2022年9月30日金曜日

花角知事「委員長と共通認識持てず」と 総括委員会開催のメド立たず 

 新潟県が近く開催す原発に関する検証総括委員会について、花角知事は29「いまだ議論する内容について委員長と認識が一致していない」と話しました。

 県は各委員会の結果の取りまとめを求めていますが、委員長は柏崎刈羽原発の安全性や福島第一原発の処理水への対応などを踏まえた『東電の適格性を議論したい』としています。
 それぞれの委員会でまとめられた報告をさらに「取りまとめる」とは具体的にどういうことなのか、屋上屋を重ねても意味はないし、総括委員会が各委員から出された結論を修正したりするのは越権行為になるでしょう。知事の意向がよく分かりません。
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原発検証総括委員会 開催のメド立たず 花角知事「委員長と共通認識持てず」
                    NST新潟総合テレビ 2022/9/29
新潟県が近く開催する意向を示している原発に関する検証総括委員会。花角知事は9月29日の県議会で「いまだ議論する内容について委員長と認識が一致していない」と話しました。
原発に関する県独自の検証をめぐっては、21日に安全な避難方法を検証する避難委員会が報告書を提出。花角知事はこれを受け、近く検証総括委員会を開催する意向を示しています。
29日行われた県議会の代表質問で、その総括委員会の開催のメドなどを問われた花角知事は…
花角知事】「委員長はすでに技術委員会で確認を行っている、柏崎刈羽原発の安全性や福島第一原発の処理水への対応などを踏まえた『東電の適格性を議論したい』として、未だ共通認識を持つことができない」

総括委員会に対し、あくまで各委員会の結果の取りまとめを求める県と池内了委員長との間で議論する内容について「いまだ意見が一致していない」と話しました。開催に向け調整が続いていますが、メドは立っていません。
県議会は10月18日まで続き、9月30日、県が提出した補正予算案のうち8月に県北部を襲った大雨被害への対応分について先行して採決を行います。

洋上風力の人材育成、秋田が一大拠点に 日本郵船が設置検討

 海運大手日本郵船が秋田県に大規模な人材育成拠点の設置を計画しています。
 洋上風力の管理に必要な技術者が非常に不足しているため、風力発電技術者養成所を24年に開所し、将来的に年間1000人規模の訓練を見込むということです。
 港~風力発電施設間の作業員輸送船運航のための海技士の養成も行います。
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洋上風力の人材育成、秋田が一大拠点に 日本郵船が設置検討
                            毎日新聞 2022/9/30
 国が大量導入を目指す洋上風力発電を巡り、海運大手・日本郵船(東京都)が秋田県に大規模な人材育成拠点の設置を計画していることが29日、関係者への取材で判明した。洋上風力は技術者不足が課題となっている。東北電力や秋田県、県立男鹿海洋高(男鹿市、船木和則校長)とも連携し、全国から訓練生を受け入れる一大拠点とする狙いだ。【猪森万里夏】

◇東北電、県、県立高と連携
 国は洋上風力を再生可能エネルギー普及の「切り札」と位置付け、2030年までに1000万キロワット(原発10基分)、40年までに3000万~4500万キロワット(原発30~45基分)の導入を掲げる。
 ただ、国内に本格的に稼働を開始した洋上風力発電所はまだなく、専門的な経験を積んだ人材は少ない。日立製作所など日本の風車メーカーも相次ぎ生産から撤退し、海外メーカーの機器に対応できる人材の確保も急務となっている。
 さらに、風車の保守管理などに当たる作業員は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)などの海外勢からなる国際非営利組織「GWO」の認証を取得することが事実上求められている。だが国内でGWO認証に対応した訓練施設は現在、北九州市の1カ所しかない。
 こうした中、日本郵船などは新たな拠点の整備に乗り出す。関係者によると、24年の運用開始を目指す。将来的に年間1000人規模の訓練を見込む
 30日にも国の「洋上風力発電人材育成事業」の対象事業の一つに採択される見通しだ。同事業は、洋上工事の調査や開発に関わる技術者、保守管理の作業員などの育成を国が支援する制度で、国は6億5000万円の予算を計上している。
 一方、男鹿海洋高は実習船や水深10メートルのプールを備え、生徒が船の操縦や潜水技術を学べる県内唯一の水産高校だ。秋田県沖は計約200万キロワットと全国屈指の規模で洋上風力の導入計画が進む区域でもあり、同校は港と風車を往復する作業員輸送船(CTV)などの船員を輩出すべく、生徒らに「海技士」の国家資格取得を推奨するなど、これまでも人材育成に注力してきた。
 新たな拠点では、同校のプールや男鹿市の廃校なども活用し、「GWO」の認証取得に加え、船を操る乗組員の訓練カリキュラムなどを作成する予定だ。
 秋田県の洋上風力発電の人材育成プロジェクトチームのリーダーを務める東京大学先端科学技術研究センターの飯田誠特任准教授は「秋田に限らず洋上風力の人材は不足している。民間と教育機関が連携しながら拠点を作れば、地元の若者にとっても風車の仕事がより身近になるのでは」と評価している。
   ◇
 また、洋上風力発電の「有望な区域」に指定されている「秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖」は、30日にも「新潟県村上市・胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」とともに国が優先的に発電施設を整備する「促進区域」に指定される見通し。秋田県の沿岸4区域は全て促進区域となる。

敦賀2号機、審査再開可否判断へ 原電が改善報告

 敦賀原発2号機の再稼働に向けた安全審査の資料を無断で書き換えていた問題で、規制委は21年8月「資料の信頼性が確保されていない」として審査会合を中断しまし

 原電は29日、原子力規制委の会合で資料の作成過程の改善点などを報告しました。規制委は「おおむねルール化されている」と肯定的に評価し、早ければ10月の定例会で、中断している審査会合の再開可否の判断に向けて議論する見通しです
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敦賀2号機、審査再開可否判断へ 無断書き換え、原電が改善報告
                            毎日新聞 2022/9/29
 日本原子力発電が敦賀原発2号機(福井県敦賀市)の再稼働に向けた安全審査の資料を無断で書き換えていた問題で、原電は29日、原子力規制委員会の会合で資料の作成過程の改善点などを報告した。規制委は「おおむねルール化されている」と肯定的に評価。早ければ10月の定例会で、中断している審査会合の再開可否の判断に向けて議論する見通し。
 原電は資料作成過程を見直し、資料の元となるデータの明確化や、資料作成に関わらない社員が資料を検証することなどを社内規定に盛り込んだと説明した。
 書き換えがあったのは、原子炉直下を含む敷地内の断層に関する資料で、2020年2月の審査会合で発覚した。元のデータは地層を肉眼観察した結果だったが、その後顕微鏡による観察の結果を上書きするなどしていた。規制委の有識者調査団は2号機の直下に活断層があるとの見解を示しており、原電は反論する形で「活断層ではない」として資料を提出していた。規制委は21年8月、「資料の信頼性が確保されていない」として審査会合を中断した
 再開の条件として原電に対して、データを書き換え前の元の状態にさかのぼれるようにすること、肉眼と顕微鏡など複数の手法で異なる結果が出て、その評価を出す場合は判断の根拠を明確にすることなどを求めていた。また、資料作成業務の過程を確認するため、20年12月から原電への立ち入り検査を計10回実施した。【土谷純一】

30- 三菱重工が次世代原子炉開発について発表

三菱重工、次世代原子炉開発へ…一部地下で有事にも強く
                            読売新聞 2022/9/29
 三菱重工業は29日、関西電力など電力大手4社と共同で次世代型原子炉の開発を始めると発表した。原子炉建屋の一部を地下に建設するほか、有事にも核燃料を外部漏えいしないようにする。実用化は2030年代半ばを目指す。
     三菱重工などが開発を進める新型原発のイメージ(三菱重工提供)
 https://news.yahoo.co.jp/articles/c3192b491ca952521ca357b6b6f8655137774ad9/images/000
 政府が今年8月、原子力発電所の新増設について検討に入った。民間企業の間でも次世代炉の開発に向けた具体的な動きが出てきた形で、三菱重工は共同開発する関電や北海道電力、四国電力、九州電力の4社と連携し、候補地の選定や安全性の検証を進める方針。
 開発する次世代炉は、「革新軽水炉」。西日本を中心に導入されている現行の原発の仕組み「加圧水型軽水炉」(PWR)がベースとなる。出力は現行とほぼ同じ120万キロ・ワットを想定し、発電量を機動的に調整できるよう改良する。
 安全面では、原子炉のある建屋の一部を地下に配置し、原子炉格納容器を覆う「遮蔽(しゃへい)壁」は従来の2倍の厚さとした。自然災害だけでなく、テロなどの外部からの攻撃に対する耐久性を高める。有事に備え、仮に原子炉が壊れて内部の核燃料が漏れ出しても、原子炉の下に設ける「コアキャッチャー」という装置で自動的に保管・冷却する。

 原発は、福島第一原発の事故をきっかけに、安全対策の強化が求められ、再稼働が遅れてきた。原発の新設にも慎重論が根強く、国内での次世代炉の研究は停滞していた。米国を中心に安全性の高い次世代型原子炉の研究・開発が進む中で、日本の原発の将来像が不安視されていた。
 三菱重工は、原発の大規模かつ安定した発電量を強みに、次世代炉を太陽光や風力といった再生可能エネルギーとならぶ電源としたい考え。脱炭素時代のエネルギーとなる水素の生産にも電力は欠かせず、原子炉の活路とみている。
 一方、東日本の原発の中心となっている「沸騰水型軽水炉(BWR)」を手がけてきた日立製作所は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)とともに次世代型原子炉の開発に取り組んでいる。


三菱重工、電力4社と次世代原発を開発
                            時事通信 2022/9/29
 三菱重工業は29日、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の4電力会社と次世代型原発を共同開発すると発表した。従来の原子炉と比べて安全性が高いとされる「革新軽水炉」を2030年代半ばに実用化することを目指す。政府が次世代型原発の開発・建設を検討する方針に転換したことを受け、民間でも開発の動きが本格化する。 

2022年9月29日木曜日

福島第1原発廃炉 規制委員会前委員長が言及

 原子力規制委員会の前委員長の更田豊志さんが日本テレビのインタビューに応じました。
 更田さんは審査加速の圧力に対しては、「日本は断層あっちこっちにあるので、それだけ審査も難しくなる私たちは要求する安全のレベルを引き下げるつもりは毛頭ない」と語りました。
 福島第一原発の廃炉については、デブリのすべて取り除くことはできず、原子炉建屋の底部についてはその場でいったん固めるのが現実的だ」と述べました。固める素材としては特殊セメントくらいしか思い浮かびませんが具体的な言及はなかったようです。
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福島第一原発「廃炉の現実」 規制委員会トップが異例の言及
                          日テレNEWS 2022/9/28
原発の安全性を審査する原子力規制委員会が発足して、今月で10年を迎えます。国が原子力政策を積極利用に転換する中、委員会のトップを務めた更田豊志さんが日本テレビのインタビューに応じました。更田さんが語った、福島第一原発の「廃炉の現実」とは?
     ◇
日本テレビのインタビューに答えたのは、「原子力規制委員会」発足当時からのメンバーで、委員長を務めた更田豊志さんです。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん「いろんな意味で、変化に富んだ10年だったかなと」
更田さんは28日、5年の任期を終えて、職員を前に退任の挨拶をしていました。
     ◇
原子力規制委員会が発足したのは、10年前の2012年でした。東京電力福島第一原発で原子炉がメルトダウンし、水素爆発に至った事故の翌年でした。
田中俊一初代委員長(2012年9月)「原子力規制行政の信頼が完全に失墜している中で発足する、原子力規制委員会と規制庁でございます」
原発の安全性の審査などが役割ですが、国民の不信感が押し寄せていました。
2014年、川内原子力発電所の再稼働審査に反対するデモが行われ、川内原発の設置変更許可の決定を発表した際にも、「やめろ!」と声が上がっていました。
     ◇
しかし、今、状況は一変しつつあります。今月22日、経済産業省・原子力小委員会のリモート会議では、次のような発言がありました。
資源エネルギー庁「将来に向けた次世代革新(原子)炉のリプレイス・新増設は、避けて通れない道」
ウクライナ情勢もあり、電力が不足する中、国は積極的な原子力利用へとかじを切ったのです。
 「安全性が確認された原子力発電所の再稼働というのは、早めに進めていくことが求められると思います」
今や規制委員会は、審査をもっと急ぐよう求められる状況です。この状況に対して、更田さんは語気を強めました。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん日本は断層あっちこっちにありますから、厳しい条件にあるのは事実だし、それだけ審査も難しくなると思います。私たちは、要求する安全のレベルを引き下げるつもりは毛頭ありません
     ◇
さらに、更田さんが在任中、特に取り組んだのが、福島第一原発の廃炉でした。
国は廃炉を40年で終わらせるとしていますが、「最難関」と言われる溶け落ちた核燃料・燃料デブリの本格的な取り出しは、まだ先が見えない状況です。この状況について、更田さんは次のように述べました。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん「すべての放射性物質を取り出すとか、ゼロにするということは、技術的にはなかなか考えにくくて。できるだけ量を減らす努力はするけど、あとは現場をいったん固めてしまう、安定化させてしまうということは、現実的な選択肢なんだと思います
溶け落ちた核燃料・燃料デブリは、原子炉圧力容器や格納容器の底にたまり、こびりついています。
更田さんは「これらをすべて取り除くことはできず、原子炉建屋の底部については、その場でいったん固めるのが現実的だ」との考えを示しました。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん「(原子炉建屋)底部はかなりの幅で、固めてしまわないと難しいかなと」
取り除けないで残る燃料デブリの存在と、その扱いについて、規制委員会トップとして踏み込んで述べるのは異例のことです。

国が原発の積極利用に舵を切る中、福島を忘れず、その独立性を保(たも)てるか。原子力規制委員会の“次の10年”が問われています。 

7年ぶりに工事再開 六ヶ所村MOX燃料工場

 六ヶ所に建設されているMOX燃料工場今月157年ぶりに工事が再開され日本原燃はその工事現場を報道機関に公開しました。

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7年ぶりに工事再開 MOX燃料工場 (青森県)
                            青森放送 2022/9/28
 日本原燃は2024年度上期の完成目標に向けて7年ぶりに工事が再開したMOX燃料工場の工事現場を公開しました。
 六ヶ所再処理工場の南側に建設されているMOX燃料工場は原子力規制委員会から「設工認」と呼ばれる安全対策工事に必要な認可を得て今月15日から7年ぶりに工事が再開されました。
 現在は燃料加工建屋をつくるため地下2階の床にコンクリートを流し込む工事が行われていました。
 工場は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムなどを含む「MOX粉末」を原料にして原発で再び使う新しい燃料を作る国内初の商業用施設です。
 今回の認可は4回に分けていた申請の初回分で日本原燃は2024年度上期の完成をめざしています。
★日本原燃 須藤礼 燃料製造事業部長
「いま第2回目の申請も着々と進めているところでございますので申請をして丁寧に説明をしてそれと合わせて現場の工事の方も着実に確実に進めていきたい」
 工事の進み具合は先月末現在9.1%、建物の建設だけだと今月19日現在42.1%となっています。

29- 韓国と中国がIAEAで懸念示す 福島原発のトリチウム水 海洋放出で

 IAEA年次総会で、福島第1原発のデブリ冷却水から発生するトリチウム水の海洋放出に対し、韓国と中国はそれぞれ、原発事故に伴う汚染水の海洋放出は史上初のこと、安全性が確保されていないなどと反対を表明しました。
 日本は通常の原発稼働時にも微量のトリチウム水を海洋に放出しているから問題ないという立場ですが、正常な原発では発生源のウランは被覆された状態で、ある程度核分裂が進んだ時点で「使用済み核燃料」として引き抜かれて別系統の処理に移行するのに対して、福島のトリチウム水は基本的にはウランを主成分とするデブリがなくなるまで続くので、放射性物質の絶対量が全く違います。
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韓国がIAEAで懸念示す 福島第一原発の処理水 海洋放出方針で
                    NHK NEWS WEB 2022年9月28日
東京電力福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を海に放出する方針をめぐってIAEA=国際原子力機関の年次総会で韓国の代表が「汚染水が海に放出される」と懸念を表明したのに対し、日本側は基準を下回る濃度に処理されるものだと説明して理解を求めました。
福島第一原発にたまり続ける処理水について、日本政府と東京電力は、基準を下回る濃度に薄めて海に流す方針です。
これについて27日、オーストリアのウィーンで開かれているIAEAの年次総会で、韓国の代表が演説し「原発事故で発生した汚染水が海に放出される史上初のことになる」と述べて懸念を表明し、科学的に安全な方法で行うことなどを求めました。
これに対して、日本の引原大使が発言し、放出する方針なのは、韓国の言う「汚染水」ではなく、基準を下回る濃度に薄めた処理水だと説明して、理解を求めました。
会場では、このあと中国の代表が発言の機会を求め、日本の計画は安全性が確保されていないとして批判しましたが、引原大使はこれに対して「安全で科学的なやり方で進め、IAEAが厳格な評価を行うことになる」などと述べ、IAEAと協力して対応していく姿勢を改めて強調しました。


「汚染水」か「処理水」か 日本、中韓と応酬に
                            共同通信 2022/09/28
【ウィーン共同】東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出計画を巡り、ウィーンで開催中の国際原子力機関(IAEA)総会で韓国と中国が27日、日本と応酬した。発言の中で「汚染水」という言葉を使う韓国と中国に対し、在ウィーン日本政府代表部の引原毅大使は「適切な表現は処理水だ」と反論した
 政府はトリチウムを含む処理水を、海水で薄めて海に放出処分すると2021年4月に決定。国内外で稼働中の原子力施設でも、トリチウムを含む水は規制に従って海に放出されている。

 韓国は海洋放出による「未確認の影響」への懸念があると訴えた。中国は日本側が事実を隠そうとしていると主張した。 

2022年9月28日水曜日

毎週金曜に街頭で「脱原発」を訴えた市民団体 10年で500回の節目

 京都府福知山市で市民らが12年7月6日から10年間にわたり、毎週金曜日に脱原発を訴える街頭活動を福知山駅そばの駅南口交差点付近で続け23日で500回の節目を迎えました。この日は10人が参加しました。

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毎週金曜に街頭で訴えた「脱原発」 市民団体10年で500回の節目
                          両丹日日新聞 2022/9/26
 2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を受けて、京都府福知山市で市民らが10年間にわたり、毎週金曜日に脱原発を訴える街頭活動を福知山駅そばの駅南口交差点付近で続けている。23日で500回の節目を迎えた。
 市民らで作る原発反対金曜日行動宣伝隊が主催し、福知山地方労働組合協議会が共催。活動は金曜日だった2012年7月6日午後5時30分に始め、以降同じ時間帯に7、8人が「原発再稼働STOP」と書いたプラカードなどを持って脱原発の必要性を訴えてきた。
 当初は3カ月程度で終える予定だったが、政府が原発政策を抜本的に見直さないことで、活動を継続。場所は通学路で中高生の往来が多く、賛同して一緒に立ってくれた中学生もいたという。
 23日は10人が参加した。福知山地労協の奥井正美議長は「福島の惨状を忘れてはいけない。これからも声を上げてアピールしていく」と話していた。
  (写真)↓ 金曜日に脱原発を訴えて500回。これからも活動を続ける
  https://news.yahoo.co.jp/articles/abe09140f98828e961e5b8062ec495dcb556a75f/images/000

「反原発に関わっても仕事は干されません」小原浩靖・映画監督

 日刊ゲンダイが、映画監督小原浩靖氏を「注目の人 直撃インタビュー」で取り上げました。小原氏はそれまで「反原発に関わると仕事が来なくなるぞ」という忠告を受け、脱原発運動の先頭に立つ河合弘之弁護士の映画製作に偽名で携わってきたフリーの映像作家ですが、「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」では実名で、企画・製作・宣伝・配給もこなす監督を務めました。日刊ゲンダイがその覚悟を聞きました
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注目の人 直撃インタビュー
映画監督・小原浩靖氏 偽名を捨てた心境と覚悟「“反原発”に関わっても仕事は干されません」
                         日刊ゲンダイ 2022/09/26
■小原浩靖さん(映画監督)
「反原発に関わると仕事が来なくなるぞ」──そう忠告を受け、脱原発運動の先頭に立つ河合弘之弁護士の映画製作に偽名で携わってきたフリーの映像作家が、実名を明かし、映画監督としてカメラを回した。追いかけたのは、2014年に大飯原発の運転停止命令を下し、退官後に日本の全原発共通の危険性を広める活動を始めた樋口英明・元裁判長と、農地の上で太陽光発電するソーラーシェアリングの普及に農業復活の道を見いだす福島の農家の姿だ。映画「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」の企画・製作・宣伝・配給もこなす監督に偽名を捨てた覚悟を聞いた。
                ◇  ◇  ◇
■偽名を捨て本名で作品公開のメッセージ
 ──そもそも、主にCMなどを手がけていたのに、なぜドキュメンタリー映画に携わるようになったのですか。

 2012年の夏、知人を介して河合さんの映画作りを手伝ってほしいと声を掛けられました。当時は原発について「とんでもない」と思っていたけど、深掘りすることはなかった。監督を依頼されたので河合さんの著作を読むと、すごい本気度を感じて、「自分はここまで本気にはなれない」とお断りしたのです。その後、映画製作が頓挫し、「相談に乗ってほしい」とSOSが来て、まず河合さんが監督をやるべきだと提案しました。

 ──弁護士がドキュメンタリー映画の監督とは大胆な提言です。
 映画は一番作りたい人が監督をやる方がいい。脚本や撮影、編集まで僕が全部やるから、河合さんはイエスかノーを決めてくれ、それが監督の最重要な責務だと。また、河合監督の誕生は社会的に話題になるとの狙いもありました。でも、僕はCMディレクター。当時は広告業界でも「原発反対」なんて言ったら“原子力ムラ”に何をされるか分からないという風潮もあった。「そりゃ困るな」と心配し、「拝身風太郎」という偽名を使うことにしたのです。

 ──それから10年。河合弁護士の監督作品3本に偽名で参加した後、今作は本名で監督をやると決めるに至った心境は?
 河合さんの作品はそのまま、裁判資料として提出できる「エビデンス映画」。僕は今作で、樋口さんの生き方を描きたかった。原発の危険性を広める活動への使命感が伝わるようにと。ベタな言葉で言えばヒューマンドキュメンタリー。あと、弁護士の映画やドラマは多いけど、裁判官の映画やドラマは見たことがない。裁判官が主役のドキュメンタリーというだけで、面白いなと。

 ──確かに。
 一方で原発事故の影響を受け一度は農家を廃業し、ソーラーシェアリング普及で復活を期す「二本松営農ソーラー」の近藤恵代表にも会いたかった。きっと希望を持って苦難を乗り越えようとする人たちを紹介してくれると思って。そうした人々の生き方を伝えるのに、僕だけが偽名を名乗るのは失礼じゃないですか。映画に出てもらえば、その人の人生を変えてしまうことになる。なのに、監督だけ「偽名で」なんて言えません。カッコ悪いし。自分なら、そんなやつは信じない。実名を出すことに大した決意はなかったです。あと、広告業界へのちょっとしたメッセージでもある。

 ──どんな訴えを?
 実は河合さんの映画について「裏で自分がやっているんだ」と大手広告代理店の人やCMプロデューサーにも普通に話していたんです。皆、作品も見てくれて狙い通りの反応を示してくれたり。それで仕事が減るということは全然なかった。

 ──えっ? 干されなかったんですか。
 全く。だから実名を出すことで「反原発」と言っても「別に脅されるようなことはないよ」というメッセージも少々込めたつもりです。

■興味のない人にも知ってもらうのが使命
 ──劇中で原発の危険性を説明する樋口さんの理論には、地震動などの科学的な専門用語も出てきますが、グラフやテロップ、丁寧なナレーションを交え、分かりやすく伝わってきました。かなり工夫されたのですか。
 僕がアホなんで、アホな自分でも分かるような映画にするのがコツ。ポイントは同じ説明を3回繰り返すこと。表現を変えて3回言うと理解しやすい。一種の刷り込みです。

 ──それはCMの世界で学んだ秘訣ですか。
 いやいや、単にアホだから、僕が観るならそうしてもらいたいというだけ。とにかく、お客さんに何を持って帰ってもらうかが重要なので。樋口さんの理論やソーラーシェアリングが持つ可能性について全く原発に興味のない人にも知ってもらうのが、この映画の使命です。

 ──ソーラーシェアリングを発案したCHO技術研究所の長島彬代表が劇中で語る「電力の民主化」という言葉が、とても印象に残りました。
 想像の膨らむ言葉ですよね。電力は誰かに独占されていることも分かりますし。あの言葉を持ち帰ってもらえれば、もう十分。あの言葉に気づかされたという観客の反応は多いですね。

 ──ソーラーシェアリング普及で自前のエネルギーをどんどんつくり出せば、われわれの手で電力を掴み取れるわけです。ただ、劇中では推進に向けた住民同士の合意形成の困難さ、農業委員会や自治体による許認可の壁も描いています。
 少しでも法律や条例に触れそうなことを推進するのに、お役所は及び腰ですから。それでも国が働きかければ堰を切ったように必ず広まる。「ウチもやろう」と思う農家さんも増えるだろうし。政治が太い決断をすれば状況は一変します。

 ──しかし、岸田首相の決断は真逆です。「国が原発再稼働に向け、前面に立ってあらゆる対応を取る」と踏み込み、次世代型原発の開発・建設の検討を指示しました。
「前面に立つ」って何をもって言うのか。再稼働後に事故を起こしたら、責任を取って立地地域の住民を丸ごと別の場所に引き取るんですか。現実味がありません。

■最近は「責任」の便利使いが過ぎる
 ──11年前の原発事故の責任も、まだ国はケリをつけていません。
 日本人は「責任」という言葉が好きですね。責任を取るとか、持つとか、本当は実態はない。責任は取るけど、そこまでの責任は持てませんみたいな。不思議な言葉です。最近は「責任」の便利使いが過ぎます。

 ──電力不足や脱炭素の遅れも原発活用の理由に掲げています。
 口実に過ぎません。再生可能エネルギーをバンバンやりますと言う方が説得力はある。原発の問題はただひとつ、「死の灰製造機」であること。これがなければ火力発電と変わらないわけですから。

 ──河合さんは「原発は自国に向けられた核兵器」と表現しています。この問題は不変です。
 原発が運転を始めた頃は「科学万能」の時代でした。1970年の大阪万博会場に敦賀原発でつくった電気が初めて送られたのは、僕も覚えています。当時、原発に関わった人々は原子力の平和利用として、原爆で傷ついた日本が原子力によって豊かになれると疑いなく信じていたと思う。その志は今の再生可能エネルギー推進派と根底では一緒でしょう。ただ、原発事故で科学は万能じゃないと見せつけられた以上、国は原発推進に注ぐ情熱を自然エネルギーに振り向けるべきです。

 ──岸田首相にも今作を見てほしいですか。
 というより「見るべき」です。実際に事故の被害を乗り越えようとする人々の努力する姿に、心を動かされない人はいないはず。近藤さんも大学卒業後に有機農業の先達に師事して30歳を越え、ようやく専業農家として軌道に乗ってきたのに事故で全てを奪われた。人生で最も勢いのある時期に理不尽にも仕事を諦めざるを得なかった悔しさや絶望感は誰にも理解できません。ただ、当事者が登場し、その人の立場を想像しやすくなるのがドキュメンタリーの良さ。作者が自分の作品を観たら、こう想像してと言うのはおかしいけど、「自分だったら」と考えてほしいですね。

 ──前作ではフィリピン残留日本人の問題を取り上げ、今年3月には立憲民主党の白真勲参院議員(当時)が、作品のシーンを引用しながら国会で政権に解決を迫り、岸田首相に解決への行動を約束させました。
 あれは励みになりました。学生時代に「映画には社会を動かす力がある」って先生に教えてもらった頃は「ホンマかいな」と思ったけど、今も心の中に残っています。本作も社会を動かす力になるように作りました。
(聞き手=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)
▽おばら・ひろやす 1964年、大阪府生まれ。大阪芸大卒。就職した広告制作会社がバブル崩壊の影響でつぶれ、28歳からフリーに。テレビCMを中心に企業プロモーションなどの映像広告を手がけ、作品数は700本を超える。2020年「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」で劇場用ドキュメンタリーを初監督。第26回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、第38回日本映画復興賞奨励賞を受賞。

美浜原発避難訓練を11月に 避難計画を検証と

 関西電力美浜原発での事故を想定する総合防災訓練を11月上旬に実施します。避難計画の実効性などを検証するとしていますが・・・

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関電・美浜原発訓練は11月上旬 住民参加、避難計画を検証
                            共同通信 2022/9/27
 原子力規制庁は27日、関西電力美浜原発(福井県)での事故を想定する国の原子力総合防災訓練を、11月上旬に実施すると明らかにした。避難計画の実効性などを検証するため、現時点では住民参加を想定している。詳しい訓練の内容は、今後調整する。
 訓練には、原発の半径30キロ圏に含まれる福井、滋賀、岐阜の3県の関係者が参加する見通し。今年2月に東北電力女川原発(宮城県)で行われた訓練は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で住民参加は見送られた。
 美浜3号機は昨年6月、運転期間を原則40年、最大60年とするルール下では初めて運転開始40年を超えて再稼働した。

28- 「変化恐れず改善」 原子力規制委、委員長に山中氏就任

 原子力規制委員長に26日就任した山中伸介氏が同日、記者会見し「原子力規制のさらなる高みを目指し、変化を恐れずに改善を続ける」と抱負を述べました審査の迅速化にも取り組むという点がやや気にかかりますが。
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「変化恐れず改善」 原子力規制委、委員長に山中氏就任
                            河北新報 2022/9/27
 原子力規制委員会の委員長に26日就任した山中伸介氏(66)が同日、記者会見し「原子力規制のさらなる高みを目指し、変化を恐れずに改善を続ける」と抱負を述べた。2017年から委員長を務めた更田豊志氏(65)は任期満了で退任し、12年の規制委発足時からの委員はいなくなった。
 山中氏は委員長として(1)情報発信と対話(2)現場重視(3)人材育成-の3点に注力する方針を掲げた。
 組織発足の原点である東京電力福島第1原発事故の最大の教訓として「厳正な規制が一番の基本」と指摘。処理水の海洋放出は「社会的な影響が非常に大きい」と説明し、福島県を訪問する考えを明らかにした。
 電力需給の逼迫(ひっぱく)を背景に、政府与党や経済界から原発再稼働への圧力が強まる。山中氏は「福島を決して忘れないとの強い気持ちを持つ」とも述べ、組織の独立性と透明性を堅持する意向を強調した。厳正な審査を基本としつつ、迅速化にも取り組む考えを示した。

 山中氏は大阪大副学長などを経て17年、規制委委員に就任。東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の前提となる審査に関わった。今年3月、委員長に昇格する人事案が国会で可決された。任期は5年。
 山中氏の後任委員には同日、杉山智之氏(54)が就いた。日本原子力研究開発機構の原子炉安全研究ディビジョン長を務めていた。


規制委、山中新委員長「審査の迅速化進めたい」
                            産経新聞 2022/9/26
原子力規制委員会の更田豊志(ふけた・とよし)委員長が退任し、委員の山中伸介氏(66)が26日、新委員長に就任した。皇居での認証式を経て同日午後に行った着任の記者会見で、今後の原発の安全審査について「厳正な審査は基本だが、審査の改善にも取り組んでいかなければならない。審査の迅速化や、審査に関する(事業者との)対話は積極的に進めていきたい」と語った。

山中氏は兵庫県出身。大阪大大学院工学研究科を出て、原子力工学などを専攻。原子炉重大事故に関連した燃料の安全性研究をリードしてきた。大阪大理事・副学長などを経て平成29年9月に規制委員に就任。委員長の任期は令和9年9月までの5年間となる。
東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年とされているが、電力需給逼迫を背景として延長を求める議論も起きている。今後の規制の在り方について、「規制を緩めるつもりは全くない」としながらも、「政策的な議論の方向性をうかがった上で規制委で議論を進めていきたい」と述べた。求められた場合には、技術的な観点からの見解を述べる考えも示した。

■杉山新委員も抱負「ふれずに安全見る」
山中伸介氏の後任として原子力規制委員に就任した杉山智之氏(54)も26日に記者会見し、「ぶれずに安全だけを見る。それが私に課された役割だと思っている」と抱負を語った。
杉山氏は静岡県出身。東京工業大大学院理工学研究科博士課程修了後、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子炉安全研究ディビジョン長などを経て、同日付で委員に就任した。発電炉や試験研究炉といった原子力施設の審査を担当する。

技術的な規制の発展を目標に掲げた。過酷事故の進展を遅らせる安全性の高い核燃料の導入を例に挙げ、「規制上の手続きが導入の支障になっているのなら、それを取り除くような合理化は必要だ」と述べた。 

2022年9月27日火曜日

再稼働や新増設は安くない事実 ~ 原発をめぐる「無責任の構造」

 岸田首相が「次世代革新炉」と呼ぶ新型炉の可能性についてAERAが記事を出しました。それによるとその柱となる高温ガス炉ヘリウムガスを使う)や小型モジュール炉(液体ナトリウムなどを使う)は、どちらも古くから研究され実用化が困難だったもので、それに再挑戦しても経済性の評価に堪えて実用化される見込みは殆ど無いということです。
 そしてこうしたいわば野心的な目標が繰り返し登場する背景について、原子力市民委員会の座長を務める大島堅一・龍谷大学教授は、そこには原発における「無責任の構造」があると指摘しています。詳しくは本文をご覧ください。
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再稼働や新増設は安くない事実、90年代以降は失敗続く 原発をめぐる「無責任の構造」
                        AERA dot. 2022/9/26
                        AERA 2022年9月26日号より
 2011年の東京電力福島第一原発事故から11年。岸田文雄政権は原発の新増設検討など「原発回帰」の方向性を鮮明にした。原発政策の大きな転換だ。なぜ原発は再び推進されるのか。そこには無責任の構造があるという。


 

 岸田首相が「次世代革新炉」と呼ぶ新型炉には期待できるのだろうか。東芝の元原子力プラント設計技術者の後藤政志さんは、こう話す。
「既存の軽水炉ではダメなので何とか新しい機軸を立てたいとするあがきにすぎない。福島事故と同じ事故は起こさない、という一点の特徴だけで持ち出されたのではないか」
 今の原発(軽水炉)は熱を取り出すのに水を用いるが、新型炉の一つ、高温ガス炉はヘリウムガスを使うので水素爆発を起こさないとPRされている。日本では1960年代から研究され、日本原子力研究開発機構は国内唯一の高温工学試験研究炉を持つ。98年に初臨界。11年以降、運転を停止していたが、昨年運転を再開したばかりだ。
 小型モジュール炉(SMR)については、たとえば東芝と電力中央研究所が開発する4Sと呼ばれる炉は水の代わりにナトリウムを使っている。構想は50年代からあったものだ。
 どちらも古くから研究され実用化が困難だったものだ。核廃棄物を生み出すのも旧来の原子炉と変わりない。

「トラブルや事故を経て改善・改良がなされるのが新規技術の宿命だから、経済性を争えるレベルまで新型炉が生き残れるかが勝負になる。しかし、見込みはほとんどない」(後藤さん)
 既設炉の再稼働でも大きな壁となるのは、原発が安くないという事実だ。
 既存原発の運転にかかる費用は、研究者や技術者で作る原子力市民委員会の試算では、多くの原発で太陽光(事業用、30年)の8.2~11.8円(キロワット時<kWh>あたり)を超える。
 新型炉はもっと高くつく。政府が「次世代革新炉」の一つとして新増設を狙う欧州加圧水型炉(EPR)は、英国の事例で出力334万kWで4兆円以上の建設費が見込まれている。浜岡原発(静岡)5号機(05年運転開始)は138万kWで約3600億円だったから、桁違いである。大地震を考慮しなければならない日本では、新型炉はさらに割高となる
 一方、太陽光の価格は、75年ごろの100分の1以下で、10~19年の10年間でも価格は約8分の1以下になった。風力は約3分の1だ。政府が、新増設する原発の運転開始を見込む10年、20年後には、もっと下がっているだろう。

■90年代以降は失敗続く、世論調査で反対が過半数
 日本でも原発なしで50年カーボンニュートラルの経済合理的な達成が可能だ、とする研究は増えている。再生可能エネルギーの導入拡大や、それを生かす送電網の充実がカギとなる。岸田首相はGX実行会議で、そちらの選択についても「政治の決断が必要な項目」と述べているが、どちらに注力すべきかは、もう自明だろう。
 原発は、高度成長期の60年代に初めて登場した時も、電力需給の逼迫を背景に、最新の技術と経済性、安全性を売り文句にしていた。ところが90年代以降、大きな失敗が続く。「使った燃料以上の燃料を生み出す、夢の原子炉」とうたわれた高速増殖炉「もんじゅ」は95年にナトリウム漏れの火災を起こし、1兆円以上かけたのに稼働日数250日で廃炉になった。
 核燃料サイクルの要となる再処理工場(青森県六ケ所村)の完成時期は今月7日に26回目の延期が報告された。当初97年完成予定だったが、25年遅れても完成のめどはたっていない。総事業費は約14兆円とされている。
 そして福島第一原発での事故。後始末に少なくとも22兆円と見積もられ、今も3万人以上が避難を続ける。
 原子力市民委員会の座長を務める大島堅一・龍谷大学教授は、原発の「無責任の構造」をこう説明している。
「野心的で過大な目標をたてる」
「それが失敗しても、原因究明しない、順調であるかのようにふるまう」
「根本的な解決、方針転換をしない、先送り」
「意思決定に関与した当事者の責任を問わない」
「国が原子力事業者を手厚く保護」
 この繰り返しで原発は推進され、今回も同じ構造だと指摘する。
 8月27、28日に朝日新聞が実施した世論調査では、原発の新増設について「賛成」34%、「反対」58%だった。朝日新聞によれば、首相は想像以上の世論の反発に「異様だな」と漏らしたという。原発をめぐる無責任の構造を世論が見透かし始めていることに、まだ気づいていないのだろうか。(ジャーナリスト・添田孝史)
※AERA 2022年9月26日号より抜粋

【前編の記事】原発回帰で最も心配なのは安全性 恐ろしいのは東電の安全を後回しにする
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