2022年4月30日土曜日

柏崎刈羽原発は「管理がずさん」 地元規制事務所が指摘

 柏崎刈羽原発で相次いだ核セキュリティーの不備について、原子力規制委は27日、「柏崎刈羽原発固有の問題」と結論づけました。地元規制事務所の渡邉所長は28日の会見で、侵入検知センサーなどの設備について「設備の更新も必ずしもしっかりできていなかったし、メンテナンス自身もしっかりできていなかった」と指摘し、核セキュリティー組織の弱点についても「閉鎖的な限られた組織の中で動いていたので、しっかり十分検討がされていないまま、運用が続いていた」述べました。

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柏崎刈羽原発は「管理がずさん」 地元規制事務所が指摘
                         BSN新潟放送 2022/4/28
新潟県の柏崎刈羽原発で相次いだ核セキュリティー上の不備について、原子力規制委員会が『柏崎刈羽固有の問題』と結論付けたことについて、地元の規制事務所の渡邉所長は28日、「柏崎刈羽原発では設備の更新やメンテナンスがしっかりできていなかった」と指摘しました。
 【写真を見る】柏崎刈羽原発は「管理がずさん」 地元規制事務所が指摘

柏崎刈羽原発で相次いだ核セキュリティーの不備について、原子力規制委員会は27日、「東電の全社的な問題ではなく柏崎刈羽原発固有の問題」と結論づけました。
地元の規制事務所のトップで検査に携わった渡邉所長は28日の会見で、今回問題となった侵入を検知するセンサーなどの設備について管理のずさんさを指摘しました。
【柏崎刈羽原子力規制事務所 渡邉健一所長】「設備の更新も必ずしもしっかりできていなかったし、メンテナンス自身もしっかりできていなかった」
また、核セキュリティーに携わっていた組織の弱点にも触れました。
【柏崎刈羽原子力規制事務所 渡邉健一所長】核セキュリティー部門は閉鎖的な限られた組織の中で動いていたので、しっかり十分検討がされていないまま、運用がされていてそれが続いていたと」

一方、柏崎市の桜井雅浩市長は、原子力規制委員会の判断について…。
【柏崎市 桜井雅浩市長】「なぜ柏崎刈羽だけだったんだということがやはり解明されないと、(原子力発電所の)『安心』の領域はみなさんに納得していただけないのではないかと」
その上で…。
【柏崎市 桜井雅浩市長】「当事者(東京電力)がもう一回深いところを分析して、より具体的な言葉『こういった行動が行われていたんだ、こういった事案があったんだ』ということをもって説明していただく義務があると思っています」

東京電力が管理する他の発電所には問題がなく、柏崎刈羽原発だけの問題だとされたことについて、東電により具体的な原因の調査と報告をするよう求めました。

電力各社が業績悪化 ウクライナ侵攻で燃料費高止まり

 大手電力10社の3月期連結決算は、ロシアのウクライナ侵攻で拍車がかかった燃料価格の高騰の影響を色濃く受けました。燃料費の高止まりが続けば各社の経営環境は一段と厳しくなります。電力会社には、燃料価格の増減を販売価格に自動的に反映させる制度がありますが、実際に反映させるまでには時間差があるため、一時的に収支が悪化します。

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電力各社が業績悪化、ウクライナ侵攻で燃料費高止まり
                            産経新聞 2022/4/28
大手電力10社の令和4年3月期連結決算は、ロシアのウクライナ侵攻で拍車がかかった燃料価格の高騰の影響を色濃く受けた。原子力発電所の再稼働が進まない中、液化天然ガス(LNG)や石炭など化石燃料を使う火力発電への依存度が高い会社への逆風は強い。ウクライナ侵攻は長期化の様相を呈し、燃料費の高止まりが続けば各社の経営環境は一段と厳しくなる。
「非常に厳しい決算の結果だ。(こうした状況は)引き続き続くものだと考えている」。東京電力ホールディングスの小早川智明社長は28日の記者会見でこう述べた。東電は赤字転落こそ免れたが、最終黒字額は前期比で9割超減った。

電力会社には、燃料価格の増減を販売価格に自動的に反映させる制度がある。ただ、実際に反映させるまでには時間差があるため、一時的に収支が悪化する。また、大手10社中5社の家庭向け電気料金はこの制度の上限に到達しており、6月分で6社に増える。6社は政府に電気料金の値上げを申請しなければ、上限の超過分は自社負担となる
為替の急速な円安進行も燃料の輸入コストを増大させる。発電された電気を売り買いする卸電力市場の取引価格の高騰も電力調達コストの増加につながる。

東北電力は、3月の福島県沖地震で被災した一部火力の停止が続くことも重荷だ。二階堂宏樹上席執行役員東京支社長は「現在の状況が続いた場合には5年3月期も厳しい収支となることも想定される」と話す。
原発を活用すれば、火力の燃料費を減らす効果が見込める。しかし、現状で再稼働済みの原発を持つのは関西電力、四国電力、九州電力の3社にとどまる。
電力の小売り全面自由化のもとで競争が激化し、大手各社にとって厳しい経営環境が続く中、燃料費高騰が追い打ちをかけている。(森田晶宏)

東電、福島県双葉郡に廃炉2会社10月設立へ IHI、日立造船と

 東電は27日、IHI、日立造船とそれぞれ、廃炉関連産業の浜通りへの集積に向けた新会社を10月に双葉郡内設立することで基本合意したと発表しました。

 IHIとの共同事業体は、福島第1原発のデブリ取り出しの本格化に備えたシステム・設備の基本設計と研究開発を進めます。また日立造船とは、燃料保管容器(キャスク)やデブリの保管容器の製造、販売を担う廃炉関連製品工場を楢葉町に整備します。
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東電、福島県双葉郡に廃炉2会社10月設立へ IHI、日立造船と
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 東京電力は27日、IHI(東京都)、日立造船(大阪府)とそれぞれ、廃炉関連産業の浜通りへの集積に向けた新会社を10月に設立することで基本合意したと発表した。新会社の所在地はいずれも福島県の双葉郡内で、長期にわたり廃炉の中核を担うシステムや製品の開発・製造を被災地で担う
 東電が2020年に示した地元経済の基盤創造などを掲げる廃炉方針に基づく取り組みの一環。新会社の概要は【表(省略)】の通り。従業員数など詳細は今後詰めるが、IHIとの共同事業体「燃料デブリ取出しエンジニアリング会社(仮称)」は、福島第1原発の溶融核燃料(デブリ)取り出しの本格化に備えたシステム・設備の基本設計と研究開発を進める。所在地は第1原発近くになる。
 日立造船とは、燃料保管容器(キャスク)やデブリの保管容器の製造、販売を担う「浜通り廃炉関連製品工場(仮称)」を楢葉町に整備する。当面、第2原発向けのキャスクを製造する。

 IHIは原子炉メーカーで、高線量下の遠隔操作や高線量廃棄物の処理・保管に高い技術力を持つ。日立造船は使用済み燃料の輸送用キャスクを国内メーカーとして初めて製造するなど、輸送・貯蔵用キャスク納入に豊富な実績がある。
 中長期的には地元企業の参画や地元雇用を想定しており、浜通りでの新規産業の発展を通して経済振興や人材育成を進め、廃炉と復興の両立を目指す。

 また東電は、廃炉産業全体でのマネジメント力を強化するため、コンサルティングなど幅広い専門サービスを提供する米国のジェイコブズと協業契約を結んだ。ジェイコブズは英国原発の廃止措置の実績を持っており、東電は「福島への責任」を貫くため、技術や知見の提供を受ける。
 東電は、東京や海外企業への発注が中心だった廃炉の中核技術や製品について、浜通りで開発・製造し、地元経済発展の中長期的な柱とする方針だ。今後も、運用や保管、リサイクルなど廃炉の各工程に関連した施設を順次設置するとしている。小野明福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は27日の記者会見で「将来的に地元の方々も働けるよう採用や資機材を発注し、働く場として拡大させていく」と述べた。

30- 処理水の影響「小さい」 福島原発、調査継続 IAEA

 IAEAは29日、福島第1原発から出るトリチウムを含む処理水の海洋放出について、安全性を検証する調査団による最初の報告書をまとめました。放射線影響日本の規制水準より大幅に小さいことが確認された述べる一方で、安全性に関する最終的な判断は当面結論を出さず調査を継続し、放出前に発表する方針で、「最終的に放出などの決断をするのはあくまで日本の責任」としました。
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処理水の影響「小さい」 福島原発、調査継続 IAEA
                            時事通信 2022/4/29
【ベルリン時事】国際原子力機関(IAEA)は29日、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出について、安全性を検証する調査団による最初の報告書をまとめた。
 【図解】処理水海洋放出施設のイメージ
 報告書は処理水が放出された場合に放射線が人体に与える影響について、東電の分析結果を踏まえ、「日本の規制当局が定める水準より大幅に小さいことが確認された」と指摘した。ただ、安全性に関する最終的な判断は、放出前に発表するとも説明。当面結論を出さず、調査を続ける方針を示した。
 調査団は2月に訪日し、福島第1原発の視察や関係省庁、東電へのヒアリングなどを実施した。今後も放出までに行う調査のたびに2カ月後に報告書を公表する。東電は、処理水を保管するタンクが満杯となる時期を、2023年夏~秋ごろとしている。


IAEA ALPS処理水海洋放出に「準備に著しい進捗」 報告書公表
                          TBS NEWS  2022/4/29
福島第一原発の「ALPS処理水」の安全性を評価するため今年2月に初の現地調査を行ったIAEA=国際原子力機関は「準備に著しい進捗があった」とする報告書を公表しました。
福島第一原発から来年春に海洋放出される予定の放射性物質トリチウムを含む「ALPS処理水」について、IAEAは今年2月から放出設備の安全性や東京電力が行った「放射線影響評価」など8つの項目について検証を行っていました。
報告書では放出設備について、事故などを防ぐ「予防措置が的確に講じられている」と評価しました。また、放射線の影響については「人への放射線の影響が規制当局が定める水準より大幅に小さいことなどを確認した」としています。
IAEAは海洋放出に向けて「準備において著しい進捗があった」とした上で、今後も検証作業を進め、「放出前に最終的な結論を出す」ということです。

ただ、IAEAはあくまで国際的な安全基準に基づいた見解を示す立場で、「最終的に放出などの決断をするのはあくまで国の責任」としています。 

2022年4月29日金曜日

脱炭素へ9兆円規模 再エネ促進 東電HD社長

 東電HDの小早川智明社長は28日の記者会見で、電力の脱炭素化を推進するため、2030年までの投資額を従来計画の3倍以上となる9兆円規模に引き上げる方針を示しました。昨年7月に公表した事業計画で30年までに最大3兆円を脱炭素関連事業に投資するとしていました。積極的な姿勢です。
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脱炭素へ9兆円規模 投資3倍増、再エネ促進 東電HD社長
                             時事通信 2022/4/28
 東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長は28日の記者会見で、電力の脱炭素化を推進するため、2030年までの投資額を従来計画の3倍以上となる9兆円規模に引き上げる方針を示した。
 再生可能エネルギー発電や家庭での蓄電池整備を強化する。他社との連携も模索し、1年以内をめどに具体的な戦略をまとめる。
 東電は昨年7月に公表した事業計画で、30年までに最大3兆円を脱炭素関連事業に投資するとしていた。ロシアのウクライナ侵攻に伴い液化天然ガス(LNG)価格も高騰しており、会見に同席した小林喜光会長は「化石燃料への依存度を下げることに社会からの期待を感じている」と説明した。 

賠償指針 見直し示さず 原賠審会長

 福島原発事故の賠償指針を議論する原子力損害賠償紛争審査会が27日、文科省で開かれましたが、賠償の指針について見直すかどうかを明らかにしませんでした。
 賠償額を出すにあたって原賠審中間指針の基準の低さがネックになっているのですが、会長は一貫して改定に消極的です。何故なのか、現実から遊離しているように思われます。
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賠償指針、見直し示さず 原発避難、救済停滞の恐れ 政府審査会
                           時事通信 2022-04-27
 東京電力福島第1原発事故の賠償指針を議論する原子力損害賠償紛争審査会(会長・内田貴東大名誉教授)が27日、文部科学省で開かれた。指針について、審査会は見直すかどうかを明らかにしなかった。避難住民らが起こした裁判では国の指針を上回る慰謝料の支払いを命じる判決が相次ぎ確定しており、判断が先送りされれば被害救済が停滞する恐れがある
 審査会は、賠償指針を見直すかどうかを検討するため、裁判官経験者などを専門委員に選任して判決などを調査・分析する方針を示した。ただ、いつまでに分析を終えて方針を決定するかは未定。内田会長は「(指針を)見直すか現時点ではブランク(空白)」と語った。委員からは、指針を見直さない場合「被害者が訴訟に向かい、迅速な解決が阻害される」などの意見が出た。

川内原発 運転延長の検証分科会

 川内原発の運転延長について検証する分科会が25日、鹿児島市で開かれ、川内原発の劣化状況の評価方法について九州電力が説明しまし
 釜江克宏座長から「淡々と8年前の結果を話すだけではなくて、新しい知見も含めて説明してほしい」という要求が出されました。
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川内原発 運転延長の検証分科会
                     KYT鹿児島読売テレビ 2022/4/25
 川内原発の運転延長について検証する分科会が、鹿児島市で開かれた。
 川内原発の安全性について話し合う専門委員会の中に、県は原発の運転延長について検証する分科会を設置している。
 川内原発は1号機が2024年に、2号機は2025年に40年の運転期限を迎える。原子力規制委員会が認めれば、運転を最大20年延長することができる。延長の申請に必要な特別点検では、原子炉などの機器の劣化状況をデータを基に確認をする。
 25日の分科会では、劣化状況の評価方法について九州電力が説明した。また、1号機に対し8年前に行われたコンクリート強度の点検など評価の結果も、参考としてあげられた。釜江克宏座長は「淡々と8年前の結果を話すだけではなくて、新しい知見もあるかもしれないということでそれも含めて説明してほしい、これは非常に重要なことだと思う」と話した。

 委員からは“評価方法を更新する必要はないのか”などの意見が上がった。 

29- 政府が原発再稼働急ぐ方針 「審査を効率化」と岸田首相

 岸田首相は26日の民放番組で、原子力規制委の審査について「合理化や効率化、審査体制の強化」が必要だと指摘しました原油価格やNLG価格の高騰に伴って原発の発電コストがが相対的に下がるという考えからですが、本当にそうなのかは分からないし、首相が審査の促進を口にするのは穏やかでありません。

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政府、原発再稼働急ぐ方針 「審査を効率化」岸田首相表明
                            時事通信 2022/4/28
 政府は、ウクライナ情勢を受けた原油価格高騰を踏まえ、原子力発電所の再稼働の審査を迅速化する方針だ。
 原子力規制委員会の規制基準を維持しながら、再稼働可能な原発をできる限り早く動かすことで電力供給不足に備える。
 岸田文雄首相は27日、経済同友会総会のあいさつで「原子力の活用を進めていく」と表明した。
 26日の民放番組では、原子力規制委員会の審査について「合理化や効率化、審査体制の強化」が必要だと指摘。「今の枠組みの中でどこまで原子力の再稼働ができるのか追求していかなければならない」と語った。
 背景にあるのは規制委の審査の遅れに対する不満だ。審査のための標準処理期間は2年と定められているが、厳格な新規制基準の下で大幅な超過が相次ぐ。2011年の東日本大震災後に再稼働したのは10基のみで、北海道電力泊原発は申請から8年以上がたつ。
 政府は原子力規制委の独立性を尊重し、地元の理解が得られた原発を再稼働させる方針は変えていない。ただ、自民党の原子力規制に関する特別委員会も「審査の効率化」を求める提言を準備しており、審査のスピードアップを求める政府・与党の圧力は今後強まりそうだ。


岸田首相の原発再稼働発言、国が前面に立ち国民の理解得るため 経産相
                            ロイター 2022/4/28
[東京 28日 ロイター]萩生田光一経産相は28日の閣議後会見で、岸田文雄首相の原発再稼働に関する発言について「国が前面に立って国民に呼びかけ、理解を得るための一環」と述べた。
再稼働については、安全確保を大前提に原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進めるという政府方針を改めて示した。
萩生田経産相は5月2―7日に訪米することを明らかにした。レモンド商務長官、タイ通商代表、グランホルムエネルギー長官ら米閣僚と会談を行う予定。半導体の供給網強靭化や輸出管理、インド太平洋地域の経済秩序の構築、エネルギー安全保障の確保などについて議論を行う。「特に半導体については、日本国内でもさまざまな取り組みを始めた。日米で協力できる分野をしっかりと確認したい」と述べた。

2022年4月28日木曜日

柏崎刈羽原発のテロ対策不備は「柏崎刈羽固有の問題」規制委報告

 柏崎刈羽原発でテロ対策の不備が相次いで発覚した問題で、原子力規制委は27日、他の原発との比較の結果、テロ対策の責任者が他の業務を兼ねているためテロ対策に当たる時間が5分の1などと少ないことや、関連会議に参加していない点などが明らかになり、一連の問題は柏崎刈羽原発固有のものだったと認定しました。

 規制委は今後、追加検査を継続し、核物質防護を巡る業務環境や組織文化など8項目について東電の対策を評価。最終報告書をまとめた後、是正措置命令を解除するかを議論するということです
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柏崎刈羽原発のテロ対策不備は「柏崎刈羽固有の問題」規制委報告
                             毎日新聞 2022/4/27
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備が相次いで発覚した問題で、原子力規制委員会は27日、改善策の実効性や問題の背景に関する検査の中間報告をまとめた。他の原発との比較の結果、テロ対策の責任者が他の業務を兼ねているためテロ対策に当たる時間が少ないことや、関連会議に参加していない点などが明らかになり、一連の問題は柏崎刈羽原発固有のものだったと認定した。
  上空から見た柏崎刈羽原発
 柏崎刈羽原発では昨年、敷地内への侵入を検知する機器が16カ所で故障し、うち10カ所でずさんな代替措置しかとられていなかったことや、運転員が同僚のIDカードを使って中央制御室へ不正侵入したことなどが相次いで発覚した。東電は昨年9月に原因などをまとめた報告書で、追加の生体認証装置の導入など36項目の改善策を提示。これについて規制委が検査を進めていた。

 規制委の検査では、他の電力会社を含む国内全原発のテロ対策担当者や、東電社員らに聞き取りを実施。その結果、柏崎刈羽原発だけが、テロ対策の責任者が関連会議に参加しておらず、対策本部で執務に当たる機会も極端に少なかった。他原発では、侵入検知器の故障時の対応などにも問題は見られなかった。そのため、一連の不備は「他電力に共通する問題や東電の全社的な問題ではなく、柏崎刈羽原発に固有の問題だ」と断じた。

◇踏み込んだ指摘なし
 ただ、なぜ柏崎刈羽原発だけで一連の不備が起きたかについての踏み込んだ指摘は無かった。
 一方、東電の報告書については、複数の侵入検知器が同時期に故障したことへの技術的な原因分析や、現場の発電所員に関わる組織の弱みなど3項目の検証が不十分だとして、再検証を要求。改善策の中に、現場実態に即した実効性のあるテロ対策のマニュアル策定も入れるよう求めた。
 原発再稼働の前提となる今後の検査については、経営陣の関連業務への関与など8項目を重点的に確認するとした。昨年4月に出された核燃料の移動禁止命令の解除には、この8項目の改善が必要となる。【吉田卓矢、土谷純一】


柏崎刈羽原発、核物質管理の責任者が別の仕事兼務…
   防護業務の比率は「5分の1」
                             読売新聞 2022/4/27
 東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)のテロ対策に重大な不備が見つかった問題で、原因や改善状況を調べてきた原子力規制委員会は27日、中間報告書をまとめた。報告書は、核物質防護管理の責任者が別の仕事を兼務し、防護業務の比率が「5分の1程度」と他の原発より著しく低かったなどとして同原発固有の問題だと結論づけた。
 同原発を巡っては、所員が他人のIDカードを使って中央制御室に不正に入った問題が昨年1月に発覚。侵入者を検知する複数の設備が長期間故障していたにもかかわらず対策が不十分だった問題も判明し、規制委は昨年4月、事実上の運転禁止命令となる「是正措置命令」を出していた。
 規制委の事務局である原子力規制庁は、昨年10月から同原発で追加検査を実施。核物質防護の実態を調べるため、東電以外の全電力会社も調査した。
 その結果、柏崎刈羽原発の核物質防護管理の責任者は労災事故の対応業務なども兼任しており、規制庁の調査に対し防護関連の業務比率が「5分の1程度」と回答。核物質防護に関する会議に出席せず、防護本部への出入りも少なかった。
 他の電力への調査では、これほど業務比率が低い責任者はいなかったという。このため規制委は報告書で一連の問題を「他電力に共通する問題や東電の全社的な問題ではなく、柏崎刈羽原発に固有の問題」とした。
 一方、同原発内で行われた複数の工事で安全を軽視し、コストダウンを優先させる不適切な指示や技術検討があったかについても調べたが、報告書では「形跡はなかった」としている。

 規制委は今後、追加検査を継続し、核物質防護を巡る業務環境や組織文化など8項目について東電の対策を評価。最終報告書をまとめた後、是正措置命令を解除するかを議論する。最終報告書をまとめる時期については明言していない。
 原子炉等規制法は、原子力施設を持つ事業者に対し、核物質防護管理の責任者を少なくとも1人置くことを義務付けている。

「柏崎刈羽原発固有の問題」 地元市長は「重く、ある意味ショック」

 柏崎刈羽原発では核物質防護管理にあたる職員が別の仕事も兼務していて、核防護業務の比率が5分の1程度と低かったということで、これは柏崎刈羽原発固有の問題と判断されました。

 更田規制委員長は、「人に依存する部分が非常に大きかった。実際上は置かれている枢要の人の違いというものが、結果として影響を与えていた」と指摘しましたが、当人たちの問題とするのは間違いで、そういう状況に追い込んだ会社の人員配置に問題の本質があります。
 柏崎市の桜井市長は、「柏崎刈羽原発に固有の問題であるという指摘は重く、ある意味ショックであった。なぜこのような問題が生じるのか、掘り下げ、分析してもらいたい」とコメントしました。
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「柏崎刈羽原発固有の問題」指摘に地元市長は「重く、ある意味ショック」
                          BSN新潟放送 2022/4/27
新潟県にある柏崎刈羽原発で、テロ対策など核セキュリティー上の不備が相次いだ問題を受け27日、原子力規制委員会が行っている追加検査の中間報告がまとまりました。不備については、東電の全社的問題ではなく「柏崎刈羽原発固有の問題」だと指摘しました。
中間報告は検査を行っている原子力規制庁がとりまとめ、27日の原子力規制委員会で了承されました。柏崎刈羽原発で起きた『IDカードの不正使用』と、『不正な侵入を検知する設備の故障など』の核セキュリティーをめぐる2つの問題について検査した結果…

原子力規制庁の担当者今回の2つの事案の発生については、他電力(会社)に共通する問題や東京電力の全社的な問題ではないと思います。つまり、柏崎刈羽原発に固有の問題であると判断しました」
例えば、防護設備について、他の発電所は地理的な特徴や気候を考慮した設備を設置しているのに、柏崎刈羽原発では考慮していませんでした。そのため、不要な警報が多かったということです。

また、柏崎刈羽原発では核物質防護管理にあたる職員が別の仕事も兼務していて、核防護業務の比率が5分の1程度と低かったということです。
他にも、監視方法や防護設備の保全などの面でも、他の発電所と比べ不十分だったり、甘い部分があったりしたと判断されました。さらに、設備の故障については、福島第1原発の事故の後に取り組んできたコスト削減の動きとも関連がみられるとしました。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は、他の発電所と柏崎刈羽原発の間では「違いが際立っていた」と指摘しました。そして、何がこの違いを生んだかということついては…。

原子力規制委員会 更田豊志委員長人に依存する部分が非常に大きかった。特定の個人の違いによって発電所の防護が大きく変わってしまうということはあってはならないが、実際上は置かれている枢要の人の違いというものが、結果として影響を与えていた
核物質の防護はセキュリティー上、特に重要なものであるという性質から、限られた人のみが管理に当たっていることが不備につながる落とし穴になったのではと指摘しました。
原子力規制委は今後、保守管理体制の整備・強化や、核物質防護業務の抜本的な見直しなど8つの点を重点的に確認するとしています。

数々の不備が『柏崎刈羽固有の問題』だと指摘されたことについて、原発の稲垣武之所長は
柏崎刈羽原発 稲垣武之所長「(去年、東電の報告書には)柏崎刈羽の防護部門については、福島第一・第二(原発)と比較しても、他部門、中の風通しが悪いと。こういったことにより、やはり発電所他部門との関係もかなり希薄なものになっていた。これについては私としても完全に把握・認識しきれないところがございます。今後も対話などを通じて今までどうだったかというところは、しっかり私として理解をし、必要な対策を取りたい」

一方、柏崎市の桜井雅浩市長は、中間報告について「柏崎刈羽原発に固有の問題であるという指摘は重く、ある意味ショックであった。なぜこのような問題が生じるのか、掘り下げ、分析してもらいたい」とコメントしています。

柏崎刈羽原発6・7号機 安全上重要な設備で問題が相次ぐ

 柏崎刈羽原発67号機で3月以降、安全上重要な設備で問題が相次いでいます。
 6号機では3月、非常用ディーゼル発電機の試験運転潤滑油が漏れ7号機では4月、フィルタベント配管の接合部誤った規格のものが使われていることが判明しました。
 また7号機使用済み核燃料を保管するプールで、緊急時に外部から水を入れる配管の接合部の耐震性を調べる検査に誤りがありました。
 こうした問題について稲垣所長は「福島の事故の対応にあたった私としては、非常用電源の重要性は身にしみて感じている。ほかの設備も含め、1つ1つ原因を究明して対策にあたりたい」と述べました。
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原発テロ対策不備 再発防止へ「地域の目線大切に」福田本部長
                  NHK新潟 NEWS WEB 2022/04月26日
東京電力柏崎刈羽原子力発電所で相次いで明らかになったテロ対策の不備の再発防止策の一環で、新たに、原子力部門のトップに就任した福田俊彦氏が会見し「地域の方々の目線を大切にしていきたい」と決意を述べました。
柏崎刈羽原発では、テロリストの侵入を検知する複数の設備が壊れるなど重大な不備が相次ぎ、去年4月から原子力規制庁が東京電力の再発防止策を確認する検査を行っています。
26日は、この再発防止策の一環で東京電力の原子力立地本部長に就任した福田俊彦氏(64)が初めて会見を行い「入社して最初に配属された柏崎刈羽原発は私の仕事の原点で、思い入れもあり、改革に尽力したい」と述べました。
福田本部長は福島第二原発で品質・安全部長などを務め、震災後は福島第一原発の廃炉を担当する役員を務めました。
福田本部長は「廃炉に携わる中で地域や社会の目線を感じ取り、行動につなげることが必要だと強く感じた。他の発電所の情報なども取り入れ、より俯瞰的な視点で所長をサポートしていきたい」と述べました
福田本部長は来月から柏崎市に拠点を移し、現場の状況をより詳しく把握しながら業務にあたるということです。
また、東京電力では、今後、順次、原子力部門の本社の社員およそ300人を柏崎市に異動させ、再発防止と再稼働に向けた態勢を強化することにしています。

柏崎刈羽原子力発電所の6号機と7号機では、先月から今月にかけて安全上重要な設備で問題が相次いでいます
このうち6号機では、ことし3月、非常用ディーゼル発電機の試験運転を行ったところ、潤滑油が漏れて運転が停止しました。
また、7号機では今月、設置工事が進められているフィルタベントと呼ばれる設備の点検を行ったところ、配管の接合部の部品に誤った規格のものが使われていました
フィルタベントとは事故で原子炉を覆う格納容器の中の圧力が高まった場合に、放射性物質の放出を抑えながら圧力を抜く設備です。
さらに7号機では、使い終わった核燃料を保管するプールで、緊急時に外部から水を入れる配管の接合部の耐震性を調べる検査に誤りがあり、原発の安全上重要な設備で問題が相次いでいます。

こうした問題について稲垣所長は「福島の事故の対応にあたった私としては、非常用電源の重要性は身にしみて感じている。ほかの設備も含め、1つ1つ原因を究明して対策にあたりたい」と述べました。 

28- 原発の伝熱管 鉄酸化物で損傷か 高浜3号機

 関西電力は25日、定検中の高浜原発3号機(加圧水型)の蒸気発生器伝熱管で見つかった傷が、運転時に生成する「鉄酸化物」によってできた可能性が高いと発表しました。新たに小型の高圧洗浄装置を導入し、伝熱管などに付着した鉄酸化物を除去するとしています。

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原発の伝熱管、鉄酸化物で損傷か 高浜3号機、高圧水で洗浄
                             共同通信 2022/4/25
 関西電力は25日、定期検査中の高浜原発3号機(福井県高浜町)の蒸気発生器伝熱管で見つかった傷が、運転時に生成する「鉄酸化物」によってできた可能性が高いと発表した。再発防止策として、新たに小型の高圧洗浄装置を導入し、伝熱管などに付着した鉄酸化物を除去する。運転再開時期の見通しは立っていない。
 関電は、これまでの検査で管の厚みが減ったことを示す信号が出ていた伝熱管3本を、小型カメラで調査。それぞれに長さ3~5ミリ、幅1ミリ以下の傷を確認し、蒸気発生器内からは鉄酸化物を見つけた。

2022年4月26日火曜日

米国でも最終処分地が決まらず 行き場のない核のごみ

 米国でも原発で発生する使用済み核燃料の最終処分地は決まっていないということで、全米の各原発では使用済み核燃料は「乾式キャスク」と呼ばれる容器に収納されたまま、多くは敷地内で野ざらしで保管されているということです。
 最終処分地を選定する責任は連邦政府にあるのですが、候補地で反対運動が起きるためいまだに決まらず、この先の見通しもないようです。
 東京新聞が報じました。2本の記事を紹介します。

 核兵器用の核廃棄物の処分は、ニューメキシコ州の地下約660mのところに地層処分の試験施設を作り、2030年度分まで受け入れる予定でしたが2014年2月に放射能漏れ事故を起こし使用不能になったようです。
       ⇒(14.02.18)米の放射性廃棄物地層処分施設で放射線もれ

    お知らせ
  都合により27日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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米国でも最終処分地が決まらず、行き場のない核のごみ
「負の遺産」を抱え続ける観光の街
                         東京新聞 2022年4月25日
 全米の各原発では、高レベル核廃棄物である使用済み核燃料の処分地が見つからず、敷地内にたまり続けている。観光地がある東部メーン州でも、運転停止から26年になる廃炉原発の敷地の屋外に、行き場のない核ごみが、たなざらしとなっている。処分先のめどは立たず、街は「負の遺産」を抱え続けざるを得ない状況だ。(メーン州ウィスカセットで、金杉貴雄)
 巨大なコンクリートの円柱が並んでいるのが、500メートルほど離れた公道から見えた。高さ55メートル、重さは約150トン。高レベル核廃棄物のための「乾式キャスク」と呼ばれる容器64個が、厚さ約1メートルのコンクリートパッドの上に置かれている。中には計1400本の使用済み核燃料棒などが封印されている。

 メーン州にある人口3700人ほどの街ウィスカセット。「州で最も美しい」とも言われる風光明媚な土地で、主要産業は観光業。夏は避暑地としてにぎわう。そんな街の中心部からわずか5キロの場所に、原発の高レベル廃棄物がずっと取り残されている
 「敷地には入らないでください。写真はこの道路からだけです」。管理する原発会社メーン・ヤンキー社の広報担当エリック・ハウズさんが警告した。「警備については言えない」と説明を拒むが、地元紙によると、自動小銃などを持つ武装警備員が24時間体制で警護する物々しさだ。
 このメーン・ヤンキー原発は1972年に稼働したが、7年後のスリーマイル島原発事故をきっかけに反対運動が起きた。10年で3度の州民投票はいずれも否決されたが、その後、米原子力規制委員会(NRC)の査察で多数の欠陥を指摘され96年に運転停止。そのまま廃炉が決定した
 廃炉作業は2005年に完了したものの、高レベル核廃棄物の使用済み核燃料は行き場がなく、会社は今、核ごみの管理のためだけに存続している。運転停止の3年前に入社したハウズさんは「これほど長期になるとは思わなかった」と漏らした。

◆最終処分場の選定地は地元が反対
 米国では、1982年の核廃棄物政策法で最終処分の責任は連邦政府にあるとし、98年までの処分開始を約束。だが、最終処分場に選定した西部ネバダ州ユッカマウンテンは地元の反対で頓挫、約束はいまだに果たされていない。このため、全米33州の停止済みを含む75の原発に約9万トンの使用済み核燃料が留め置かれ、毎年増え続けている
 最終処分場のめどが立たない中、全米の使用済み核燃料を集め中間貯蔵する民間施設建設案が南部テキサス州と西部ニューメキシコ州の2カ所で浮上。だが、両州とも知事や議会などが反発し、やはり厳しい。
 メーン・ヤンキー原発は稼働中、街の固定資産税の9割を占め、住民の税金は周辺の10〜20分の1だったという。今は恩恵が消えた代わりに、放射能が減衰するまで10万年の高レベルの核ごみが事実上無期限に留め置かれているだけだ。

 原発から3キロに農場があり、かつて反対運動に携わったレイモンド・シャディスさん(80)は「原発が停止しても安心感はなかった。核燃料が残ったままだったからだ」と険しい表情で語る。特にテロの脅威やキャスクの安全性に懸念を示し「子や孫の世代が見続けなければいけないのか」と不安を募らせる。
 住民らで作る「メーン・ヤンキー地域諮問委員会」のドン・ハドソンさん(71)は「核燃料がある限り、原発跡地は再開発ができない」と嘆く。安全性については当面不安はないとしつつ「100年かかるなら海面上昇などの気候変動の影響を受けるかもしれないし、永久に続く人工物もない」と早期の解決を希望する。長期化すれば、会社では後継者問題も発生する。
 デニス・シモンズ町長(57)は悲観的だ。「核廃棄物を抱えている少数の地域より、これから持ち込まれることに反対する人の方がはるかに多い。核のごみは私が生きている間はどこにも行かないだろう」


「なし崩しで最終処分地に」 核のごみ、米国でも日本と同じ懸念 解決策は見えず 
                          東京新聞 2022年4月4日
 世界最多の原発が稼働する米国で解決策を見つけられない「核のごみ」処分問題。使用済み核燃料の暫定的な保管場所とされる中間貯蔵施設だが、最終処分のめどが立たない中で「このまま最終処分地となるのでは」との不安は日本と同じ構図だ。核のごみが各原発でたまり続ける姿は、東京電力福島第一原発事故があっても原発を再稼働させている日本と共通している。(米西部ニューメキシコ州などで、金杉貴雄、写真も)

◆「一度事故起きれば、チェルノブイリ」
 「一度事故が起きれば、ここは西テキサスのチェルノブイリになる。子どもたちのため、生まれ育った地域を全米の核廃棄物の処分場にしない」。米テキサス州の西端、アンドルーズ郡で使用済み核燃料などの高レベル核廃棄物の中間貯蔵の候補となっている施設前で、エリザベス・パディーヤさん(33)は訴える。
 運営企業は使用済み核燃料4万トンを全米から受け入れ乾式キャスクと呼ばれる容器で地上保管する計画で、米原子力規制委員会(NRC)が昨年9月に許可。期間は40年だが最終処分地がなければ更新可能だ。

 もうひとつの候補地、ニューメキシコ州リー郡の場合、別の民間会社がNRCに申請した計画では、最大17万トンの使用済み核燃料を1万個の容器で保管する。会社側は「容器は200年以上耐えることができる設計だ」と豪語するが、同郡に住むニック・キングさん(69)は「高レベルの廃棄物を集めたらほかに移そうという意思はなくなり『永久』になる」と懸念する。

◆最終処分地の計画頓挫、「核のごみ」行き場なく
 中間貯蔵施設の計画が浮上している背景には、最終処分地の計画が頓挫し、「核のごみ」の行き場がなくなっていることにある。
 使用済み核燃料は放射能が減衰するまで10万年かかる。米国は連邦法で処分責任は連邦政府にあるとし、1987年にネバダ州のユッカマウンテンを唯一の最終処分の候補地に決定。だが、地元から反対論が起き2010年に許可申請手続きが終了し事実上白紙となり、その後の動きはない。
 米国の使用済み核燃料は約9万トンで世界全体の2割を占め、各原発で保管され続け年2000トンずつ増えている。米議会付属の政府監査院(GAO)の分析では、各原発での保管に関する連邦政府の債務総額は20年段階で約4兆円、10年後には約6兆円に達する。
 このため中間貯蔵施設は各原発から使用済み核燃料を集め保管費用を軽減し、最終処分までの「つなぎ」を担う。だが、州をまたいだ二つの候補地で共和・民主両党の州知事が猛反発し、議会でも施設の設置を禁止する法律を可決もしくは審議を進めている。

◆日本では青森県に 懸念くすぶる地元
 日本では、使用済み核燃料の一部が青森県六ケ所村の再処理施設に運び込まれているほか、同県むつ市には中間貯蔵施設が建設中だ。ただし国の最終処分地は未定で、地元では事実上の最終保管になることへの懸念がくすぶっている。
 米スタンフォード大のロドニー・ユーイング教授は、米国の中間貯蔵施設は「安全面ではなく、増え続ける保管費をなくしたい財政問題が推進の理由だ」と指摘する。元NRC委員長のアリソン・マクファーレン氏は「数百年以上の期間で核廃棄物を人間が監視し続けられる保証はない」と「中間」の長期化による安全性を憂慮し、最終処分地の選定が必要だと強調する。
 最終処分の計画は行き詰まり、それがなければ中間貯蔵施設もできない。広大な国土の米国でも、核のごみが原発にたまり続けるという袋小路に陥っている。

米国の原発と使用済み核燃料 
 米国の原発は2010年当時に104基が稼働していたが、日本の福島第一原発事故などの影響もあり、現在は94基で全電力の約20%を占める。米議会は1982年に原発から出る使用済み核燃料の処分の責任を連邦政府とし、98年までに最終処分を開始すると定めたが現在も約束を果たせず、連邦政府は各原発で保管する電力会社に賠償金を支払っている