2023年5月31日水曜日

原発60年超法、31日成立へ 福島事故後に導入の制限を見直し

 参院経産委員会は30日、原発の60年超運転を可能にする「GX脱炭素電源法案」を賛成多数で可決し31日の参院本会議で可決、成立する見通しです

 29には国際環境NGOFoE JapanNPO法人・気候ネットワークなど市民団体国会内で共同会見を開き「原発推進等5法案には多くの問題点がある。審議がつくされたとはいえない」、「気候変動対策に全くならない」などと反対を表明しました。
 工学的根拠が不明のまま、岸田政権による原発の60年超延長という「最大限活用」が実施されることになります。
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原発60年超法、31日成立へ 福島事故後に導入の制限見直し
                            共同通信 2023/05/30
 参院経済産業委員会は30日、原発の60年超運転を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」を賛成多数で可決した。31日の参院本会議で可決、成立する見通し。岸田政権は原発の「最大限活用」を掲げており、東京電力福島第1原発事故後に導入した運転期間の制限規定を見直し、原発の長期利用へ踏み出す。
 法案では「原則40年、最長60年」という大枠を維持しつつ、運転期間の規定を原子炉等規制法から電気事業法へ移管。経産相が認可すれば、原子力規制委員会の再稼働審査で停止した期間などを計算から除外し、60年を超す運転が可能となる。規制委は運転開始30年後から最長10年ごとに劣化を確かめる。
 岸田文雄首相は30日の経産委で、経年劣化による事故が起きないかを問われ「ゼロリスクにはならない。リスク低減の活動に規制委と事業者が継続的に取り組むことが重要だ」と述べた。


原発推進法案採決ノー 市民団体会見 審議つくされず
                       しんぶん赤旗 2023年5月30日
 参院での審議が最終盤となっている原発推進等5法案について国際環境NGO「FoE Japan」など市民団体は29日、「多くの問題点がある。審議がつくされたとはいえない」と、国会内で共同会見を開きました。
 同事務局長の満田夏花(かんな)氏は、同法案で60年を超える原発の運転が可能になるのに、老朽原発の審査手法の内容が具体的に示されていないことなどを挙げ、「徹底的に審議を尽くすべきだ」と強調しました。
 NPO法人・原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏は、参院経済産業委員会で可決されようとしていることに「強い憤りを持つ」と発言。法案は福島原発事故の教訓をないがしろにし、全く脱炭素に役立たないことに時間とコストを投じる無責任さがあると指摘しました。
 NPO法人・気候ネットワーク東京事務所長の桃井貴子氏は、気候変動対策を理由に岸田自公政権は原発を推進しようとしているが、「対策に全くならない」と強調。安全性が高くコストが安いなど未来の電源は再エネであり、法案は「政府全体として気候変動対策に前向きに取り組む気がないと表明したもの」と批判しました。

 同法案で福島での地方公聴会開催を求めていた福島大学名誉教授の今野順夫氏は、「事故がなかったかのように回帰の方向。通してはいけない法案だ」と述べました。
「Fridays For Future (未来のための金曜日)Japan」のメンバーは、脱炭素のために原発が必要だというストーリーによって「公正な社会の実現が遠のいている」として、法案に反対だと述べました。

東北電力 6月からの値上げ額は「1325円」に 燃料価格の下落基調受け

 東北電力は5月30日、6月から値上げする家庭向けの電気料金について、燃料費が落ち着いてきたことと国の補助額を加味した結果、値上げ額が「1325円」になると発表しました。

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東北電力 6月からの値上げ額は「1325円」に 燃料価格の下落基調受け値上げ幅圧縮【新潟】
                      NST新潟総合テレビ 2023/5/30
東北電力は5月30日、6月から値上げする家庭向けの電気料金について、国の補助額を加味した結果、値上げ額が「1325円」になると発表しました。
東北電力など電力大手7社は、燃料価格の高騰などを背景に家庭向けの電気料金を6月から大幅に値上げします。
東北電力は、標準家庭1カ月の電気料金の値上げ額について「2110円」と発表していましたが、燃料価格の下落基調を受け、値上げ幅は圧縮。
最新の燃料費等調整額を加味した結果、現在の料金から「1325円」値上げされると発表しました。
値上げされる電気料金は6月の使用分から適用されます。


東北電力6月からの値上がり幅縮小 火力発電の燃料費が落ち着く
                         khb東日本放送 2023/5/30
 東北電力の6月の値上がり幅は、一般的な家庭で489円縮小し1621円になります。火力発電の燃料費が落ち着いてきたためで、7月の電気料金は6月に比べて値下がりします。
 東北電力は6月の値上げ幅を2110円としていましたが、489円縮小し1621円になります。
 これは火力発電に使う液化天然ガスなどの燃料の価格が落ち着いてきたためで、政府の支援策を反映した一般的な家庭の電気料金は7833円となります。
 同じ理由から7月は6月に比べると値下がりすることになり、一般的な家庭の電気料金は来月よりも296円安い7537円となります。

トリチウム水放出でシンポジウム 流通業者が参加 政府「モニタリング強化」

 原発事故によるトリチウム汚染水について政府はいわき市で流通業者などに対して安全性を伝えるシンポジウムを開きました。政府は「今年春から夏ごろ」に海洋放出を開始する方針を示しています。
 参加者から「水産関係者の了解をどのように取ろうと思っているのか」との質問があったということです。海洋放出については地元業者の同意が条件とされているので当然の質問で、政府がシンポジウムや説明会で一方的に問題がないことを力説することとは別の問題です。それに近隣諸国の同意も得られていません。
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原発処理水放出でシンポジウム、流通業者が参加 政府は「モニタリング強化」説明 福島
                         テレビユー福島 2023/5/29
原発事故による福島第一原発の処理水について政府は、福島県いわき市で流通業者などに対して安全性を伝えるシンポジウムを開きました。
政府は、福島第一原発の処理水について、「今年春から夏ごろ」に海洋放出を開始する方針を示しています。
こうした中、政府は29日、いわき市で、処理水の安全性などに関するシンポジウムを開き、ウェブ参加を中心に流通業者などおよそ300人が参加しました。
シンポジウムでは、政府の担当者が、放出後の海域や水産物のモニタリングを強化することを説明。また、東京電力の担当者からは、処理水の水槽で飼育している海洋生物のトリチウム濃度は、一定期間がたてば平衡状態になることが報告されました。
一方、参加者からは、「水産関係者の了解をどのように取ろうと思っているのか」との質問がありました。
経済産業省 竹島睦審議官「漁業関係者を含め、広く国民の皆様にご理解いただくように引き続き説明をさせていただいています」
このあと、原子力規制庁から、処理水の海洋放出に関しては、設備面と運用面での実施計画を共に認可したとの報告があり、規制庁では、運用体制などを引き続き厳正に検査していくということです。
処理水の海洋放出をめぐっては、県漁連では、反対の立ち位置を崩しておらず、今後、関係者の理解をいかに得られるかが課題です。

31- 反転攻勢でザポロジエ原発事故の懸念高まる 両軍交戦なら「大惨事」に

 ロシアの侵攻に対するウクライナの大規模な反転攻勢開始が予想される中、ロシアが占拠する南部ザポロジエ原発周辺でも戦闘が激化し、事故につながることへの懸念が高まっています。原発本体への攻撃はないにしても、外部電源の喪失をすでに7回繰り返しているので、今後も送電線を修復出来るかどうかが問題になるということです。

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反転攻勢で原発事故の懸念高まる 周辺で両軍交戦なら「大惨事」に
                        共同通信 2023年05月28日
 【キーウ共同】ロシアの侵攻に対するウクライナの大規模な反転攻勢開始が予想される中、ロシアが占拠する南部ザポロジエ原発周辺でも戦闘が激化し、事故につながることへの懸念が高まっている。欧州外交筋は28日までに、原発周辺で両軍が交戦すれば「大惨事につながる」として、反攻の際にウクライナ軍が原発を直接攻撃しないよう求めた。
 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が「われわれは原子力事故の危険を避けるために直ちに行動しないといけない」と強調する中、ウクライナ原子力企業エネルゴアトムは22日、ザポロジエ原発が外部電源を一時喪失し、非常用ディーゼル発電機が作動したと発表した。
 外部電源喪失は侵攻開始以降7回目。ロシアの攻撃で送電線が損傷し、その後復旧したという。しかし同外交筋は「8回目や9回目も修復できるかどうかは誰にも分からない」と危惧する。
 領土奪還を狙うウクライナの反攻の対象は、ロシア占領下の東部や南部とみられ、ロシア側も原発周辺で塹壕を掘るなど防衛準備を進めているのは確実だ。

2023年5月29日月曜日

川内原発延長是非の県民投票せず 鹿児島知事が表明

 九電が最長20年の運転延長を申請した川内原発を巡って、塩田康一鹿児島知事は26日、知事選の公約で条件付きで検討するとしてきた県民投票を実施しない方針を明らかにしました。知事選では県民投票に言及し、脱原発から稼働容認に転じた当時の現職を破った経緯があり、県民投票を求める市民からは「公約違反だ」との声が上がっています

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川内原発延長是非の県民投票せず 鹿児島知事の方針表明に「公約違反だ」と反発も
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 九州電力が原子力規制委員会に最長20年の運転延長を申請した川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を巡って、塩田康一知事は26日、知事選の公約で条件付きで検討するとしてきた県民投票を実施しない方針を明らかにした。独自に安全性を検証した県の原子力専門委員会が「適正」と判断したことを受けた。知事選では県民投票に言及し、脱原発から稼働容認に転じた当時の現職を破った経緯があり、県民投票を求める市民からは「公約違反だ」との声が上がっている。
 原発の運転期間は原則40年だが、規制委の審査を経てさらに最長20年延長できる。川内原発は1号機が2024年7月、2号機が25年11月に運転期間が迫っており、九電は昨年10月に延長を申請。現在、規制委の審査が続いている。
 専門委は26日、九電が運転延長のために実施した特別点検や劣化状況の評価を「適正」とする報告書を塩田氏に提出。塩田氏は終了後、報道陣の取材に「(専門家の意見は)集約された」と述べ、県民投票を実施しないことを明言した。
 塩田氏は今後、規制委や九電への要請案を公表し県民から広く意見を募る考え。規制委の審査が終わると見込まれる秋ごろまでに要請書を規制委や九電に提出する方針で、「厳正な対応を求める」と強調した。
 一方、県民投票実施を求めて先月発足した「川内原発20年延長を問う県民投票の会」の向原祥隆事務局長(66)は「信じて投票した県民への裏切りだ」と反発した。(内田完爾)


川内原発の運転延長「県民投票は実施せず」 鹿児島県知事が表明、意見募集へ 専門委から最終報告書、6月に住民説明会
                           南日本新聞 2023/5/27
 原則40年の運転期限が迫る九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転延長を巡り、鹿児島県の塩田康一知事は26日、マニフェスト(政策綱領)で「必要に応じて実施する」と掲げていた県民投票を行わない方針を示した。県民の意向を把握するための手段として、原子力規制委員会などに提出する県の要請書案についての意見を募集する。

 運転延長を検証する県原子力専門委員会の地頭薗隆座長は同日、九電の特別点検などを「適正」とまとめた最終報告書を提出。受け取った塩田知事が、その後の報道陣の取材で答えた。県民投票を見送る理由について「おおむね委員会の意見は集約されたと考えている。県民投票で○×を聞くよりは、県民の意見を具体的にしっかり聞いた方がいい」と説明した。
 県は、6月14日に専門委の検証結果に関する住民説明会を薩摩川内市で開くことも公表。同15日から7月14日まで、運転延長を審査する規制委と九電宛ての要請書案に対する意見を募集する。その上で、規制委が審査結論を出す前の夏から秋にかけて要請書を提出する方針。
 専門委は、規制委などに安全性向上を求める要請事項を記した意見書も提出。塩田知事は「報告書と意見書を尊重し、規制委と九電に厳正な対応を要請したい」と述べた。
 塩田知事は県民投票に関して「専門委の意見が集約されない場合に県民の意向を把握する手段として、最も適切と判断した場合に実施する」との見解を示してきた。一部市民団体は県民投票条例制定を目指し、6月初めから署名活動を始める予定。
 川内原発は1号機が2024年7月、2号機が25年11月に運転期限を迎える。九電は22年10月に、20年の運転延長を規制委に申請した。

大間原発の耐震評価で深さ3kmを3mと誤入力 審査「ストップ」

 建設中の大間原発(青森県)を巡り、電源開発が原子力規制委に提出した安全審査の書類にミスが見つかり、審査が事実上ストップしています。

 原発の耐震設計に関わる計算で、地表から震源の断層上端までの距離「3km」を間違えて「3m」として計算していたものです。耐震計算はコンピューター上のプログラムで行うため、計算の正否を外部の人がチェックするのは困難ですが、今回は入力の値が3桁違っていたということなので、計算の実施サイドは勿論ですが、それを見落としたチェックサイドもチェック不十分の指摘は免れません。結果的に桁外れに頑丈な設計が行われていた筈です。
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大間原発の耐震評価で誤入力、深さ「3キロ」を「3メートル」…安全審査「ストップ」
                            読売新聞 2023/5/28
 建設中の大間原子力発電所(青森県)を巡り、電源開発が原子力規制委員会に提出した安全審査の書類にミスが見つかり、審査が事実上ストップしていることがわかった。原発の耐震設計に関わる計算で「キロメートル」と「メートル」の単位を取り違え、実際とかけ離れたデータが記載されていたという。
   【写真】建設工事が中断している大間原発(昨年9月)

 電源開発によると、データの解析を委託した企業が、原発周辺の断層が引き起こす地震動を計算する際、地表から断層上端までの深さを本来は3キロ・メートルと入力するところ、誤って3メートルと入力していた。この結果、大間原発が実際以上に大きな揺れに見舞われると評価していた。電源開発は2月の規制委の審査会合でミスを報告した。現在、同社が再発防止策の策定を進めており、断層に関する審査が行えない状態という。
 電源開発は委託企業のデータを点検することになっていたが、ミスを見逃した。点検の機会は14回あったという。規制委は昨年から書類に記載されたデータを疑問視して確認を2回求めたが、同社はミスを否定し、気付くのが遅れた。
 大間原発は、出力が国内最大級の138万キロ・ワット。電源開発が2008年に着工した。14年、東京電力福島第一原発事故後に導入された新規制基準に基づく安全審査を申請し、30年度の運転開始を目指している。
 原発などの審査を巡っては、日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県)や日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県)でも規制委に提出された書類に大量のミスが見つかっている。

福島第1原発1号機 原子炉土台のコンクリート損傷への東電対応(詳報)

 これまで何度か取り上げてきましたが、新に産経新聞が福島第1原発1号機の原子炉土台のコンクリート損傷問題を取り上げましたので、「詳報」として紹介します。

 関連記事
  (5月27日) 福島第一原発の土台損傷 規制委が対策要求 東電見通しを「楽観的」と
  (4月15日) 原子炉土台、全周損傷 福島第1原発1号機
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福島第1原発で新たな「想定外」 深刻な土台損傷で問われる東電の覚悟
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廃炉に向けた作業が続く東京電力福島第1原発で新たな「想定外」が明らかになった。目前に迫る処理水の海洋放出は、懸念を表明する韓国の視察団を受け入れ安全性をアピールできたが、一方でメルトダウンを起こした1号機の原子炉圧力容器を支える土台の損傷が深刻だったことが判明。原子力規制委員会は東電に対しリスク評価の検討を指示した。今後起こり得る不測の事態にどう対応するのか。東電の覚悟が問われる。(白岩賢太)
 【写真】ペデスタル開口部から撮影した内部映像のパノラマ画像

「万が一の場合、どんなことが起こり、どういう対処法があるのか。事前に考えておく必要がある」。24日の規制委会合後の会見で、山中伸介委員長は、土台損傷に伴う敷地外への放射性物質の飛散リスクも含めて影響評価を行う意向を重ねて強調した。
東電は3月、1号機の土台の開口部から水中ロボットを入れ、原子炉真下の「ペデスタル」と呼ばれる円筒形の土台内部を事故後初めて撮影した。ペデスタルは、約440トンの圧力容器を支える土台で高さ約8・5メートル、内径約5メートルの鉄筋コンクリート製。コンクリートの厚みは上部で約1・8メートル、下部で約1・2メートルある。
映像解析の結果、床面から約1メートルの高さまで内壁のコンクリートが消失し、鉄筋がむき出しになっていたことが判明。損傷部位は内側の半周以上にわたって確認されたが、どの程度奥まで進んでいるのかは分かっていない。事故直後に溶け落ちた高温の核燃料によってコンクリートだけが溶けたとみられ、東電は状況から全周にわたって損傷しているとの見方を示した。
ペデスタルの底には、床面から約1メートルの高さまで堆積した燃料デブリ(溶融燃料)とみられる堆積物も確認されている。もし、大きな地震が起きれば、支持機能を失った土台が圧力容器の重さに耐えられず、傾斜や沈降する恐れがある。
想定以上に沈降した場合、圧力容器などに接続する配管の損傷や振動によって、中に閉じ込めた放射性物質が外へ飛散する可能性もある。最悪のケースは、ペデスタルの真上にある構造物が落下し、底にたまった燃料デブリの状態が変化して核分裂反応を起こす「再臨界」のリスクだ。
東電は「圧力容器は横からも支える構造で耐震性に問題はない」と説明した上で、「仮に土台が支持機能を失っても、燃料デブリは事故の進展に伴い冷却されて塊になっており、過去の研究からも臨界の可能性は極めて小さい」と再臨界のリスクについては否定的な見解を示す。

大阪大大学院工学研究科の村田勲教授(量子反応工学)は「昨年のペデスタル外周調査から内部の損傷度合いはある程度予想できたが、調査結果からはインナースカート(基礎に埋め込んだ鉄板)まで損傷が進んでいる可能性があり、強度上の問題が全くないとは言えない」と指摘。一方で、「再臨界のリスクも決してゼロではないが、これまでの中性子の計測結果からはその可能性は極めて低いと考えられる。むしろ今回のような調査をさらに進展させてデブリの量を推計し、廃炉や事故のメカニズム解明につなげることが重要だ」と話している。

29- 「太平洋は日本の下水溝か」 中国、日本のトリチウム汚染水放出計画に猛反発

 朝鮮日報に、世界保健機関(WHO)総会で中国代表は27日「海洋への原発汚染水排出を決めた日本の一方的な決定に強い反対を表明する」として、

福島第一原発の汚染水が安全であれば、日本はなぜ農業用水や工業用水としても使用しないのか
汚染水を海に排出することが実行可能な唯一の方策なのか
自国の短期的な利益のために、全人類の共同利益を害する行為を行おうとしている
等と批判しました。
 いちいち尤もな指摘で、日本はこれに対して責任ある説明を行うべきでしょう。
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「太平洋は日本の下水溝か」…中国、日本の原発汚染水放出計画に猛反発
                          朝鮮日報日本語版 2023/5/29
【NEWSIS】日本による福島第一原子力発電所汚染水の海洋放流計画について、中国が「太平洋は日本が汚染水を捨てる下水溝ではない」として強く反発している。
 中国中央テレビ(CCTV)などによると、スイスのジュネーブで開催された世界保健機関(WHO)総会で中国代表は27日「中国は海洋への原発汚染水排出を決めた日本の一方的な決定に強い反対を表明する」とした上で上記のように述べた。
 中国代表は「福島第一原発の汚染水が安全であれば、日本はなぜ自分たちで使用せず、なぜ農業用水や工業用水としても使用しないで、自国の湖などに排出しないのか」と指摘し「日本はこれに対して責任ある説明を行うべきだ」と主張した。
 中国はさらに「(原発の)汚染水を海に排出することが実行可能な唯一の方策なのか」とも指摘した上で「率直に言えば、これは自分の金は節約することになるが、全世界には災害を及ぼすことになる」などと強く非難した。
 中国代表は「汚染水の海洋排出は全世界にどのような長期的影響を及ぼすのか」と質問し「海洋環境と人類の健康に予測できない被害をもたらす」とも指摘した。
 さらに「汚染水に害があることを知りながら、日本がこれを海に排出する意図は何か」自国の短期的な利益のために、全人類の共同利益を害する行為は必ず強い非難と排撃を受けるべきだ」とも訴えた。
 中国代表は「われわれは日本が国際的な責務を誠実に履行し、隣国を含む利害当事国や国際機関と十分に交渉した上で、最も安全かつ適切な方法で汚染水を処理し、国際社会から厳格な監督を受けることを改めて求める」と力説した。

2023年5月27日土曜日

福島第一原発の土台損傷 規制委が対策要求 東電見通しを「楽観的」と

 福島第一原発1号機の原子炉圧力容器を支える土台の損傷について、原子力規制委は24日の定例会合で、圧力容器が落下して原子炉格納容器を破損させ敷地外に放射性物質が飛散するケースも想定し、対策を検討するよう東電に指示する方針を決めました。
 東電は数カ月かけてまず土台の耐震評価をするとしていますが、それは放射性物質が建屋外に飛散する事態にはならないという想定を前提にしたもので、規制委のいう通り「楽観的」というしかありません。
 そもそも鉄筋を失った残骸モルタルの耐震強度をどんな風に求めるというのでしょうか。そんなことに悠長に取り組むというのは問題の本質から逃げているということです。まずはどうすれば圧力容器の落下(倒壊)を防げるのかの応急措置に全力を挙げるべきです。
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福島第一原発の土台損傷、原子力規制委が対策要求 東電見通しを「楽観的」と批判する理由は?
                         東京新聞 2023年5月25日
 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)1号機の原子炉圧力容器を支える土台の損傷について、原子力規制委員会は24日の定例会合で、敷地外に放射性物質が飛散するケースも想定し、対策を検討するよう東電に指示する方針を決めた。対策は一筋縄ではいかない。高い放射線だけではなく、東電による事故収束作業の遅れ自体が壁となっている。 (小野沢健太、渡辺聖子)

◆内部の鉄筋が露出
 周辺環境や住民に影響があるかもしれないことについては、事故を起こした東電に素早くやってもらうことが責務だ」。山中伸介委員長は会合後の会見で、甘い想定で対策を急ごうとしない東電を批判した。
 核燃料があった圧力容器を支える厚さ12メートルの円筒形の土台は、内側の壁面が全周で損傷し、コンクリートがなくなって内部の鉄筋が露出。だが、東電は放射性物質が建屋外に飛散する事態にはならないと想定し、数カ月かけて土台の耐震評価をするとしている。
 一方、規制委は圧力容器が落下して外側の格納容器も壊れ、放射性物質が外部に飛散する重大事態を想定した対応を優先させる必要があると判断した。
 会合では、東電への厳しい声が相次いだ。杉山智之委員は「東電の見解は楽観的。それなら大丈夫とは考えられない」と指摘した。

◆戻る住民、増す被ばくリスク
 1号機は2011年3月の事故時、水素爆発で建屋上部が吹き飛び、最上階がむき出しだ。最上階には崩れたがれきが散乱し、使用済み核燃料プールや格納容器の上に置かれたふたもずれ落ちた状態で露出している。格納容器が損傷すれば、放射性物質が建屋外へ放出しかねない。避難指示の解除が進んで周辺に住民が戻る中で、被ばくリスクが増しているのが実態だ。
 東電は「23年度ごろ」をめどに、1号機建屋を丸ごと覆う大型カバーの設置を計画している。プール内に残る392体の核燃料の取り出しに向け、がれき撤去などの作業時に放射性物質を外部へ飛散させないようにするためだ。
 カバーが完成すれば、格納容器が損傷しても、建屋外への放射性物質の飛散を抑える効果は期待できる。

















◆汚染配管の撤去、相次ぐミス
 ところが、カバー設置の前提となる工事が進まず、23年度ごろとする設置目標も達成に暗雲が漂う。
 設置場所は1、2号機と排気筒を結ぶ配管約110メートル分と重なり、配管の撤去が避けられない。事故時の排気(ベント)に使われた配管は人が近づけないほど高濃度に汚染し、昨年3月から遠隔操作で撤去を始めた。
 これがうまくいかない。切断装置の不具合や手順ミスが続き、これまでに成功したのは約20メートル分だけ。6月中に撤去を終える計画だが、延期を繰り返しており、先行きは見通せない。
 圧力容器の土台損傷が発覚し、緊急時の影響緩和につながるカバー設置は重要性を増した。汚染配管撤去は緊急を要するはずだが、東電の危機意識は低い。8日の会見で、作業を失敗した下請け企業への対応を問われ、広報担当者はひとごとのように答えた。「われわれがどこまで関与しなければならないのか」

【関連記事】調査動画200時間600GBを総点検 福島第一原発1号機の圧力容器土台の惨状、生映像で深掘りすると

東北電女川原発、差し止め認めず 異常事故「前提にできず」

 仙台地裁は24日、避難計画が実効性がないからとして石巻市民17人が女川原発2号機の再稼働差し止めを求めた訴訟を、「放射性物質を異常に放出する事故が起きる具体的な危険が存在することを立証していないから、避難計画の実効性については判断するまでもなく「再稼働の差し止めは不要」という判決を出しました。
 判決を言い換えれば「具体的な危険が立証されなければ避難計画は不要乃至形だけのものであればよい」ということになります。しかし逆に言えば「具体的な危険が立証されれば原発の稼働は出来ない」のですから、原発を稼働させる以上実効性のある避難計画は不要ということになり、稼働する原発においては避難計画の策定自体が不要ということになります。
 そもそも判決は、原発推進派のIAEAの原発の「深層防護」の考え方の第5層「避難」自体をも否定するもので、国際的に全く通用しません
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女川原発訴訟 運転差し止めの訴え退ける判決 仙台地裁
                     NHK NEWS WEB 2023年5月24日
宮城県にある東北電力・女川原子力発電所2号機について、重大な事故が起きた場合に備えて自治体が作成した避難計画は不備があるとして周辺の住民が運転の差し止めを求めた裁判で、仙台地方裁判所は避難計画に実効性がないという主張だけでは運転の差し止めを求めることはできないという判断を示し、住民側の訴えを退けました。

来年2月に再稼働が計画されている東北電力・女川原発2号機について、周辺の宮城県石巻市の住民17人は重大な事故が起きた場合に備えて市が作成し、県が関与する避難計画は不備があり、実効性がないと主張して運転の差し止めを求める訴えを仙台地方裁判所に起こしていました。
原発の運転差し止めをめぐる裁判は多くの場合、重大な事故が起きる具体的な危険性の有無などが主な争点になりますが、今回の裁判では原告側が「避難計画の不備」だけを理由に差し止めを求めていました。
24日の判決で仙台地方裁判所の齊藤充洋裁判長は、「原告側は放射性物質が異常に放出される事故が発生する具体的な危険があることについて主張や立証をしておらず、事故が起きる危険性を前提とすることはできない」と指摘しました。
そのうえで、避難計画に不備があるという主張だけでは裁判で原発の運転の差し止めを求めることはできないという判断を示し、住民側の訴えを退けました

原告側「不当判決」 
午前11時すぎ、原告側の弁護士と原告の1人が「不当判決」と書かれた紙を掲げて裁判所から出てくると、集まった支援者らは落胆した様子でした。

原告団長「中身のない判決。控訴に向けて準備急ぐ」 
判決のあと、仙台市内で原告団が会見を行い、今回の判決を批判しました。
原告団長の原伸雄さんは、判決で避難計画に実効性がないという主張だけでは運転の差し止めを求めることはできないという判断が示されたことについて、「避難計画の実効性の有無についての判断を放棄した判決だ。避難計画は事故が起きることを前提に作成されているにもかかわらず、放射性物質が放出される危険性についての立証を住民側に求めることは過剰だ」と批判しました。
その上で「全く中身のない判決で、何のために2年間も裁判してきたのか疑問に思っている。原発の再稼働が迫っているので控訴に向けて準備を急ぎたい」と話していました。
また、小野寺信一弁護士は「事故の危険性について人間の判断が絶対ではないということは福島第一原発の事故ですでに示されている。そのために避難計画があるにもかかわらず、実効性について判断されなかったことは非常に残念だ」と話していました。

東北電力「当社の主張 裁判所に理解していただいた」 
判決のあと、東北電力は仙台市内で取材に応じ、総務部の佐藤正人法務室長は「きょうの判決について当社の主張が裁判所に理解していただいたと受け止めています。引き続き、避難計画の実効性の向上に向けて、事業者としてできるかぎりの協力をしてまいります。また、地域のみなさまの理解を得ながら2024年の再稼働を目指してまいります」と話しています。

原発周辺の住民 さまざまな声
原発周辺に住む人たちからはさまざまな声が聞かれました。
石巻市は、市内全域が東北電力・女川原子力発電所からおおむね30キロ圏内の原子力災害対策重点区域に含まれ、原発で重大な事故が起きた場合に避難の対象となっています。
市内に住む70代の男性は「判決を聞いて残念です。福島第一原発の事故もありましたし、最近も全国各地で地震が起きているので、事故のリスクを考えると再稼働には反対です」と話していました。
また、市内の80代の女性は「原発が再稼働し、もし重大な事故が起きたら無事に避難できるかどうか不安です」と話していました。
一方、市内に住む20代の女性は「原発の安全性に不安はありますが、エネルギーが不足するなかで地域経済の面からも再稼働を受け入れなければいけないとも感じています。ただ、原発のリスクについて国や自治体にはもっとわかりやすく説明してほしいです」と話していました。

村井知事「防災体制の継続的な検証、改善に努める」
判決を受けて宮城県の村井知事は、「報道で承知しているが、県は訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控える」とした一方で、「県としては国や関係市町などと連携し、防災訓練の実施などを通じて女川原子力発電所周辺の防災体制について継続的な検証、改善に努めていく」としています。

齋藤市長「避難計画の実効性の向上に努める」

石巻市の齋藤正美市長は、「訴訟の当事者ではないためコメントは差し控えますが、今後も国や県のほか、関係機関と連携して原子力防災訓練を実施し、検証をふまえて避難計画の実効性の向上に努めていきます」としています。 

島国日本 実は隠れた資源大国だった?―華字メディア

 日本では理由は良く分かりませんが、洋上風力発電の方式を着床式(定置式)に特化した感じがあります。
 それに対してレコードチャイナは、日本は離岸すると直ぐに深くなる深水海域であるため浮体式洋上風力発電が適しているという記事を出しました。そして中国の水深100メートルを超える場所では日本の「浮体式風力発電」の技術が使われているということです。
 どちらが適しているかは基本的な問題ですが、日本はどのような根拠で着床式(定置式)洋上風力発電に特化したのでしょうか。
 レコードチャイナの記事を紹介します。
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小さな島国・日本、実は隠れた資源大国だった?―華字メディア
                         Record China  2023/5/25
文章はまず、「世界的に近代化が加速する中、数百万年をかけて形成されてきた天然資源は現在の生活のニーズを満たすことはできなくなってきている」と指摘。「エネルギー危機は一触即発の状態であり、この難関を突破するには代替品を探すほかなく、再生可能エネルギーの応用が大きな注目を集めている」とした。
そして、天然資源の分布は不均衡であり、再生可能エネルギーの活用も地域によって異なるとした上で、日本について「化石資源には乏しいものの再生可能エネルギーは豊富で、特に洋上の風力発電の潜在力は大きい」と説明。周囲を海に囲まれた島国・日本ならではで、重要な選択肢になるだろうと論じた。

文章は日本にとっての洋上風力発電の利点について、「海岸線が入り組んだ形をしており、多くは深水海域のため浮体式洋上風力タービンを設置するのに適している浮体式は着床式よりも台風や地震、津波などの自然災害の影響が少ないと言われ、安定して発電を続けることができる」とした。
また、「2016年に日本初となる浮体式洋上風力発電設備が実用化され強力な発電力を示している」と紹介。「現在のところは洋上風力発電所の建設コストは割高であるものの、技術の成熟に伴い全体のコストは設備数の増加に伴い急速に平準化されていくだろう」とし、「同じ設備なら陸上よりも海上の方が発電効率が高く、普及すれば火力発電設備よりも単価が安く、環境にも優しい」と述べた。
文章は、「これまで日本の再生可能エネルギーは太陽光に偏っていた。21年度の発電量では太陽光が9.3%を占めたのに対し、風力発電はわずか0.9%だった」と指摘。「世界第6位の排他的経済水域(EEZ)と領海を持つ海洋国家である日本の洋上風力発電の可能性は、他の再生可能エネルギーと比べて圧倒的と言える。これは日本の地場企業の技術支援と国内外が足並みをそろえて事業化を進めてきたことによる」とした。
そして、「大規模な事業化により従来型の発電に取って代わるという流れは顕著になっており、例えば中国の水深100メートルを超える場所では日本の技術が使われているほか、太平洋への進出も期待されている」と説明。「将来、浮体式洋上風力発電は主要な再生可能エネルギーになるのか、注目される」と結んだ。(翻訳・編集/北田)

27- 福島原発汚染水 「飲んではいけない」韓国原子力研究院長

 韓国原子力研究院の朱漢奎(チュ・ハンギュ)院長は24日の国会科学技術情報放送通信委員会で、福島第1原発の処理済み汚染水について、「飲用水の基準をはるかに超えるため、飲んではいけないというのが公式の立場」と答弁しまし(トリチウムの許容濃度は1万ベクレル/ℓとも)

 それは英オックスフォード大のアリソン名誉教授が今月、ソウル市内で開かれた韓国原子力研究院共催の記者会見で、ALPSで処理した1リットルの水が私の前にあれば飲むことができる」と発言したことに関連するものでアリソン氏がトリチウム(三重水素)濃度62万ベクレル/ℓの水が飲めるというのは確かに暴論と思われます。そもそもトリチウムの場合はそれを飲用すると体内被曝とは別にDNAを破壊する惧れがあります。
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福島原発汚染水 「飲んではいけない」韓国原子力研究院長
                           聯合ニュース 2023/5/24
【ソウル聯合ニュース】韓国原子力研究院の朱漢奎(チュ・ハンギュ)院長は24日の国会科学技術情報放送通信委員会で、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水について、「飲用水の基準をはるかに超えるため、飲んではいけないというのが公式の立場」と答弁した。
放射線・核物理学専門家である英オックスフォード大のアリソン名誉教授が今月、ソウル市内で開かれた韓国原子力研究院共催の記者会見で、福島原発の汚染水の危険性が誇張されたとして、「多核種除去設備(ALPS)で処理した1リットルの水が私の前にあれば飲むことができる」と発言し、論争が起きている。
朱氏は「汚染水のトリチウム(三重水素)の濃度は(1リットル当たり)平均62万ベクレルだが、飲用水の基準は1万ベクレル」として、「アリソン教授の発言は個人の突出的なものだった。研究院は常時飲用してはならないという報道資料を出す予定」と明らかにした。

2023年5月24日水曜日

柏崎刈羽原発の追加検査“継続”「自主的に対応できているか疑問残る」

 FNNプライムオンラインが、柏崎刈羽原発の改善措置についても追加検査“継続”になった事情についてやや詳しい記事を出しましたので紹介します。
 経過的には、新潟県が「総括検証委員会」を3月一杯で廃止にして総括的な検証は県で行うことにした点が「事新しい出来事」です。
 花角知事は、同委員会を廃止してもあとは新潟県で問題なくまとめることが出来るという態度ですが、池内前総括委員長に「色のついた報告書を出すな」と再三要求したのは再稼働に否定的な報告書を出すなという意味なので、県が今後「再稼働問題なし」とまとめることは間違いありません。それは既に花角知事が検証委員会ではなく、規制委の判断を重視することを明言していることからもあきらかです。
 花角知事になったことで、検証委員会の位置づけは米山前知事が当初構想した主旨とは大いに異なるものになりました。残念なことです。
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「生まれ変わる」東電幹部の言葉とは裏腹に…柏崎刈羽原発の追加検査“継続”「自主的に対応できているか疑問残る」
                     FNNプライムオンライン 2023/5/23
テロ対策の不備が相次いだ東京電力・柏崎刈羽原発の改善措置などを確認する追加検査について、原子力規制委員会は継続することを決めた。これにより、事実上の運転禁止命令も継続される。追加検査終了時期について、山中委員長は「東電の取り組み次第」と指摘した。

不備相次ぎ…事実上の運転禁止命令
原子力規制委員会 山中伸介 委員長:「私自身は、現状も厳しい状況であると認識している
原子力規制委員会の山中伸介委員長がこう話すのは、2021年、テロ対策の不備が相次いで発覚した東京電力の柏崎刈羽原発。
2021年4月には、事態を重く見た原子力規制委員会が東京電力に対し、事実上の運転禁止命令を出す事態に。

東京電力 小早川智明 社長(2021年9月):「本気で生まれ変わらなければ
東京電力新潟本社 橘田昌哉 代表(2021年9月):「柏崎刈羽原発を生まれ変わらせるために
柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長(2021年9月):「生まれ変わった姿を行動と実績で示す

その後、東京電力が改善計画をまとめた報告書を提出。
原子力規制庁 熊谷直樹 追加検査チーム員(2021年10月):「追加検査フェーズ2の初回の現地検査を実施する
これを受け、原子力規制委員会は、委員全員が現地入りするなど異例の体制で追加検査を進め、実際に改善が図られているのかを確認してきた。

「疑問残る」追加検査継続へ
そして2023年5月17日、ようやく取りまとめられた追加検査の報告書。
柏崎刈羽原発追加検査チーム:「事業者の自律的な改善が見込めるとは言えない。したがって検査を継続する
改善が必要とされた27の項目のうち、正常な監視の実現や一過性のものとしない取り組みの実践など、4つの項目で課題が残ると判断し、追加検査を継続することを決めた

原子力規制委員会 山中伸介 委員長:「本当に、自主的に対応できている状況なのかというところは疑問の残るところ
この追加検査の継続に伴い、運転禁止命令も継続されることになった。

“原発の再稼働”目指す政府
一方で、原発の再稼働をめぐっては…
岸田首相(2022年8月):「設置許可済みの原発再稼働に向け、国が全面に立ってあらゆる対応を取ってまいります
政府は2022年、「2023年夏以降に、柏崎刈羽原発6・7号機を含む7基の原発の再稼働を目指す」と表明

5月16日も、電力大手7社の電気料金の値上げを了承した際に…
西村康稔 経産相:「原発の再稼働が進んでいる関西電力・九州電力は料金改定を行っておりません
西村大臣がこう発言し、原発再稼働の必要性を訴えていた。
原発立地自治体である柏崎市の桜井雅浩市長も追加検査の継続決定を受け、エネルギーの価格高騰に触れながら「時間がかかること、イコール安全・安心ではない。むしろ不安ですらある」とコメント。

追加検査 終了時期は「東電次第」
しかし、追加検査は、その終了の時期を見通せないのが現状だ。
柏崎刈羽原発追加検査チーム:「東京電力の対応によるところが大きい、どのくらい時間がかるは明示できない
今後の追加検査のポイントは、「東京電力が自律的に改善する取り組みができるかどうかに尽きる」と話す山中委員長も審査終了の時期については明言できないとしている。
原子力規制委員会 山中伸介 委員長:「1カ月や2カ月で何か解決できるようなものではないかと思う。時期については答えづらいが、東電の取り組み次第かなと
原子力規制委員会は、できるだけ早い時期に東京電力の小早川社長と面会し、改善に対する決意などを確認する方針だ。

花角知事「追加検査しっかりと」
この決定について、5月17日の記者会見で受け止めを問われた花角知事は…
花角知事:「一般論として、(東京電力には)自律的な改善が見込まれる状況になってほしい

柏崎刈羽原発の再稼働判断の材料とするため、新潟県は現在、独自の3つの検証の取りまとめを進めている。
花角知事は、県の作業の進め方に影響はないとの見解を示しながら、「今後の規制委員会の検査結果を待つ」と話した。
花角知事:「規制委員会は安全性を確認する唯一の規制機関として、追加検査をしっかりやってほしい

また、花角知事は今後必要に応じ、県の技術委員会に規制委員会の担当者を招き、検査の状況などを聞く方針を示した。 (NST新潟総合テレビ)