2022年7月31日日曜日

海洋放出放出計画「理解不十分」 全国知事会議国への提言をまとめる

 奈良市で開いた全国知事会議で29日福島第1原発汚染水の海洋放出方針について、「関係省庁が一体となって万全な対策を講じるとともに、理解醸成に向け関係者らへの丁寧な説明と真摯な対話を続けるべき」などとする、「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」を全会一致で採択しました。

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東日本大震災・原発事故11年
処理水放出計画「理解不十分」対策求める 全国知事会議、国への提言をまとめる
                            福島民報 2022/07/30
 東京電力福島第一原発の処理水海洋放出方針について全国知事会は29日、奈良市で開いた全国知事会議で「国内外の理解が十分に得られている状況ではなく、新たな風評被害発生が懸念される」として、国が前面に立って対策を講じるよう求める提言を全会一致でまとめた。政府と東電が目指す放出開始が来春に迫る中、今なお理解醸成が不十分だとの認識を全知事が共有。より実効性のある対策を国に要請する。

 全国知事会議で内堀雅雄知事は「福島だけの問題ではなく日本全体の問題だ」と強調し、全国の都道府県知事に直接、理解と協力を呼びかけた。処理水に関する提言を盛り込んだ「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」の内容は以下の通り。
 昨年4月の政府方針決定から1年余りが経過し、原子力規制委員会が東京電力の放出計画を認可するなど放出開始へのスケジュールが進む中、処理水への理解が国内外で今なお浸透していない現状を憂慮。「積み重ねてきた復興や風評払拭(ふっしょく)の成果が水泡に帰す懸念がある」と指摘した。関係省庁が一体となって万全な対策を講じるとともに、理解醸成に向け関係者らへの丁寧な説明と真摯(しんし)な対話を続けるべきとした。
 万全な対策を講じても風評被害が発生した場合に備え、地域や業種の実情に応じた賠償基準を早期に具体化するよう訴えた。トリチウムの分離技術を研究開発する機関を明確に位置付け、新技術の動向調査や研究開発を推進し、実用化できる処理技術が確認された場合は柔軟に対応するよう求めた。

 昨年の全国知事会議はリモート開催だっただけに、内堀知事は報道陣の取材に「(処理水問題について)各知事に対面で伝えられたことは非常に重要だった」と意義を強調した。本県の困難な状況について、複数の知事から共感の声が寄せられたという。
 平井伸治会長(鳥取県知事)は記者会見で処理水問題について問われ「非常に難しい事柄だと思う。風評対策などで協力できることがあれば、内堀知事をもり立てていきたい」と述べ、知事会として本県に協力していく考えを示した。
 海洋放出方針を巡っては、原子力規制委が今月に東電の放出計画を認可し、県や大熊、双葉両町などでつくる県原発安全確保技術検討会も安全性を確認したとする報告書をまとめた。東電は地元の了解が得られ次第、本格的な放出設備の工事を始める方針。

■全国知事会がまとめた震災復興に関する提言のポイント

◎処理水処分について国内外の理解が十分に得られている状況ではない。安全性や新たな風評発生を懸念する意見が数多くある
◎処理水問題は福島県だけではなく日本全体の問題として進める必要がある。新たな風評被害発生が懸念されることから、国が前面に立ち、関係省庁が一体となって万全な対策を講じること
◎処理水に関する理解が得られるよう、関係者への丁寧な説明と真摯(しんし)な対話を継続して行うこと
◎特定復興再生拠点区域(復興拠点)外の除染は、帰還意向のない住民の土地や家屋などの取り扱いについても地元自治体と真摯に協議を重ね、その意向を十分に踏まえ、帰還困難区域全ての避難指示解除に向けて最後まで責任を持って取り組むこと
◎福島国際研究教育機構について、国内外の優秀な研究者が集い世界最先端の研究開発が行われるよう、政府を挙げて必要な財源や予算を確保すること

原発事故「国と東電の責任問う」 福島で原水禁大会始まる

 原水爆禁止世界大会が30日、福島市で始まりました。福島原発事故の被災者ら約400人が参加し「国と東電の責任を厳しく問い、被害者の人権と補償の確立を求める運動を強める」とのアピールを採択しました。

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原発事故「国と東電の責任問う」 福島で原水禁大会始まる
                            共同通信 2022/7/30
 原水爆禁止日本国民会議(原水禁)などが主催する原水爆禁止世界大会が30日、福島市で始まった。東京電力福島第1原発事故の被災者ら約400人(主催者発表)が参加し「国と東電の責任を厳しく問い、被害者の人権と補償の確立を求める運動を強める」とのアピールを採択した。
 冒頭、原水禁の藤本泰成共同議長は「原発事故から11年。私たちの失ったものがどれだけ大きいか、改めて考えなくてはならない」とあいさつした。福島県南相馬市から神奈川県に避難した村田弘さん(79)も登壇し「被害の事実は厳然と続いている」と訴えた。

蔵王風力発電 事業中止 関西電力 配慮足りずと

 山形県と宮城県にまたがる蔵王山に最大23基の発電用大型風車を設置する計画を進めてきた関西電力は29日、風車による景観への影響等の観点から自治体や地元住民ら反対を決めたことに対して、「蔵王連峰に対する畏敬の念を十分に認識できず、配慮が足りなかった」として事業を中止すると発表しました。
 景観云々となると歩み寄りが困難なので中止に踏み切ったものでそれは潔い態度でしたが、逆にこうした理由で拒否されるとなると、今後も陸上型風力発電が普及していかない惧れがあります。
 オランダの風車群はある意味で不格好とも言えるものですが、いまやオランダの代表的景観の象徴にもなっています。景観とは言っても慣れに支配される要素が大きいのではないでしょうか。
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蔵王風力発電、事業中止 関西電力「配慮足りず、反省」
                            山形新聞 2022/7/30
 本県と宮城県にまたがる蔵王山に最大23基の発電用大型風車を設置する計画を進めてきた関西電力は29日、事業を中止すると発表した。風車による景観への影響や自然保護の観点から、両県の自治体や地元住民らは反対を表明しており、蔵王を代表する御釜の風景が守られたことに胸をなで下ろした。
 関電は「計画の見直しを検討した結果、環境への配慮と事業性の両立が難しいと判断した」とコメント。「蔵王連峰に対する畏敬の念を十分に認識できていなかった。配慮が足りず不信感を招いたことについて反省したい」とした。
 今年5月、関電は宮城県川崎町西部の山間部に最大23基の風車を設置する開発計画を明らかにした。計画段階環境配慮書を関係自治体に送り、意見を求めたが、地元自治体や観光団体、議会などが相次いで反対の意を表明。山形市は今月、これらの意見を踏まえ、眺望景観が著しく妨げられるなどとして「本事業は進めるべきではない」との意見をまとめ、県に提出していた。

 関電によると、各地で開催した住民説明会では、景観への配慮を懸念する意見が多かったという。配慮書に関する両県知事からの意見はまだ受け取っていなかった。今後、事業廃止に関する通知書を経済産業大臣や各知事に提出する。
 当初から建設に反対してきた蔵王温泉観光協会の伊藤八右衛門会長は「白紙撤回となり、良かった。自然豊かな蔵王に風車は似合わない。いろいろな人の協力のおかげだ」と安心した様子だった。
 吉村美栄子知事は「地域の人々の蔵王山への強い思いを理解してもらえたと受け止めている」とコメント。佐藤孝弘山形市長は「適切な判断をされたと考えている」とした。
 関電は北海道の4地域で計画していた事業のうち、伊達市や千歳市などの1地域の事業も断念した。

31- 東電旧経営陣に13兆円賠償命令 株主代表訴訟の特徴

 東電旧経営陣5人が津波対策を怠ったとして賠償を求めた株主代表訴訟の判決が7月13日にあり、東京地裁4人の責任を認め13兆3210億円の賠償を命じました。
 実際問題として未曾有の災害が発生した責任を、一企業の経営陣が負えるのか会社法に詳しい島田直行弁護士に聞きました
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東電旧経営陣に13兆円賠償命令 手数料は1万3000円ポッキリ、株主代表訴訟の特徴
                    弁護士ドットコムニュース 2022/7/31
東京電力福島第一原発事故をめぐり、旧経営陣5人が津波対策を怠ったとして賠償を求めた株主代表訴訟の判決が7月13日、東京地裁であった。朝倉佳秀裁判長は4人の責任を認め、13兆3210億円の賠償を命じた。
判決では、原子力事業者の義務を「最新の知見に基づき、万が一にも事故を防止すべき」と示した。国の予測を元に計算された最大15.7メートルの津波予測を信頼できるものとした上で、旧経営陣がこれらのデータの検討を先送りしたことなどを厳しく指弾している。
未曾有の災害が発生した責任を、一企業の経営陣が負えるのか。そもそも、過去最高とも言われる賠償額を、役員個人が払えるのか。会社法に詳しい島田直行弁護士に聞いた

●旧大和銀行巨額損失事件の829億円をはるかに超える
一般論として取締役は、任務を怠ったことで会社に損害を与えた場合に賠償責任を負担します。こういった責任制度の趣旨は、会社の損害の回復と取締役の任務懈怠の抑止にあるとされます。こうした取締役の責任は、会社が追及することになります。もっとも会社と取締役の関係が密であるため、会社が取締役に対して責任を追及しないことも予想されます。これでは会社の所有者である株主にとって納得できないでしょう。そこで会社に代わって株主が取締役の責任を追及する方法として、株主代表訴訟があります
株主代表訴訟では賠償額が高額になることがあります。これまでは、旧大和銀行巨額損失事件の一審で約829億円の損害賠償が命じられたことが話題となっていました。これと比較しても今回の認定額がいかに巨大なものであるかよくわかります。
請求額が巨額になる理由のひとつとして、裁判にかかるコストが低額であることが指摘できるでしょう。一般的に訴訟を提起する場合には、原告は請求額に応じた手数料を裁判所に納める必要があります。
例えば10億円を請求する場合には302万円を要します。ですが株主代表訴訟においては、請求額に関係なく手数料は一律1万3000円とされています。そのためコストを気にせずに請求をすることができるわけです。

●役員の賠償保険では全額カバーできず 
この13兆円は、原告である株主に対して支払われるわけではありません。あくまで東電に対して支払われるべきものです。もっとも判決における賠償額の認定と現実の回収の成否は次元の違う話です。現実的に言って13兆円といった巨額の賠償金を個人で支払うことはできないでしょう。
取締役の賠償責任に対しては、会社役員賠償責任保険(通称D&O保険)というものがあります。取締役が責任追及された場合のリスクを引き受ける保険です。ただし保険会社としても無限の責任を引き受けることはできないため、上限10億円など支払限度額が設定されています。今回の賠償額は想定外の金額であるため、保険で全額カバーできるとは到底考えられません。
東電は、取締役の個人資産を対象に回収できる範囲で回収していくことになります。これに対して取締役は、免責を求めて裁判所に破産の申し立てをする可能性もあります。あるいは債権者である東電において、債権回収のため取締役に対する破産の申し立てをすることも可能です。

●過大な責任を負わせるべきか、議論深める機会に
具体的な方針は回収の可能性、回収にともなうコストなどを総合的に考慮して決めていくことになるため現時点で予測することは困難です。取締役の責任を追及することは、株主の利益を間接的に確保することになります。
ただし同時に、あまりに過大な責任を負担させることは取締役の活動を委縮させる危険もあるとされています。そのバランスのとり方については、今回の判決を受けてさらに議論を深めていくことになるのではないでしょうか。

【取材協力弁護士】
島田 直行(しまだ・なおゆき)弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒、山口県弁護士会所属。著書に『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』、『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(いずれもプレジデント社)、『院長、クレーマー&問題職員で悩んでいませんか?』(日本法令)
事務所名:島田法律事務所
事務所URL:https://www.shimada-law.com/ 

2022年7月30日土曜日

柏崎刈羽原発でまたテロ対策不備、東電本社社員が無断で情報持ち出し

 柏崎刈羽原発は28日、東電東京本社の社員が原発内にあった核物質防護(テロ対策)に関する情報を印刷し、無断で持ち出したと発表しまし持ち出しには管理者の許可が必要だが、当時社員は失念し、今月3日に管理者に申し出て判明しまし

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柏崎刈羽原発でまたテロ対策不備、東電本社社員が無断で情報持ち出し
                            読売新聞 2022/7/28
 東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)は28日、東電東京本社の社員が原発内にあった核物質防護(テロ対策)に関する情報を印刷し、無断で持ち出したと発表した。東電は、管理者の許可がなければ核物質防護の情報を印刷できないようにシステムを変更した。
 発表によると、社員は6月29日、同原発に出張した際、核物質防護の情報を印刷し、東京都内の自宅に持ち帰った。テレワークで使う目的だったという。持ち出しには管理者の許可が必要だが、当時社員は失念し、今月3日に管理者に申し出て判明した。東電は社員を核物質防護の情報を取り扱える立場から除外した。
 同原発では、所員が他人のIDカードで中央制御室に不正に入ったり、複数の侵入者検知設備が長期間故障しながら十分な対策をしていなかったりと、テロ対策の不備が相次いで発覚。原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令を受け、現在は再発防止に向けた検査が行われている。

東北電力 電気料金11月から15%前後値上げ

 東北電力は29日、燃料高などに対応するため法人向けの高圧プランと、家庭向けの低圧プランの一部の電気料金を11月から15%前後値上げすると発表しました。同社が電気料金を改定するのは東日本大震災の影響を受けた20139月以来、9年ぶりとなります。標準的な家庭用モデル料金(30アンペア、260キロワット時)で月額当たり1092円(約13 %)の値上げとなります

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電気料金11月から15%前後値上げ 東北電力、福島県内は約27万件の契約が対象
                            福島民報 2022/7/30
 東北電力は29日、ロシアのウクライナ侵攻による燃料高などに対応するため、法人向けの高圧プランと、家庭向けの低圧プランの一部の電気料金を11月から15%前後値上げすると発表した。福島県内では約27万件の契約が対象。同社が電気料金を改定するのは東日本大震災の影響を受けた2013年9月以来、9年ぶりとなる。
 県内では、工場やホテル、商業施設などを持つ法人向けの高圧プランは約1万件が対象。家庭向けの低圧プランは契約者約112万件のうち「従量電灯A・B・C」「定額電灯」といった規制料金プランを除き、「よりそう+ファミリーバリュー」などの契約者約26万件が対象となる。
 「よりそう」を冠したプランは2016年4月に電力小売りが全面自由化されて以降、提供を開始。時間帯ごとの料金プランや割引サービスがあり、オール電化住宅や比較的若い世代の契約が多い。一方、値上げ対象外となる規制料金プランは高齢者世帯の契約が多い傾向にあるという。
 値上げ幅について、高圧プランは基本料金と電力量料金の単価を上げる。契約電力1000キロワット、月間使用電力量27万キロワット時の場合、月額で約137万円(16・4%)高くなる。
 低圧プランは燃料費の上昇分を料金に上乗せする「燃料費調整制度」の上限を撤廃し、燃料価格の変動を電気料金に反映させる。今年9月分の燃料費調整単価で試算すると、標準的な家庭用モデル料金(よりそう+eねっとバリュー、30アンペア、260キロワット時)で月額当たり1092円(約13%)の値上げとなる。
 東北電力によると、世界的な燃料価格急騰や、3月の福島県沖地震で一部の火力発電所が被災し、代替電力を調達するコストが増えたことなどが要因。樋口康二郎社長(国見町出身)は仙台市の本店で記者会見し、「電力の安定供給を維持するための苦汁の決断。経営効率化やより良いサービスの提供を図りたい」と理解を求めた。

志賀原発2号機 敷地外の「福浦断層は約3・2キロ」 規制委概ね理解

 原子力規制委再稼働に向け審査が行われている北陸電力志賀原発2号機から1km離れた福浦断層の長さを32kmとする調査結果に概ね理解を示し秋にも実施される現地調査でその妥当性を確認するとしました。32kmはかなり短い部類に入ります.

注 断層の長さと地震の強さマグネチュードについては下記の松田式が有名です。
  logL0.6M2.9 (L=断層の長さkm、M=マグニチュード)
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敷地外「福浦断層は約3.2キロ」北陸電力が志賀原発2号機審査会合で調査結果…委員は概ね理解
                          富山テレビ放送 2022/7/29
再稼働に向け審査が行われている北陸電力志賀原子力発電所2号機の審査会合が開かれ、原子力規制委員会は敷地外にある福浦断層の長さを32キロとする調査結果に概ね理解を示しました。
29日に開かれた審査会合では、志賀原発の敷地外にある福浦断層の長さなどについて審査が行われました。
福浦断層は、志賀原発から約1キロ離れた断層で、北陸電力が活断層と評価する断層です。
北陸電力は、去年11月の現地調査で求めらていた追加のボーリング調査などによって福浦断層が約32キロであると説明しました。
これに対し、委員は概ね理解を示し、秋にも実施される現地調査でその妥当性を確認するとしました。


「施設と断層の距離具体的に」志賀原子力発電所2号機再稼働めぐり 原子力規制委員会が審査会合
                         MRO北陸放送 2022/7/29
北陸電力志賀原子力発電所2号機の再稼働をめぐり安全審査を行う国の原子力規制委員会は29日、審査会合を開きました。断層と敷地の距離をめぐり、原子力規制委員会は北陸電力に対し、より具体的なデータを提示するよう求めました。
29日都内で開かれた会合では、北陸電力が志賀原発の敷地内に近い福浦断層の端がどこに位置するのかについて追加調査の結果を示しました。これに対し委員会側は、高い耐震性が必要とされる施設などと福浦断層との距離について、それぞれ具体的に示すことを求めました。
原子力規制委員会は、今後敷地内の断層についてこれまでの調査の結果を審議し、時期は未定ですが現地調査を行う予定です。

青森・六ケ所村「核サイクル施設」また完成延期へ

 日本原燃増田尚宏社長は29日、9月末完工の目標まで2カ月に迫る核燃料再処理工場について、20121回目の設工認を申請しましたが、審査資料作成の遅れや記載漏れなどの不備が重なり、設置の認可にこぎ着けていないため、完工の延期を視野に入れた見直しを検討する」と表明しました。延期となれば208月以来、26度目となります
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再処理工場、22年度上期の完工断念 日本原燃、認可遅れで
                            河北新報 2022/7/30
 日本原燃は29日、使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)について、目標としていた2022年度上期の完工を事実上断念する方針を明らかにした。安全対策工事の詳細設計に当たる「設計・工事の方法の認可」(設工認)の審査でつまづき、認可が遅れているのが要因。現時点で完工時期は未定。延期となれば20年8月以来、26度目となる。

■「準備足りず」
 青森市で記者会見した増田尚宏社長は、9月末完工の目標まで2カ月に迫る状況を踏まえ「(作業)工程を守る努力を続けるというだけでは済まない」と説明。「延期を視野に入れた見直しを検討する」と表明した。
 工場は20年7月、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に合格。原燃は同年12月、1回目の設工認を申請したが、審査資料作成の遅れや記載漏れなどの不備が重なり、設置の認可にこぎ着けていない。設工認申請から1年半が経過しても審査が続く
 増田社長は「設工認に対しての準備が足りず、品質のレベルが低かった」と陳謝。その上で「当初の計画より工事の量が増え、半導体の入荷に手間取っていることで支障が出ている」と釈明した。
 設工認の申請は当初3回に分割する方針だったが、増田社長は2、3回目を合わせて申請する考えも示し、「効率的な方法で確度の高い工程をつくっていく」と強調。完工目標は新たに設定する。
 再処理工場は1993年に着工し、当初は97年の完工を目指していた。
 9月の運転再開を目指していたウラン濃縮工場に関しては、工事の不具合が生じたため、来年2月に変更することも公表した。


青森・六ケ所村「核サイクル施設」また完成延期へ
                      テレビ朝日系(ANN) 2022/7/30
 青森県六ケ所村で建設中の核燃料サイクル施設について、日本原燃は今年9月までとしていた完成予定時期を延期する方向で検討していることを明らかにしました。
 六ケ所村に建設中の「核燃料再処理工場」は原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出して再利用する施設で、1993年に着工し、1997年に完成する計画でした。
 日本原燃によりますと、冷却設備の設計工事について規制庁による審査などが長期化しているため、今年9月までとしていた完成予定時期を延期する方向で検討に入ったということです。

 核燃料サイクル施設の完成の延期が決まれば、今回で26回目となります。 

30- 再処理工場での冷却機能一部喪失 日本原燃が陳謝

 六ケ所村にある再処理工場で2日、高レベル放射性廃液を冷却する機能が一時停止するトラブルが発生したことについて、日本原燃の増田社長は、運転管理上の問題があったとして陳謝しました。

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再処理工場での冷却機能一部喪失 日本原燃が陳謝
                         ABA青森朝日放送 2022/7/29
六ケ所村にある使用済み核燃料の再処理工場で、2日に起きたトラブルについてです。事業者の日本原燃は、運転管理上の問題があったとして陳謝しました。
【日本原燃 増田尚宏社長】
「安全冷却機能の一部が喪失するというトラブルを発生させてしまいました。地域の皆様に大変にご心配をおかけしましたことを深くおわび申し上げます」
増田尚宏社長は、29日の定例会見で、安全機能を一時的とはいえ喪失させたことについて陳謝しました。
再処理工場では2日、高レベル放射性廃液を冷却する機能が一時停止するトラブルが発生し、日本原燃は、作業員が誤って操作したことが原因とみられるという調査結果を明らかにしていました。
また、このトラブルを巡り、青森県や六ケ所村への通報連絡にも問題があったとしています。
一方、およそ2か月後に迫った9月末までとしている再処理工場の完成時期について、増田社長は、延期も視野に入れ今後の見通しを検討すると述べました。

2022年7月29日金曜日

道内で大型風力発電所の計画進む

 北海道の広大な土地を生かした大型の風力発電所の建設計画が進んでいます。東京のループが、宗谷の豊富町に8基の風車による年間発電量7700万キロワット一般家庭2万5000世帯分)の陸上風力発電所を建設すると発表しました。

 一方、東京のグリーンパワーインベストメントは石狩湾新港の沖に出力8000キロワットの風車を14基設置する国内最大級の洋上風力発電所を建設します。42台の蓄電池設備もあわせて建設中で、来年12月の運転開始を目指しています。
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道内で大型風力発電所の計画進む
                          テレビ北海道 2022/7/28
再生可能エネルギーの普及拡大に向け、北海道の広大な土地を生かした大型の風力発電所の建設計画が進んでいます。太陽光発電設備の設置販売などを手掛ける東京のループは宗谷の豊富町に陸上風力発電所を建設すると発表しました。全国で再エネ開発に取り組む中部電力と合同で運営します。8基の風車を建設し、年間発電量は一般家庭2万5000世帯分のおよそ7700万キロワットとしています。再来年4月に運転を開始する予定です。「(今後も)風力発電所の開発や太陽光発電所、もしくは自宅に太陽光パネルを付けるような事業も行っていきたい。大きな発電所をつくって供給するものと地産地消(=各家庭)で発電するものを組み合わせて北海道で再エネを広めていきたい」(中村創一郎社長)。
一方、東京のグリーンパワーインベストメントは石狩湾新港の沖に国内最大級の洋上風力発電所を建設します。750億円をかけて、日本で初導入となる出力8000キロワットの風車を14基設置します。電力を蓄える42台の蓄電池設備もあわせて建設中で、来年12月の運転開始を目指しています。

太陽光パネルで製造した水素を貯蔵後に燃料電池発電に使用 自社ビルで

 トヨタ系の自動車販売会社などでつくるユーグループは25日、本社ビルの改修に合せて、水素エネルギー利用システムを導入したと発表しました。

 太陽光発電の電力で製造するグリーン水素を、特殊金属を利用した貯蔵施設に貯蔵し、それを燃料電池式発電設備に供給して、自社ビルのピークカットや非常時の電源として活用するもので、完全な2酸化炭素ゼロの発電設備になります
 このシステムの大きな特徴、水素の貯蔵に水素を効率的に取り込める水素吸蔵合金タンクを採用している点です。30以下の温度にして10キロ(1Mpa程度の圧力をかけて水素を吸蔵させることで、水素を約1000分の1の体積に圧縮して貯蔵できます(水素放出時には50以上に加熱)。
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再エネ水素を特殊合金に貯蔵して活用、トヨタ系ユーグループが自社ビルに導入
                         スマートジャパン 2022/7/28
 トヨタ系の自動車販売会社などでつくるユーグループ(長野市)は2022年7月25日、本社ビルの改修に合せて、水素エネルギー利用システムを導入したと発表した。太陽光発電の電力で製造するグリーン水素と燃料電池を利用し、ビルのピークカットや非常時の電源として活用する。
    ⇒ 設置した水素製造装置・水素吸蔵合金タンクなどの設備
 システムを導入したのはユーグループの本社「プリズムビル」。ビル2階のテラスに20kWの太陽光発電、水素を製造する水電解装置、水素を貯蔵する水素吸蔵合金タンク、蓄電池、定格出力100kWの純水素燃料電池を設置した。
 この一連の水素製造・利用システムは清水建設が開発した「Hydro Q-BiC」を採用している。BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を通じ、再生可能エネルギーの余剰電力で製造した水素を、必要に応じて電力としてビルなどの建物に供給できるシステムだ。
 このシステムの大きな特徴が、水素の貯蔵に水素吸蔵合金タンクを採用している点。これは清水建設と産総研が共同開発した、水素を効率的に取り込める特殊合金を利用した貯蔵システムで、30度以下の温度にして1Mpa程度の圧力をかけて水素を吸蔵し、50度以上に加熱して水素を放出する仕組み。
 水素を約1000分の1の体積に圧縮して貯蔵できるため、気体のまま圧縮する方式や液化する貯蔵方法よりコンパクトに水素を保管できるという。また、扱いやすい環境で水素の貯蔵・放出ができることに加え、一般的な合金と異なり着火の危険性がなく、消防法においても「非危険物」として区分されるため、貯蔵・運用に関して有資格者不要で扱える、レアアースが含まれていないといったメリットがあるとしている。20年で約3%程度しか劣化しない長寿命も特徴だ。
 今回は450Nm3、蓄電量量ベースでは674kWhに相当する水素を貯蔵できるシステムを導入した。

災害時には非常用電源としても活用
 今回導入した「Hydro Q-BiC」では、太陽光発電の余剰電力で水素を製造する。BEMSの制御により必要な水素を燃料電池に送って発電を行い、建物のピークカットなどに利用する計画だ。なお、発電を担う燃料電池は東芝製の純水素燃料電池「H2Rex」を採用している。燃料電池で発電する際に発生する予熱は、温室に供給して野菜や果物の栽培にも生かす計画だという。
 ユーグループでは長野市と災害時の対策支援に関する協定を締結しており、今回導入したシステムは災害時にも活用される。災害時などにはビル1~3階を開放し、避難所や防災拠点として利用する計画で、その際には「Hydro Q-BiC」をビルの照明などの非常用電源として活用する。
 なお、システムを導入したプリズムビルは、今回の改修によってZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を図っている。ZEBの改修において水素エネルギーシステムを建物に導入する取り組みは、日本初の事例としている。

原発処理水・海洋放出 規制委の認可に会長は…「失望した」

 福島県漁連野崎哲会長県漁連の組合長会議、トリチウム水の海洋放出について、「原子力規制委は独立した組織なので、海洋放出については『ダメよ』と言ってくれないかなと思っていましたけど  失望した(要旨)と述べました。
 規制委は当初から海洋放出に前向きな姿勢を見せていました。
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原発処理水・海洋放出 規制委の認可に会長は…「失望した」 福島県漁連組合長会議<福島・いわき市>
                            福島テレビ 2022/7/27
福島県いわき市で開かれた福島県漁連の組合長会議。
東京電力の担当者が、福島第一原発で溜まり続ける処理水を海洋放出する計画が、原子力規制委員会から正式に認可されたことなどを説明した。
県漁連の野崎会長は「海洋放出に反対する立場は変わらない」とした上で、東京電力の計画を認可した原子力規制委員会については…。
福島県漁連・野崎哲会長:「(原子力規制委は)独立して規制する立ち位置にあるので、海洋放出については『ダメよ』と言ってくれないかなとは思っていましたけど、そこまでは言わなかったという。だからこれについては失望したと」

処理水の海洋放出は2023年春頃の開始が目指されていて、県漁連では引き続き国などに説明を求めていくとしている。 

29- 東電旧経営陣 株主訴訟 原告被告双方が控訴

 福島第1原発事故で起こされた株主代表訴訟で、旧経営陣に計13兆3210億円を東電に賠償するよう命じた東京地裁の判決に対して、旧経営陣側4人と株主側の双方が27日、判決を不服として控訴しました。

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原発訴訟、旧経営陣と株主が控訴 東電に賠償13兆円、判決に不服
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 東京電力福島第1原発事故で津波対策を怠り、会社に損害を与えたとして計13兆3210億円を東電に賠償するよう東京地裁の株主代表訴訟で命じられた東電の勝俣恒久元会長(82)ら旧経営陣側4人と株主側の双方が27日、判決を不服として控訴した。
 勝俣氏以外の3人は清水正孝元社長(78)、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)。いずれも「コメントは控える」としている。東電は「個別の訴訟に関することは回答を差し控える」とした。
 原告の株主側は訴訟で総額22兆円の支払いを求めており、今月13日の判決が認めなかった部分の取り消しを求めた。

2022年7月28日木曜日

東電株主訴訟 民事と刑事で分かれる司法判断 東電と国の責任分担のあり方は

 東京地裁(朝倉佳秀裁判長)が13日、旧経営陣5人に対し22兆円を賠償するよう求めた東電の株主訴訟で、元経営陣4人に対して合わせて13兆3000億円余りの賠償を命じる判決を言い渡した件に関して、ジャーナリストの岸井雄作氏が「民事と刑事で分かれる司法判断...問われる東電と国の責任分担のあり方」という記事を出しました。

 判決からやや日が経っているので多分判決要旨を熟読したのでしょう、判決のポイントが分かりやすく記述されているうえに、それを巡る大手メディア紙の評論が、判決批判側=原発賛成派の産経、読売、日経と、判決評価側=原発批判派の毎日、東京、朝日を対比する形で紹介されています。
 そして読売と産経が「砂川裁判」で一躍有名になった「統治行為論」(高度に政治的な案件については司法はなじまない)に言及していることにも触れていますが、原発は決して高度に政治的な問題として司法が回避するような問題ではありません。

 それにしても担当した東京地裁の朝倉佳秀判事が衆目の一致する超エリートであったとは驚きで、余程勇気のある判事と思われます。少なくとも資質的には現在の最高裁判事らと比較しても優りこそすれ劣らない人物なのでしょう。
   ⇒(7月24日)史上最高「13兆円」賠償命じた朝倉裁判官は超エリート判事
 東京高裁でこの判決が維持されるのかどうかについて強い関心を持たざるを得ません。
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民事と刑事で分かれる司法判断...問われる東電と国の責任分担のあり方
                       岸井雄作 J-CAST 2022/7/25
                           ジャーナリスト
東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐる東電の株主代表訴訟で、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長ら元役員4人に13兆3210億円の支払いを命じる判決が言い渡された。金額の大きさにも驚かされるが、事故の予見は可能だったと判断し、旧経営陣の過失を認める初の司法判断になった。
ただ、1か月前には、この事故で避難した住民らが国相手に起こした集団訴訟で、最高裁が事故を防ぐ時間がなかったとして国の賠償責任を否定する判断をしている。
大手紙の論調も、こうした経緯と原発へのスタンスの違いから、評価が真二つに割れた。

裁判の争点は「長期評価」への旧経営陣の対応
株主代表訴訟は、株主48人が事故によって東電が被った損害22兆円余り(被災者への損害賠償や廃炉、除染の費用など)を賠償するよう、旧経営陣5人に求めたもの。2022年7月13日に東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は勝俣氏、武藤氏ら4人に計13兆円余りの支払いを命じた。
裁判の最大の争点は、2002年に年に政府の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」に対する旧経営陣の対応だった。原告は、巨大津波が第一原発を襲う可能性を旧経営陣は事前に認識していたにもかかわらず、安全対策を怠ったと主張。

判決は、この長期評価をもとに(1)東電子会社が2008年に津波予測を15.7メートルと計算していたこと (2)当時、原発部門の副本部長だった武藤氏がその妥当性の検討を土木学会に委ねて対策を講じなかったこと (3)勝俣氏らが09年2月に14メートル程度の津波の可能性の報告を受けていたことなどを指摘。主要な建屋や機器の浸水対策(水密化)をすれば事故は回避でき、その工事は2年ほどで完了できた――などとして、対策を怠ったと事故の因果関係を認めた。
これより約1か月前の6月17日、この原発事故で避難した住民らが起こした4件の集団訴訟で、最高裁は国の賠償責任を否定する判決を出した。2002年の「長期評価」に基づく巨大津波試算の合理性は認めたものの、予見可能性について明確な判断を避けたうえで、実際の地震は想定を大きく上回るもので、国が東電に対策を命じて防潮堤が設けられたとしても、津波による浸水は防げなかった――などとした。

これとは別に、勝俣元会長ら3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された刑事裁判では一審は無罪だった。「長期評価」について、複数の専門家のあいだで疑問が生じていたことから、信頼性を否定したものだ。「合理的な疑い」が残らない立証を求める刑事裁判は、民事裁判より立証のハードルが高いということだろう。
(ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏に性暴力被害をうけたとして訴えた件で、刑事事件としては容疑不十分で不起訴になったが、民事では332万円の賠償を命じた判決が確定しているように、民事と刑事の「ねじれ」はよくあることだ)

「原発推進」VS「脱原発」割れる論調
今回の13兆円にのぼる賠償判決について、大手6紙は7月14、15日に一斉に社説(産経は「主張」)を掲載した。その論調を比べてみよう。

原発推進を社論とする読売新聞と産経新聞は地裁の判決を異例といえるほど批判する。
15日付の読売新聞は「最高裁は先月、避難住民らが国を訴えた4件の民事裁判で、津波の規模が想定より大きかったため、事故は防げなかったとする統一判断を示している。......地裁が最高裁と正反対の判断を示すということを、どう理解したら良いのか。......刑事裁判の1審で、事故は予見できなかったとして無罪になっている。刑事と民事は異なるとはいえ、この違いも分かりにくい」と指摘。
14日付の産経新聞は「またもや司法の大迷走だ」との見出しで、読売以上に強いトーン。「最高裁の判断に照らせば、旧経営陣が対策を講じていても事故は起きていたはずなので、株主側の主張とは正反対だ。それを認めた東京地裁の判決は最高裁の審理を無視したものとみられても仕方あるまい」とし、やはり刑事事件の一審無罪判決を挙げ、「刑事裁判と民事裁判の差があるにしても、同一地裁で津波被害の予見可能性について3年を経ずに逆の判断が示される事態は、迷走以外の何物でもあるまい。しかも個人の支払い能力を超越した天文学的な賠償額である。法廷の理性が疑われる」と今回の判決を、口を極めて『断罪』している。
同じ原発推進の立場でも、14日付の日本経済新聞はもっと『理性的』だ。「原発がひとたび重大な事故を起こせば、周辺住民の生命や環境だけでなく、広範な地域で深刻な被害をもたらす。それゆえ、稼働させる事業者の経営陣は安全性の確保にできる限りの注意を払わなければいけない。判決はこう断じている」と指摘したうえで、「この指摘は電力会社に限らないのではないか。人命や人々の暮らしに大きな影響を与えるインフラ企業や交通機関の経営幹部も真剣に受け止めてほしい」と、判決の意味を訴えている。
もちろん、それに続いて、最高裁判決や刑事裁判の1審無罪と判断が分かれたことも指摘するが、「引き続き法廷での審理を注視したい」と、冷静だ。

これらに対し、脱原発を主張する3紙は、判決を評価する。
15日付の毎日新聞は「判決は『原子力事業者の取締役として、安全意識や責任感が根本的に欠如していた』と厳しく批判した」、15日付の朝日新聞も「そろって取締役としての注意義務を怠り、地域と会社に甚大な被害を与えた」など、判決の基本認識を評価。東京新聞(15日付)は「今回の判決は、旧経営陣の過失を認めた初の司法判断で、賠償額としても過去最高になる。原発事故から約11年4か月。『後世に残る名判決』との声が上がるほど適切な判断だったと大いに評価する」と、最大級の表現で判決を評価した。
具体的な点についても、「旧経営陣は土木学会に検討を依頼するだけで対策を放置。判決は『対策の先送りで著しく不合理だ』と厳しく指弾した」(東京新聞)「主要施設の水密化措置をとっていれば防げた可能性があると述べた。事実を踏まえた説得力のある指摘だ。最高裁の判断は早晩見直されなければならない」(朝日新聞
などと指摘している。
さらに毎日新聞は、「審理では、事故を巡る裁判で最も多くの証拠が提出された。裁判官が初めて福島第1原発を視察してもいる」
と書き、最高裁判決に反する判決の重みを指摘している。

読売と産経が主張する「統治行為論」
今回の株主代表訴訟の判決が、13兆円という巨額賠償を命じたこともあるが、「国策民営」といわれる国と電力会社の関係、責任分担のあり方も問われているという問題意識は、多くの社説が触れている。
朝日新聞は「3・11が明らかにしたのは、責任をあいまいにしてきた原発の『国策民営』の矛盾とほころびである」、毎日新聞も「原子力災害は事業者が損害を賠償する仕組みになっているが、過失の有無を問わないため、責任の所在が曖昧になる。......電力会社だけでなく、「国策民営」で原発を推進してきた国も、判決を重く受け止めなければならない」などと指摘した。

原発推進の日本経済新聞は「『国策民営』で進められてきた原子力政策を踏まえ、国の関与についてもあらためて議論する必要がある」と問題提起した。
読売新聞も「原発は国策で推進してきた。東電の責任は重いとはいえ、国の責任を棚上げし、4人の個人に全てを負わせることが妥当なのか」と書く。ただし、だからといって、もちろん、国の責任を否定した最高裁判決を批判するわけではない。
読売新聞や産経新聞はこれまでも、原発に批判的、懐疑的な判決が出るたびに、「またもや原子力発電が『司法リスク』にさらされた」(2022年6月20日付 産経新聞主張「泊原発の差し止め 科学的論理欠いた判決だ」)などと司法が原子力政策に『介入』することを批判。「高度で最新の科学的、技術的知見に基づいた行政側の審査結果を尊重する司法判断が、これまで積み重ねられてきた。今回の高裁決定は、こうした枠組みからはみ出すもの」(20年1月18日付 読売新聞社説「伊方差し止め 司法はどこまで判断するのか」)などという論法で、今回も、こうした流れでの判決批判を展開している。
両紙の主張は、統治行為論(高度の政治性ある事柄に関しては司法判断になじまない)に近い。福島第一原発事故という未曽有の被害を経験した今、読売新聞が主張するような「技術的知見に基づいた行政側の審査結果を尊重する」というような行政追認でいいのかが、問われていると考えるべきだろう。

下級審の判決の積み重ねが最高裁を動かして判例が変わるということはこれまでもあった。今回も、民主主義社会の司法の在り方を考えさせられる判決だったと言えそうだ。(ジャーナリスト 岸井雄作)