2020年11月30日月曜日

核ごみ調査、議会リコールへ 寿都町反対派住民

  核のごみ最終処分場選定を巡り、北海道寿都町で、反対派住民が町議会の解散請求に向けた署名を集める方針を固めました。

 当初は片岡春雄町長のリコールを考えていたもののまずは議会を透明化したいということです。
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核ごみ調査、議会リコールへ 北海道寿都町、反対派住民
                            共同通信 2020/11/29
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、第1段階の文献調査が行われている北海道寿都町で、反対派住民が町議会の解散請求(リコール)に向けた署名を集める方針を固めたことが29日、分かった。
 調査に反対する水産加工業吉野寿彦さん(60)によると、13日に文献調査への応募の是非を問う住民投票条例案を否決した町議会の信を問うためで、有志らと団体を設立し、年明けにも始める。請求には町内の有権者数の3分の1の署名を1カ月以内に集める必要がある。
 吉野さんは「当初は片岡春雄町長のリコールを考えていたが、まずは議会を透明化したい」と話した。

「ヤクザもそれを使う企業も、感覚的には昭和のまま」/「金くれる人がいい人に決まってる」

 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知ります。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生し、鈴木氏は福島第一原発(1F)に潜入取材することを決めました。
『 ヤクザと原発 福島第一潜入記 』(文春文庫)より、一部を転載します(前編・後編共)。
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「ヤクザもそれを使う企業も、感覚的には昭和のまま」 原発潜入記者が見た、ヤクザとの“ズブズブ”の歴史(全2回の1回目/ 後編 に続く)
                 鈴木智彦 文春オンライン 2020年11月29日
 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知る。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生し、鈴木氏は福島第一原発(1F)に潜入取材することを決めた。7月中旬、1F勤務した様子を『 ヤクザと原発 福島第一潜入記 』(文春文庫)より、一部を転載する。
                        全2回の1回目/ 後編 に続く
Jヴィレッジは土産
 親分が続ける。
「あとは自分たちの息のかかった建設会社を工事に参加させる。原発といっても、その大半は普通の土木建築会社の仕事だ。原子炉建屋とか炉心周り……そんな専門的な場所に手を出す必要なんてない。タービン建屋くらいはやるときもある。あれは工場から運ばれてきたタービンを設置するだけだ。一応、特殊な配管技術が必要だけど、そんなものは外注すればいい。
(写真はイメージ) ©️iStock.com
 お前、原発行ったんだろ? だったら分かるはずだ。
(原子炉)建屋とかタービン周りなんて、発電所の施設のうちの2割もない。大半は普通のビルを作る。事務所や休憩所、倉庫なんかだ。その他、関連会社のビルや周辺の道路整備なんかもある。たいてい、原発ってヤツはまともな道路すらない田舎に作られるから、その周辺一帯を開発するような形になる。食い込むチャンスはいくらだってある。
 それに原発には地元に土産が落ちるからな。そのおこぼれにだってありつける」
 1Fの場合、もっともわかりやすい土産はJヴィレッジだろう。
 1997年、東京電力などの出資によって作られたJヴィレッジの総工費は130億円あまりと言われる。1Fの関連企業に暴力団のフロント企業が存在する事実をみれば、地元懐柔のために作られた箱物建設の利権に暴力団が食い込んでいないと考えるのは不自然だ。1F周辺の地域共同体が暴力団を異分子として扱っていないのは分かっていた。この一帯では、暴力団が反社会勢力と認識されておらず、あくまで社会悪として存在している。

ヤクザも企業も、感覚的には昭和のまま
 東北だけを特別視するのは酷かもしれない。暴力団排除がやかましく言われ始めたのは、ここ7、8年である。
「昔から話はあったんだ。ヤクザの看板を持ってる業者は排除されるって噂が浮かんでは消えていった。具体的な話になってからまだ10年も経っていない。取り締まりの厳しい西側……九州なんかじゃもっと早かったかもしれないが、東北なんかじゃまだまだだろう。ヤクザもそれを使う企業も、感覚的には昭和のままで、厳しい取り締まりなんてほとんどなかったんじゃないか」
 事実、1Fの原発関連企業には、現役暴力団員が役員となっている会社が存在した。登記簿をあげれば一目瞭然だから、警察が把握してないのはおかしい。
「まぁ、気持ちはわかるんだよ。理由? 簡単に言えば見栄だ。俺はヤクザだけじゃない。きちんと会社も経営して、社長に就任してると周囲に言いたい。つまり社長の名刺が欲しい。自慢の種にしたいんだ。単純だろ、社会から爪弾きにされている分、そういった気持ちがヤクザにはある。
 最近じゃ親族や友人……といっても実質、若い衆みたいなもんだが、表面上はそいつらに経営させている会社が多いだろう。果実だけもらえばいいわけで、そのへんは割り切る必要がある。時代をとらえる感覚には個人差、地域差があるんだろう。でも、これだけ世間から注目されれば、東北だってヤクザは地下に潜るしかない」

どうしたらいいのか途方に暮れてる
 8月過ぎ、フクシマ50の暴力団員が所属する協力企業が、プラントメーカーから契約を解除された。はっきりした時期と経緯は不明だが、この会社の役員名簿には暴力団幹部の名前が載っていた。高らかに暴力団排除を宣言したわりに、福島県警や東電はその事実を発表しようとしない。
「ちょっとくらい隠しておいてくれれば、なにもかもヤクザに責任を押しつけられた。『巧妙に偽装されていたので見逃してしまった』と言い訳できた。でも、あれだけおおっぴらだと、さすがにこれまでなにをやっていたのか責任を問われる。長いことズブズブだったんだから、県警は地元のフロント企業をほとんど把握してると思う。分からないんじゃない。手が付けられない。原発事故と同じだ。どうしたらいいのか途方に暮れてるんだ」(広域組織幹部)
 この幹部に言わせれば、すでに1Fに入っている暴力団関連企業を追い出しても、さほど意味はないという。
「マスコミが注目してるのは原発だけ。そこから追い出したところで、放射能のおかげで他にいくらでもシノギはある。20キロ圏内の瓦礫撤去、近隣の建設工事、県内で盛んになっている除染ビジネス……ダンプも人間もそっちに回せばいいだけだ。それに原発の復旧作業は、どんどん単価が下がっている。企業が変われば、人夫の流れも変わる」(同前)

味噌もくそも一緒
 警察による暴力団取り締まりが西高東低であることは前述した。巧妙に偽装工作を施されたフロント企業を排除するのは困難を極める。
「警察だってある程度はフロント企業に当たりを付けているはずだ。親兄弟、親戚が代表にいるんだから、疑って当然だ。だけど親兄弟のすべてが暴力団と関わりがあるってわけじゃない。ヤクザの肉親すべてが、みんなフロントってことはあり得ない。真っ白な会社も多いから、味噌もくそも一緒になってて、フロント認定ってのはやりにくいわけだ。怪しいと思っても確たる証拠がなければ人権問題になる。肉親というだけで、今流行の共生者として取り締まることはできない」
 西日本の某所では、まったくの別件逮捕で会社の領収書を押収し、一枚一枚丹念にその裏を取る作戦が実施されている。領収書を発行した飲食店を絨毯(じゅうたん)爆撃して、ヤクザが店で飲食したかどうか証言を集めるわけだ。
「敵ながら警察の努力は認めるけど、そう簡単に口を割る店なんてないだろう。あらかじめ口の堅い店にしか行かねぇし、店側だってこの不景気に上得意を失うなんて、本音を言えば嫌に決まってる。それに万が一喋ったらどうなるか……店だってヤクザの怖さは分かってるはずだ。直接、脅し文句なんて言わねぇ。そんな言葉を少しでも吐いたら、いつ爆発するかわからねぇ時限爆弾を抱えるようなもんだ。自殺行為だ。
 飲み食いはあくまで紳士的に、そして明朗会計が基本だよ。でも匂わせる。たとえば……連れて行った若い衆がちょっとでもでかい態度をとったとしようや。チンピラ気分の抜けねぇ若い衆はどこにでもいるから、人身御供(ひとみごくう)には困らねぇ。そんな若い衆がいれば、店員の前でぶっ飛ばす。『てめぇ、カタギさんに迷惑かけるんじゃねぇ』ってね、空気で脅すんだよ。あとは警察やマスコミが俺たちを極悪人扱いしてくれるから、それで十分。まったく関係ないところで暴れさせたりね」

暴力団、恐怖のイメージ
 親分の証言通り、暴力団が寄生基盤に対し牙をむくことはあまりない。
 暴力による威嚇力にリアリティを持たせるためには、他の場所で暴力を行使すれば事足りる。抗争事件はその最たるもので、暴力団同士で殺し合いを演じることによって、一般人はヤクザとの接点の中で、自分たちへの暴力的威嚇力を勝手に想像するようになる。暴力団による突発的な凶悪事件も、暴力イメージ増幅に貢献する。
 たとえば末端の暴力団員が覚せい剤を乱用し、一般人に危害を加えたとする。事件の99.9パーセントは、所属する暴力団員の個人的なトラブルであり、組織の意図とは無関係な理由で起きている。表面上、所属組織にとっては迷惑千万な話だ。が、こうした事件の積み重ねによって、暴力団は自身への恐怖を一般人に植え付けていく。殺人事件を起こさない暴力団など、誰も怖がるはずがない。
 突き詰めれば、自分の組織が暴力事件を起こさなくてもかまわない。他の地域でこうした事件が起これば、暴力団のすべてが恐怖のイメージを共有できる。

 「金くれる人がいい人に決まってる」 組長が証言する“ヤクザと原発利権” へ続く
                            (鈴木 智彦/文春文庫)


「金くれる人がいい人に決まってる」 組長が証言する“ヤクザと原発利権”
                 鈴木智彦 文春オンライン 2020年11月29日
 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知る。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生し、鈴木氏は福島第一原発(1F)に潜入取材することを決めた。7月中旬、1F勤務した様子を『 ヤクザと原発 福島第一潜入記 』(文春文庫)より、一部を転載する。(全2回の2回目

狙うのは原発の新規建設
 いちいち値打ちを付けて話す親分に対し、これ以上の取材は無駄と判断して撤収した。
 原発利権を具体的に証言してくれたのは、広域指定暴力団の3次団体組長である。ナーバスな話だけあって、地域は“関東”としか明かせない。
 暴力団関連の土木建築会社が狙うのは、原発の新規建設らしい。
「ずっと前から発電所関係だけじゃなくて……ああいうのはプラント工事っていうんだけど、化学工場とか、食品会社の設備とか、もともとそういう仕事にうちらの会社が入ってたわけだ。

当時はヤクザの会社だってうるさく言われなかった。みんな仲良くやってたんだよ。労働組合っていうのか、労働基準協会の会員になることもできた。原発の仕事の場合、そこから『資格を取りませんか?』って誘ってくれる。急場のときは講師の資格を持った人を派遣してもらって資格を取らせたりすることもあった。
 ただ狙うのは新規工事限定だ。一発工事のほうがはるかにラクだし、ヤクザに向いてる。面倒がないからな。民間会社なら定修(定期修理工事)、原発でいうなら定検(定期点検)ってのは2カ月くらいで終わってしまうし、ずっと営業しなきゃならないだろ。新規に入れば最低、2年くらい仕事が続く。その間はなにもせずに飯が食える。新規の工事に入り込めれば、うちらが顔を出す必要なんてない。現場の責任者に金渡して、月に1回くらい上の人間と飯でも食ってこい、と言っておけばいい。
 それぞれの地域に必ず同業者の会社がある。そういったネットワークを使うこともあるが、自分たちで営業する時もあるよ。
 ちょっとした大手の依頼で、たとえば製鉄所のメンテナンスに入ったとする。そこで偶然一緒になった人とか、そういう繫がりで『次になんかあったらお願いしますよ』って声をかけておくわけだ。もちろん俺たちは表に出ない。それは従業員にやらせる」

野球賭博はサービス
 組長の会社は合計40人ほどの職人を抱えているという。ヤクザのフロントとすれば、かなりまともな会社といっていい。もちろん登記簿に暴力団員の名前は載っていない。親族すら会社にはいない。ここまで偽装されたら、フロント認定は難しい。
「俺に言わせればヤクザの看板は邪魔なんだ。まともに仕事していくなら、なんのメリットにもならねぇ。カタギをいじめるなんて論外だ。地元ではとくにそうだ。カタギにはよその土地のヤクザとトラブルを起こしてもらうのが一番ありがたい。話を丸くおさめて感謝され、恩を売れる。若い衆を懲役に行かせる必要もない。ただ、相手がこっちがヤクザだと忘れちまわないよう、社長連中を相手に野球賭博だけは続けてる。儲けはほとんどないんだけど、胴元をやってることで、みんなに俺がヤクザである意識を刷り込んでおくわけだ。野球(賭博)だけで食ってる組織とは違い、すべてみんなに還元してるよ。俺たちなりのサービスってことだ」
 私が1Fで働いていた際も、業者間での野球賭博があった。
 夏の甲子園のもので、ときおり旅館に顔を出すとオッズがプリントされたコピー用紙が部屋に置かれていた。同僚の親方たちは博奕に興味がないらしく、テーブルの片隅に放置されていたが、胴元が暴力団という可能性はある。
「そんな感じで普段の付き合いを大事にしておく。あちこちに種をまいて『こういう仕事があるんだけど、どうする?』という感じで話が来るのを待つ。きっかけは人夫出しが多い。いろんな会社から、誰かいないか? と頼まれて、自分のところで出来るならうけるし、出来ないなら他の職人を紹介する。
 仕事はほとんど、資格や技術のいらない職種だ。重機のオペレーターがいれば、掃除したり、穴掘ったりするのは誰でもいい。元気で動けるヤツなら誰でも。そういった仕事の要員は、どこの会社でも自分のところでは抱えないんだ。社員を雇えば、保証などもきっちりしなきゃならないから面倒っていうことだ。だから単純な仕事……土木が多いんだけど、そういう人間はどの会社もアルバイトでいいじゃないか、となる。かといって、人を探すのもけっこう手間だし苦労する。大手が嫌がるこういった仕事が、俺たちのシノギのきっかけになる。
『急に10人ほど必要になったんだけど、誰かいないか? 1万円くらい出すから探してくれ』
 という話が来たとする。俺たちなら、たちまちその要望に応えられる。職安に募集を出すより早いし、金もかからない。電話一本ですぐ人間が揃うから、業界にとっても便利なんだろう。

根が職人のヤクザ
 単価は安いね。でもアルバイトだから7000円くらいやっておけばいいじゃねぇか。これでも3000円は抜ける。10人もいれば1日当たり3万円になる。若いヤツなら十分飯は食えるだろう。でもその窓口になるためには、ちゃんとした書類の揃った会社じゃないとまずい。人夫出しをするだけならさほど問題ないけど、その橋渡しとして、うちらみたいなまともな会社がどうしても必要なんだ」
 組長を擁護するわけではないが、彼が実質的な経営権を握っている会社は、どこをみても一般の土木建築業者と変わらない。まともという表現に虚偽や誇張はない。
 わかりにくいかもしれないので解説する。
 暴力団員の形態は個々によって多種多様だ。それぞれが個人事業主であり、同じ組織の組員でもシノギのやり方は違う。
 一般的な暴力団はなんら生産的な活動をせず、他人が労働で得た金銭をガジる。不良や遊び人の延長に生きるこうした暴力団員は、正業を営んでいる場合でも経営にはほとんどタッチせず、暴力をちらつかせて強引にその上前をはねる。警察が盛んに喧伝するのはこの手の暴力団だ。が、これは都市部だから出来ることで、地縁・血縁をベースにした地方都市では、一方的な恐喝者として存在するケースはあまりない。暴力団と付き合う側にもなんらかのメリットはある。それは非合法サービスの提供だったり、表に出せないトラブルの解決だったり、裏社会の有名人とのパイプがステイタスだったりする。
 この組長のように、反社会勢力と分類しにくい暴力団も多い。彼のように根が職人のヤクザがその代表格だ。地方都市ではいまだヤクザという看板が社会的効力を持っており、時に名誉なことと考えられる。たとえば土建業の社長がその名誉を手にするため、ヤクザ組織に加入したりする。
「ヤクザの看板が邪魔」とは言いながら、組長が暴力団を辞めないのは、地方によってそうした背景が現存するからだ。
 この組長は自分の会社を20代の前半で立ち上げている。
 起業当時、暴力団であっても正業を営んでいる分には、警察の取り締まり対象にはならなかった。犯罪行為が露呈すれば逮捕・起訴される。悪と正義の戦いは、極めてシンプルな論理で成り立っていた。が、社会の空気が変化し、博奕や売春斡旋、違法薬物売買、みかじめ料などの取り締まりが厳しくなるにつれ、伝統的資金源で稼いだアングラマネーはあらゆる産業に投資され、暴力団は社会のあちこちに根を張っていった。
「昔はどこも定修回りをしてたんだけどね。いまは警察がうるさいから地元の工事には入りにくい。だから東北の工事に関西のヤクザが来たり、関東の組織が入ったり、なにかと工夫が必要になる。

ヤクザ保護区
 本来、定修も食い込めばいいシノギなんだよ。どの工場でもたいてい、1カ月くらいで終わっちまうが、そこが終わると同じ会社の別の場所に移る。サーカス団があちこちで公演していくようなもんで、それを専門にしてるヤクザもいた。なじみになると仕事がずーっと繫がっていくから、うまみはある。
 でもいまはなかなかそれが出来ない。定期的な交際は警察の目に付きやすいからだ。いきなり会社を興し、こういった工事に入り込むのはまず不可能だろう。昔からの関係が続いていたとしても、社長の代が替われば切られるかもしれない。定修・定検に関しては、よほどちゃんとやらないと継続しない」
 当時稼働していた九州の玄海原発についても質問した。
「東北のような場所……いまどきは珍しいだろうな。エアポケットというか、ヤクザ保護区というか。すぐに取り締まりが厳しくなるなんてことはないだろう。ヤクザは死にました、でも原発業者も死にました、ではまずい。殺したいのはヤクザだけなんだから、ピンポイントで効く抗がん剤を探さなきゃならない。
 九州の原発……反対運動なんてないだろ。反対って、いったいどこが反対するのか分からない。電力会社っていうのはどこでも殿様商売っていうか、城下町を作ってる。なんだかんだで九州電力関連の仕事しているもんが多いんだろうから、反対運動はお約束ってことだ。
 普通にサラリーマンしてる人たちなら、『放射能は嫌だ』っていうかもしれんが、金くれる人がいい人に決まってる。それに電気なかったら困るだろう。一般的に考えて。
『じゃあいいよ、電気は売ってやらない。電気停めますよ』そう居直られたらぐうの音もでない。俺たちから言わせれば、ヤクザのやり口と一緒だよ。暴力で脅すか、他の手段で威圧するか、それだけの違いだ」
 九州の原発に企業進出する気はないか訊いてみた。
「世間が注目している場所に出張り、目立つなんて馬鹿のやることだ」
 組長の見解はもっともだった。愚問だったかもしれない。
 九州は地元組織が強く、おまけにヤクザの過密地帯だ。福岡県だけで指定暴力団が5団体もあり、他の独立組織や山口組系有力団体も多い。2006年6月に勃発した道仁会vs.九州誠道会の分裂抗争は、一触即発の緊張状態が続き、収束の気配が見えない。ヤクザ激戦区のため警察の取り締まりも厳しい。全国に普及した暴排運動は、九州から始まったのだ。

                             (鈴木 智彦/文春文庫)

30- 韓国検察、原発早期閉鎖で捜査 意図的に不採算と評価したと

韓国検察、原発早期閉鎖で捜査 政治的と与党反発
                            共同通信 2020/11/27
【ソウル共同】韓国の原発運営会社、韓国水力原子力(韓水原)が2018年、南東部・慶州の月城原発1号機の前倒し閉鎖を決めたことに関し、脱原発を掲げる文在寅政権の意向を酌んで採算性を意図的に低く評価した疑いが浮上し、検察が捜査に乗り出した。与党は「脱原発政策を否定する政治捜査だ」と強く反発している。
 捜査の行方次第では原発推進派が勢いを得て、脱原発路線に影響が及ぶ可能性もある。
 監査院が10月、韓水原が電力の販売単価や人件費などを恣意的に調整し、採算性が不合理に低く評価されたと認定する監査結果を発表。「犯罪が成立する蓋然性がある」として資料を検察に送った。

2020年11月29日日曜日

住民意向 双葉、富岡住民「戻らない」5~6割

  復興庁27にまとめた福島原発事故の避難区域を抱える福島県双葉、富岡両町の住民意向調査によると、「戻らない」との回答が双葉町が62・1%、富岡町48・9%でした。

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双葉、富岡住民「戻らない」5~6割 復興庁意向調査
                         河北新報 2020年11月28日
 復興庁は27日、東京電力福島第1原発事故の避難区域を抱える福島県双葉、富岡両町の住民意向調査結果をまとめた。「戻らない」との回答が5~6割に上り、2019年の前回調査と比べてほぼ横ばい。避難先に生活基盤が移った実態が改めて浮き彫りになった。
 双葉町の「戻らない」との回答は62.1%で、前回比1.6ポイント減。「戻りたい」は10.8%(0.3ポイント増)、「まだ判断がつかない」は24.6%(0.1ポイント増)だった。
 17年に避難指示が一部解除された富岡町は「戻らない」が0.1ポイント減の48.9%、「戻りたいが戻れない」が2.8ポイント減の16.8%。「既に町で生活している」は9.2%(1.7ポイント増)、「戻りたい」は8.3%(0.1ポイント増)、「まだ判断がつかない」は14.8%(0.6ポイント増)だった。
 双葉町の戻らない理由(複数回答)は「避難先に自宅を建設・購入した」が56.8%で最も多く、「帰還後の医療環境に不安がある」(51.1%)、「避難先の利便性が高い」(39.8%)と続いた。富岡町も同様の傾向がみられた。
 富岡町で既に生活している人に帰還した理由(複数回答)を尋ねたところ、「気持ちが安らぐ」(52.4%)、「水道水などの安全性が確認できた」(38.8%)、「放射線量の低減」「役場機能の再開」(各35.0%)の順だった。
 調査は復興庁と県、2町が今年8~9月に郵送で実施した。回答率は双葉町49.2%(1486世帯)、富岡町48.2%(3108世帯)だった。

原子力規制委資料にサイバー攻撃 警視庁捜査

  原子力規制委内部の情報システムに外部から不正アクセスがあり、非公開の内部資料を閲覧された疑いがあることが分かりました。

 機密性の高い核物質防護に関する情報は、別のシステムで管理しており、情報流出はないということです
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原子力規制委資料、不正閲覧疑い サイバー攻撃で警視庁捜査
                            共同通信 2020/11/27
 原子力規制委員会の全職員が利用する内部の情報システム外部から不正アクセスがあり、非公開の内部資料を閲覧された疑いがあることが27日、規制委への取材で分かった。警視庁はサイバー攻撃により内部資料が不正に閲覧されたとみて、不正アクセス禁止法違反容疑などで捜査を開始。発信元の解明を進めている。

 規制委によると、システムは職員が行政事務で使うもので、業務用ファイルの共有などをしている。非公開の会議資料や、不開示情報に該当する可能性がある機密情報も取り扱う。機密性の高い核物質防護に関する情報は、別のシステムで管理しており、情報流出はないとしている。

NUMO幹部 寿都町と神恵内村 訪問

  寿都町と神恵内村で「核のごみ」の最終処分場文献調査が始まったことを受け25日、NUMOの伊藤眞一理事が調査への協力を訴えるため現地を訪れました。

 神恵内村高橋昌幸村長寿都町片岡春雄町長とそれぞれ会談しました。
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「核のごみ」処分場調査開始でNUMO幹部 寿都町と神恵内村 訪問
                    NHK NEWS WEB 2020年11月25日
いわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定をめぐり、北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が始まったことを受けて、NUMO=原子力発電環境整備機構の幹部が調査開始後、初めて現地を訪れ、調査への協力を訴えました
原子力発電所から出るいわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定をめぐり、NUMOは11月17日から、経済産業省の認可を受けて寿都町と神恵内村で文献調査を始めています。
これに伴って25日、NUMOの伊藤眞一理事が調査への協力を訴えるため、調査開始後、初めて現地を訪れました。
神恵内村では、高橋昌幸村長が情報提供のために新たに設けられる「対話の場」で村の将来も検討してほしいと伝えたほか、「周辺の市町村に対して、説明会を開催するなどして丁寧な対話活動をしてほしい」と要望しました。

このあと寿都町では、片岡春雄町長と会談しました。
片岡町長は、「町民が不安になっているので、処分事業の安全性についてもしっかり話をしてほしい」と求め、伊藤理事は、住民に説明するため、職員が常駐する拠点を早く設けたいという考えを伝えました。
伊藤理事は現地に設ける拠点の役割について、「問い合わせに答える資料を整えたり、説明に伺うといった仕事をイメージしている」と説明しました。
また、片岡町長は、「対話の場」に参加する20人ほどの町民の選定を年内にも始めたいという考えを示しました。

29- 核のごみ拒否条例制定へ、北海道 寿都町に隣接の島牧村

 北海道の寿都町に隣接する島牧村では、核のごみを拒否する条例の制定が検討されています。村議が12月の議会定例会で条例案を提出する予定で、賛成多数で可決される見通しです

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核のごみ拒否条例制定へ、北海道 寿都町に隣接の島牧村
                            共同通信 2020/11/28
 原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が進められている北海道寿都町に隣接する島牧村で、核のごみを拒否する条例の制定が検討されていることが28日、村関係者への取材で分かった。村議が12月の議会定例会で条例案を提出する予定で、賛成多数で可決される見通し。

 条例には核のごみを受け入れられないなどの内容が盛り込まれるとみられ、条例案の検討が進められている。島牧村は寿都町の西隣に位置し、主要産業は漁業。寿都町の文献調査への応募検討が明らかになった8月には、黒松内、蘭越両町と共に寿都町に対して慎重な判断を求めていた。

2020年11月28日土曜日

いわき市、ADR初申し立てへ 人件費など17億円余

 いわき市は来年2月にも、福島原発事故による損害賠償請求のうち、東電が請求に応じない174607万円の支払いを求め、初めて裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てます
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いわき市、ADR初申し立てへ 人件費など賠償請求17億円余
                            福島民報 2020/11/27
 いわき市は来年二月にも、東京電力福島第一原発事故による損害賠償請求のうち、東電が請求に応じない十七億四千六百七万一千五百七十円の支払いを求め、国の原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を初めて申し立てる
 市議会十二月定例会で関連議案を提出する。主な請求内容は税の減収分や職員人件費など。市はこれまで東電に百七億八千八百七十九万円を請求し、四十一億八千五百八十七万円の支払いを受けた
                  ◇   ◇
 東京電力福島第一原発事故に伴う損害賠償請求で、郡山市は二十五日、東電から二千七百三十一万五千六百四円の賠償支払いを受けた。市が二十六日、発表した。
 東電が支払いに応じたのは一般会計の二〇一一(平成二十三)年度分の消耗品費百三十六万百四十八円と二〇一二年度分の超過勤務手当二千五百九十五万五千四百五十六円。
 同市はこれまで百四十一億四百九十七万八百六十六円を賠償請求し、受領総額は二十億八千五百四十六万八千九百六十六円となった。同市原子力災害総合対策課は「合意に至っていない請求分も、引き続き粘り強く交渉していく」としている。

規制委、島根原発降灰想定56cmに引き上げを了承

 原子力規制委は27日、中国電力島根原発2号機の審査会合を開き、大山火山噴火時の降灰量を従来の45cmから56cmとした中国電の評価を了承しまし
 電力や規制委は非常用のディーゼル発電機が目詰まりしないようにまずエアーフィルターの性能に注目しますが、影響は決してそれだけではありません。
 セントヘレンズ火山での実績では、降灰が0.6~1.3cmに達しただけで自動車エンジン故障を起こし、乗用車での出勤ができなくなりました。柱上のトランスは火山灰が0.1cm積もるだけでもショートを起こし、1.3cmになると更にその確率が増し火災を起こします。電車は、3cmほどの降灰で脱線し走れなくなるので、発電所へのアクセスができなくなります。
     ⇒19.3.31福井の関電3原発 火山灰の評価見直し 改めて審査へ
 それを10cm以上の降灰があっても問題がないという感覚が理解できません。
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規制委、島根原発降灰想定を了承 中国電、56センチに引き上げ
                            共同通信 2020/11/27
 原子力規制委員会は27日、中国電力島根原発2号機の審査会合を開き、同原発に降り積もる火山灰の厚さの想定を従来の45センチから引き上げ、56センチとした中国電の評価を了承した。審査で残っていた大きな論点をクリアした形。規制委は今後、降灰による設備への影響がないか確認する。
 56センチは審査を受けた原子力施設の中で最大だが、中国電は「現時点で火山対策の内容に大きな影響はない」としている。
 中国電は、新たな論文発表などを受け、島根原発の南西約55キロにある三瓶山(島根県)からの火山灰を再検討し、厚さを最大56センチと評価した。

大洗 9月の火災 電磁接触器34年使い続けが原因

 原子力開発機構大洗研究所で9月に起きた「ナトリウム分析室」火災は、分電盤内の「電磁接触器」をメーカー推奨の10年で交換せず、約34年にわたり使い続けていたことが原因と分かりました。管理態勢の不備が問われます
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原子力機構、機器交換せず34年 9月の火災原因に
                            共同通信 2020/11/27
 日本原子力研究開発機構大洗研究所(茨城県大洗町)で9月に起きた火災で、火元となった機器を、機構がメーカー推奨の10年で交換せず、約34年にわたり使い続けていたことが27日、原子力規制委員会への取材で分かった。年1回の点検でも機器の劣化を見落としており、管理態勢の不備が問われそうだ。

 火災は9月10日、「ナトリウム分析室」の放射性物質取扱室で発生。火元になった分電盤内の「電磁接触器」という機器を分解すると、内部にたまったほこりが原因で漏電し、発火した痕跡があった。メーカー取扱説明書は、使用開始から10年を目安に交換するよう明記していたが、交換していなかった。 

28- 福島避難者 65%戻る意思がないと

福島避難者、65%戻らない 孤立化懸念の世帯増える
                            共同通信 2020/11/27
 東京電力福島第1原発事故を巡る全国各地の避難者へのアンケートで、福島県に住んでいた65%が故郷に戻る意思がないと回答したことが27日、分かった。避難者全体では、孤立化が懸念される単身や母子避難の世帯が増えていた。来年3月で事故から10年を迎える中、多数が苦しい生活状況で避難先に定着している現実が浮かび上がった。

 関西学院大災害復興制度研究所が今年7~9月、4876人に調査票を送って回収し694人が回答。75%の522人が事故当時は福島県に住み、138人が「戻るつもりだ」、341人が「戻るつもりはない」とし43人が無回答か不明だった。

2020年11月27日金曜日

原発事故への怒り演劇で伝える 相馬高「放送局」OGら任意団体立ち上げ

  福島原発事故と東日本大震災をテーマに演劇や映画を制作してきた福島県立相馬高の部活動「放送局」のOGと元顧問が、任意団体「相馬クロニクル」を立ち上げ上映会を続けています。

「高校生たちが絞り出した大人への怒りや葛藤を伝えたい」との思い原動力に、「放送局1118年に約30作品を制作しました。
 中学2年の時に相馬市で被災した荒さんは相馬高に入学後、初めて先輩の演劇を見た時衝撃を受け入部後、全国で上演を重ね、本気で福島のことを考えてくれる大人に出会い、前向きになれたと語っています
 河北新報が報じました。
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原発事故への怒り演劇で伝える 
  相馬高「放送局」OGら任意団体立ち上げ 各地で30作品上映会
                         河北新報 2020年11月24日
 東京電力福島第1原発事故と東日本大震災をテーマに演劇や映画を制作してきた福島県立相馬高(相馬市)の部活動「放送局」のOGと元顧問が、任意団体「相馬クロニクル」を立ち上げ上映会を続けている。「高校生たちが絞り出した大人への怒りや葛藤を伝えたい」との思いが原動力だ。
 2012年初演の劇「今伝えたいこと(仮)」が今年8月、オンラインで約30分上映された。原発事故後、1人の女子生徒が突然自殺。友人2人が理由を探る中、女子生徒は津波で家族を亡くし、福島県民だからとインターネットで誹謗(ひぼう)中傷を受けていたことが明らかになっていく内容だ。
「周辺地域は原発のおかげで潤ってきたと思う。でも、私たちの世代が決めたことじゃないよね?」「子どもの訴えを無視しないで」「ほら、こんなに叫んでも、結局届かないんだよ」-。壇上から観客へ次々とぶつけられる言葉は重い。

 上映後、相馬クロニクルメンバーで会社員の荒優香さん(24)は画面の先の観客へ「日本で原発事故がまた起きるリスクはある。福島のことを忘れないで」と訴えた。
 荒さんは中学2年の時に相馬市で被災。相馬高に入学後、初めて先輩の演劇を見た時は「世の中が『頑張ろう』という空気なのに、ここまで言って大丈夫?」と衝撃を受けた。同時に「こんなに苦しんでいるのに、大人は絆とかきれい事ばかりだ」という自分の怒りを代弁してくれたと感じた。入部後、全国で上演を重ね、本気で福島のことを考えてくれる大人に出会い、前向きになれた
 今も関わり続けるのは上映後に全国の参加者がそれぞれの3月11日の記憶を語ってくれるからだ。「被災体験には重いも軽いもない。自分はこうだったと思い出し、考える場になれば」と話す。
 放送局は11~18年に約30作品を制作した。顧問だった教諭渡部義弘さん(50)は「優等生的に振る舞いがちな災害下の高校生が、自ら批判的な視点を身に付けてくれた」と目を細める。他校に異動後も卒業生と上映会を続けてきた。
 リピーターは多く、青山学院高等部(東京)の教諭武藤拓さん(48)は4回ほど参加。「震災当時の高校生の気持ちが胸に刺さる。教え子が社会の複雑な問題に向き合うきっかけになる」と同校での上映会を検討する。
 新型コロナウイルスを機に始めたオンライン上映会で、米国在住の日本研究者など参加者の幅が広がった。来年2月にはドイツの大学とつないで開催する予定だ。
 「今も古びない作品に、私自身が魅了されています」と渡部さん。世代や国境を超え、生徒の思いを届け続ける。

老朽原発 「40年」原則を思い出せ

  福井県高浜町議会は25日、運転40年を超えた高浜原発1、2号機の再稼働について、全員協議会を開き、町議会として再稼働への同意を正式決定しました。40年超原発について地元議会が同意するのは国内初です。

 原発の原子炉の寿命は当初30年と見込まれ、炉内に設置された鋼板の強度を試験するためのテストピースは30年分しかありませんでした。それが福島事故後40年と定められると共に例外規定として「1回だけ、最長20年延長できる」として60年運転が認められたのでした。60年耐用できるというなにか証明でもあるのでしょうか。
 例外だからある程度冒険が出来るというようなものではないのはいうまでもありません。
 朝日新聞の社説「老朽原発 『40年』原則を思い出せ」を紹介します。
 併せて関連の記事を紹介します。
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(社説)老朽原発 「40年」原則を思い出せ
                         朝日新聞 2020年11月26日
 東京電力福島第一原発の事故を受け、原発の運転は40年までとするルールができた。事故の恐れが相対的に強い老朽原発の廃炉を着実に進め、原発に頼らない社会にしていくためだ。
 ところが、電力不足などに備えた「1回だけ、最長20年延長できる」との例外規定の適用で、40年を超す運転が現実になりつつある。看過できない。原則を思い出すべきだ。
 1970年代に稼働した関西電力高浜1、2号機(福井県高浜町)の再稼働に、高浜町議会が同意した。原発の安全性を審査する国の原子力規制委員会が運転延長を認めてから4年。まだ高浜町長や福井県の議会と知事の同意手続きが残るが、国内初となる40年超運転が具体化に向けて動き出した

 原発が地域経済を支えてきた事情があるとはいえ、住民の安全を守るために議論を尽くしたか。10月末の高浜町での説明会では、事故時に避難路となる県道について、自然災害が重なった場合への懸念が出た。課題は解消されていない。
 より問われるのは政府だ。
 菅政権は「省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する」と強調する。しかし原発については規制委と地元自治体の判断に委ね、手続きが終わると再稼働に向かった安倍政権時代から、姿勢に変化は見えない。それどころか、経済産業省資源エネルギー庁の幹部が高浜原発の関係自治体を訪れ、再稼働への同意を働きかけてきた。
 福井県内では、高浜原発とともに若狭湾沿いに立地する関電美浜原発3号機(美浜町)でも規制委が40年超運転を認めており、町議会は12月に再稼働について判断する予定だ。
 大飯原発(おおい町)を含めて福井県で計11基を動かしてきた関電は美浜、大飯両原発の計4基の廃炉を決めたが、40年超運転がすべて実現すれば7基が残る。福島の事故が浮き彫りにした集中立地の危うさは消えないままだ。
 老朽原発を閉じる姿勢をはっきりと示し、民間事業者の再エネへの投資を後押しする。原発に依存してきた自治体とともに地域社会の将来を考え、政策で支援していく。それが政府の務めではないか。

 関電も考えを改める時だ。
 元高浜町助役からの金品受領など一連の不祥事では、信頼回復への改革がなお途上にある。福井県内の原発に置いている使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外候補地を示すという県との約束も、見通しは不透明だ。
 経済的にも疑問が多い古い原発に見切りをつけ、経営を転換する。それが責任ある対応だ。


高浜町議会の全員協議会「再稼働は必要」 老朽原発に同意
                        中日新聞  2020年11月26日
 運転開始四十年超になる高浜原発1、2号機の再稼働に二十五日、同意した高浜町議会。意見集約の場となった全員協議会では、同意に十人が賛成し、反対の三人を大きく上回った。採決後、上尾徳郎議長は「拙速という意識はない」と議論を尽くしたことを強調した。議会の意向を受けた野瀬豊町長、県議会、杉本達治知事の判断が注目される。
 町によると、歳入に占める原発関連収入の割合は二〇二〇年度当初は六割に迫る五十三億円。廃炉になれば減収は避けられない。
 全協では議員から「地元経済の活性化や雇用確保のために再稼働は必要」との意見が相次ぎ、小幡憲仁議員は「地域の雇用や経済を支える重要な発電所。共存共栄の立場で進んでいく道が妥当」と賛成した。
 反対議員らは「四十年超の老朽原発を動かすのは危険」などと主張。児玉千明議員は「住民への説明が不十分」としてさらなる議論を求め、松井昭人議員は「町だけが前のめりで、県とのずれを感じる」と現状では同意できないとした。
 議会の意向を受けて手続きは次の段階へ。野瀬町長は再稼働の判断について「エネルギー基本計画における原子力の位置付けや廃炉後の地域振興策など、国や関電から納得のいく回答...
              (以下は有料記事のため非公開)

高浜町議会、再稼働に正式同意 40年超原発では国内初
                            共同通信 2020/11/25
 福井県の高浜町議会は25日、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機を巡り、全員協議会を開き、町議会として再稼働への同意を正式決定した。40年超原発について地元議会が同意するのは国内初で、再稼働すれば、東京電力福島第1原発事故後に「原則40年、最長で延長20年」のルールができて以降初となる。
 再稼働には町と県の各議会と首長の4者から同意を取り付けるのが通例。杉本達治知事は、関電による使用済み核燃料の県外搬出先の年内提示が同意の前提との認識を示しており、議論の行方には不透明感もある。