2019年3月31日日曜日

福井の関電3原発 火山灰の評価見直し 改めて審査へ

 鳥取県の大山が噴火した場合、福井県内にある高浜、大飯、美浜の3つの原発について、関西電力は、当初敷地内で最大およそ10cmの火山灰が積もると想定していました。
 しかし、大山からの距離がほぼ同じである京都府内の地層でおよそ25cmの火山灰の層が見つかったことから火山灰の量を評価し直した結果、最終的に高浜原発で21cm余り、大飯原発で19cm余り、美浜原発で13cm余りとする報告書をまとめました。
 驚くべき数値ですが、関西電力はこの新しい想定でも問題ないとしているということです。
 電力や規制委は、先ずは非常用のディーゼル発電機が目詰まりしないように、エアーフィルターの性能に注目しているのですが、本当に大丈夫なのでしょうか。
 
 自動車のエンジンにも専用のエアーフィルターがついていますが、セントヘレンズ火山での実績では、降灰が僅か0.6~1.3cmに達しただけでエンジン故障を起こしています。フィルターの規模や構造は勿論両者で異なりますが、単位面積当たりの空気量は殆ど差異はない筈です。
 火山灰はガラス粉や鉱物の結晶片のように硬いのでエンジン内に入った場合の支障は、単なるホコリなどとは全く異なります。
 
 また柱上のトランスは火山灰が0.1cm積もるだけでもショートを起こし、1.3cmになると更にその確率が増し、柱が燃える事故も起こしています。
 
 軌道を走る鋼製車輪のフランジ=脱線止めの出っ張りは2.7~3cmなので、それを超える降灰が起きれば電車は走れなくなります。
 要するに僅か数センチの降灰で発電所に勤務する人たちの出勤が困難になるので、そんなに簡単に13cm~21cmの降灰があっても「問題ない」といってしまうことは出来ない筈です。しっかり検討して欲しいものです。
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福井の関電3原発 火山灰の評価見直し 改めて審査へ
NHK NEWS WEB 2019年3月29日
鳥取県の大山が噴火した場合、関西電力が福井県内にある3つの原発に積もる火山灰について、評価し直した結果、これまでよりも多く積もるとする報告書をまとめ、29日、原子力規制委員会に提出しました。審査に合格した原発の自然災害の影響の評価が見直されるのは初めてで、今後、改めて審査が行われます。
 
福井県内にある高浜、大飯、美浜の3つの原発について、関西電力は、鳥取県の大山が噴火した場合、敷地内で最大およそ10センチの火山灰が積もると想定していました。
しかし、大山からの距離がほぼ同じの京都府内の地層では、およそ25センチの火山灰の層が見つかったことから規制委員会が関西電力に見直すよう指示していました。
その結果、関西電力は火山灰の量を評価し直し、高浜原発で21センチ余り、大飯原発で19センチ余り、美浜原発で13センチ余りとする報告書をまとめ、29日、規制委員会に提出しました。
 
大量の火山灰が原発の敷地に積もると、非常用のディーゼル発電機が目詰まりするなどのおそれがありますが、関西電力は新しい想定でも問題ないとしています
規制委員会は報告書の提出を受け、来月、審査を行うことにしています。審査に合格した原発の自然災害の影響の評価を見直すのは初めてです。
 
 
火山灰で冷却不能か、川内など5原発 非常用発電機に目詰まり恐れ
福井新聞 2017年9月19日
 原子力規制委員会の審査に合格した九州電力川内1、2号機(鹿児島県)など5原発8基で周辺の火山が大規模噴火して原発の外部電源が失われた場合、非常用ディーゼル発電機が使えなくなる可能性があることが18日、規制委などへの取材で分かった。最悪のケースでは原子炉が冷却できなくなる恐れがある。噴火時に想定される火山灰濃度が従来に比べ最大100倍程度高くなることが審査後に判明。電気事業連合会によると、5原発では、発電機の吸気フィルターが目詰まりせずに機能を維持できるとされる濃度の上限を超えている。
 
 東京電力福島第1原発事故では非常用発電機が作動した6号機は、5号機とともに冷温停止。一方、津波で電源が失われた1〜4号機では炉心溶融や水素爆発が起きた。
 5原発8基は他に関西電力美浜3号機(福井県美浜町)、大飯3、4号機(福井県おおい町)、四国電力伊方3号機(愛媛県)、九電玄海3、4号機(佐賀県)。
 
 規制委は、原発に影響する火山灰濃度の基準を現行より最大100倍程度高く見直すことを決めており、電力各社は、高性能フィルターへの交換など対応を求められそうだ。
 この見直し基準を基に、電事連は噴火時の火山灰について、フィルターを交換するなど現状で対応可能な濃度と、大気中1立方メートル当たりの実際の濃度を試算。二つの濃度の差が大きく、より目詰まりの可能性が高いのは、伊方3号機(対応可能濃度約0・7グラム、実際の濃度約3・1グラム)や玄海3、4号機(同約0・9グラム、同約3・8グラム)で、差が小さかったのは大飯3、4号機(同約1・1グラム、同約1・5グラム)などだった。
 
原発の火山灰濃度基準 原子力規制委員会は審査で、原発から160キロ以内の活火山を対象に火山灰や火砕流などによる影響を評価している。再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)はこの圏内に桜島などがある。審査では当初、火山灰濃度の基準として2010年にアイスランドで起きた噴火の観測値(1立方メートル当たり0・0032グラム)を用いた。その後、1980年の米セントヘレンズ山噴火(同0・033グラム)を考慮することとし基準の濃度が約10倍高くなったが、規制委は、審査に合格した原発の非常用発電機の吸気フィルターが対応できることを確認。だが、1707年に起きた富士山の宝永噴火などを基に検討した結果、さらに基準の濃度が100倍程度高くなることが判明した。

官邸前抗議行動 丸7年 「これからも」

 首都圏反原発連合(反原連)は29日、開始から7年を迎え首相官邸前抗議を行いました。
 350人が参加し、「原発やめろ、安倍やめろ」「再稼働反対」の声をあげました。
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抗議7年「これからも」 反原連官邸前
しんぶん赤旗 2019年3月30日
 首都圏反原発連合(反原連)は29日、首相官邸前抗議を行いました。同抗議はこの日、開始から7年を迎えました。350人(主催者発表)が参加し、「原発やめろ、安倍やめろ」「再稼働反対」の声をあげました。
 
 反原連のミサオ・レッドウルフさんが国会正門前でスピーチしました。「7年抗議を続けてきた多くの仲間のみなさんは大きな財産です。私たちの抗議は、圧倒的多数の脱原発世論に支えられています」と強調。「政府の原発推進政策が窮地に追い込まれている今こそ、政策を変えさせるまで、一緒に声をあげていきましょう」と呼びかけました。参加者は大きな拍手で応えました。
 「5年ぶりぐらいに参加した」という東京都板橋区の女性(33)は「原発を推進しようという安倍首相は、福島の原発事故で多くの人が故郷に帰ることができない現実を見ていません。大学の先輩が北海道で原発ゼロを求める行動を続けています。私も友人・仲間を連れて参加したい」と語りました。
 
 国会正門前では参加者がスピーチし「権力の中枢で、非暴力で行動を続けてきた。歴史的なことだ。これからも一緒に頑張りましょう」などの声が相次ぎました。
 
「ゼロ」の民意 政府に迫ろう 反原連が声明
 首都圏反原発連合(反原連)は29日、声明を発表しました。
 官邸前抗議が圧倒的な脱原発の世論を可視化してきたと強調。さまざまな団体やグループが官邸前や国会前での抗議を呼びかけるようになっており、「官邸前や国会前が抗議の公共の場として広く認識されるとともに、場を維持できるよう私たちも努力をしてまいりました」と述べています。
 安倍政権は、原発と核燃料サイクルを推進しているが、行き詰まっていると指摘。「今こそ、私たちが原発事故を忘れていないことを示し、原発ゼロの圧倒的民意を可視化させ、政府に突き付けるタイミングです」と訴えています。

31- 原発と民意 なぜ“声”は届かない(東京新聞)

 女川原発の再稼働の是非を問う住民投票の直接請求宮城県議会否決されました
 国民の大多数は原発の再稼働に反対していますが、国は次々と原発を再稼働させています。
 同じように地方自治体でも、原発の再稼働に反対の住民の方がはるかに多いにもかかわらず、首長や議員たちは再稼働を禁止するのは「国策になじまない」「国に任せる」などとして、住民投票自体を否定しています。
 
 なぜ“再稼働反対の声”が届かないのでしょうか
 東京新聞の社説「原発と民意 なぜ“声”は届かない」を紹介します。
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社説 原発と民意 なぜ“声”は届かない
東京新聞 2019年3月30日
 女川原発の再稼働の是非を問う住民投票の直接請求を、宮城県議会が否決した。原発を抱える静岡や新潟県でも「国策になじまない」などとして、議会に退けられている。なぜ“声”が届かない
 
 地方自治法の規定では、有権者の五十分の一以上の署名をもって、自治体の長に住民投票条例の制定を請求できる。
 年内にも原子力規制委員会の審査に通るとされる東北電力女川原発2号機。その再稼働の是非を問いたいと、十一万を超える署名が集まった。法定の約三倍だ。それでも県議会は「多様な意思を正しく反映できない」などとして、条例案を否決し請求を退けた。
 女川原発も震災の被害に遭っている。原子炉を停止に導く外部電源や非常用電源にもトラブルが生じ、使えないものが出た
 
 原発事故の放射性物質は広い範囲に降り注ぐ。宮城県内でも今現に、水産物の輸出禁止や汚染廃棄物の処理問題など、福島第一原発の影響が続いている。
 女川原発の三十キロ圏内では、七つの市町に二十一万人が暮らしていて、避難計画の策定を国から義務付けられている。過酷事故の大混乱の中、果たしてスムーズに避難などできるのか。住民の多くは避難計画そのものに懐疑的だ。
 
 それでも再稼働への“事前同意権”を持つのはやはり、原発が立地する女川町と石巻市、そして県に限られそうで、他の五市町には資格がない。それこそ多様な意思を正しく反映できていない。
 危険も義務も不安も不便もそこにある。それなのに、ノーという権利はない-。理不尽と言うしかないではないか。
 
 宮城県の村井嘉浩知事は、条例案への賛否を明らかにせず、議会に付した。しかし、県議会の質疑の中では「(原発再稼働は)これからも国が責任を持って判断すべきだ」と、まるで人ごとだ。
 国や電力会社は「立地自治体などの理解と協力を得られるように取り組む」という、一方通行的な基本姿勢を崩さない。
 宮城県だけのことではない。国民の過半が原発再稼働に反対し、大半が再稼働への同意権を持っていない。それなのに3・11後、五カ所九基がすでに、立地自治体の同意の下に再び動き始めている。
 原発再稼働に不安を覚える住民と「国に任せろ」という議会や首長。この温度差は、なぜ起きてしまうのか。統一地方選真っただ中で、私たちも思いを巡らせたい。

2019年3月30日土曜日

米スリーマイル島事故40年 「過ちから学び廃炉」住民訴え

 スリーマイル島(TMI)の原発事故から28日で40年を迎えました。
 事故があった28日午前4時ごろ、白い蒸気が上がる巨大な冷却塔を背景に「TMIの救済をやめろ」などと書いたプラカードやろうそくを持った約30人が並び、黙とうしました。そして今も営業運転が続く同原発の前で記念集会があり、反対派の住民らが早期の廃炉や健康被害の徹底調査を訴えました。
 
 TMIが立地するペンシルベニア州は甲状腺がんの発症率が全米一高いのですが、政府は一貫して原発事故の影響を否定して実態調査も行っていません。
 米軍はかつてイラク侵略で対戦車用に劣化ウラン弾を用いたため、イラク人は勿論、多くの米兵も放射線障害を負いましたが、国は劣化ウランは無害だとしてそれを認めようとしていません。放射線の影響を否定する点は日本とよく似ています。
 
 TMIは2034年まで運転の免許が出されていますが、競合する天然ガスなどのエネルギー価格が低く、政府からの支援も得られずに採算性が悪化したため、20199月末をめどに運転を停止することを決めました。
 しかし州議会で支援策を講じる提案がされているということです。
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米スリーマイル島事故40年 「過ちから学び廃炉」住民訴え
東京新聞 2019年3月29日
【ミドルタウン(米東部ペンシルベニア州)=赤川肇】米史上最悪とされるスリーマイル島(TMI)の原発事故から28日で40年を迎えた。今も営業運転が続く同原発の前で記念集会があり、反対派の住民らが早期の廃炉や健康被害の徹底調査を訴えた。
 
 事故があった午前四時ごろ、絶え間なく白い蒸気が上がる巨大な冷却塔を背景に「TMIの救済をやめろ」などと書いたプラカードやろうそくを持った約三十人が並び、黙とうした。折り畳みいすに座って参加した女性(87)は「原発がある限り、同じ過ちが繰り返されかねない」と訴えた
 
 事故は原子炉二基のうち三カ月前に営業運転を始めたばかりの2号機で発生。米原子力規制委員会(NRC)によると、装置の故障や設計上の問題、操作ミスが重なり、核燃料が溶ける「メルトダウン」(炉心溶融)とともに放射性物質が大気中に放出された。
 米政府は人的被害について、放射性物質の放出量が少なく、健康や環境への影響は「無視できるほどだった」(NRC)との見解。一方、周辺住民の甲状腺がん発症率の上昇など事故による健康被害の可能性を示す研究結果も複数あり、政府見解に懐疑的な見方は専門家の間でも根強い
 夫が甲状腺の病気を患っているというポーラ・ケニーさん(72)は「原発のせいかどうかは分からない。政府が健康調査をしないからよ。事故から何も学ぼうとしていない」と憤った。
 
 米国の原発はガス火力発電との価格競争や再生可能エネルギーの普及で採算性が低下。事故後にTMI原発を受け継いだ米電力・ガス大手エクセロンは二〇一七年、州政府の「政策変更」がなければ一九年九月末までに閉鎖すると表明。州議会では現在、地球温暖化や雇用の対策としてTMIを含む原発の存続に向けた支援策が提案され、議論を呼んでいる。

女川原発2号機 安全対策3400億円 追加工事相次ぎ増大

 東北電力は28日、女川原発2号機安全対策工事費が3400億円程度に上ると発表しました。当初の想定では、女川2号機と東通原発(青森県東通村)を合わせて計三千数百億円と見込んでいました。
 これにさらに新基準で設置が義務付けられているテロ対策拠点「特定重大事故等対処施設」の費用が加わり、増加することになります。
 
 稼働させるべきでない原発を動かそうとする以上、安全対策に金を惜しむべきではありませんが、それでも肝心の原子炉自体は何も補強出来ないので、補強といってもそこに限界がある訳です。
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<女川原発2号機> 安全対策3400億円 追加工事相次ぎ増大
   河北新報 2019年3月29日
 東北電力は28日、女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の前提となる安全対策工事費が3400億円程度に上ると発表した。2014年9月公表の想定では、女川2号機と東通原発(青森県東通村)を合わせて計三千数百億円と見込んでいた。女川2号機単体だけで当初想定した原発2基分の工事費に相当することになる。東通原発との合計額が、さらに巨額となるのは確実だ。
 
 原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査が進み、必要額が固まったため女川2号機のみの費用を初めて公表した。規制委の審査では東日本大震災などを踏まえた地震や津波の対策不足が指摘された。防潮堤や耐震設備に追加工事が相次ぎ、従来の想定よりコストが大幅に膨らんだ。
 追加工事は、ほぼ完成していた海抜約29メートルの防潮堤の地盤改良工事、海水ポンプ室への浸水防止壁の設置など。18年4月には工事完了時期を18年度後半から20年度に延期した。
 
 原田宏哉社長は定例記者会見で工事費増大の理由を「(東日本大震災の震源となった)日本海溝沿いに立地し、地震や津波を考慮しなければならない地域特性が大きい」と説明した。
 一方で「女川2号機が再稼働すれば年間300億円程度の火力発電用燃料費が低減できる。(投資を)回収できるだけの経済性、合理性はあると考えている」と強調。19年7月中に規制委の審査を終えたいとの意向を改めて示した。
 
 今回公表した女川2号機の工事費には、新基準で設置が義務付けられているテロ対策拠点「特定重大事故等対処施設」の費用は含まれていない。今後、3400億円程度からさらにかかり増しになる。
 東北電によると、女川2号機と東通原発の実際の工事支出額は、今年3月末時点で計2000億円程度に上る。東通原発単体の工事費は、審査が序盤のため評価していないという。女川2号機は20年度以降の再稼働を目指している。

30- 東電が最大4億円、東通村に寄付を検討

 東電が、東通原発の建設を進めている青森県東通村に、企業版ふるさと納税制度を利用し最大4億円の寄付を検討していることが分かりました
 原発事故の賠償など国費が投入されている東電が、新たな原発建設に関連して寄付することに対し、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「東電福島への責任を果たすべきで、寄付をする前にやるべきことはたくさんある」と批判しました。
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原発立地にふるさと納税 東電が最大4億円、東通村に寄付検討
東京新聞 2019年3月29日
 東京電力ホールディングスが、東通(ひがしどおり)原発の建設を進めている青森県東通村に、企業版ふるさと納税制度を利用し最大四億円の寄付を検討していることが分かった。福島第一原発事故の賠償などのため国費が投入されて延命した東電が、新たな原発建設に関連して寄付することに対し、専門家から批判が出ている。
 
 企業版ふるさと納税制度は自治体の地域活性化策に寄付すると、寄付額の約六割が税金から差し引かれる仕組み。東電は二十八日、東通村を訪れ、村の移住促進策などを盛り込んだ総事業費約八億円の地域再生計画に対し、寄付を検討すると伝えた。
 
 東通村内に停止中の原発を抱える東北電力は既に約四億円を寄付することを表明した。東電は残りの四億円以内の額を寄付するとみられる。東電の広報担当者は「寄付を決定した事実はない」と話した。
 
 東電の東通原発は二〇一一年一月に1号機を着工し、福島第一原発事故後に工事を中断。建設作業は再開しているものの、道路整備や地質調査にとどまり、完成時期の見通しは立っていない。固定資産税の収入が見込めなくなった村が、東電に支援を要請していた。
 
 東電は福島第一原発事故以降、経営危機に陥り、福島県を除き寄付行為をしてこなかった。一方、福島県の被災者らが申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)では一八年以降、和解案を東電が拒否し、手続きが打ち切りになる例が目立っている。
 
 龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「東電に存在意義があるとすれば、福島への責任を果たすことで、新たに原発をつくることではない。寄付をする前にやるべきことはたくさんある」とくぎを刺した。(伊藤弘喜)

2019年3月29日金曜日

社説 原発避難訴訟賠償判決 国・東電は被害救済を拡大せよ

 福島原発事故で愛媛に避難した人たちが損害賠償を求めていた訴訟で、松山地裁が27日下した判決に対して、愛媛新聞が「原発避難訴訟賠償判決 国・東電は被害救済を拡大せよ」とする社説を出しました。
 
 社説はまず判決が、津波が予見できてから東日本大震災まで8年以上あったにもかかわらず、国が東電に必要な指導をしなかったのは、「許容できる限度を逸脱して、著しく合理性を欠く」と厳しく断じたのは、原発事故を国、東電双方の長期評価の軽視が招いた「人災」と認めたのに等しいとしています。
 
 そして、国と東電は事故の責任回避に固執するのではなく、これまでの判決を真摯に受け止め、避難者の救済策の拡充を急ぐべきだとし、特に高裁、最高裁と争えば司法での最終的な決着にはまだまだ時間がかかり、避難者の負担はさらに増すので、国は上級審の判断を待つことなく、指針の速やかな見直しに着手し、避難者に寄り添った救済の仕組みに知恵を絞るべきだと述べています
 
 判決が、いわゆる自主避難者大きな差をつけたことには、理不尽に人生を変えられた人たちの厳しい現実から目を背けてはならないと警告しました。
 如何に法治主義とは言え、不合理な法令をそのまま裁判所が認知・肯定してしまうのは、決して正義ではなく大いなる違和感を持たざるを得ません。
お知らせ
 いつもご訪問いただきましてありがとうございます。3月末以降、朝方2時間近く外出する作業に就きますので、これまで9時を記事更新の目途にして来ましたが、それを11時を目途に変更いたします。ご了承ください。
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社説 原発避難訴訟賠償判決 国・東電は被害救済を拡大せよ
愛媛新聞 2019年3月28日
 東京電力福島第1原発事故で福島県から愛媛に避難した10世帯25人が損害賠償を求めていた訴訟で、松山地裁は国と東電の責任を認め、23人に計2743万円を支払うよう命じた。
 全国で起こされた約30件の同種訴訟のうち10件目の判決。全てで東電に賠償が命じられ、国が被告となった8件のうち、6件目の責任認定となった。
 
 原発事故に対し、国は法的な責任を負うのは東電だけ、との立場を取っているが、司法ではこれを否定する流れが定着してきた。全国で同種訴訟が相次ぎ賠償命令が続出する現状は、被害救済の不十分さを浮き彫りにする。今なお多くの人が、生活再建の道筋がつけられず、苦しんでいる。国と東電は事故の責任回避に固執するのではなく、これまでの判決を真摯(しんし)に受け止め、避難者の救済策の拡充を急ぐべきだ
 
 判決は、政府機関が2002年に公表した地震予測の「長期評価」に基づき、国と東電が原発の敷地高を超える津波の到来を、同年末には予見できたと判断。海水浸入を防ぐ工事によって事故を回避できた可能性を指摘した。津波が予見できてから東日本大震災まで8年以上あったにもかかわらず、国が東電に必要な指導をしなかったのは、「許容できる限度を逸脱して、著しく合理性を欠く」と厳しく断じた。
 
 長期評価について、裁判所が「多数の専門家による検証を踏まえた客観的かつ合理的根拠を有する知見」として重視したのはもっともだ。国が東電に津波評価を試算させていれば、事態は違っていた可能性がある。判決は、原発事故を国、東電双方の長期評価の軽視が招いた「人災」と認めたのに等しい
 賠償額は国の指針を上回る額が認められたが、救済につながる額には遠かった。判決は避難指示解除準備区域などから避難した住民と、自主避難者との間に大きな差をつけた。
 
 国の指針に基づく東電の賠償基準が、避難区域の内か外かで差をつけており、それに準拠した形だ。だが、いったん避難生活を始めれば、金銭的、精神的な負担は避難者に等しくのしかかる。東電の基準だと、自主避難者への賠償は総額12万円しか支払われない。原発事故がなければ避難する必要は全くなかった。理不尽に人生を変えられた人たちの厳しい現実から目を背けてはならない。
 
 福島事故から8年。同種訴訟の原告は1万人を超え、中には偏見や中傷に苦しめられている人がいる。司法での最終的な決着にはまだまだ時間がかかり、高裁、最高裁と争えば、避難者の負担はさらに増す国は上級審の判断を待つことなく、指針の速やかな見直しに着手し、避難者に寄り添った救済の仕組みに知恵を絞るべきだ。国は原発事故を防げなかった重い責任を忘れてはならない。避難者に本来の生活を取り戻してもらうことを第一に考えるべきだ。

東海第二「再稼働」県民投票を 市民団体、直接請求へ署名活動

 東海第二原発の再稼働の是非について、市民団体「いばらき原発県民投票の会」が27日、住民の意思を示すための県民投票条例の制定を目指し、大井川和彦知事に直接請求する方針を発表しました。
 条例案を9月に県へ提出した後、地方自治法に基づき2カ月間、署名運動を展開し、法定の最低ラインである有権者の2を大きく上回る5%以上を集めることを目標にしています。
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東海第二「再稼働」県民投票を 市民団体、直接請求へ署名活動
東京新聞 2019年3月28日
 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発の再稼働の是非について、市民団体「いばらき原発県民投票の会」が二十七日、県庁で記者会見し、住民の意思を示すための県民投票条例の制定を目指し、大井川和彦知事に直接請求する方針を発表した。この日から、請求に必要な署名を集める「実動部隊」となる受任者の募集を開始し、幅広い協力を呼びかけている。(越田普之)
 
 会は、昨年四月に「原発県民投票を考える会」として発足。直接請求に関する勉強会を開いてきた。東海第二は、県民の生活に重大な影響を及ぼすことから、県民投票が必要だとの結論に達し、今月、会を組織変更し請求のための署名を集めることを決めた。
 居住する各市町村で署名集めを担当する受任者は、会のホームページやファクスで申し込みを受け付ける。目標は七千人で、期限を設けずに募集する。
 
 県民投票の対象は東海第二の再稼働是非に限定する方針。条例案を九月に県へ提出した後、地方自治法に基づき二カ月間、署名運動を展開する。有権者の2%の署名で足りるが、会は5%以上を集めて県民の関心の高さを示したい考えだ。必要数を集めることができた場合、県議会で審議の上、採決となる。
 
 共同代表の一人で、ひたちなか市の鵜沢恵一さん(59)は「県議選でも、多くの候補が再稼働への賛否を明らかにしないまま終わってしまった」と指摘。再稼働について、県民が意思表示できる機会を設けるべきだと訴える。
 原発に関する県民投票条例案は、東京電力福島第一原発事故後に静岡や新潟、宮城県議会などに提出されたが、いずれも否決されておりハードルは高い。
 
 この点について、共同代表でつくば市の徳田太郎さん(45)は「かなり厳しいが、そこは署名の数や世論の高まりによって十分に可能性がある」と力を込める。また、大井川知事が「県民投票も選択肢の一つ」と語っていることにも触れ「賛同いただけると信じている」と語った。
 
 署名運動受任者の申し込みはホームページ(http://ibarakitohyo.net/)から。ファクスは029(307)4182。問い合わせは=電090(4706)2363=へ。
 
◆原電が巡回説明会 15市町村、来月から
 日本原子力発電(原電)は4月23日から6月8日まで、東海第二原発の再稼働に向けた事故対策や工事の概要を主なテーマに、周辺の15市町村で巡回説明会を開く。
 説明会は、原子力規制委員会に新規制基準に基づく審査を申請して以来、毎年企画されている。昨年は2月から3月にかけ、計25回開かれた。
 今年は全20回の予定。事前の申し込みは不要。会場や日時は原電のホームページに掲載されている。(越田普之)

29- 原発運転延長、容認と否定が拮抗 福井新聞社世論調査

 福井新聞社が福井県内有権者を対象に原発に関する電話世論調査を行った結果は、国が運転から40年を超える原発の最大20年の延長が可能としていることについて、
「安全が確認済みなら運転してよい」が48・117年調査より7・4ポイント増)、40年を超えた原発は廃止」は27・9(同1・9ポイント減)
「すべての原発は廃止」は21・1(同0・9ポイント減)で、二つを合わせた運転延長を否定する割合は49でした。
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原発運転延長、容認と否定が拮抗 福井新聞社世論調査
福井新聞 2019年3月27日
原発の運転期間をどう考えるか
 福井新聞社は福井県知事選挙に合わせ、県内有権者を対象に原発に関する電話世論調査を行った。国が運転から40年を超える原発の最大20年の延長が可能としていることについて、「安全が確認済みなら運転してよい」が48・1%となった。「40年を超えた原発は廃止」は27・9%、「すべての原発は廃止」は21・1%で、二つを合わせた運転延長を否定する割合は49%と5割を切った。ただ、県民の意見は拮抗している。
 調査は3月23、24の両日、実施した。「分からない・無回答」は2・9%だった。
 
 2017年秋の衆院選に合わせて行った調査では、「40年超は廃止」「すべての原発廃止」を合わせると51・8%と5割を超えていた。今回は17年と比べ、「40年超は廃止」が1・9ポイント減、「すべての原発廃止」が0・9ポイント減。一方、「安全確認なら容認」は7・4ポイント増えた
 
 男女別にみると、四つの選択肢のうち、男性は安全確認済みなら運転容認が最も高く43・4%。女性も52・9%が容認した。40年超廃止と全廃止を合わせると、男性が54・3%、女性は43・7%で、17年調査とは逆転し男性の方が否定する割合が高くなった。
 
 年齢別では、安全確認すれば容認が18~39歳が62・9%、40~49歳が57・9%で半数を上回った。一方、50代以上は、「40年超廃止」と「全廃止」を合わせるといずれの年代も5割を超えており、年齢が高くなるにつれて、原発に厳しい目を向けている。
 
 改正原子炉等規制法で原発の運転期間は原則40年と定められているが、原子力規制委員会が許可すれば1回に限り最長20年延長できる。規制委は関西電力高浜1、2号機は16年6月、美浜3号機は同年11月に40年超運転を認可した。関電は20年5月の高浜1号機を皮切りに、順次工事完了を目指し安全対策工事を進めている。
 
【調査の方法】福井県内の有権者を対象に3月23、24の両日、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。計700人から回答を得た。