2019年9月30日月曜日

関電幹部金品受領事件(続報) 元助役の仲介なく工事受注は困難

 高松町の元助役を介して関電幹部に「原発マネー」が還流していた事件で、地元の建設会社の間では、元助役の仲介がなければ原発関連の工事の受注は難しいという認識が広がっていたことがわかりました。
 元助役は地元の建設会社から受注に絡んで多額の手数料を受け取り、その一部関西電力側に還流していたとみられています。
 
 その他の「原発マネー」の福井県内の自治体への動きとして、NHKは以下の例を報じました。
 2014年日本原子力発電が福井県敦賀市に対して15億円寄付したものの、電力会社側から市に社名を公にしないことを要望し市もそれを了承ました。
 2006年から2007年にかけて、電力会社2社から美浜町に合わせて9億円余りの匿名の寄付が寄せられました。
 
 オープンな形で寄付を行ったケースとしては、島根県松江市では、島根原発3号機の増設に市が同意したあとの2000年7月、中国電力から6億5000万円寄付を受けました。
 田坂広志多摩大学院名誉教授は「原発という危険な施設を受け入れた見返りとして、電力会社が地元にお金を出し、地域振興や経済発展などに使ってもらおうという考え方で、この電力会社と自治体のお金の関係始まった」という見方を示しました。
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元助役は“裏の町長” 建設会社「仲介なく受注難しい」と認識
NHK NEWS WEB 2019年9月28日
関西電力の会長や社長などが福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題で、地元の建設会社の間では、元助役の仲介がなければ原発関連の工事の受注は難しいという認識が広がっていたことがわかりました。元助役は、業者から多額の手数料を得ていて、その一部は関西電力側に還流していたとみられています。
 
この問題は、関西電力の岩根茂樹社長や八木誠会長など20人が、原発が立地する高浜町の森山栄治元助役から、物品や金銭、合わせて3億2000万円相当を受け取っていたものです。
元助役は、ことし3月に90歳で亡くなりましたが、原発関連の工事の受注に大きな影響力を持っていて、地元の建設会社の間では、仲介がなければ受注は難しいという認識が広がっていたことが複数の会社への取材でわかりました。
 
このうちの1人は、NHKの取材に対し「影響力が絶大で、話を通さないと原発関連の工事の仕事がもらえなかった」などと話しています。また、関係者の多くが「当時の町長よりも大きな力を持っていた」と話していて、「裏の町長」などと呼ばれていたということです。
関係者によりますと、国税局の税務調査では元助役は地元の建設会社から受注に絡んで多額の手数料を受け取っていたということで、その一部は関西電力側に還流していたとみられています。
地元では、今回明らかになった町の元幹部と電力事業者の関係に対する不信感を背景に、関西電力に説明責任を果たすよう求める声が強まっています。
 
電力会社と自治体 金をめぐる不透明な関係
電力会社と自治体との間の不透明なお金の流れは福井県の自治体をはじめ、原発が立地する自治体の多くでたびたび、問題となってきました。
その代表的なものが、電力会社が自治体に行う寄付金です。
匿名や公式な文書に会社名が掲載されないなどして、お金の流れが明らかにならないケースがこれまでも多く指摘されてきました。
 
例えば、2014年には、原発が集中立地する福井県敦賀市に対して、日本原子力発電が寄付した、およそ15億円が公式な文書に記載されていなかったことが問題となりました。
寄付は原発が立地する敦賀半島の道路整備に使われたということですが、このときは電力会社側から、市に社名を公にしないことを要望し、市もそれを了承していました。
 
また、2006年から2007年にかけて、福井県美浜町では電力会社2社から合わせて9億円余りの匿名の寄付が寄せられたことがわかりました。
当時の山口町長は「寄付金は町から要望したりしたもので、町民のために使いたい」と取材に対して話していましたが2社のうち、関西電力は、「具体的なコメントは差し控えたい」としていました。
 
このように電力会社と自治体の間には、もちつもたれつの関係ができあがっていて、オープンな形で寄付を行うケースも見られ、島根県松江市では、島根原発3号機の増設に市が同意する意向を島根県に回答したあとの2000年7月、中国電力から寄付金の申し出を受けたということです。
松江市では、島根原発2号機の増設の際にも中国電力から6億5000万円の寄付を受けたとしています。当時、松江市の担当者は、寄付金について「中国電力側が松江市の地域振興に理解を示したものだと思う」と話していました。
 
自治体と電力会社のお金をめぐる関係について、原子力政策に詳しい多摩大学大学院田坂広志名誉教授は「電力会社と自治体のお金の関係の始まりは原発という危険な施設を受け入れた見返りとして、電力会社が地元にお金を出し、地域振興や経済発展などに使ってもらおうという考え方だ。自治体に出される原発の交付金などの政策も、この考え方にそっているといえ、ある意味、構造的な課題を抱えているといえる。こうした中で不透明なお金の流れが発生すると、誰にもわからないところで利権関係が生まれやすくなる。利権関係が生まれると、行政が原子力政策や安全性の判断をする場合に、公正で適切な判断ができなくなるおそれがある。原発だけでなく、放射性廃棄物の施設など、すべての原子力施設で、こうした問題は起きる可能性があり、しっかりと対策を考える必要があるのではないか」と指摘しています。

東海村臨界事故、30日で20年/原子力施設トラブル336件

 東海村核燃料加工会社「J.C.O」で起きた臨界事故から30日で20年になるのに合わせて29日同村で講演会が開かれ、およそ300人の参加者が犠牲者へ黙とうをささげました。
 同事故では、核分裂反応が連続して起きる「臨界」が発生し、作業員2人が死亡、周辺の住民など600人以上が被ばくしました。
 講演で、福島第一原発の事故のあと健康相談などを行っている医師の振津かつみさんは「東海村の臨界事故は日本で初めて死者を出した重大な被ばく事故で、決して繰り返されてはならない」と訴えました。
 
 なお、同事故の翌2000年度から18年度までに、全国の原子力関連施設で発生した事故や故障のトラブル報告が336件に上ったことが28日、原子力規制庁への取材で分かりました(共同通信)。
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臨界事故20年で講演会「今後も事故を語り継ぐ」茨城 東海村
NHK NEWS WEB 2019年9月29日
茨城県東海村にある核燃料加工会社「ジェー・シー・オー」で起きた臨界事故から30日で20年になるのに合わせて講演会が開かれ、両親が被ばくした男性が「今後も事故を語り継いでいきたい」と述べました。
 
平成11年9月、茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オーで、核分裂反応が連続して起きる「臨界」が発生し、作業員2人が死亡、周辺の住民など600人以上が被ばくしました
 
30日で事故から20年になるのに合わせ、住民らで作る「臨界事故を語り継ぐ会」や日本原子力発電の東海第二原発の再稼働に反対する団体などが29日、東海村で講演会を開き、およそ300人の参加者が犠牲者へ黙とうをささげました
事故で両親が被ばくした大泉実成さんが登壇し「すでに両親は亡くなり、20年という時間を感じます。母がPTSD=心的外傷後ストレス障害を発症したことも含めて、今後も事故を語り継いでいきたい」と述べました。
 
また東京電力福島第一原発の事故のあと、健康相談などを行っている医師の振津かつみさんは「東海村の臨界事故は日本で初めて死者を出した重大な被ばく事故で、決して繰り返されてはならない」と訴えました。
地元から参加した22歳の女性は「初めてこの事故について詳しく知り、若い世代が記憶にとどめる必要があると感じました」と話していました。
 
 
東海村臨界事故、30日で20年 原子力施設トラブル3百件
共同通信 2019/9/28
 日本の原子力史上で初めて被ばくによる死者が出た茨城県東海村の臨界事故の翌2000年度から18年度までに、全国の原子力関連施設で発生した事故や故障のトラブル報告が336件に上ったことが28日、原子力規制庁への取材で分かった。
 
 原子力業界の安全神話に警鐘を鳴らした臨界事故から30日で20年。報告は、深刻度を示す国際評価尺度(INES)がレベル0(安全上重要でない)や評価対象外の事案が約9割を占めたものの、同事故や11年の東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、不断の安全意識向上が求められる。

30- 女川2号機 審査 実質終了 規制委 年内にも「合格」

 原子力規制委は27日、女川原発2号機の新規制基準適合性審査会合を開き、地震・津波分野と設備分野で計36の審査項目の実質的な審議を終えました。
 年内にも新基準への適合を認める審査書案がまとまり、事実上の「合格」となる可能性があります
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<女川2号機>審査 実質終了 規制委 年内にも「合格」
  河北新報 2019年09月28日
 原子力規制委員会は27日、東北電力が再稼働を目指す女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の新規制基準適合性審査会合を開き、地震・津波分野と設備分野で計36の審査項目の実質的な審議を終えた。年内にも新基準への適合を認める審査書案がまとまり、事実上の「合格」となる可能性がある。
 
 174回目となった会合で、東北電は地震・津波分野の審査内容をまとめた資料を説明。規制委の石渡明委員は「おおむね妥当な検討がなされた。今後の審査会合で審議すべき論点はないと考える」と総括した。
 規制委は今後、一連の審議や東北電が提出した補正書の内容を検討。必要に応じて面談や会合を開き、審査書案の作成を進める。会合後、東北電の担当者は「引き続き気を引き締め、一日も早い再稼働に向けて全力で取り組む」と話した。
 
 東北電は2013年12月に審査を申請。東日本大震災で被災したことで固有の課題が多く、基準地震動(最大想定の揺れ)や基準津波(最大想定の津波)、原子炉建屋で確認されたひび割れと剛性(変形しにくさ)低下などの議論が長期化した。
 震災などを踏まえた地震、津波への対策不足も指摘され、東北電は防潮堤の地盤改良など追加工事を実施。安全対策工事費は当初の想定を超え、3400億円程度に膨らんでいる。
 
 東北電は同工事を終える20年度以降の再稼働を目指すが、ハードルは高い。設計方針を定めた設置変更などの許認可に加え、宮城県と女川町、石巻市の地元同意を巡る判断安全性を検証する県有識者検討会の議論が控え、原子力災害に対応した広域避難計画の実効性などが焦点となる。
 東京電力福島第1原発事故を踏まえた新基準に合格し、再稼働したのは加圧水型炉の9基のみ。福島第1原発と同じ女川2号機など沸騰水型炉は、東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)と日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)が合格している。
 
 宮城県の村井嘉浩知事は県庁で取材に応じ、地元同意に関して「白紙だ。関係市町や県議会の考えを聞いて判断する」と説明。「最終的にまだ(規制委から)ゴーサインが出ていない。注意深く、関心を持って見守る」と述べた。
 
◎東北電力女川原発2号機を巡る動き
1995年7月  営業運転開始
2011年3月  東日本大震災
  13年12月 東北電が原子力規制委員会に新規制基準適合性審査を申請。再稼働目標を16年4月以降とする
  15年6月  再稼働目標を安全対策工事完了後の17年4月以降に延期
  17年2月  安全対策工事完了を18年度後半に延期。再稼働時期は明示せず
  18年4月  安全対策工事の完了時期を20年度に延期
  19年1月  7月中の審査終了を目指すと発表。審査スケジュール延期は5回目
     7月  設備分野の審査項目についての説明と規制委の指摘事項への回答を一通り終える。地震・津波分野は一部の説明と回答が残る
     9月  東北電が規制委に補正書提出。実質的な審議終了

2019年9月29日日曜日

関電へ原発マネーの還流 事実上のキックバック

 関西電力の幹部らが合計約3億2000万円もの金品を森山元助役から贈られたのは、工事受注者吉田開発が受注の手数料として元助役に支払った金額から出されたもので、元助役を介しての事実上のキックバック(受注金額の一部をお礼として発注者の戻す行為)でした。
 NHKが報じました。
 
 ただ元助役が受け取ったとされている手数料3億円が、関電幹部らの受領額よりも少額になっている理由は不明です。多分、集計の対象期間にずれがあるのでしょう。
 なおキックバックの額は、政治家が相手の場合は5%が相場といわれています。
 今回は昨年税務調査が入ったため、一部を返却したり、返却できない分は収入としてそれに見合う納税を済ませたようですが、工事資金は公共性のある電気料金が原資になっているわけで、その一部がそんな風に不正に還流されていた事実は否定できません。
 それを一時預かっただけというような言い分で済ますのは呆れる話で、そんな理屈が通るのであれば世の中から「詐取」などという言葉はなくなります。地方自治体の職員が10万円かそこらでも収賄に問われるのに比べてあまりにも不平等です。
 ここまで明らかにされたのですから関電の幹部らはもっと襟を正すべきであり、官憲も厳正に対処すべきです。
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原発マネーが還流か 判明している資金の流れは
NHK NEWS WEB 2019年9月27日
多額の金品の受け取りを認めた関西電力。原発をめぐる不透明な金品の流れが明らかになりました。
関係者によりますと金沢国税局が去年、高浜原発の関連工事などを請け負う高浜町の建設会社を税務調査したところ、高浜町の森山栄治元助役がこの会社から工事受注などの手数料としておよそ3億円を受け取っていたことが分かったということです。
そして国税局がさらに調査を進めたところ関西電力の八木誠会長などの経営幹部ら6人が森山元助役からおととしまでの7年間にあわせて1億8000万円を受け取っていたことが分かったということで、このうち4人は税務調査が始まったあと、修正申告したということです。
 
森山元助役も建設会社から受け取ったおよそ3億円を税務申告しておらず調査のあと国税局に修正申告したということです。
関西電力や関係者によりますと国税局から指摘を受けて関西電力が調査したところ森山元助役から金品を受け取っていたのは、国税局の調査で判明した八木会長ら6人を含む経営幹部や社員、あわせて20人に上り、物品や金銭、あわせて3億2000万円相当を受け取っていたことが分かったということです。
関西電力から原発の立地地域に流れた多額の原発マネーが経営幹部らに還流した形になっています。
 
原発マネーが還流か 判明している資金の流れは

原発関連工事で売上高6倍 関電から受注 建設会社

 関西電力の幹部らが、高浜町の元助役森山栄治氏(今年3月死亡)を通して金品を受領していた問題で、森山氏に約3億円を提供した地元の建設会社吉田開発(1981年設立)は、原発関連工事の受注により、売上高を急増させ、2013年から5年間に少なくとも約6伸ばしましたまだ把握し切れていない分もあるということです。
 これについて高浜町のある元町議は「吉田開発と森山さんの関係は地元では有名で、森山さんがいなければ関電関係の工事をここまで受注できなかっただろう」と証言しています。
 この驚くべき受注額の増大率は、工事受注者(吉田開発)から森山氏を通して発注元(関西電力)に大々的に発注額からのキックバックが行われたことと当然関係があると思われます。
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原発関連工事で売上高6倍 関電から受注 建設会社
東京新聞 2019年9月28日 夕刊
 関西電力の八木誠会長(69)らが関電高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役森山栄治氏(今年三月に九十歳で死亡)から金品を受領していた問題で、森山氏に約三億円を提供した地元の建設会社は、原発関連工事の受注により、売上高を急増させ、二〇一三年八月期から五年間に少なくとも約六倍伸ばしたことが分かった。
 
 経済産業省は二十七日、電気事業法に基づいて関電に対し類似事案の有無について報告を命じた。公益事業を担う大手電力会社が起こした今回の事案を問題視し、徹底調査などを求めており、関電側の対応が注目される。
 
 建設会社は一九八一年設立の「吉田開発」。信用調査会社によると、二〇一三年八月期の売上高は三億五千万円だったが、一五年八月期は十億円を超え、一八年八月期には二十一億円を上回った。関電の原発関連工事が業務の多くを占め、工事経歴書によると、一五~一八年に高浜原発や大飯(おおい)原発(福井県おおい町)の関連工事を少なくとも二十五億円受注していた。他に調査会社が把握していない売り上げが存在する可能性もある
 
 高浜町の元町議の男性は「吉田開発と森山さんの関係は地元では有名だった。森山さんがいなければ吉田開発は関電関係の工事をここまで受注できなかっただろう」と証言する。
 吉田開発から森山氏に対しては、工事受注に絡む手数料として約三億円が流れていたことが税務調査で判明。さらに森山氏が関電役員らに多額の金品を送っていたことが確認された。森山氏は調査に対し「関電にはお世話になっているから」と説明していた。
 
 二十七日に記者会見した関電の岩根茂樹社長(66)は「(森山氏が吉田開発に)関連しているとの認識はあった」と話した。
 
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29- 女川2号機 発電コスト割高に 石炭の1・51倍 LNGの1・36倍

 原発の安全対策費が増大したことなどで、東北電力女川原発2号機の発電コストが停止期間10年で1キロワット時当たり18・6円、11年で同19・0円になり、液化天然ガス(LNG)などの火力発電コストを上回り、経済効率面で原発の優位性が失われていることが浮き彫りとなりました。
 大島堅一龍谷大教授の試算で分かったもので、試算にはテロ対策施設の費用は含まれていないので、その金額が確定すればその分更に上昇します。なお、停止期間が長くなるとコストが上昇するのは、長くなった分、事実上の稼働ライフが40年から減じられるためです。
 
 同じく停止が続く女川3号機の発電コストは14・3円、東通原発は12・5で、いずれも石炭火力のコストを上回りました(安全対策費は未加算)
 大島教授は、原発再稼働は過剰投資なのが実情だと指摘しています
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<女川2号機>発電割高に 石炭の1.51倍 LNGの1.36倍
河北新報 2019年9月28日
 東京電力福島第1原発事故後に原発の安全対策費が増大したことなどで、東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の発電コスト停止期間10年で1キロワット時当たり18.6円、11年で同19.0円になることが大島堅一龍谷大教授(環境経済学)の試算で分かった。液化天然ガス(LNG)などの火力発電コストを上回り、経済効率面で原発の優位性が失われている現状が浮き彫りとなった。
 
 女川2号機は2010年11月に定期検査に入り、東日本大震災と原発事故を経て9年近くも停止が続く。東北電は20年度以降の再稼働を目指し地震や津波、火災を想定した安全対策工事を進め、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査も27日にほぼ終えた。
 大島教授は経済産業省が15年に公表した原発の発電コスト(14年モデルで1キロワット時当たり10.1円以上)を基に、原発事故対応費が11兆円から21兆5000億円に増えた点や追加安全対策費を上積みし、稼働後に原則40年間の運転期間を全うすると想定した。
 試算の結果、女川2号機の1キロワット時当たりの発電コストは18.6円。経産省試算の火力発電のうち石油(30.6~43.4円)は下回ったが石炭(12.3円)の1.51倍、LNG(13.7円)の1.36倍となった。事業用太陽光発電の19年度の買い取り価格(14.0円)も上回った
 他の停止中の原発も20年に再稼働すると仮定して全国29基の発電コストを試算したところ、女川2号機は最もコストが高かった。北海道電力泊1号機(17.5円)が続き、平均は13.2円だった。
 
 大島教授は女川2号機の発電コストが割高になる理由に、震災の被災原発として安全対策費に原発1基分の建設費を上回る3400億円を要するほか、停止期間が長く、出力が82万5000キロワットと比較的小さい点を挙げる。
 安全対策費には、再稼働から5年以内の整備が必要で1000億~2000億円が見込まれるテロ対策施設の費用は含まれ発電コストは一層高くなることが確実だ。
 大島教授は「安全対策費は増大し(原則40年の残る)稼働期間も短くなる一方。他の電源に比べコストが安いという原発の経済性は失われた。(太陽光など)再生可能エネルギーが普及する東北で、原発再稼働は過剰投資なのが実情だ」と指摘する。
 同じく停止が続く女川3号機の発電コストは14.3円、東通原発(青森県東通村)は12.5円。未確定の安全対策費を計上しなかったが、石炭火力のコストを上回った

2019年9月28日土曜日

助役からの「原発マネー」3億2000万円に 関西電力会長以下20人へ 

 27日午前の段階で、NHKは関西電力の経営幹部6人、福井県高浜町の元助役から、合わせておよそ1億8000万円の資金が流れたと報じましたが、その後関西電力会長以下計20人に、合計およそ3億2000万円が渡されたことが分かりました。
 それらは去年、金沢国税局の税務調査で指摘され後、一部もしくは全部を返還し、所得税の修正申告をしたということです。
 いずれにしても常識では理解できない金の流れがあったのは事実で、不透明な「原子力マネー」の巨額さが改めて浮き彫りになりました。
 NHKの続報と東京新聞の記事を紹介します。
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関電会長ら20人に総額3億円余 原発地元 “有力者” から
NHK NEWS WEB 2019年9月27日
関西電力の岩根茂樹社長は27日、記者会見を開き、関西電力の原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から、会長や社長など経営幹部や社員合わせて20人が多額の金品を受け取り、その総額は3億2000万円相当に上ることを明らかにしました。
 
関西電力の岩根社長は27日、大阪 北区の本社で記者会見を開き、冒頭「関係者や社会の皆様に多大な心配をおかけし、深くおわび申し上げます」と陳謝しました。
そのうえで、自身や八木誠会長などの経営幹部や社員合わせて20人が関西電力の原発がある高浜町の森山栄治元助役から、物品や金銭合わせて3億2000万円相当を受け取っていたことを明らかにしました。
 
多額の金品の受領は去年、金沢国税局の税務調査で指摘され、その後、一部もしくは全部を返還し、所得税の修正申告をしたということです。
岩根社長は森山元助役について「地元の有力者で、地域行政の観点から世話になっている。関係悪化をおそれ、金品を返せなかった」と述べました。
森山元助役はことし3月、90歳で亡くなっていますが、関係者によりますと、国税局の税務調査では、元助役が原発関連の工事を請け負う地元の建設会社から受注に絡む手数料を受け取り、この一部を関西電力の経営幹部に渡していたことが判明したということです。
 
これについて岩根社長は、関西電力が工事で支払った金が還流したという認識はないとし、社内調査で、建設会社への工事の発注プロセスに問題はなかったと強調しました。
そのうえで「不適切だったが違法ではないため、社内で公表しないことを決めた」と述べました。
 
 
関電20人、3.2億円受領 原発マネー「還流認識ない」
東京新聞 2019年9月27日
 関西電力の八木誠会長(69)を含む役員ら六人が関電高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役の故森山栄治氏(今年三月に九十歳で死亡)から多額の金品を受領していた問題を受け、関電の岩根茂樹社長(66)が二十七日、大阪市の本店で臨時の記者会見を開き「二〇一一年からの七年間で二十人が計三億二千万円を受け取っていた」と明らかにした。辞任は否定した。
 「常識の範囲を超える金品は受け取りを拒んだり、返却を試みたりしたが、強く拒絶されたため一時的に個人の管理下で保管していた」と説明。既に自身と八木会長は報酬減の処分を受けたとし「それ以外の処分人数と内容は差し控える」と語った。
 「調査の結果、見返りとなるような行為はなかった。(原発関連工事費が経営陣に)還流したという認識はない」「(工事の)発注プロセスに問題がない」と強調した。
 
 菅原一秀経済産業相は二十七日の閣議後会見で「事実であれば極めて言語道断。ゆゆしき事態だ。事実関係を徹底解明して、厳正に処する」と述べた。同日午前に関電側から事情を聴いていることも明らかにした。
 関係者によると、森山氏への金沢国税局による税務調査の過程で六人は一七年までの七年間に計約一億八千万円を受領していたことが確認された。四人は調査が始まった昨年、すぐに全部や一部の返還を始めた。ただ、受領から既に相当の期間が経過し、自身の所得に当たるとみなされる可能性があったため、自主的に雑所得として税務申告もした。
 
 岩根社長は会見で「原子力事業に影響が出るのではないか」とためらい、返せなかったと話した。
 関係者によると、国税局は税務調査の結果、森山氏が高浜原発などの関連工事を請け負う高浜町の建設会社から、工事受注に絡む手数料名目で約三億円を受領していたことをつかんだ。さらに調査を進め、森山氏から関電役員ら六人への資金の流れを確認したという。
 資金は個人口座に送金したり、現金入りの菓子袋を届けたりして関電側に渡したとされる。森山氏は国税局に「関電にはお世話になっているから」と説明したという。
 工事経歴書によると、高浜町の建設会社は一五~一八年、原発関連工事を少なくとも二十五億円受注。原発関連の工事費として立地地域に流れた「原発マネー」が経営陣個人に還流した可能性がある。
 
◆社長一問一答「関係悪化恐れた」
 岩根茂樹関西電力社長の二十七日午前の記者会見での一問一答は次の通り。
 -金品受領の概要を。
 「二十人が計三億二千万円を受け取っていた。報酬減の処分を受けている」
 -社長の責任は。
 「会社として対処すべきものが個人の管理となっており、トップのリーダーシップの問題を感じている」
 -社長や(岩根氏が務める)電気事業連合会会長職の辞任は。
 「再発防止を行うことで責任を全うする」
 -金品の原資への認識は。発注した原発工事の資金が還流したのか。
 「そのような認識はない」
 -背広券を使ったとの話もある。
 「儀礼的なもので返却できていないものはある」
 -福井県高浜町の元助役の故森山栄治氏から金品を拒めなかった理由は。
 「地元の有力者で、地域調整の観点でお世話になっている。先方も厳しい態度で返却を拒まれたので関係悪化を恐れた
 -岩根社長自身が金品を受け取った状況は。
 「社長就任後に本社にごあいさつに来られた。原子力事業運営と地域に関して話した後、直接受け取った。役員から高額なものかもしれないと言われ別に管理した」
 -税務調査前に返す努力はしたか。
 「私が直接ではないが、社としては試みた」
 -東日本大震災後の節電時期も金品を受け取っていた。
 「原子力の信頼を回復する必要がある時で、心よりおわびする」
 -元助役が、原発関連工事を請け負う建設会社と関連している認識はあったか。
 「認識はあった」