2024年4月29日月曜日

柏崎刈羽原発 再稼働の動き 世論で止めよう(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗が掲題の主張を掲げました。
 柏崎刈羽原発昨年12月に再稼働禁止命令が解除されたことから今年3月には斎藤健経産相が花角英世新潟県知事、桜井雅浩柏崎市長、品田宏夫刈羽村長に電話で再稼働への理解を求め資源エネルギー庁長官らも現地に出向くなど、俄然再稼働に向けての政府からの働きかけが強まりました。
 しかし元日に起きた能登半島地震では、家屋の倒壊や半壊が大々的に発生し、道路の数十カ所が寸断されるなどして、屋内退避や住民の安全な避難が不可能であることが明らかになりました。地盤が4m近くも隆起したり津波も襲来しました。逆に地盤が沈下した場合の被害はどれ程大きいのか計り知れません。
 住民にとってもっとも重要な「避難」の問題が未解決なままでの再稼働はあり得ません。
 米国では、住民の避難ができないケースが想定されれば、原発の稼働は許されないという規制になっていて、ニューヨーク州に新設されたショアハム原発は1984年に完成したものの、稼働直前になって避難計画に問題があるという理由で稼働が許されずに廃炉にされました。
 これは住民の安全(健康)を守る上で当然であり、取り分け世界有数の地震・津波大国の日本ではこの点を重視することが重要で、避難に関する全ての案件がクリアされていることが再稼働の条件となります。
 元経産官僚の古賀茂明氏は「この問題を真正面から取り上げれば、必ず原発を止めることにつながると確信している」と述べています。
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1月17日)避難計画を規制委が審査しない日本のシステムは世界の非常識 ずさんな避難計画が野放しに
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主張柏崎刈羽原発 再稼働の動き 世論で止めよう
                       しんぶん赤旗 2024年4月27日
 福島第1原発で世界最悪レベルの事故を起こした東京電力が再び原発を稼働しようと動いています。東電が新潟県・柏崎刈羽原発7号機原子炉に核燃料を装填(そうてん)し、原子炉起動に向けた使用前検査を進めています。
 同原発は、テロ対策の不備を理由に原子力規制委員会から核燃料の移動を禁じられていました。昨年12月に禁止命令が解除されたことから、東電は、地元同意の見通しがないまま核燃料装填にふみきりました。既成事実を積み上げて再稼働へと突き進もうという執念は軽視できません。

■政府が強く後押し
 今年3月には、東電から今後の対応方針について報告を受けた斎藤健経産相が花角英世新潟県知事、桜井雅浩柏崎市長、品田宏夫刈羽村長に電話で再稼働への理解を求めました資源エネルギー庁長官らも現地に出向きました。
 政府と東電が一体となって再稼働への動きを強めていることは重大です。福島原発の事故も被害も終わりが見えないもとで、東電が原発を再稼働させることは許せません。県民、国民の大きな世論と運動で政府と東電の動きをはね返す必要があります

 原発回帰に舵(かじ)を切った岸田文雄政権は「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月閣議決定)で、「国が前面に立って」環境整備に取り組み再稼働を進めると宣言し、経産省幹部が足しげく新潟県に通うなど柏崎刈羽原発の再稼働を強力に後押ししてきました。
 テロ対策の不備や不正が相次ぐ東電への不信は根深いうえ、住民の間には能登半島地震で地震による原発事故への不安が強まっています。東電による住民説明会では避難路や屋内退避などへの不安の声が多く出されました。住民の思いを無視して再稼働に突き進む政府と東電の姿勢には新潟県内の首長からも懸念の声が出されています
 新潟県は、福島原発事故の原因、健康と避難生活への影響、避難方法の「三つの検証」を行い、多くの課題が示されました。
 花角知事は「三つの検証が終わるまで再稼働の議論はしない」「再稼働の是非は県民に信を問う」と公約してきたこともあり、柏崎刈羽原発の再稼働について態度を明らかにしていません。しかし知事は昨年、検証総括委員会を廃止し、「三つの検証」の幕引きを図りました。予断を許さない状況です。再稼働の是非を議論するうえで、福島原発事故の検証は不可欠です。「三つの検証」をあいまいにせず、県民的な議論を行うべきです。

■地震国という危険
 能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)で変圧器が壊れて外部電源の一部を失うなど深刻なトラブルが続出しました。現行の避難計画が机上の空論であることも浮き彫りになりました。道路が寸断されれば逃げられず、家が壊れれば屋内退避もできません
 日本は世界有数の地震・津波国です。福島原発事故でも能登半島地震でも明らかなように、日本で原発を稼働させることはあまりにも危険です。日本社会の現在と将来のために、原発回帰の自民党政治を終わらせ、原発ゼロの日本をつくりましょう。

柏崎刈羽原発「再稼働でも電気料金下がらない」というのはなぜ?

 電力会社はこれまで発電コストに関して原発の優位性を強調し、原発を稼働させれば電気料金が下がると宣伝して来ました。それでは今度柏崎刈羽原発7号機が再稼働すれば電力料金が下がるのかというと「下がらない」ということです。

 騙されたような話ですが、その理由は現在公表しているコストは再稼働を見越した数字だからということです。毎日新聞が報じました(もともと原発のコスト計算では、核燃料の後処理を除外するなどの不正確さがありました)。
 今度の記事で分かったことは、電力会社はこれまで原発の発電コストを確か10円前後というレベルで発表して来ましたが、実際には41・51円だということです。似ても似つかない数字で、これでは「何をコストと呼ぶのか」ということから説明し直してもらわないと分かりません。
 こんな謎だらけの世界であるならば、そもそも原発のコストが安いなどという欺瞞の宣伝は止めるべきでしょう。
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柏崎刈羽原発「再稼働でも電気料金下がらない」なぜ?
                            毎日新聞 2024/4/28
 東京電力は再稼働を目指している柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の原子炉に核燃料の装着を始めた。政府と電力会社はこれまで「原発は発電コストが安い」「原発を再稼働すれば電気料金を抑制できる」と主張してきた。ところが東電の場合、柏崎刈羽原発が再稼働しても「さらに電気料金が安くなることはない」という。一体どういうことなのか。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】

 東電は2024年4月15日、柏崎刈羽原発7号機の原子炉に核燃料の装着を始めたが、4月17日朝に制御棒の駆動用モーターの電源に不具合が発生。東電は核燃料の装着作業を一時中断し、約16時間後に作業を再開した。
 福島第1原発の事故後に再稼働した全国の6原発12基は、いずれも地元が同意した後に核燃料を装着している。今回のように地元の同意前の装着は異例なだけに、柏崎刈羽原発をめぐってはメディアの注目度が高い。
 このため東電は4月18日、柏崎刈羽原発7号機の核燃料装着作業を報道陣に公開した。作業は土日を含め24時間態勢で行われ、核燃料872体を2週間程度かけて原子炉に装着するという。
 岸田文雄首相はこれまで「原発の再稼働で電力価格上昇が抑制される」と国会で答弁している。岸田政権が原発の再稼働を目指すのも、国民の電気料金の負担を抑える狙いがある。
 東電は今回、核燃料の装着を始めた柏崎刈羽原発7号機だけでなく、同6号機の再稼働を目指している。再稼働すると1基当たり約1100億円の収支改善効果があるという。2基再稼働すれば約2200億円と改善効果は大きい。

◇「再稼働は料金に織り込み済み」
 ところが、仮に6、7号機が再稼働しても「さらに電気料金が安くなることはない」とはどういうことなのか。東電によると、「現在の電気料金の原価には、あくまで料金算定上の仮置きとして、原子力の稼働を織り込んでいるからだ」という。
 東電は23年6月1日、家庭などに供給する電気の規制料金を平均15.9%値上げした際、原発2基の再稼働で「年間900億円程度の費用削減効果になる」と説明していた。再稼働に伴い、核燃料代などはかかるが、卸電力取引市場を通じて他社から購入する火力発電などの電力が少なくなるからだと主張していた。
 それが今回、「1基当たり約1100億円」という説明になったが、いずれも現在の電気料金には「織り込み済み」のため、再稼働しても電気料金に変化はないのだという。
 

◇再稼働のメリットは?
 原発が再稼働しても電気料金が下がらないのであれば、消費者にとっては再稼働のメリットは少ないともいえる。
 福島第1原発事故の賠償や廃炉費用を捻出するため、東電は柏崎刈羽原発に核燃料を装着し、一日も早く再稼働させたいのかもしれない。
 しかし、政府や東電が目指す再稼働の行方は見通せない。能登半島地震は原発事故時の避難に課題があることを浮き彫りにした。
 今回の7号機の核燃料装着を受け、4月21日に新潟市内で開かれた有識者のシンポジウムでは、新潟県内で地震と原発事故が起きた場合、「現在の避難計画が実行可能とはとても思えない」と専門家が指摘している。柏崎刈羽原発の再稼働をめぐっては、慎重な対応を求める声が強まるのは間違いない。

◇燃料代の抑制より維持費が高い?
 東電が23年に公表した資料によると、原発2基の再稼働で東電は年間119億キロワット時の電力を発電する想定で、その費用の総額は4940億円となっていた。
 この中には日本原子力発電と東北電力から原発の電力を購入する契約に基づき、東電が日本原電に支払う約550億円と東北電力に支払う約313億円が含まれている。両社の原発は動いていないため、東電が実際に受け取る原発の電力はゼロだが、契約に基づき人件費や修繕費などを支払うことになっている。
 年間119億キロワット時の電力を4940億円かけて発電するので、1キロワット時当たりの発電コストは4940÷119=41.51円となる。
 ところが東電が他社から購入する火力などの電力の市場価格は1キロワット時当たり20.97円となっている。
 このため東電は原発2基を再稼働するよりも、市場から火力発電など他社の電力を購入した方が安く済む計算になると、23年6月に毎日新聞経済プレミアでリポートした(「原発が安いは本当?『東電資料』から見つけた意外なデータ」)。
 このデータから「原発は燃料代を抑えられたとしても維持費が高く、電気料金の抑制効果はほとんどない」という脱原発派の主張には説得力がある。東電の「織り込み済み」とは、この辺の事情を加味してのことだろう。
 柏崎刈羽原発が再稼働しても電気料金が安くならないことについて、原子力政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「織り込み済みだという東電の主張はその通りだろう。実際には再稼働で電気料金が下がる分よりも、私たちが電気料金で支払っている原発の維持費の方が高いはずだ」と話している。
 原発は安全対策の強化で発電コストも上がっている。経済産業省の試算では、30年の1キロワット時当たりの発電コストは原発の11.7円以上に対して、陸上風力は9.9~17.2円、事業用の太陽光発電は8.2~11.8円と、原発の価格優位性は揺らぎつつある

福島第1原発トラブル続発 危機管理の甘さは「リスク抽出不十分」だからと規制委

 福島第1原発で昨年からトラブルが相次いでいる問題で、原子力規制委の伴信彦委員は26日に開かれた規制委の会合で「一連の事案で共通するのは計画段階でのリスク抽出の不十分さだ」と批判し、東電に改善を迫りました。これまでも計画段階でリスクの抽出を徹底するよう求めたが、改善していないということです。
 現場作業では「危険予知活動(KY活動)」と称されるものがあり、毎日、現場作業開始前に全員が当日の作業に伴う危険性をあらかじめ認識(予知)することで事故を防止する、という手法が広く知られています。東電はそうした基本事項を学び直すべきでしょう。
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福島第1原発トラブル続発 危機管理の甘さ批判 規制委「リスク抽出不十分」
                            福島民報 2024/4/27
 東京電力福島第1原発で昨年からトラブルが相次いでいる問題で、原子力規制委の伴信彦委員は26日に開かれた規制委の会合で「一連の事案で共通するのは計画段階でのリスク抽出の不十分さだ」と批判し、改善を迫った。東電側は危機管理の甘さを認め、大型連休明けにも総点検を検討する考えを示した。
 福島第1原発では昨年10月、作業員に放射性物質を含む廃液が飛散。今年に入ってからは、焼却炉建屋からの放射性物資を含む水の漏えい、廃棄物焼却設備の水蒸気発生による停止が起きた。24日にはケーブルの切断によって一部施設が停電した。
 伴委員は手順書の不備などが原因だと指摘。これまでも計画段階でリスクの抽出を徹底するよう求めたが、改善していない現状を踏まえ、「深刻という感覚を持っているのか」と苦言を呈した。
 会合の委員を務める蜂須賀礼子大熊町商工会長は「東電はリスクに関する認識が甘い」と述べ、原子力規制庁の監視を強化すべきだとした。委員の徳永朋祥東大教授は欠けていた視点などを洗い出し、見直しを進めるよう助言した。
 小野明東電副社長・福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は「作業手順の中に不備がないかをもう一度見てみたい」と反省を口にした。作業停止も含めて検討し、全体のリスクを確認する考えを示した。
 席上、原子力規制庁から、焼却炉建屋からの汚染水の漏えいは現時点で「軽微な違反(監視)」と評価されていることが報告された。ケーブル切断による停電についても今後、保安検査が進められる見通し。

29- IAEA代表団 福島第一原発「トリチウム水放出」の視察終える

IIAEA代表団「処理水放出は実施計画にしたがって進んでいる」福島第一原発での視察終える

                           福島テレビ 2024/4/27
国際原子力機関・IAEAの専門家チームは4月24日、福島第一原発を訪れ処理水放出の現場を視察した。
視察中は電源ケーブルの損傷による停電で処理水の放出が中断され、東京電力から停電の原因や設備が停止した経緯について説明があったという。
IAEAは「処理水の放出は原子力規制委員会が承認した実施計画にしたがって進んでいることを確認した」と総括した。年内に報告書をまとめることにしている。

2024年4月27日土曜日

最悪を想定せず屋内退避を議論し始めた原子力規制委

 規制委は、原発事故時には道路の混雑を避けるために、5~30キロ圏内の住民は次の指示があるまで自宅退避とする」としています。
 しかし家屋の倒壊や半壊が想定され、また津波が襲来する中では自宅退避は「非現実的である」という指摘が当初からありました。元日に起きた能登半島地震で家屋の半壊が多数生じたことから、その指摘が的中したことが証明されました。

 原発事故時の屋内退避について規定する原子力災害対策指針を見直すため、原子力規制委が設置した検討チームの初会合が22日に開かれまし。そこでは屋内退避の安全性等を議論するのではなく、原発事故が起きた場合でも「新」規制基準によって放射能は大量に放出されないという前提の下に、屋内退避の具体的な日数や対象範囲などを議論していく方針であり、そのことに出席者から異論は出なかったということです。しかしそれはそういう趣旨の委員会であったから誰も異論をはさまなかったのでした。
 日本では基準地震動を3000ガル程度にあげておく必要があると言われているのに、実際に基準地震動を僅か数百ガル程度に低く設定している原発も沢山ある規制基準のどこが一体安全だというのでしょうか。
 規制基準に合格した原発は事故時でも大量の放射能を放出しないというのは正に「新たな神話」です。原子炉格納容器内の圧力が上昇した際には、容器の破裂を防ぐために大気放出しますが、その際に通す「ろ過設備」は海外のものに比べると余りにも貧弱で、到底放射能が低く抑えられるなどと言えるものではありません。

 1年掛けて屋内退避の具体的な日数や対象範囲などを定めたとしても、屋内退避の安全性の問題は何も解決しません。折角屋内退避の問題を議論する委員会を作ったというのに何というピントの外れ方でしょうか。
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原発事故で放射性物質が漏れる事態「回避できる」 最悪を想定せず屋内退避を議論し始めた原子力規制委員会
                         東京新聞 2024年4月22日
 原発で事故が起きた時の屋内退避について規定する原子力災害対策指針を見直すため、原子力規制委員会が設置した検討チームの初会合が22日、開かれた。東京電力福島第1原発事故のように、大量の放射性物質が原発の外に漏出するような最悪レベルの事故を想定しないことが示された

◆「新規制基準で対策が強化されている」
 事務局はこの日、福島事故後につくられた新規制基準で設置が求められる事故対策がうまく機能した、とする三つの想定を提示。いずれも、格納容器が破損して放射性物質が大量漏出した福島事故のような重大事態を回避できる状態とした。担当者は「新規制基準で対策が強化されており、現実的な事態」と説明した。
 想定しているのは原発のフィルター付きベントなどで放射性物質の漏出を制御できるような事故。被ばく線量をシミュレーションし、屋内退避の具体的な日数や対象範囲などを議論していく方針で、出席者から異論は出なかったチームは放射線医学の専門家や自治体職員、内閣府の担当者ら約20人で構成する

◆能登半島地震では屋内退避は困難だった
 現行の指針では、原発事故時、5~30キロ圏内ではいったん屋内退避し、放射線量により段階的に避難するとしている。能登半島地震では家屋倒壊が多発し、北陸電力志賀原発(石川県)で事故が起きていたら屋内退避が難しい状況だった。だが、規制委は屋内退避が有効な手段との認識を示し、チームは屋内退避を前提に議論し、本年度内に報告書をまとめる。(渡辺聖子)


原子力災害対策指針を見直しへ…でも規制委は大幅変更を否定 能登半島地震で「避難の前提」総崩れになったのに
                         東京新聞 2024年1月17日
 原子力規制委員会は17日の定例会合で、能登半島地震を受けて原発の立地自治体から事故時の屋内退避のあり方について意見があったとして、原子力災害対策指針を見直す方針を決めた。現行の指針では示されていない屋内退避の解除の時期などを明記する見通し。
 原子力災害対策指針 東電福島第1原発事故後、重大な原発事故が起きた場合に備え、原子力規制委員会が策定した。重大な事故時は原発の5キロ圏内は避難し、5〜30キロ圏内は屋内退避することなど、住民避難や被ばく防護措置が定められている。

◆家屋倒壊、道路寸断見ても「現在の指針対応できる」
 指針は原発の立地自治体が地域防災計画をつくる際に参考とする。今回の地震では北陸電力志賀原発(石川県)で事故が起きた場合、家屋倒壊などで屋内退避そのものができない状況となった。しかし、踏み込んだ見直しにはならない可能性が高い。
 定例会合で、山中伸介委員長が見直しに向けた議論を提起。地震津波の審査を担当する石渡明委員は、自然災害によって避難に支障が出る事態について「現在の指針は少し足りない」と述べた。山中委員長が議論の論点を提示するよう事務局に指示した。
 一方で、山中委員長は定例会合後の記者会見で、現在の指針について「能登半島地震への対応に問題はない」と述べ、大幅な見直しにはならない考えを示した。多数の家屋倒壊や道路寸断が発生したことを踏まえた見直しの必要性を問われても、「現在の指針や自治体が策定する地域防災計画で対応できる」と述べるだけだった。
 見直しを提起した理由については、13日に東北電力女川原発(宮城県)の立地自治体と意見交換した際、出席者から屋内退避の解除時期を巡る質問が相次いだと説明。「(解除時期を)より明確に示したい」と述べ、見直しにかかる期間については「難しい議論になるため、数カ月はかかる」との見通しを示した。(渡辺聖子)

◆リスクを軽視する規制委 福島第1原発事故を忘れたのか
 <解説> 原発事故時の避難行動のベースとなる原子力災害対策指針の見直しを限定的な範囲にとどめようとする原子力規制委の姿勢は、原子力災害のリスクの大きさから目を背けるもので、規制当局としての役割を果たしていない
 能登半島地震では、多くの家屋が倒壊し、指針が定める屋内退避が現実的に不可能であることが明白になった。避難の判断に使う放射線量の実測値も、北陸電力志賀原発(石川県)の30キロ圏で最大18カ所のモニタリングポストが測定できなくなった。避難に使う道路も寸断され、船での避難も断層活動による隆起で一部の港が使えなくなるなど、指針の前提はことごとく崩れた
 2011年3月の東京電力福島第1原発事故の教訓は、原発に100%の安全はなく、常にリスクと向き合い対策を改めていくことにある。指針が機能しない現実が明らかになった以上、問題点を詳しく洗い出し、抜本的な見直しに臨むことが規制当局としてのあるべき姿だ。規制委は、福島事故で今も2万人を超える福島県民が避難を続けている現状を忘れてはならない。(小野沢健太)

巨大地震が頻発している(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 元日の能登半島地震に引き続き、4月17夜に豊後水道を震源とするマグニチュード66の豊後水道地震が発生し愛媛県愛南町と高知県宿毛市で震度6弱の揺れ観測されました。四国で震度6弱以上の揺れを観測したのは1919年の統計開始以来初めてのことだということです。
 能登半島地震では、原発周辺の家屋の多くが地震で損壊し屋内退避が不可能になり、避難するにも陸路も海路も使用不能で避難不可能になって、地震発生時に周辺住民の生命が守られないことが明らかになりました。
 豊後水道地震の震源は長さ1000kmに及ぶ長大な大断層帯「中央構造線」上にあり、中央構造線にはひずみが集中していて周辺には活断層帯が多くあります
 植草氏は以上のようなことを明らかにし、いまは日本列島直下の地殻変動が活発化していると言って間違いはなく、巨大地震への備えが目下の日本の最重要課題であり、原発もリニアもこの視点から対応しなければ取り返しのつかない事態を招くだろうと警告しました
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巨大地震が頻発している。
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年4月25日
2011年3月11日に発生した東日本大震災。
海底を震源地とする地震だったが陸上で記録された最大加速度(地震の揺れの強さを示す指標)は2933ガルだった。
本年1月1日に発生した能登半島地震。陸上で観測された最大加速度は2828ガル。
観測地点は石川県志賀町。志賀町領家に計測機械が設置されている。

川県志賀町に立地するのが北陸電力志賀原子力発電所。
原発の至近地点で2828ガルの揺れが観測された。
志賀原発は現在運転停止中。原発が運転中にこの地震が発生していたらフクシマ事故が再現された可能性がある。
地震で能登半島の道路は寸断された。
また、地震の影響で放射線量を計測するモニタリングポストの多くが使用不能に陥った。

原発周辺の家屋では「屋内退避」が取られることになるが、家屋の多くが地震で損傷し、屋内退避が不可能になった。
地震発生時の避難が計画されているが、陸路も海路も使用不能で避難することが不可能になった。
地震発生時に周辺住民の生命が守られないことが明らかになったと言える。

本年4月17日午後11時過ぎに豊後水道を震源とするマグニチュード6.6の豊後水道地震が発生した。
愛媛県愛南町と高知県宿毛市で震度6弱の揺れを観測した。
四国で震度6弱以上の揺れを観測したのは1919年の統計開始以来初めてのこと。
震源は豊後水道で震源の深さは約38キロ、地震の規模はマグニチュード6.6。















2016年4月には熊本県から大分県にかけて強い地震が連続して発生して大きな被害を出した。
震源は100キロメートルの範囲に広がった。
一連の地震の震源の延長上に西日本を縦断する「中央構造線」と呼ばれる大規模な断層帯が存在する。
九州では大分県の有名な温泉地である由布院に源を発し別府湾に注ぎ込む「大分川」の下を長さ1000Kmに及ぶ長大な大断層帯「中央構造線」が通っている。

2016年4月14日夜に熊本市近郊で巨大な地震が発生。
さらに、4月16日未明に14日の地震を上回る本震が発生した。
熊本県益城町では14日と16日の両日とも震度7の揺れを観測した。
これをきっかけに阿蘇山周辺から大分県へとマグニチュード5クラスの地震が広がっていった。

地震は九州を横切る「別府-島原地溝帯」を東に進んだ。
地溝帯というのは両側を断層で挟まれた幅の広い谷のこと。
別府-島原地溝帯は西日本を横切る長大な断層の連なり「中央構造線」の西端に当たる。
中央構造線の周辺には並行して多くの活断層がある。
安土桃山時代末期の1596年9月1日に中央構造線沿いの愛媛県でマグニチュード7クラスの慶長伊予地震が発生。
その3日後に約200キロメートル離れた大分県で同程度の慶長豊後地震が発生。
その翌日には兵庫県で慶長伏見地震が発生した。
1995年に発生した阪神淡路大震災は中央構造線近くを震源とする地震。

今回の豊後水道地震も中央構造線上の地震である。
中央構造線にはひずみが集中しており、周辺には活断層帯が多い。
別府-島原地溝帯には熊本地震を引き起こした日奈久(ひなぐ)断層帯や布田川(ふたがわ)断層帯、大分の地震との関連が疑われる別府-万年山(はねやま)断層帯などの活断層がある。
中央には巨大な阿蘇山が存在し、雲仙岳がある島原半島から熊本県八代市沖までが活断層の密集地帯。

日本列島直下の地殻変動が活発化していると言って間違いはない。
巨大地震への備えがいまの日本の最重要課題である。
原発もリニアもこの視点から対応しなければ取り返しのつかない事態を招くだろう。

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福島から避難した新潟でまた… 柏崎刈羽再稼働に前のめりな東京電力への怒り

 元日の能登半島地震の際に福島の原発事故で福島県から新潟市に避難した被災者らは、そこでも震度5強の地震に見舞われました。福島原発震災時4歳だった娘(17)は当時の恐怖がフラッシュバックして泣きじゃくり、呼吸がうまくできなくなりました。
 やはり福島から新潟に避難した別の家族は、避難先でいじめられた長男風呂場で「福島はよかった」と1人で声を上げ泣いたということです。
 こうして元日の能登半島地震で改めて福島原発事故の悲惨さが思い出される中で、東電は必死に柏崎刈羽原発の再稼働に前のめりになっています。東京新聞が報じました。
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「原発はもう、あり得ない」福島から避難した新潟でまた…柏崎刈羽再稼働に前のめりな東京電力への怒り
                         東京新聞 2024年4月27日
 東京電力は、柏崎刈羽原発(新潟県)7号機への核燃料の装塡(そうてん)を26日に完了させ、再稼働に前のめりな姿勢を崩さない。福島の事故で福島県から新潟市に避難した被災者らは「福島の廃炉も見えず、能登半島地震のように地震が頻発する中、再稼働するというのか」と強い反対の声を上げる。(片山夏子)

◆能登半島地震で恐怖がフラッシュバック
 福島県郡山市から新潟市に避難した高橋真由美さん(52)は能登半島地震の長く激しい揺れの中、東日本大震災と原発事故を思い出した。避難先の新潟市西区は震度5強を記録。「柏崎刈羽は大丈夫か」と頭によぎった震災時4歳だった娘(17)は当時の恐怖がフラッシュバックして泣きじゃくり、呼吸がうまくできなくなった

 「逃げろー」。家は海から2キロ。津波がすぐ来るとのニュースを見て飛び出したが、駐車場の側溝が20センチほど隆起し段差などで車が出せなかった家族4人で車を持ち上げ、何とか避難した
 高橋さんは13年前、テレビで福島第1原発3号機の爆発を見て恐怖を覚えた。当時4歳と7歳の子どもたちを考え、母子避難を決めた。慣れぬ環境、不安定になった子どもたち、新しい仕事…。3年後に夫と一緒に暮らせるようになるが、心身の疲れがたまり一時はパニック障害に。故郷や人間関係など失ったものは大きく、今も将来が見えずに不安が付きまとう。
 能登の被害を見て事故時の避難は不可能だと感じた。各地で大きな地震が頻発しているのに、まだ原発に頼るのかと高橋さんは絶望的な気持ちになる。「原発はもうあり得ない。ましてや柏崎刈羽は世界最大級の発電所。事故が起きたら福島どころではない。人命優先ならば再稼働という答えはでないはずだ

◆風呂場で泣いた息子…同じ思いはさせたくない
 原発事故後、郡山市に住んでいた女性(55)は自宅の放射線量の高さに驚き、夫と幼い3人の子と新潟市に避難した。子どもたちは新しい環境になじむのに時間がかかった。いじめられた長男が風呂場で「福島はよかった」と1人で声を上げ泣いたときは胸が痛んだ。次男はイライラして不安定になり、学校に呼び出される日が続いた。二度と他の人に自分たちと同じ思いはさせたくないと、柏崎刈羽の運転差し止めを求めて裁判で争っている
 福島の家も新潟の家も原発まで約60キロ。「賠償金の支払いや経営再建のための再稼働なら、また事故が起きたらどうするのか。そもそも福島の廃炉が見えず、まだ避難している人たちも大勢いる中で、東京電力に原発を動かす資格があるのか」

 東京電力が地元自治体の同意を待たずに核燃料を装塡したことに「何が何でも動かすという強い意志を感じる」。今後の焦点となる新潟県の花角英世知事らの判断に向けて願う。「国民がどんなに反対の声を上げても国は聞こうとしない。知事は福島事故や地震頻発の現状を見て、不安の声を受け止めてほしい

公正な審理求め集会 東電刑事裁判で支援団 樋口元裁判官が発言

 福島第1原発事故をめぐり東電元経営陣3人が強制起訴された東電刑事裁判で、福島原発刑事訴訟支援団は25日、元裁判官の樋口英明氏を迎えて集会を開き100人が参加しました。樋口氏は、福井地裁の裁判長して14年に大飯原発3、4号機、15年に高浜原発、4号機の運転差し止めを認める判断を出しました。
 集会で樋口氏は、津波対策をしないことを決めた後の被告人らの行動について「安全性に対する全くの無関心だ。交通事故でいえば人の動静を見落とした人の罪よりも、人がいるかどうかにさえ無関心だった人の罪の方がはるかに大きい」と述べました。
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公正な審求め集会 東電刑事裁判で支援団 元裁判官が発言
                       しんぶん赤旗 2024年4月26日
 東京電力福島第1原発事故をめぐり東電元経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電刑事裁判で、福島原発刑事訴訟支援団は25日、元裁判官の樋口英明氏を迎えて集会を開きました
 樋口氏は、福井地裁の裁判長して2014年に大飯原発3、4号機、15年に高浜原発、4号機の運転差し止めを認める判断を出しました。集会には、約100人が参加しました
 集会で樋口氏は、津波対策をしないことを決めた後の被告人らの行動について「安全性に対する全くの無関心だ。交通事故でいえば人の動静を見落とした人の罪よりも、人がいるかどうかにさえ無関心だった人の罪の方がはるかに大きい」と述べました。

 集会に先立ち同支援団は、最高裁第2小法廷の草野耕一裁判官について、同刑事事件を担当するのにふさわしくないとし、審理から身を引く「回避」を求める署名3911人分を最高裁に提出しました。これまでに提出しだ分と合わせると計1万2573人分となります。
 同支援団によると草野裁判官は東電などに法的アドバイスをしている複数の弁護士が所属する「西村あさひ法律事務所」の元代表であることなどから、担当を自ら外れるべきとしています
 この事件は、二審で全員無罪となり、現在最高裁で争われています。

27- お知らせ

 都合により27日の記事の更新は夕刻になります.


2024年4月24日水曜日

「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演

 2014年に大飯原発3、4号機再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長、樋口英明氏(71)が7日、柏崎市住民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」主催の講演会で、原発の耐震性について「一般に考えられているよりはるかに低い」と指摘し、「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張しました。

 また原発の本質とは「原発は人が管理し続けなければ暴走する」「暴走時の被害は想像を絶するほど大きい」の二つだとし、「(これを理解していなければ)間違った判決や政策になる」と結論付けました。毎日新聞が24日、報じました。
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「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演
                        毎日新聞 2024 年 4 月 24 日
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟で、2014年に再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長、樋口英明氏(71)が新潟県柏崎市で講演した。樋口氏は能登半島地震(M7・6)発生時の北陸電力志賀原発の例から、原発の耐震性の低さを指摘。「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張した。

 講演のテーマは「能登半島地震と原発」。地元住民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」(本間保・共同代表)の主催で7日にあり、市民ら約160人が耳を傾けた
 能登半島地震では、石川県志賀町で最大震度7、北陸電力志賀原発(同町)で震度5強を記録した。志賀原発では外部電源から電力を受ける変圧器が破損し、約2万3400リットルの油が漏れた。樋口氏は原発の耐震性について「一般に考えられているよりはるかに低い」と指摘した。
 原発に関心のない人は、日本の原発はそれなりには安全だろうと思い込んでいる」とし、福島第1原発事故までは自身もその一人だったと告白。「日本の原発の最大の弱点は耐震性だが、私たちは耐震性が高いと思い込んでしまっている」と話した。脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した。
 また樋口氏は原発の本質とは「原発は人が管理し続けなければ暴走する」「暴走時の被害は想像を絶するほど大きい」の二つだとし、「(これを理解していなければ)間違った判決や政策になる」と結論付けた。【内藤陽】