2018年6月30日土曜日

原発事故 風化許すな 線量監視の中止など懸念

「原発事故被害者の救済を求める全国運動」の「キックオフ集会」が28日、衆院第1議員会館で開かれました
 集会では、モニタリングポスト「継続配置を求める市民の会」の片岡輝美さんによる「モニタリングポストは日々の安全を確認する最低限のもの。撤去は知る権利の侵害だ」との訴えや、新潟県避難者への調査で、通常は5%程度の人が抱える重度ストレスが248%になっていることなどの報告が行われました。
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原発事故 風化許すな 線量監視の中止など懸念
議員会館で集会
しんぶん赤旗 2018年6月29日
 東京電力福島第1原発事故から7年3カ月がたつなか、「原発事故被害者の救済を求める全国運動」の「キックオフ集会」が28日、衆院第1議員会館で開かれました。
 
 原子力規制庁が2020年までに福島県内のモニタリングポスト2400台を撤去しようとしている問題について、「継続配置を求める市民の会」の片岡輝美さんが発言。「モニタリングポストは日々の安全を確認する最低限のもの。撤去は知る権利の侵害だ」と強調し、自治体への働きかけで撤去反対決議も上がり、撤去延期の動きも出ていると紹介しました。
 新潟県精神保健福祉協会の田村啓子さんが、同県避難者への調査で、通常は5%程度の人が抱える重度ストレスが24・8%になっていることを紹介。「原発事故被害は長期化する。息の長い支援が必要だ」と訴えました。
 この他、避難指示区域外からの避難者が経済的貧困に苦しんでいるのに、家賃補助など数少ない支援が今年度末で打ち切られようとしていることが示されました。
 
 日本共産党の岩渕友参院議員が参加。岩渕議員が、国の除染土の再利用計画に対して住民の運動が歯止めをかけていることを紹介。「原発事故を風化させないために力を合わせよう」とあいさつしました。

原発ゼロ基本法の制定を 東京・中野市民の集い

 野党4党が共同提出している原発ゼロ基本法案の制定をめざして29日、東京都中野区市民のつどいが開かれました。
 法案は既に衆院経済産業委員会に付託されているのですが、与党が審議に応じないためそもままになっています。
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原発ゼロ基本法の制定を 東京・中野市民の集い
国会内外で運動強く
しんぶん赤旗 2018年6月29日
 今国会に野党4党が共同提出している原発ゼロ基本法案の制定をめざして28日、東京都中野区にある「なかのZEROホール」で市民のつどいが開かれました。
 主催は「さようなら原発1000万人アクション」と「原発をなくす全国連絡会」で、「総がかり行動実行委員会」が協賛。代表して、ルポライターの鎌田慧さん(「1000万人アクション」呼びかけ人)があいさつしました。
 鎌田氏は、与党が応じれば可能なのにもかかわらず、国会で審議がされていないと指摘。「国会内外の力を合わせて、一日も早く原発から脱却し、自然エネルギーへと向かっていきたい」と呼びかけました。
 
 「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)会長の吉原毅さん(城南信用金庫顧問)が講演。立憲民主党の山崎誠衆院議員、日本共産党の藤野保史衆院議員がスピーチしました。

30- 福島で漁再開目指し、調査用にアユを捕獲

福島で漁再開目指しアユ捕獲 放射性物質の量調べる
北海道新聞 2018年6月29日
 東京電力福島第1原発事故で被災した福島県浪江町の請戸川と高瀬川で29日、町民ら約20人が将来の漁再開を目指し、魚に含まれる放射性物質の量を調べるためにアユを捕獲した。7月1日までで、8月にも行う。
 
 地元漁協が主催。捕獲したアユは食用にせず、全て民間の検査機関に回す。二つの川は一部流域が放射線量の高い帰還困難区域を通るため、事故後、漁や釣りは禁止されている。
 この日、町民らは3カ所で釣り糸を垂らし、エサ釣りや、縄張りを守る習性を利用しておとりのアユを使う「友釣り」でアユを釣り上げた。

2018年6月29日金曜日

花角知事 任期中柏崎原発の再稼働なしと

 28日、6月の定例県議会花角知事は、柏崎刈羽原発の再稼働について「知事の責任の取り方として明確なやり方県民に信を問うこと」で、そうなれば「在任中に再稼働はない」と述べました。
 県議会での発言なので今度は簡単に反故にすることは出来ません。
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知事 任期中再稼働なしの見通し
NHK NEWS WEB  2018年6月28日
花角知事は28日の県議会の代表質問で、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる、みずからの判断について県民の意思を確認する考えを改めて強調したうえで、今の任期中には再稼働はないという見通しを示しました。
 
 27日から始まった6月の定例県議会は、28日は各会派の代表質問が行われました。
この中で花角知事は、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる、みずからの判断について、「知事の責任の取り方として明確なやり方、重い方法は、県民に信を問うことだ」と述べ、県民の意思を確認する考えを改めて強調しました。
そのうえで、「信を問うことになれば在任中に再稼働はない」と述べ、今の任期中には再稼働はないという見通しを示しました。
また、米山前知事の辞職前のことし1月にまとめた県の8か年の中期計画である「総合計画」については、「基本的には尊重したいが、私が公約で掲げた観光客誘致や交通ネットワークの整備など各分野での追加修正を検討したい」と述べ、一部、見直す考えを示しました。
このほか、県警察本部の花岡本部長は、先月、新潟市で小学2年生の女の子が殺害された事件を受けて、「通学路の合同点検や、不審者情報の共有などこれまで以上に関係団体と連携を図りたい」と述べ、犯罪の抑止に向け、地域との連携を強化する方針を明らかにしました。

柏崎刈羽原発の液状化対策工事を公開

 柏崎刈羽原発の地盤は地震時に液状化する惧れがあるため、現在、耐震強化や液状化対策の工事が進められています。
 28日、このうち「取水路」施設の地盤を改良する工事の様子が公開されました。
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柏崎刈羽の液状化対策工事を公開
NHK NEWS WEB 06月28日
東京電力は、柏崎刈羽原発の地盤が地震で液状化した場合に、主要な施設に悪影響が及ぶおそれがあるとして地盤の改良工事を進めていますが、28日、その様子が報道機関に公開されました。
 
 柏崎刈羽原発の6号機と7号機は去年、再稼働の前提となる国の審査に合格しましたが、地震で液状化した場合に主要な施設に悪影響が及ぶおそれがあることから、耐震強化や液状化対策の工事が進められています。
 28日はこのうち、「取水路」と呼ばれる施設の地盤を改良する工事の様子が公開されました。
この施設は原子炉などを冷却するために海水を取り込むもので、地中に整備されていますが、地盤が液状化すると施設の位置がずれて正常な運用ができなくなるおそれがあります。
 28日は、液状化対策として地下12メートルの深さまで地盤を掘り進めたところに重機で生コンクリートを流し込む作業が行われました。
 東京電力は、柏崎刈羽原発で耐震強化や液状化対策を実施する可能性がある施設が、今回公開した「取水路」を含めてあわせて10か所あることを明らかにしています。
 柏崎刈羽原発の武田智吉副所長は「中越沖地震で液状化がおきた教訓も工事に反映させている。液状化の対策に謙虚に取り組んでいることを地域の方に理解していただけるよう努めていきたい」と話しています。
 
 去年12月に原子力規制委員会の審査に合格した柏崎刈羽原発6号機と7号機が再稼働するには、原発が立地する柏崎市と刈羽村、それに新潟県の同意が必要となります。
 一方で、原子力規制委員会から認可を得なければならないプロセスもまだ残されています。
 東京電力が現在取り組んでいるのが、施設ごとの耐震性や強度など詳しい設計をまとめた「工事計画」の認可に向けた手続きです。
さらに、非常時の態勢や設備の管理方法などのルールを定める「保安規定」についても認可を受ける必要があります。
こうした一連のプロセスを経た後に、再稼働前の最終段階にあたる「使用前検査」を実施し、問題がなければその後、再稼働となりますが、こうした手続きについてスケジュールの見通しはたっていません。また、柏崎刈羽原発の再稼働問題をめぐっては、花角知事が再稼働に慎重な姿勢を示し、県の検証作業に少なくとも2、3年をかけると主張しています。
このため原発再稼働の時期が見通せないという状況が、当面続くことになりそうです。
 
 東京電力は去年1月、柏崎刈羽原発の6号機と7号機が審査に合格する前に、原子力規制委員会に対して大地震による液状化のリスクを説明していました。
それによりますと、液状化によって重大事故対策の排気設備「フィルターベント」や、「取水路」といった9つの主要な施設が影響を受ける可能性があるとしています。
これについて規制委員会は、審査合格の次のステップである「工事計画」の認可プロセスの中で設備の詳細な設計をチェックし、液状化の対策ができているかどうかを見極めるとしています。
 東京電力は、ことし4月に柏崎刈羽原発で耐震強化や液状化対策を実施する可能性がある設備が10か所あることを明らかにしました。
ただ、東京電力では、液状化対策などの工事にどのくらいの期間がかかるのかはまだ分からないとしています。

29- 出雲崎に4カ所目の原発災害対策支援拠点

 東電は柏崎刈羽原発の4カ所目の災害対策支援拠点を、2020年をめどに出雲崎町内に整備するということです
 拠点数を増やすことで重大事故時の備えを充実させ、同原発再稼働に向けた地元の理解を取り付けたいという考えです。 
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原発災害対策支援拠点 出雲崎に4カ所目、整備へ /新潟
毎日新聞 2018年6月28日
 東京電力は柏崎刈羽原発の4カ所目の災害対策支援拠点を、2020年をめどに出雲崎町内に整備する。拠点数を増やすことで重大事故時の備えを充実させ、同原発再稼働に向けた地元の理解を取り付けたい考えだ。 
 整備予定地は同原発の北東約16キロの同町沢田杉尾で、面積は約2万5000平方メートル。既に用地を取得し、20年1月ごろまでに倉庫や駐車場を整備。発電機や放射性物質の付着度合いを調べるスクリーニング用機材、テント、水、食糧などを備蓄し、同原発で重大事故が起きた際に事故対応人員の一時集合場所などとして活用する。整備後も従業員は常駐しない。 
 
 同原発向けの災害対策支援拠点は既に、柏崎エネルギーホール(柏崎市)▽信濃川電力所(小千谷市)▽当間高原リゾート(十日町市)--にあるが、いずれも同原発の南東部から南西部にかけて位置している。今回新たに北東方面にも拠点を設けることで、事故対応が迅速に行えるようになるとしている。【南茂芽育】 

2018年6月28日木曜日

原発ゼロ基本法案について藤野保史議員に聞く

 野党4党が共同提出した「原発ゼロ基本法案」は国政史上初めて原発ゼロを掲げた非常に豊かな内容があ法案です。法案は既に衆院経済産業委員会に付託されていて、与党が審議に応じると言いさえすれば審議できますが、いつそうなるかは予断を許しません
 しんぶん赤旗が、日本共産党の藤野保史衆院議員、党原発・エネルギー問題対策委員会責任者に同法案の意義について聞きました
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原発ゼロへ基本法制定必ず
日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者 藤野保史衆院議員に聞く
しんぶん赤旗 2018年6月27日
 今年3月9日に野党4党が衆院に共同提出した「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(「原発ゼロ基本法案」)は今月、衆院経済産業委員会に付託されました。28日には幅広い国民運動で実現を目指して、東京で市民の集会が開かれます。
 賛同者の一人でもある日本共産党の藤野保史衆院議員、党原発・エネルギー問題対策委員会責任者に同法案の意義について聞きました。
 
 ――法案の意義を改めてお話しください。
 この法案は、東京電力福島第1原発事故後の毎週金曜日の官邸前行動をはじめとした、原発ゼロ、再稼働反対の全国の運動、各地で長年積み重ねられてきた原発建設反対運動など、全国の草の根のたたかいと、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連、会長=吉原毅・城南信用金庫顧問)が1月に発表した「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案(骨子案)」の提案が合流して実を結んだ結果です。
 そうしたたたかいにも背中を押されて、立憲民主党、日本共産党、自由党、社会民主党の野党4党が共同提出した、国政史上初めて原発ゼロを掲げた法案です。政治の意思として原発ゼロを決断するということが立法趣旨で明確にされた、非常に画期的なものです。
 
 今後、野党共闘の大きな柱になるものですし、参議院選挙に向け国民的な世論、それに支えられた野党共闘のうねりをつくっていく上で、非常に大きな意義があると思っています。
 現状は、衆院経済産業委員会に付託されていて、与党が審議に応じると言いさえすれば、審議できます。国会の会期が延長された中、何としてもこの法案を審議しろと強く求めていきたいです。
 
 ――国会審議実現のために何が必要ですか。
 国会内では、各党と連携し、法案の審議入りを求めていきますが、やはり世論がカギだと思います。
 28日に、「さようなら原発1000万人アクション」と「原発をなくす全国連絡会」共催で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会が協賛する集会があります。「原発ゼロ基本法案」の実現を市民と野党の共闘の柱の一つとして、各地で共同を築いていくことが重要です。原発ゼロの実現を現実的に推し進める基本法案ができたので、今度はそれを国民のものにしていくために、市民と野党の財産として広げていきたいです。
 法案は非常に豊かな内容がありますが、まだまだ知られておらず、内容を広げていく活動にも力を入れていきたいと思います。
 
市民との結びつき生かす
立地自治体の経済も国の責任
 
 ――法案の内容について、その特徴を教えてください。
 まずは、原発は動かさないということです。動いている原発は止めるし、停止中の原発の再稼働は許さないという点が肝になっています。
 同時に立地自治体の雇用や経済について、しっかりと国の責任も明示しています。事業者の協力義務という形で、事業者にも役割を果たすことを求めています。ですから、立地自治体を含めて一致できる中身です。
 
再生エネ普及
 2030年までの目標として、2010年比で30%以上の省エネを実現するとともに、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる電力供給を40%以上にすることを掲げています。政府内に原発廃止・エネルギー転換改革推進本部を設置することも盛り込んでいます。
 日本はすでに福島原発事故後、2年近く稼働原発ゼロを経験し、その後も原発の電力比率は2%未満です。原発ゼロでも十分にやっていけます。一方、再生可能エネルギーは今、世界ではコストがどんどん下がって、風力や太陽光が爆発的に増えています。この法案が現実的で、世界の流れとも合致する方向を示しているのです。
 
 ――一方、原発に固執する安倍政権の矛盾も明らかになっています。
 日本は、余ったプルトニウム量を米国から削減しろと言われ、さらに政府の核燃料サイクル継続の柱にねらう高速炉開発計画で共同開発するフランスから計画縮小が発表され、その破たんはいよいよ明らかです。しかし、エネルギー基本計画案など政府がこの間発表してきていることは、こうした現実を反映していません。政府は、現状との矛盾について説明責任があり、この点も追及する必要があります。
 
再稼働はだめ
 
 ――原発再稼働が争点となった新潟知事選がありましたが。
 新潟県知事選は、池田千賀子候補が当選できず残念でしたが、県民世論が再稼働を容認したわけでは全然ない。相手候補は、最終盤になって、事故原因など三つの検証が終わるまで再稼働の議論をしませんとか、再稼働の是非は県民に信を問いますとか、野党候補と同じ内容の全面広告を新聞に3回も出しました。県民は、原発を動かしてほしくないのです。しかし、選挙が終わったら新知事は、舌の根も乾かないうちに再稼働がありうるというようなことを言っています。再稼働はだめだという世論を可視化していく上でも、この法案を広げていく運動が、非常に重要だと思います。
 
 ――日本共産党はどう取り組みますか。
 法案を広げていく上でも日本共産党が役割を果たさなくてはいけないと決意を新たにしているところです。
 日本共産党は2012年にすべての原発から直ちに撤退する政治決断を明確に求める提言を発表しています。国会論戦では、原発の「異質な危険」を明らかにし、追及してきました。原発ゼロを求める運動を市民とともに続けてきました。運動を通した草の根の結びつきを今度は、基本法実現に向けて生かし、全力をあげたいと思います。
 
あす市民集会
■原発ゼロ基本法の制定をめざす市民のつどい
 28日午後7時~
 東京・なかのZEROホール(JR中野駅、東西線中野駅から徒歩8分)

東海第2原発 来月「合格」へ

 原子力規制委、日本原電東海第2原発の再稼働に関する審査で、合格証に当たる「審査書案」を7月に決定する見通しであることをあきらかにしました。
 同原発は1978年11月28日に運転を開始したので、まず40年の期限である11月28日までに再稼働審査を含む三つの審査をクリアする必要があります。
 規制委が迅速に再稼働を認めたのはそうした配慮からですが、実際再稼働に必要な地元周辺地町村の事前同意が得られるかは見通せていません。
 
 共同通信の記事と、議論は生煮えとする東京新聞の記事を紹介します。
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東海第2原発、来月「合格」へ 規制委の再稼働審査
共同通信 2018年6月27日
 原子力規制委員会が、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の再稼働に関する審査で、合格証に当たる「審査書案」を7月に決定する見通しであることが27日、分かった。原電が目指す再稼働と最長20年の運転延長には、運転期限の11月までに再稼働審査を含む三つの審査をクリアする必要があり、第1段階で事実上の合格となれば、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型炉としては東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)に次いで2例目。
 ただ、実際の再稼働に必要な地元の事前同意が得られるかは見通せていない。
 
 
【茨城】
原子力規制委が東海第二の新基準審査を公表予定 事故対策費、議論生煮え
東京新聞 2018年6月27日
 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、原子力規制委員会は近く、新規制基準への「適合」を意味する審査書案を公表するとみられる。ただ、事故対策工事費の調達のため、東京電力が原電に資金支援することに、委員から疑問の声が出たのに、その後は議論がない。議論が生煮えのまま、新基準の審査を終えようとしている。(越田普之)
 
■限界ある
「国の支援を受けて経営再建中の東電が、他社を支援していいのか。(東電として)社会に十分に説明し切れていない印象がある」
 五月三十日に開かれた規制委の会合で、伴信彦委員が、東電による支援を問題視した。会合は、福島第一原発事故を起こした東電の小早川智明社長を招き、事故収束作業や原電への支援について聞く場だった。
 小早川社長は「競争力のある電源を調達して収益を上げ、結果として福島の責任を全うする」と答えた。だが、伴委員からはさらなる追及はなかった。
 原電支援を巡る議論は、このやりとりで終わりなのか。更田豊志委員長は六日の会見で「場合によって委員会で議論することはあり得る」と強調。一方で「私たちの権限で問える部分に限界がある」と述べた。
 
■鶏と卵
 また、東電は資金支援の条件を「東海第二からの受電を確認できること」と説明する。送電のために対策工事が必要なのに、受電の確認を先にするというのは理解しにくい。仮に対策工事をしても、地元の反対などで再稼働できず、東電に送電できるか分からない。
 更田委員長は「鶏が先か卵が先かというのは頭に浮かんだが、実際に(東電が)投資するかどうかを確認しないと許可しない、ということにはなっていない」と話し、議論は不確かなまま終わりそうだ。
 脱原発団体「さよなら原発いばらきネットワーク」メンバーの川澄敏雄さんは「規制委としては、対策工事費を誰が出すかは問題ではないのだろう」と、消化不良の議論に憤る。東電に対しても「同じ被災原発で使用年数も短い福島第二を廃炉にするのに、東海第二の再稼働を支援するのはどういうことなのか」と理解に苦しむ。
 
■ヤマ越えた
 新基準の審査を巡っては、原電は昨年十一月に最終段階の書類に当たる補正書類を提出したが、その後、論点が浮上し審査を継続。五月に、これまでの指摘を反映した補正書類を提出し記載漏れや誤記などが多数あったため、二十一日に修正して出し直した。これらを踏まえ、近く審査書案が公表される見通しとなっている。
 規制委は審査書案公表の最終条件として、新基準と並行する設備の詳細を定めた工事計画の審査にめどがつくこととしていた。
 審査に当たってきた山中伸介委員は二十一日、工事計画に関する試験を視察。「工事計画でも大きなヤマの一つを越えた」と述べ、審査書案公表の環境が整ったとする考えを示した。

28- 福島県只見町でモニタリングポスト撤去説明会

 原子力規制委は費用の節減を口実に、空間放射線量を測定するモニタリングポストを削減する方針を立てています。
 それに関する初めて住民説明会を25日、只見町きましたが、住民からは「費用の問題でなく、命の問題だ」などと、撤去に反対する声が相次ぎました。
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只見でモニタリングポスト撤去説明会 住民から反対の声相次ぐ/福島
毎日新聞 2018年6月27日
 空間放射線量を測定するモニタリングポスト(MP)を一部撤去する方針を示している原子力規制委員会は25日夜、只見町の只見振興センターで初めて住民説明会を開いた。住民からは撤去に反対する声が相次いだ。 
 
 説明会には住民約20人が参加した。規制委の担当者が「線量が低く安定している所は測定する必要がない。維持費もかかる。撤去して線量の高い所へ設置するなど、限られた予算を有効活用したい」として、町内にあるMP9台のうち、学校などに設置している「リアルタイム線量測定システム」7台を撤去する考えを説明した。 
 住民からは「見えない放射線を可視化することで安心感が生まれる」「費用の問題でなく、命の問題だ」などの意見が出た。また学校関係者は「放射線教育の教材になっている。原発事故の悲劇を風化させないためにも各校に設置しておく意味はある」と訴えた。 
 
 規制委は今後、喜多方市や会津若松市、郡山市など18市町村で説明会を開く準備をしているという。【湯浅聖一】.

2018年6月27日水曜日

「食品の放射線安全基準」見直しせず 放射線審議会総会

 食品などの放射線基準が、事故後既に7年以上が経つのに全く変わっていません。事故直後の基準値はいわば緊急避難的な暫定値であるのに、7年経過した現在もそのままでいい筈がありません。
 22日に放射線審議会総会が開かれましたが、出席者から現行基準の見直しをする意見は出ず、基準を改めることは棚上げになりました。
 
 総会を欠席した吉田浩子・東北大大学院准教授は、事前に提出した意見書で、唯一人「緊急時に設定した数値を事故後の長い期間中、固定して使用することは極めて不適切。適切に数値を変更できるようあらかじめ示しておくことが重要だ」と述べ、「これから帰還を考える住民が、毎時0・23マイクロシーベルトを導入した計算式と条件をそのまま使うことは不適切だ」と断じまし
 
 基準値を変えると現場が困難するからというのが本当の理由のようなのですが、では一体どんな風に混乱するというのでしょうか。
 1キロ100ベクレルの物質は、事故前であれば「低レベル放射性汚染物」としてドラム缶に入れて原発敷地などの所定区域内に厳重保管されていました。
 それが今では食品の安全基準とされているだけでなく、専門家たちの間で「安全すぎる」基準だと言われているということです。
 まことに変転ただならないというべきで、放射線専門家たちのいい加減さが疑われる話です。
 
 産経新聞が食品の放射線基準の問題を取り上げました。
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【原発最前線】
「現行基準見直し」の声ない放射線審議会 福島の教訓を提示へ
産経新聞 2018年6月26日
 国の放射線審議会で行われている原発事故後に策定された食品などの放射線基準についての検証と議論が、基準は状況の変化に応じて見直すべきだとする「次の事故を見据えた『福島の教訓』の提示」を目指していることが、6月22日に行われた総会で明らかになった。現行基準の見直しは「現場の混乱を招く」(事務局の原子力規制庁)として踏み込まず、基準が現在は過度に安全寄りになっていることをデータなどで指摘するにとどめる見通しだ。(社会部編集委員 鵜野光博)
 
基準値超え「ほとんどない」
 6月22日の総会では、事務局が、事故直後の暫定規制値で放射性セシウムが一般食品で1キロ当たり500ベクレルに設定され、約1年後に100ベクレルに引き下げられた経緯などをまとめて報告。最近では基準値を超える食品は野生鳥獣の肉類、山菜など管理できないもの以外はほとんど見られず、食品中の放射性セシウムの検出濃度は時間とともに低下していることが説明された。
 また、事務局提出の資料では、除染実施計画を策定する地域の要件とされた「空間線量率が毎時0・23マイクロシーベルト未満ではないこと」とする基準について、4つの行政資料と学術論文から検証した。毎時0・23マイクロシーベルトは、個人の年間追加被曝(ひばく)線量1ミリシーベルトを1時間当たりに換算したもので、1日のうち屋外に8時間、木造家屋に16時間滞在すると仮定し、外部被曝線量は空間線量の0・6倍として算出されていた。結論では、個人線量計を身につけた被災地の住民のデータなどから「基準はもともと保守性(安全寄り)を織り込んだ設定だったが、結果としてさらに相当程度の裕度(許容範囲)があった」としている。
 
「安全側」のデメリット明示を
 総会での議論では、出席した岸本充生・大阪大教授は「暫定規制値では、半減期が8日と短い放射性ヨウ素の場合は、日々基準値を小さくした運用を行うべきだったが、実際の運用は全く違っていた」と事故直後の問題点を指摘。また、「基準値を安全側にするのは一見非常にいいことに聞こえるが、その裏で別のリスクやコストを増やすデメリットがあることを明示すべきだ」と述べた。
 
 甲斐倫明・大分県立看護科学大教授は「事故後の混乱の中で基準を作ったときに、それをどういったときに解除するかということを議論できていなかったのが教訓だと思う」と述べた。松田尚樹・長崎大教授は「事故直後の急性期から、次の慢性期への切り替えを、誰がどういう根拠に基づいて行うのか。それが明確ではなかったから、今、こういった議論が出てきている。どこかで誰かが意思決定しなければならない。その議論が必要だ」と指摘した。
 
 総会を欠席した吉田浩子・東北大大学院准教授は、事前に提出した意見書で「緊急時に設定した数値を事故後の長い期間中、固定して使用することは極めて不適切。適切に数値を変更できるようあらかじめ示しておくことが重要だ」とした。また、「被曝線量を正確に知るためには個人線量計を装着して評価するのがもっとも有効」とし、「これから帰還を考える住民が、毎時0・23マイクロシーベルトを導入した計算式と条件をそのまま使うことは不適切だ」と断じた
 ただ、総会では、出席者から現行基準の見直しを必要とする意見は出なかった。事故後の基準が現状では過度に安全寄りとなっている認識を共有しながらも、その基準を改めることは棚上げし、「将来の事故」に備えた教訓としてまとめようとしている。そこに問題はないのか。
 
現行基準は棚上げ
 事務局は議論当初から「基準自体を見直すのではない」としていた。その背景には、原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長の「問題提起」と「後退」がある。
 更田氏は昨年12月~今年1月に行った福島県内の首長との意見交換で、「放射線のレベルは過剰に低く設定され、それによって失うものがある」と指摘。一般食品の1キロ当たり100ベクレルの基準などについて「極端に低い値」とし、「放射線審議会などでの議論に向けて努力を続けたい」と述べていた。
 そして1月17日、規制委定例会合で「事故当初は手探りで実証データも少ないから、非常に保守的な値が設定されるのは致し方ないが、いつまでも改めないのは大きな問題だ」と提起。基準見直しを意図する発言と受け止められたが、同月24日の会見では「基準がどのぐらいの保守性を持っているかを明確にするだけで大きな前進」「基準を見直そうといった意図は全くない」と後退した
 事務局は「関係者にも相談したが、基準見直しは現場が混乱し、風評被害も懸念されるとのことだった」と舞台裏を明かす。「この7年の間に放射線審議会として言えるものはあったと思うが、今更時間を元に戻すのは難しい。忸怩(じくじ)たるものはあるが…」
 福島の教訓は審議会が昨年まとめた「放射線防護の基本的考え方の整理」の補足に位置づけられる見通しで、次回総会で事務局が原案を提示し、議論される。どのような形で、どれだけの説得力を持てるのか。次回議論を待ちたい。
福島第1原発事故後の放射線基準 
 事故から1年後の平成24年4月から適用されている食品の放射性セシウムの基準値は、1キロ当たり一般食品100ベクレル▽飲料水10ベクレル▽牛乳50ベクレル▽乳児用食品50ベクレル。一律1200ベクレルの米国などより大幅に低いほか、食品の50%が汚染されていると仮定しており、現状とのずれも指摘されている。また、除染の目安とされる毎時0・23マイクロシーベルトについては、外部被曝線量は空間線量の0・6倍とした算出根拠に対し、住民の個人線量計による計測で0・15倍とする研究結果などが発表されている。

九電が社員に慰労金 総額は10億円規模

 玄海原発4号機の再稼働で管内の原発が4基稼働態勢になった九州電力が、1万人を超す全社員に対し、今夏の賞与に合わせて「特別慰労金」を支給しました。
 支給目的は「従業員のこれまでの貢献、努力に報いる」ということで、支給額は特別管理職は7万円、一般社員5万円、キャリア社員3万~5万円で、特別管理職と一般社員には月例賃金の1244%も合わせて支給し総額は10億円規模になるとみられます。
 一方、九電は原発ゼロの時期に値上げした電気料金は据え置く方針で、消費者側からは企業姿勢を疑問視する声出ています
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 九州電力
原発再稼働4基態勢で社員に慰労金5万円支給
毎日新聞 2018年6月27日
 玄海原発4号機(佐賀県玄海町)の再稼働で管内の原発が4基態勢になった九州電力が、1万人を超す全社員に対し、今夏の賞与(ボーナス)に合わせて「特別慰労金」を支給していた。支給額は一般社員で5万円以上となる。一方、九電は原発ゼロの時期に値上げした電気料金は据え置く方針で、消費者側からは企業姿勢を疑問視する声も出ている。 
 
 毎日新聞が入手した社員への配布文書によると、特別慰労金の支給日は6月8日。「4基再稼働を実現できる見通しとなった」ためで、支給目的は「従業員のこれまでの貢献、努力に報いる」などとある。支給額は特別管理職は7万円、一般社員5万円、キャリア社員3万~5万円で、特別管理職と一般社員には月例賃金の12.44%も合わせて支給した。総額は10億円規模になるとみられる。 
 
 九電では、2011年の東京電力福島第1原発事故前は原発6基が稼働していたが、事故後はゼロとなった。経営悪化をしのぐため13年夏から一般社員のボーナスを全額カットするなどしてきたが、15年8月の川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を皮切りに、今月16日には4基目となる玄海原発4号機が再稼働。ボーナスも16年夏に復活している。 
 一方、九電は13年に値上げした電気料金は据え置く方針。今夏のボーナスは労組との妥結時に公表したが、特別慰労金の支給は明らかにしていなかった。 
 12年の政府主催の電気料金値上げ公聴会で意見陳述した福岡県久留米市の元生協職員、中村伸一さん(62)は「電気料金の議論がないまま慰労金を非公表で支給したことに腹が立つ。消費者の意見を聞くべきだ」と九電の姿勢を問題視した。 
 福島の原発事故で福島市から佐賀市に避難している渡辺弘幸さん(55)も「安全対策でまだやれることはあるのに、その前に慰労金を支給する九電は危機感がなさ過ぎるとしか言えない」と話した。 
 
 九電は毎日新聞の取材に対し、特別慰労金は電気料金には反映しないと説明したうえで「今回限りの措置だったため、公表しなかった」とした。【関東晋慈、浅川大樹】