度、戦争の苦しみを味わうだろう。原発問題の取材を長く続けているジャーナリストの横田一氏がこう言う。
エネルギー高の一因はアベノミクスの失敗によるところも大きいのに、それを原発再稼働の運動にすり替えられ国民が信じてしまっている。福島原発事故の教訓は、原発は事故が起きたら取り返しがつかなくなること。国民の生命、財産が脅かされるのです。国民は今こそ、事故を振り返り、再稼働や運転期間延長について冷静に考えるべきです」
 福島原発の影響で今も故郷に帰れない住民がいる現実を忘れてはならない。

福島第1原発事故「終わっていない」 小出裕章さん、土浦で講演

 元京都大原子炉実験所の小出裕章さんが25日、茨城県土浦市で講演し発生から12年を迎え福島第原発事故に関し、国などが「収束まで3040年」としているのを批判して「溶け落ちた炉心が今、どこにあるかも分からず、今、生きている人たちが死んだ後も収束できない」と述べましたまた子どもたち甲状腺がんにかかる事例が増えていることついては、「日本人である限り、大人には何らかの責任ある」と指摘しました

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福島第一原発事故「終わっていない」 元京大助教・小出裕章さん、土浦で講演
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 原発の危険性を訴え続けてきた元京都大原子炉実験所助教の小出裕章さんが二十五日、茨城県土浦市の県南生涯学習センターで講演した。小出さんは、日本原子力発電が再稼働を目指す東海第二原発(東海村)について、「岸田政権は原子力の旗を振り始めて、原電に再稼働をせっついている」と懸念を示した。
 小出さんは、発生から十二年を迎えようとしている東京電力福島第一原発事故に関し、国と東電が「収束まで三十〜四十年」としている工程表のシナリオを批判。「溶け落ちた炉心が今、どこにあるかも分からず、今、生きている人たちが死んだ後も収束できない」と指摘し「事故はまだ終わっていない」と警鐘を鳴らした
 被ばくに敏感な子どもたちが甲状腺がんにかかる事例が、福島県内で増えている現状も訴え「日本人である限り、大人には原発事故に何らかの責任はある。子どもたちを守るのは大人の責任だ」と呼びかけた。
 講演会は福島応援プロジェクト茨城が主催し、東京新聞水戸支局などが後援。約百人が参加した。(林容史)