2026年5月4日月曜日

原発を止めるべき理由(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の記事を紹介します。
 今年の3月11日、元福井地方裁判所裁判長の樋口英明氏が著わした『私が原発を止めた理由』(旬報社)の増補改訂版が刊行されました。樋口氏は2014年5月21日、大飯原発運転差し止め訴訟判決で運転差し止め命令を下しましたが、名古屋高裁金沢支部は2018年7月にその判決を破棄し、その後確定しました。
 植草氏は「下級裁判所が適正な判断を示しても上級裁判所がその判断を覆す。これが日本の裁判所の実態である」と述べ、事実殆どのケースでそれが見られます。
 2014年に大飯原発運転差し止め命令を出した樋口裁判長はその理由を日本の原発の耐震性能不足であるとします。震度7の地震は地震の揺れの強さを示すガルで表示すると1500ガル以上になり、日本では加速度が1500ガルを超える地震が頻発していて、それは日本列島のどこでも生じ得るものです。ところが実際には日本の原発のほとんどが700ガルの揺れに耐える構造でしか建造されていません。そんなに低い耐震強度とした理由は関東大震災の揺れの強さを400ガル程度と過少に推定したためでした。
 ところが全国的に地震計が設置されるようになった後に起きた1995年の阪神淡路大震災によって、震度7の地震が1500ガル以上であることが判明しました。
 樋口裁判長は、日本列島のどの地点でも1500ガル以上の揺れを伴う地震が発生し得るのに700ガル程度の耐震性能では不十分なことは明白であることから、運転停止命令を下しました。極めて当然の判断でした。
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原発を止めるべき理由
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年5月 1日

今年の3月11日、ある本の増補改訂版が刊行された。ある本とは『私が原発を止めた理由』(旬報社) https://x.gd/8p69X

 

著者は元福井地方裁判所裁判長の樋口英明氏。

2014年5月21日、大飯原発運転差し止め訴訟判決で運転差し止め命令を下した。
しかし、名古屋高裁金沢支部は2018年7月に判決を破棄して、その後確定した。

また、2022年6月17日、最高裁は「福島原発事故の被害について国は賠償責任を負わない」とする判決を示した。
多数意見を示した3名の裁判官は「実際に起きた地震の規模や津波の方向が予想されたものと違っていた」との理由で国の責任を認めなかった。

樋口英明裁判長は原発を止めたが、上級審は樋口裁判長の判決を覆した。また、最高裁は国の賠償責任を認めなかった。
日本を喪失しかねなかったフクシマ原発事故。事故の前に巨大地震の発生は警告され、巨大地震と津波の発生で福島原発が電源を失うことが警告されながら、国と東京電力は適切な対応を取らなかった。その結果として事故が発生して巨大な損害が生まれたが裁判所は国と東京電力を無罪放免にした

下級裁判所が適正な判断を示しても上級裁判所がその判断を覆す。これが日本の裁判所の実態である。
22年の最高裁判決で多数意見を書いた裁判官のうち、裁判長を務めた菅野裁判官は判決の1ヵ月後に定年退官し、その1ヵ月後に東京電力と深い繋がりのある大手法律事務所に就職した。
多数意見の他の2名の裁判官は同様の大手法律事務所出身の裁判官。

検察官出身の三浦守裁判官だけが、津波を伴う地震が発生する可能性を指摘した地震調査研究推進本部の発表の1年後には東電が東側からの津波に備えた堤防を築き、更に地下に水が入らない措置を取る義務があったのに対応を取らなかったために責任を負うとし、また、これらを命じなかった国も責任を負うとの判断を示した
国と東京電力の損害賠償責任を問わなければならないのに、裁判所は国と東京電力を無罪放免にした。

樋口英明氏が『私が原発を止めた理由』を刊行されたのは2021年3月11日。
5年が経過する間に上記の最高裁判決が示され、これと足並みを揃えるように岸田内閣の下で原発回帰の政策決定がなされた。

24年1月には北陸電力志賀原子力発電所が立地する石川県志賀町で震度7の揺れを記録する巨大地震が発生。しかし、原発回帰を見直す動きは取られていない。
また、南海トラフ地震のシミュレーションが示されているのに、なぜか、愛媛県の伊方原発や静岡県浜岡原発に関するシミュレーションが抜け落ちているという。
これらの事象を踏まえて増補版が刊行された。

2014年5月の大飯原発運転差し止め命令を示した樋口裁判長。
その理由の根幹は日本の原発の耐震性能不足にある。震度7の地震は地震の揺れの強さを示すガルで表示すると1500ガル以上になる。日本では1500ガルを超える揺れを伴う地震が頻発している。この強い揺れを伴う地震は日本列島のどこでも生じ得る
ところが、日本の原発のほとんどが700ガルの揺れに耐える構造でしか建造されていない

かつて関東大震災の揺れの強さは400ガル程度と推定されていた。この知見に基づいて原発が建造された。
ところが、1995年に阪神淡路大震災が発生し、全国に地震計が設置されるようになり、震度7の地震が1500ガル以上であることが判明すると同時に、1500ガル以上の地震が日本で頻発していることが判明した
樋口裁判長は日本列島のどの地点でも1500ガル以上の揺れを伴う地震は発生し得るのに対して耐震性能不足は明白であることから運転停止命令を下した。当然の判断である。

日本の進路を考えるときに、最重要の政策判断事項の一つが原発稼働の是非だ。
二度とフクシマ事故を起こしてはならないとの立場に立てば原発を全廃するしかない。
樋口氏の上掲書は簡潔に分かりやすく明解に原発問題の要点を教示してくれる最高の書である。
すべての日本国民必読の書であると断言できる。

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柏崎刈羽原発運転差止仮処分申立て

 柏崎刈羽原発6号機の営業運転開始4月16日、同原発30キロ圏内の住民3人が、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の運転差し止めの仮処分を新潟地裁に申し立てました。

 代理人の和田光弘弁護士は、14年が経過している本訴審理の促進を昨年から裁判所、被告代理人に要請してきましたが、今後1年以内の判決の見込みがないことから、迅速な審理と判断を求めて運転差止の仮処分を申し立てたと述べました
 河合弘之弁護士は、「仮処分を起こさなければ、営業運転を容認、拱手傍観していると誤解されかねない。基準地震動の過少性と避難計画に実行性がないことの2点に問題に絞った先行する本訴の実績があるのだから早急に決定をもらえると確信している」と述べました。
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柏崎刈羽原発運転差止仮処分申立て 「司法で、止める。今ここで、止める」
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 東京電力柏崎刈羽原発6号機の営業運転開始の4月16日、同原発30キロ圏内の住民3人が、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の運転差し止めの仮処分を新潟地裁に申し立てた
 申し立て後の記者会見で、脱原発新潟県弁護団代表の和田光弘弁護士は、新潟地裁の本案訴訟の状況について説明。柏崎刈羽原発の再稼働に関し、新潟県花角英世知事による「地元同意」や、14万3196筆の署名を集めた柏崎刈羽原子力発電所再稼働の是非を問う県民投票条例案を県議会が否決し、なし崩しの再稼働という状況から、本訴の審理の促進を昨年から裁判所、被告代理人に要請し、早期結審を求めてきたが、今後1年以内の判決の見込みがないことから、迅速な審理と判断を求めて運転差止の仮処分を申し立てたと述べた。
 そして、東電福島第一原発事故から15年が経っても緊急事態宣言発令中で、多くの人たちが苦しんでいる中、事故当事者である東電の柏崎刈羽原発の運転はあり得ないと思っており、司法による運転差止の仮処分決定により止めていただきたいというのが申し立ての趣旨であると述べた。
 同じく代理人で、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護士は、「原発を巡るマスコミの報道は推進一色に染められている中で、柏崎刈羽原発の営業運転が始まるのを、見過ごすことはできない。仮処分を起こさなければ、営業運転を容認、拱手傍観していると誤解されかねない。今日の仮処分には私たちは反対し続けるという意思表明の意義もある。東電が自分たちが生き残るため、利益をあげるためのみの再稼働であり、早期に止めるべきである。基準地震動の過少性(活断層の連動想定の欠落と不適切な要素地震開放基準波の使用)と避難計画に実行性がないとの問題にぎゅっと絞って、先行する本訴の14年間の実績があるのだから、早急に決定をもらえると確信している」と述べた。
 申立人の吉田隆介さんは、「福島原発で未曽有の災害を起こし、取り返しつかない状態を招いた東電が、柏崎刈羽原発をぬけぬけと再稼働する厚かましさを許しがたいと思っている。それから、新潟県知事にもモノ申したい。花角氏は知事選に出馬した時は、原発の再稼働は県民の信を問うてから決めると言っていたはずなのに、それを反故。県議会はそれぞれの地区の代表だから、県民の信を問うのと同じだと姑息な理由を考えて、県議会で保守政党が多いから容認されるのはわかっていたはず。このような再稼働の容認の仕方は民主主義に反していると思う。県知事には県民の安全と暮らしを守る職務があるのに、それをないがしろにして、国の方針に、あるいは東電の思うように容認をする、これは到底許すことができない」と申立人になった思いを述べた。
 同じく申立人の小木曽茂子さんは、2007年の中越沖地震の時は、海の日で津南町の体育館に小学生の子どもといたが、天井の板がはがれて外に避難したという。黒煙を上げる柏崎刈羽原発3号機、そして海と空に放射能が漏れたと報道があったのは2日後。大変なことになったと思い、この柏崎刈羽の原発震災を伝えようと各地で話をしてきたところ、11年3月20日過ぎにも福島で集会を予定していたが、福島第一原発事故が起き、「間に合わなかったと全身の力が抜けた。もう二度と、あのような思いをするのは嫌なのです。いくら国や東電が対策を立てても地震の規模や時期を予知できない。地殻変動にも対応できない。今すぐ再稼働を止め、少しでも安心した日常生活を送れるように、良い結果が得られるように皆様とともに頑張りたい」と思いを述べた。
 仮処分を命ずる決定が出れば、ただちに差し止める法的効力が生ずる。

「誤り」指摘された原発リーフレット、新潟県がHPで補足説明

 新潟県作成のリーフレット140万部 配布済み)では、福島第一原発事故後の状況を説明する部分で、「状況が悪化するにつれて、避難指示の範囲は最大で半径20キロ圏に拡大しました」と記載されていますが、市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を考える新潟県民ネットワーク」は「実際の避難指示は20キロ圏外まで広がっている」と指摘しました。

 県はその指摘を認めましたが、リーフレットそのものの修正はしないということです。
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「誤り」指摘された原発冊子、新潟県がHPで補足説明
                            朝日新聞 2026/5/2
 新潟県は4月30日、東京電力柏崎刈羽原発の安全対策などを県民に周知するために作成し、市民団体から「誤り」を指摘されたリーフレットについて、県のウェブサイトに補足説明を掲載した。指摘された部分には福島県のサイトに飛ぶリンクを加え、理解を深める形にしている。
 リーフレットでは、福島第一原発事故後の状況を説明する部分で、「状況が悪化するにつれて、避難指示の範囲は最大で半径20キロ圏に拡大しました」と記載されている。これに対して、市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を考える新潟県民ネットワーク」は「実際の避難指示は20キロ圏外まで広がっている」と指摘していた。
 更新された県のサイトでは、「より詳しく知りたい方へ」として、避難指示区域の変遷を説明する福島県のサイトのリンクを付けて誘導。20キロ圏外にも計画的避難区域や緊急時避難準備区域が決められたことが理解できる格好になった。
 今回の対応について県原子力安全対策課は「リーフレットの内容をより詳しく知ってもらうため」としており、リーフレットそのものの修正はしないという。
 リーフレットは全8ページで、福島第一原発事故が起こった原因や柏崎刈羽原発の安全対策、事故に備えた防災対策をQ&A形式で説明。140万部作成し、内容をウェブで公開しているほか、新聞折り込みや戸別配布をしている。(山崎靖)

書評 原発事故で暗転、温和な老人を追い詰めたのは何だったのか

 青木 『百年の挽歌 原発、戦争、美しい村』について 永江 朗による書評毎日新聞に載りましたので紹介します。
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原発事故で暗転、温和な老人を追い詰めたのは何だったのか―青木 理『百年の挽歌 原発、戦争、美しい村』永江 朗による書評
                          毎日新聞 2026年5月2日
2011年4月。東電福島第1原発の破滅的な事故から1カ月後、ひとりの老人が自殺した。102歳だった。温和な老人を追い詰めたのは何だったのか。ジャーナリストが追及する長編ノンフィクション。
その人、大久保文雄は福島県飯舘村で生まれ育った。平均標高約500メートルの村は冷涼で、たびたび冷害と凶作と飢饉(ききん)に襲われた。機械化どころか馬や牛を使うのも難しく、彼は文字通り自分の手と足で田畑を開墾した。弟は硫黄島で戦死した。苦労ずくめの人生だったが、老いてようやく穏やかな日々を手に入れた
ところが原発事故で暗転する。全村避難を命じられ、大久保文雄も村を離れなければならなくなる。しかし、彼は避難よりも死を選んだ。苦しんだのは彼だけではない。家族の悲しみは深い。
国が原発を進め、電力会社がずさんな運転をした。国と電力会社が老人を死に追いやった。だが、大久保文雄は特殊な例ではない。あの原発のために多くの人が傷つき、苦しみ、いまも続いている。事故の後始末どころか、廃炉作業さえ遅々として進まない。それなのに自維政権は原発を推進する。バカである。

[書き手] 永江 朗 フリーライター。
1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。

[書籍情報]『百年の挽歌 原発、戦争、美しい村』
著者:青木 理 / 出版社:集英社 / 発売日:2026年01月26日
                ISBN:4087890244

04- 福島県復興祈念公園が開園 震災・原発事故の記憶と教訓後世に

 国と福島県が双葉、浪江両町に整備した県復興祈念公園は2日、開園しました。発生から15年が経過した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶と教訓を後世に引き継ぐ拠点となります。初日は献花式を行い、金子恭之国土交通相や牧野京夫復興相、内堀雅雄知事、吉田栄光浪江町長、平岩邦弘双葉町副町長が献花台に花を手向けまし
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福島県復興祈念公園が開園 震災・原発事故の記憶と教訓後世に 
                            福島民報 2026/5/2
 国と福島県が双葉、浪江両町に整備した県復興祈念公園は2日、開園した。発生から15年が経過した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶と教訓を後世に引き継ぐ拠点となる。
 初日は献花式を行い、金子恭之国土交通相や牧野京夫復興相、内堀雅雄知事、吉田栄光浪江町長、平岩邦弘双葉町副町長が献花台に花を手向けた。午前11時30分から一般開放され、県内外から訪れた人が復興の現状や、複合災害の被害の実情に触れた。
 公園の面積は約46・4ヘクタール。「生命(いのち)をいたむ」「事実をつたえる」「縁(よすが)をつなぐ」「息吹よみがえる」の四つのテーマに基づき新設された。このうち、国営追悼・祈念施設は約9・4ヘクタール。床面に水盤がある円筒形の空間を通り、献花台へとつながる構造になっている。
 公園は当初、4月25日の開園を予定していたが、青森県で震度5強を観測した20日の地震に伴う北海道・三陸沖後発地震注意情報の発表を受けて延期していた。

2026年4月30日木曜日

原発新設融資新制度撤回を 環境団体など経産省に署名提出

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 環境や消費者など14団体は28日、原発新設を政府が支援・後押しする「原発融資新制度」の撤回を求めて経済産業省に3648人分の署名を援出しました
 100万KW規模の新型原発の建設費用は数兆円に上ります。このため民間では投資が困難なので、国が原発建設事業者に融資を行いその資金の部を財政投融資などで賄う制度を作ろうとしています。
 そもそも原発が「脱炭素でクリーン」というのは国際的な欺瞞です。ウランの採掘から精製、そして10万年間に及ぶ「使用済み核燃料が無害化するまでの保管」をするには。膨大な電力使用量(=炭酸ガス発生量)を要します。
 有害である上に経済性のないものを国が進めるのは原子力ムラの利益を守るためで、許されません。
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原発新設融資新制度撤回を 環境団体など経産省に署名提出
                       しんぶん赤旗 2026年4月29日
 環境や消費者など14団体は28日、原発新設を政府が支援・後押しする「原発融資新制度」の撤回を求めて経済産業省に3648人分の署名を援出しました。署名提出後、衆院第1議員会館で経産省と交渉が行われました。
 政府は先月、原発新設を政府が支援・後押しする内容を含む電気事業法改正案を閣議決定しました。同法案は、今後国会で議論が行われる見通しです。環境団体などは審議会での検討などを受けて昨年末から、新制度は原発新設のリスクやコストを国民に転嫁するものだとして、連携して同法案に反対する署名を集めています
 原発の新設のコストは上昇し続け、海外ではすでに数兆円にのぼっています。民間だけでその莫大(ばくだい)な投資負担は難しく、電力会社は、政府に原発新設に対する新たな支援の仕組みを求めていました。
 同改定案では、全国の電力の需給調整などを行う経済産業省の機関「電力広域的運営推進機関」が、
 呼びかけ人の一人、大島堅一龍谷大学教授は「原発ないし火力発電を政府が後押しするものになっている。民間の融資がつかない経済性のないものを進めようとしている。安全保障や脱炭素からも再生可能エネルギーこそ主力にすべきだ。(法案は)撤回すべきだ」と話しました。

【書評】「それでも日本に原発は必要なのか」潰される再生可能エネルギー

 しんぶん赤旗に掲題の文春新書への書評が載りましたので紹介します。

 評者は大島堅一・龍谷大学教授です。(同書は「文春新書」で1000円)
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【書評】「それでも日本に原発は必要なのか」潰される再生可能エネルギー
               青木 美希 著
                       しんぶん赤旗 2026年4月29日
原発推進派の内情に迫る取材力   評者 大島堅一・龍谷大学教授
 福島原発事故から15年が経過した。いまだにふるさとに帰れない人々かおり、放射性物質で汚染された地域も残されている。にもかかわらず、岸田政権以来、日本は「原子力の最大限活用」へと舵を切った。なぜ再生可能エネルギー(再エネ)ではなく原発なのか。著者は、福島原発事故の被害を出発点に、原発推進にいたった社会構造を国内外での丹念な取材で解き明かしている
 かつて日本は、石油ショック以来、原子力を「石油代替エネルギー」開発の中心に据え、エネルギー関連予算の大半を投じてきた。本書のエネルギ政策史の記述には著者なりの解釈も含まれる。とはいえ、原子力最優先の政策の全体像を読者はつかむことができるだろう。
 本書は、著者が属する朝日新聞社の業務外の取材によるものである。しかし、本書を説得力あるものにしているのは、まさに新聞記者としての取材力にほかならない。本書では、外部からはわからない与党内の動きが明らかにされている自民党内では「額賀調査会(ヌカチョウ)」が再エネ議論の場を封殺し、原発推進の提言を次々と打ち出した。再エネ推進派の議員が岸田政調会長に別の議論の場を求めると、「額賀さんに・・・だめだと言われた」と退けられたという。石破元首相も総理就任前、著者に「原発、ゼロにしたいよね」と語りながら、「脱原発と言っているのは、我が党では少ない」と嘆いている。
 こうした原発推進の背景には日本原子力産業協会の会員企業から自民党への巨額の企業献金がある。経済産業省の官僚は「企業献金を廃止しないと無理です。電力会社の力の源はそこにあります」と著者に告白した。
 エネルギーの未来は市民が選ぶものである。原発事故を経験した日本に原発は不要である。本書は、市民が知るべき事実をわかりやすく伝えている。幅広い人々に読まれることを斯待したい
           (文春新書・1000円)
           著者 青木 美希  あおき・みき
            ジャーナリスト。日本ペンクラブ言論表現委員会副委委員長
            著書『地図から消される街』ほか