2014年4月30日水曜日

過去最高トリチウム7300ベクレル検出 福島原発地下水

 
 28日、昨年8月に高濃度の汚染水約300トンが漏れた地上タンク近くの観測用井戸1本の地下水(26日採水)から、放射性トリチウム(三重水素)が過去最高値の1リットル当たり7300ベクレル検出されました。
 この下流(東側)にバイパス用地下水汲み上げ井戸があるので、その汚染が懸念されます。
 
 東電によれば、昨年8月にタンクから漏れた汚染水が影響している」ということで、今後も濃度を継続的に監視していくとしています。
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過去最高7300ベクレル検出 第1原発・漏えいタンク東井戸
福島民友ニュース 2014年4月29日
 東京電力は28日、昨年8月に高濃度の汚染水約300トンが漏れた地上タンク近くの観測用井戸1本の地下水から、放射性トリチウム(三重水素)が過去最高値の1リットル当たり7300ベクレル検出されたと発表した。この井戸は、漏えいタンクから東側(海側)に約50メートルの場所。さらに東側には汚染水対策の地下水バイパス計画用の地下水くみ上げ井戸があり、放射性物質濃度への影響が懸念される。
  東電によると、過去最高値を検出した水は26日に採取した。25日採取分の1リットル当たり6800ベクレルから同500ベクレル上昇した。東電は「タンクから漏れた汚染水が影響している」と分析し「今後も濃度を継続して監視していく」としている。
 
 

2014年4月29日火曜日

風船飛ばして事故時の放射能拡散を調査 東海村などで

 27日、再稼働を目指している東海村の東海第二原発が過酷事故を起こした場合に、放射性物質が拡散する方角や距離を調べようと、脱原発を訴える市民グループが風船約千個を飛ばすイベントを開きました
 風船にはメッセージカードいていて、風船を拾った人から場所と日時を連絡してもらい市民グループが集計するもので、結果は「東海第二原発バルーンプロジェクト」のホームページで公開されます
 
 この催しは各地で以前から行われているもので、毎年行っているところもあります。
 4月になってからでは、他に米海軍原潜基地のある横須賀市(13日)や九州電力川内原発のある薩摩川内市6日で行われています。
 
 3つの記事を紹介します。
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放射性物質が拡散する方角などを調べるため、風船を飛ばす参加者 =東海村で
東京新聞 2014年4月28日
 再稼働を目指している東海村の東海第二原発(日本原子力発電)が過酷事故を起こした場合に、放射性物質が拡散する方角や距離を調べようと、脱原発を訴える市民グループが二十七日、同原発近くの海岸で、風船約千個を飛ばすイベントを開いた。
 
 晴天の海岸には、親子連れなど約三百人が集まり、風船を空へと一斉に飛ばした。息子二人と参加した村内に住む看護師佐藤美鈴さん(38)は「どこに住んでいる人も、飛んできた風船を通して東海第二原発のことを身近に感じてほしい」と話した。
 風船は紫外線で分解される樹脂製のエコバルーンを使用。メッセージカード付きで、風船を拾った人から場所と日時を連絡してもらい、市民グループが集計した結果を「東海第二原発バルーンプロジェクト」のホームページで公開する。

風船飛ばし風向き調査 東海第二周辺で市民団体

横須賀で風船飛ばし、放射性物質の拡散調査 60キロ先に飛んだものも
神奈川新聞 2014年4月24日
 子どもを持つ母親らでつくる市民グループ「いらない!原子力空母」が行った、横須賀市内で風船を飛ばして放射性物質の拡散状況を調べるプロジェクトで、遠くは60キロ離れた千葉県勝浦市まで到達していたことが確認された。
  同グループなどの約150人は13日、原子力空母の配備に反対するパレードを行い、在日米海軍横須賀基地前で2千個の風船を空に放った。同じ方法で調査したドイツの原発反対運動を参考に実施。実行委員長の原紗希子さん(29)は、「風船を飛ばして目で確認できれば、放射能の危険性への意識も違ってくる」と趣旨を説明する。
  風船には、来年中に原子力空母が交代し、同型艦に引き継がれることなどが記され、拾った人に連絡を呼び掛けるカードが付けられた。23日までに3件の電子メールが届いた。
  同基地から60キロ離れた勝浦市や30キロ圏内の同県君津市で風船を拾った人から「空母が事故を起こす可能性はあるのか」「事故が起きたらどうなるのか」などの声が寄せられた。原さんは「風向きによって、放射性物質が首都圏全域に飛ぶことも裏付けられた」と指摘する。
  グループは2008年に主婦らを中心に結成、年3、4回の原子力空母配備に反対するパレードを続け、毎週火曜日は京急線横須賀中央駅前のデッキでチラシなどを配っている。
  2歳の長男がいる原さんは、「原子炉を持つ空母が事故を起こせば(東京電力福島第1)原発事故と同じ規模の被害が出る。お母さん方に共通するのは、地元で安心して子育てをしたいという思い」と言う。拡散状況の統計を作るため、今後も風船プロジェクトを続けたい考えだ。
 
 
川内原発の放射能拡散 市民ら風船とばして調査
南日本新聞 2014年4月7日
 九州電力川内原発(薩摩川内市)で事故が起きた場合、放射性物質がどう拡散するかを調べるため、市民グループなどが6日、川内原発近くの久見崎海岸から500個の紙風船を飛ばした。昨年7月に続き2回目。
 「原発なくそう!九州川内訴訟」の原告を中心とする実行委員会が企画。県内外から約100人が集まり、強風に苦戦しながらも一斉に飛ばし、南方面に流れた色とりどりの風船を見送った。
 風船には連絡先を書いたカードを付けており、情報提供を求めている。連絡があり次第、ホームページで公開する。風船は環境に配慮した素材を使っているという。
 1回目の実験で最も遠くまで飛んだのは、約110キロ離れた日南市北郷町で、3時間半後に確認された。 
 
 

避難県民 半数世帯で家族分散 体調も不良 福島県調査

 
 東日本大震災と福島原発事故で避難している人たち全員を対象に、福島県が初めて行ったアンケート調査の結果によると、分散して避難している家族が48.9%と半数近いことや心や体の不調を訴える回答が67.5%にのぼることがわかりました。
 不調の具体的内容は、「何事も以前より楽しめなくなった」、「よく眠れない」、「イライラする」、「憂うつで気分が沈みがちなどで、長引く避難生活の影響が深刻になっていることが窺えます。
 
 6万2800世帯余りにアンケート用紙を送り、そのうち、およそ33%にあたる2万680世帯から回答が寄せられました。
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避難者全員対象アンケート結果  
福島NHK NEWS WEB 2014年4月28日
東日本大震災と福島第一原発事故で避難している人たち全員を対象に、福島県が初めて行ったアンケート調査の結果がまとまり、分散して避難している家族が半数近いことや心や体の不調を訴えているという回答が70%近くにのぼることがわかりました。
 福島県は原発事故にともなう避難指示が出されている住民に加えて地震と津波による被害で避難している人や、放射線への不安などにより避難している人たちも含め、把握できた避難者全員を対象に、初めてアンケート調査を行いました。
 6万2800世帯余りにアンケート用紙を送り、そのうち、およそ33%にあたる2万680世帯から回答が寄せられました。
このうち震災当時に同居していた家族の分散状況を尋ねたところ、▼避難先でも1か所にまとまっていると答えたのが45%だったのに対し、
▼複数に分かれている家族は49%にのぼりました。
このうち
▼2か所に別れている家族が33%
▼3か所が12%、
▼4か所以上が4%に上りました。
また、同居する家族が心や体の不調を訴えるようになったと答えたのが全体の68%に上りました。
 具体的には、
▼何事も以前より楽しめなくなったとか▼よく眠れない▼イライラする▼憂うつで気分が沈みがち
 などとする回答が多く、長引く避難生活の影響が深刻になっていることが伺えます。
 今回の調査結果を受けて福島県の担当者は、「家族離ればなれの避難が長引き、健康面でのサポートを充実させる必要が増している。
 避難先での住まいの確保についても支援を進めたい」としています。 
 
 
避難県民、半数世帯で家族分散 仮設狭く同居困難、福島県調査
東京新聞 2014年4月28日
 福島県は28日、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故のため県内外に避難している県民を対象に実施したアンケート結果を発表した。震災発生当時は一緒に暮らしていた世帯のうちほぼ半数の48・9%が、家族が2カ所以上に離れて暮らしていることが分かった。
 
 避難指示が出ている自治体ごとの調査はこれまでも行われているが、県が自主避難者も含め、全体の状況を調べたのは初めて。避難後、心身の不調を訴えるようになった人がいる世帯も67・5%に上り、避難の長期化が大きな負担になっていることも判明した。(共同)
 
 

2014年4月28日月曜日

原発・放射能ニュース 2014.4..26~30

 
 電子版の各紙に載った原発と放射能に関するニュースを掲示します(但し公開の範囲)。長文の記事は書き出し部分に留めますので、全文はURLをクリックしてご覧ください(URL記載のないものは公開の全文です)。公開期限後表示されなくなった記事を読みたい方はコメント欄にお書き下さい。(返信欄に表示します)
 
4.30
 
川内原発・再稼働 噴火予知は適合性審査と別物(BLOGOS)
 (3日「川内原発再稼働 噴火予知は適合性審査とは別物と」本文記事参照)
 
4.29
 
1日に全員協議会 中間貯蔵施設建設で大熊、双葉町議会(福島民報)
 東京電力福島第一原発事故で発生した除染廃棄物を搬入する中間貯蔵施設の建設に関する住民説明会について、町議会の了承を条件に開催に同意した大熊、双葉両町は5月1日にそれぞれ全員協議会を開く。
 大熊町議会の全員協議会には渡辺利綱町長が出席し、25日に政府が提案した地域振興策などを説明する予定。双葉町議会は現時点で全員協議会の議題は未定としているが、中間貯蔵施設をめぐる今後の対応などが議論されるとみられる。
 町議会が住民説明会の開催を了承すると、施設建設について住民と政府が初めて意見を交わし、建設受け入れの是非を判断する本格的な議論に入る。両町議会の対応が注目される。
 
過去最高7300ベクレル検出 第1原発・漏えいタンク東井戸(福島民友ニュース)
 (30日「過去最高トリチウム7300ベクレル検出 福島原発地下水」本文記事参照)
 
火山学会が原発と火山活動を議論NHK)
 (5月1日「火山活動の予測は無理 火砕流が川内原発を襲う」本文記事参照)
 
4.28
 
避難者全員対象アンケート結果(福島NHK) 
 (29日「避難県民 半数世帯で家族分散 体調も不良 福島県調査」本文記事参照)
 
南相馬・小高区の線量マップ作製 除染研がHPで公開(河北新報)
 福島県南相馬市内で独自に空間放射線量を測定する一般社団法人「南相馬除染研究所」は、福島第1原発事故の避難区域になっている同市小高区中心街の線量マップを作製し、ホームページ(HP)で公開している。大型連休に合わせて一時立ち入りする住民らに活用してもらう。
 小高区役所や市立小高病院、相馬小高神社などを結ぶ延長約3.2キロの地域に約100メートル間隔で測定ポイントを設けた。一部公共施設を除き住宅除染は未実施だが、立ち入りは自由で連休中は特例宿泊も認められる。
 各ポイントの測定結果は毎時0.15~0.28マイクロシーベルト。全域を約1時間歩いた場合の積算線量は0.2マイクロシーベルトで、試算による年間被ばく量は1.05ミリシーベルトだった。
 研究所の高橋荘平理事長(38)は「今回のポイントに限れば線量は原町区の市街地とほぼ同レベル。街の中を歩いても問題ないだろう」と話す。
 研究所は、高橋理事長の父で、原発事故後も原町区で診療を続けた故高橋亨平医師が設立した。放射線への不安から家に閉じこもりがちになれば健康に影響が出ると考え、市内の推奨する散策コースを空間放射線量とともに提示する活動に取り組んでいる。
 
4.27
 
住民、除染効果に不信感(東京新聞)
帰宅申請1割だけ 川内村避難区域で長期終日滞在(東京新聞)
 (28日「川内村の避難指示区域も解除に しかし・・・」本文記事参照)
 
放射能は人生台無しに チェルノブイリ被ばく女性講演(中日新聞)
 (28日「チェルノブイリ被曝女性が日本で講演」本文記事参照)
 
4.26
 
「大切なもの、奪われた」 原発事故 (群馬)県内避難者東京新聞)
 (27日「群馬県避難者損害賠償請求訴訟 第1回口頭弁論」本文記事参照)
 
基準値超の井戸、運用停止 第1原発・地下水バイパス福島民友ニュース)
 東京電力福島第1原発の地下水バイパス計画で、赤羽一嘉経済産業副大臣は25日、くみ上げ専用井戸12本について、地下水の放射性物質濃度が東電の基準値を上回った井戸ごとに運用を停止する方針を示した。同日、県庁で面会した佐藤雄平知事に伝えた。個別の井戸で基準値を超えても東電はくみ上げ継続を強調してきたが、国の方針を受けて対応を急きょ転換し、運用停止を決めた。
  地下水バイパス計画は、井戸12本の水を集めた段階で分析し、基準値を下回れば海に放出する計画だが、赤羽氏は「地下水バイパスを慎重に運用していく観点から、井戸の水が(基準値を)上回った場合はいったんくみ上げを停止する」と運用停止を表明。基準値を超えた井戸でもくみ上げを継続するとしていた東電の方針については「慎重で安全に運用するよう指導する」と井戸の運用に積極的に関与する考えを強調した。
 
【福島第一原発の現状】平日 プール冷却停止(東京新聞)
 東京電力福島第一原発では十九~二十五日、3号機の使用済み核燃料プール内に落ちたままになっていた核燃料交換機の撤去作業が始まった。
 作業は六月上旬まで続く見込み。この間は交換機から油が流れ出て、プールの冷却装置を汚さないよう平日は冷却を停止する。水温は一五度ほど上がるが、週末に冷却し、管理上の上限温度の六五度は超えないという。
 トラブルが続く新型の除染装置「ALPS(アルプス)」では、三系統のうち一系統から白濁した水が出てきたため、運転を一時的に停止した。
 必要な薬剤を装置に送る配管の弁が閉まっていて、処理が不十分だったことが原因だった。なぜ閉まっていたのかはわかっていない。
 
 

チェルノブイリ被曝女性が日本で講演

 
  チェルノブイリ原発事故(1986年)で4歳のときに被曝して、がんのため甲状腺の全摘手術を受けた女性が、26日、津市(三重県)で講演を行い、約500人の来場者に放射能の恐ろしさを語りました
 女性は、甲状腺の全摘による免疫力の低下で常に体調不安を抱えながら、現在5歳の長女を育てているシネオカヤ・インナさん(32)です
 事故から28年を経ても甲状腺がんに苦しんでいる人がウクライナに多くいる現状に触れ、「放射能はその後の人生を台無しにする。原発は動かすべきでない」と訴えました。
 
 チェルノブイリは原発事故後ソ連邦が分解したため、現在はウクライナ国になっています。
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放射能は人生台無しに チェルノブイリ被ばく女性講演 
中日新聞 2014年4月27日
 一九八六年に旧ソ連(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故からちょうど二十八年を迎えた二十六日、事故を忘れないための催し「チェルノブイリ・福島 いのちは宝」が津市西丸之内の津リージョンプラザであった。事故で被ばくしたウクライナ人女性シネオカヤ・インナさん(32)が来日し、約五百人の来場者に放射能の恐ろしさを語った。
 インナさんは四歳の時に事故に遭い、被ばくによるがんのため甲状腺の全摘手術を受けた。発生直後は住民に事故のことが知らされず、「避難の必要性に気付いたときは手遅れだった」と語った。
 〇八年に長女を妊娠した際、がん再発の恐れが分かり、医師からは出産を猛反対された。しかし、「自分から子どもの命を消したくない」と産んだ。
 甲状腺の全摘による免疫力の低下で常に体調不安を抱えながら、五歳の長女を育てている。事故から二十八年を経ても甲状腺がんに苦しんでいる人がウクライナに多くいる現状に触れ、「放射能はその後の人生を台無しにする。原発は動かすべきでない」と訴えた。
 インナさんはかつて日本の団体から支援を受けていた縁で、主催した市民団体「みえ426の会」が招いた。催しではほかに市内の久居高校演劇部による朗読劇などがあった。(添田隆典)
 
 

川内村の避難指示区域も解除に しかし・・・

 4月1日福島県田村市都路地区避難指示区域解除に続いて、川内村の避難指示区域26日に解除になりました。今後は昼夜を通して暮らすことが出来るわけですが・・・
 
 国は「除染の効果で放射線量が下がった」と強調しますが、事故から3年を経過してどの程度まで下がったのでしょうか。
 今回解除された区域は、除染前は平均で空間放射線量が毎時0.75マイクロシーベルト(=6.57ミリシーベルト/年)だったのが、除染後は毎時0.44マイクロシーベルト(=3.85ミリシーベルト/年)になり、41%減の効果があったとしていますが、一応安全とされる年間ミリシーベルトを4倍近くも上回っています
 
 これでは仮設住宅から抜け出して自宅に戻ろうとしても、とても人が住める環境ではありません。現実に自宅に戻る申請をしたのは対象区域の134世帯276人のうち、割強の18世帯40人にとどまりました
 住み慣れた自宅と庭に未練があって放射能の心配を覚悟の上で戻ってみても、「自分たち以外に人がいない。がっかりした」と、翌日には仮設住宅に戻る人たちもいます。
 
 チェルノブイリでは、5ミリシーベルト/年以下を居住可能地域として、内部被曝の問題も含めて大きな放射能被害を生じました。
 そうした事例があるのになぜ国はこんな貧弱なことしか行えずに、20ミリシーベルト/年以下なら居住可能などと馬鹿げたことをいうのでしょうか。
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住民、除染効果に不信感  
東京新聞 2014年4月27日
 東京電力福島第一原発事故から三年余り。一時は全住民の避難に追い込まれた福島県川内村の避難指示区域で二十六日、昼夜通して暮らすことができるようになった。国は「除染の効果で放射線量が下がった」と強調するが、実際には十分下がっていない場所も多く住民の不信感は根強い。
 
 「やっぱり自分の家が一番」「のんびりできて、いいねえ。仮設は気を使うから」。大型連休の初日。阿武隈山系にある川内村で青空の下、自宅に向かう人の姿が見られた。
 草野勝利さん(69)もその一人。妻繁子さん(68)と福島県郡山市から戻り、満開となった庭の桜を見て、ほっとした様子だったが「手放しで喜べるわけではない」と表情を曇らせた。
 三月の住民懇談会で国が出した資料には、避難指示を解除する放射線量の条件として「年間二〇ミリシーベルト」と書かれていた。「長期的に一ミリシーベルトを目指すのではなかったのか」。怒りがこみ上げた。
 
 国が実施した除染の結果では、「避難指示解除準備区域」の住宅地は、平均で空間放射線量が毎時〇・七五マイクロシーベルトだったのが、除染後は毎時〇・四四マイクロシーベルトとなり、41%減の効果があったとしたが、年間一ミリシーベルトに相当する毎時〇・二三マイクロシーベルトは上回った。
 
 「自分たち以外に人がいない。今夜だけ泊まって明日には仮設住宅に戻ろうと思う。がっかりした」。川内村の林業大和田亥三郎さん(79)は二十六日、妻ロク子さん(77)と自宅に戻ったが、周辺の家には誰もいないと知り肩を落とした。
 村内の仮設住宅から日中だけ通い、荒れた家の床や天井を少しずつ修理してきた。この日は片付けを終え、日中は広い居間のソファでくつろぎながらテレビを見て過ごした。だが夕方になっても周囲の家に人の気配はないまま。
 「どんなに仮設住宅の部屋が狭くても、みんながいる場所の方がいい」。大和田さんはさびしそうに漏らした。
◇ 
 原発事故で全住民が避難した川内村は、二〇一二年に役場を郡山市から本来の庁舎に戻し、住民の帰還も徐々に進んでいるが、原発二十キロ圏内では今も避難指示が続いたまま。年間被ばく放射線量が二〇ミリシーベルト超五〇ミリシーベルト以下の「居住制限区域」と、二〇ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」の二区域がある。これまでは滞在できるのは日中だけで、夜は避難先に戻らなければならなかった。
 
 
帰宅申請1割だけ 川内村避難区域で長期終日滞在
東京新聞 2014年4月27日
東京電力福島第一原発事故による福島県川内村の避難指示区域のうち「避難指示解除準備区域」で二十六日、特例として三カ月の長期間、終日滞在ができるようになり、自宅で夜を過ごすため仮設住宅など避難先から戻る住民の姿が見られた。 
 
 政府は避難指示そのものを全面的に解除するため、村や住民と協議に入っており、解除されれば四月一日の田村市都路(みやこじ)地区に続き二例目となる。だが、放射線への不安は消えておらず、対象区域の百三十四世帯二百七十六人のうち、自宅に戻る申請をしたのは一割強の十八世帯四十人にとどまった。
 無職草野勝利さん(69)は妻繁子さん(68)と一緒に、郡山市の避難先の住宅から自宅に戻り、片付けをした。勝利さんは「住み慣れた自宅と庭に未練があって戻ってきた。避難指示が解除されたら帰る」と話した。
 
 

2014年4月27日日曜日

群馬県避難者損害賠償請求訴訟 第1回口頭弁論

 福島原発事故の影響で福島県から群馬県内に避難している約30世帯90人が、国と東電に計九億九千万円の損害賠償を求めた訴訟の第回口頭弁論が25日、前橋地裁で開かれ原告の女性人が「どれだけ多くの人の大切なものを奪ったか認識してほしい」と涙ながらに訴えました
 これは昨年9月11日に提訴された第一次訴訟の分で、3月10日には原告に10世帯35名が加わった第二次訴訟が提起されました。
 次回の口頭弁論は5月23日午前11時からで、年内の公判は月に1回のペースで6回が予定されています。
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「大切なもの、奪われた」 原発事故 (群馬)県内避難者
 東京新聞 2014年4月26日
 東京電力福島第一原発事故の影響で福島県から(群馬)県内に避難している約三十世帯九十人が、国と東電に計九億九千万円の損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が二十五日、前橋地裁で開かれた。原告の女性二人が弁論で意見陳述に立ち、「どれだけ多くの人の大切なものを奪ったか認識してほしい」と涙ながらに訴えた。 (伊藤弘喜)
 
 最初に法廷に立ったのは、福島県郡山市から夫と五歳の息子と群馬に避難してきた女性。「私たちが故郷での平穏な生活を失って、どれほどの苦痛を受けたか」と、終始、おえつを漏らしながら訴えた。
 原発事故後、ダウン症の息子に白血病や甲状腺がんの発症リスクが高まることを恐れた。二人とも仕事を辞め避難したが、息子を受け入れてくれる保育園が見つからず、全寮制の施設に預けざるを得なかった。「一度も離れたことのない息子と離れ、心臓をえぐり取られる思いだった」
 感情が高ぶっていた女性は、陳述が終わる間際に突然倒れ、救急車で病院に搬送。まもなく復調したという。
 
 続いて、二〇一一年七月に同県いわき市から前橋市へ夫と避難した丹治杉江さん(57)が「原発事故で生業も、ふるさとも、友達も、生きがいも、蓄えも奪われた」と訴えた。このほか原告十人が傍聴席から見守った。
 
 一方、国と東電は請求棄却を求めた。
 
 訴状では、国と東電が安全対策を先送りしたため、事故につながったと指摘。慣れない土地への避難を余儀なくされたとして、一人当たり千百万円の慰謝料を求めている。
 
 閉廷後、原告団は前橋市の群馬弁護士会館で記者会見。丹治さんは「二月の大雪を見て、温暖ないわきを思い浮かべた。最近、一番思うのは寂しさ。わけもなく涙が落ちてくることがある」とあらためて胸中を語った。
 
 年間一〇〇ミリシーベルト以下の低線量被ばくによる健康への影響は極めて小さいとする東電。原告代理人の鈴木克昌弁護士は「低線量被ばくの影響がよくわからない中で一〇〇ミリシーベルトで線引きするのは間違い。よくわからなければ避難するのは当然だ」と述べた。
 
 

2014年4月26日土曜日

廃炉の下請け企業 継続を志向は半数

 NHKが、福島原発で廃炉作業を行っている末端の業者278社(総数はおよそ800社)に現状や課題などを聞いたところ、全体の37%に当たる102社から回答があり、「今後も廃炉作業を続ける」と答えた企業は、全体の53%にとどまりました。「今後は分からない」が30%、「続けない」が15%でした。
 その理由複数回答)は、「作業員への放射線の影響が心配」が43%と最も多く、次いで「工事の単価が安い」が35%、「作業員が集まらない」が20%などでした
 
 今後も廃炉作業に必要な作業員の人数はさらに増えると見込まれるので、長期的な作業員の確保が課題です。
 「放射線からの防護」については、防護の装備を充実させることと各人の被曝量を厳格に管理することで対応するしかありませんが、もう一つの作業員が集まらない理由としては、実際に現場で作業する企業に対して支払われる工事単価の安さが上げられています。
 
 これは下請け工事が多重化していて中間で莫大なピンハネが行われるために、現場で作業する5次下請けや6次下請けの人たちに支払われる工事代金が、東電が元請に支払う額の数分の1ほどになってしまうからです。これでは廃炉に従事する最前線の企業の経営が成り立たないし、作業員も確保できません。
 元請や上位の中間会社だけが美味い思いをするという、この構造を何としても解決しないと、廃炉作業はいずれ成り立たなくなります。
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廃炉下請け企業「継続」は半数 
NHK NEWS WEB 2014年4月25日
東京電力福島第一原子力発電所で廃炉作業に関わっている下請け企業のうち、NHKが、取材で判明した企業に「今後も作業を続けるか」尋ねたところ、「続ける」と答えた企業が、全体のほぼ半数にとどまりました。
長期的な作業員の確保が課題になるなか、専門家は「廃炉作業から撤退する企業がさらに増えていくと、廃炉の進ちょくに影響を与えかねない」と指摘しています。
 
30年から40年かかると言われている福島第一原発の廃炉作業は、全国およそ800社の下請け企業が関わっていますが、東京電力は、直接発注する元請け以外、企業の名前を公表していません。
NHKはこのうち、取材で判明した278社に現状や課題などを聞いた結果、全体の37%に当たる102社から回答を得ました。
このなかで「今後も廃炉作業を続けるか」尋ねたところ、「続ける」と答えた企業は、全体の53%にとどまりました。
一方、「今後は分からない」が30%、「続けない」が15%でした。
その理由を複数回答で尋ねたところ「作業員への放射線の影響が心配」が43%と最も多く、次いで「工事の単価が安い」が35%、「作業員が集まらない」が20%などとなりました。
東京電力によりますと、福島第一原発では1日およそ4000人が作業に当たっていて、現在は溶け落ちた核燃料の取り出しに向けて、原子炉建屋内部の調査やがれきの撤去などが行われているということです。
東京電力は、廃炉作業に必要な作業員の数について、昨年度当初1万800人と見込んでいましたが、実際はこの予測を3000人上回りました。
今後も必要な人数はさらに増えると見込んでいて長期的な作業員の確保が課題だとしています。
 
「長期的な態勢が必要」
原発作業員の労働問題に詳しい東京大学大学院の縄田和満教授は「廃炉作業から撤退する企業がさらに増えていくと、作業に携わる企業や人手が不足し、廃炉の進ちょくに影響を与えかねない。40年とも言われる廃炉は、状況が劇的に改善されるものではなく、長期的に作業を続けられる態勢に変える必要がある」と指摘しています。
 
撤退の背景に受注単価の安さ
福島県にある塗装会社は、東京電力の発注工事の1次下請けとして、福島第一原発の事故のあと汚染水の貯蔵タンクの塗装や作業員の線量計の管理業務などを受注してきました。
この会社を経営してきた大和清美さん(67)は、塗装の作業員として建設当時から福島第一原発に関わり、36年前に会社を設立したあとも主にこの原発の工事を請け負ってきました。
しかし、受注先の元請け企業が支払う工事の単価が事故の1年後から下がり始め、現在は事故直後に比べ30%ほど少なくなっているといいます。
元請け企業からは、東京電力が進めるコストカットの影響で単価を下げざるをえないと説明されていて、こうした単価の減少などで毎月200万円から300万円の赤字の状態が続いているということです。
さらに、現場の高い放射線量を懸念して会社を辞める作業員も出ていて、事故当初は20人いた作業員が今では15人に減ったということです。
大和さんは利益が出ないうえ、被ばくを余儀なくされる廃炉作業からは今年度末をめどに撤退し、今後は廃炉以外の工事に専念したいと考えています。
大和さんは「今の廃炉作業では、収入より従業員に支払う給料のほうが多く経営が成り立たない。長年福島第一原発に関わってきたが撤退はしかたないと諦めている」と話していました。
 
待遇改善の対策
東京電力は去年11月に作業員の待遇や労働環境を改善するための対策を打ち出しました。
具体的には、経費削減のために拡大させた一部の競争入札を随意契約に見直すほか、作業員の人件費の見積額を1人当たり1日、1万円上積みしていたものを2万円に増額しました。
しかしこの対策について、東京電力は、下請け企業が作業員に支払う給料にまで直接関与できないとして、作業員の手元に増額した1万円が全額渡るとはかぎらないとしています。
このため、直接取引関係がある元請け企業に対して、増額分が作業員の給料にできるだけ反映されるよう対応を求め、結果の報告を求めています。
東京電力は「廃炉作業にはこれまで経験したことのない多様な専門性や高度な技術が欠かせず、作業を着実に実行するためには多くの企業で成り立つ下請け構造は必要だと考える。今後も作業員の待遇が適切に確保されるよう取り組みを続けていきたい」としています。