2023年2月27日月曜日

耐震見直し遅れる川内原発、運転停止が現実に?(続報)

 原発の新規制基準では、断層などの痕跡が地表に現れない「未知の震源」については、地下構造のモデルを設定しそれから基準地震動を求めることとされています。ところが九電の提案モデルでは、実際の観測記録や掘削調査でのデータと整合しないため、規制委から繰り返し再検討を求められています。
 これは観測記録や掘削データと整合するモデルにすると、基準地震動が大きくなって既設設備に追加の補強工事を行う必要があるため、九電はそれは避けたいということです。
 元々原発の基準地震動は、これまでに実際に起きた地震に比べ著しく低いという実態があります。九電は小細工は止めて基準に沿った真っ当な基準地震動を設定し、必要な既設設備の補強を行うことに舵を切るべきです。
      お知らせ
   都合により28日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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耐震見直し遅れる川内原発、運転停止が現実に? 原子力規制委への釈明に追われる九電には「苦い過去」が
                            南日本新聞 2023/2/26
 原発の耐震対策の前提となる基準地震動の見直しで九州電力が遅れを取っている。2024年4月までに許可を得なければ、川内(薩摩川内市)、玄海(佐賀県)の4機は停止に追い込まれる可能性がある。福島第1原発事故後、全国に先駆けて再稼働させた九電は業界トップランナーと評される。ただ、テロ対策施設の完成遅れで川内が運転停止に追い込まれた苦い過去もあり、審査合格への道は見通せない
    【写真】原発の基準振動策定の流れを図で理解する
 原発の地震対策の新規制基準では、断層などの痕跡が地表に現れない「未知の震源」による地震を新手法で評価するよう要求。新基準に見直された21年4月から3年以内に、九電は原子力規制委員会の許可を受ける必要がある。
 これまで川内9回、玄海8回の審査を受けた九電が苦戦するのは、原発施設に届く地震波に影響する地下構造のモデル設定だ。九電の提案モデルでは、実際の観測記録や掘削調査でのデータと整合せず、規制委から繰り返し再検討を求められている
 当初「3年あれば何とか対応できる」(関係者)としていた九電に焦りが見え始めたのは昨夏以降。計画の遅れをただされる場面が目立ち、原子力規制庁の担当者が頭を抱える場面も。秋には九電の担当役員が「(規制庁側との)コミュニケーションで足りない部分があった」と釈明。今月24日には池辺和弘社長が規制委から聴取を受ける事態に発展し、謝罪と釈明に追い込まれた。
 目に見えない地下の地層や岩盤の特徴を理論化する困難な作業だが、電力関係者は「原発の優等生である九電の技術力や情報量で対応できないことはない」と不思議がる。規制委員の一人も「そんな難しいことを要求しているわけではない」と認める。
 遅れの背景にあるとされるのが、今回の許可後に必要性が検討される原発施設への追加工事の存在だ。
 規制庁関係者は「地震動評価を小さく見積もり、大規模な費用のかかる工事の規模を小さくしようと考えた可能性がある」と推測。燃料高などで圧迫される事業経営とのバランスに理解を示した上で、「一連の対策に時間をかければさらにコストがかかり、元も子もない」と語る。
 川内1、2号機では、耐震基準の見直しのほか、40年超の運転延長の審査も進む。規制委は両審査が影響し合う可能性も示唆する。池辺社長は24日の意見聴取で「安全を最優先に進める」と述べ、耐震基準の見直し審査に向けた社内態勢を強化したと報告。取り組み状況については「地域や社会に安心していただけるよう積極的に情報発信する」と強調した。

新潟県議会 原発の検証めぐり質問相次ぐ

 24の新潟県議会で員から柏崎刈羽原発再稼働問題で質問が出されたのに対して、花角知事、池内・委員長(総括委員会)との間で方針にズレがあることを認めました。
 要するに県は総括委員会に「再稼働可否の判断を含まない無色」の報告書を出すようにと要求したのですが、池内氏の納得が得られないため暗礁に乗り上げているということです。
 これは検証委員会が単に知事の望む方向の結論を出す(或いは望まない方向の結論は出さない)というのであれば正しい検証とは言えないので、池内氏の言い分の方に理があります。県が池内氏を説得できない以上委員会の自主性に任せるべきです。
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    (22.12.30) 新潟県独自の『検証総括委』なぜ開かれない 委員会と県の“深い溝”
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県議会 原発の検証めぐり質問相次ぐ 花角知事は 《新潟》
                        TeNYテレビ新潟 2023/2/24
2月24日、県議会では各会派による代表質問が行われ、柏崎刈羽原発について知事との論戦が交わされました。
各会派から柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる質問が相次ぎました。
自民党・桜井甚一県議>
「再稼働を議論する前提となる3つの検証の結果が出そろいます。池内委員長の言い分はまったく変わっておらず県の説得に応じるつもりは毛頭ないように思われますがどのように事態の打開をはかっていくお考えか
健康分科会県は柏崎刈羽原発の再稼働の議論の前提として、2017年から「3つの検証」をスタート。ことし1月末にすべての委員会の議論が終了しました。
今後は、検証を取りまとめる総括委員会の開催が焦点となりますが約2年間、開かれていません。
花角知事
「検証総括委員会の委員長はすでに技術委員会で確認を行っている 柏崎刈羽原発の安全性や福島第一原発の処理水の対応などを踏まえた東京電力の適格性を議論したいとしており、(池内委員長が)求めていないことをあれもやりたいこれもやりたいとおっしゃっておられたので進まない状態にあります
知事はこのように述べ、改めて池内委員長と方針にずれがあると説明しました。

27- 電気料金値上げで育休手当の半分が電気代で消滅 各家庭の悩みと工夫

 ご存知のように既に電気料金の値上げの悩みが聞こえていますが。関西電力と九州電力を除く大手電力7社は、今年4月以降、平均3割~4.5割の値上げを経産省に申請しています

 フリーライターの吉田みく氏が一般家庭の2つのリアルな節電事情をレポートしました。
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「育休手当の半分が電気代で消滅」に驚き 電気料金値上げにどう対抗するか、各家庭の悩みと工夫
                       マネーポストWEB 2023/2/24
 電気料金の大幅な値上げが続いている。東京電力などの大手電力5社が4月からの電気料金を36円から269円値上げすると発表。託送料金の値上げが理由だという。さらに、関西電力と九州電力を除く大手電力7社は、今年4月以降、平均3割~4.5割の値上げを経済産業省に申請、同省委員会で審査中だという。昨年来続く大幅な電気代の値上げは、暮らしにも大きな影響を及ぼしている。フリーライターの吉田みく氏が、一般家庭のリアルな節電事情をレポートする。
  エアコンの設定温度を抑えて厚着をするなどが冬場の節電方法だが…
                 * * *
 このところの電気代の高騰ぶりはSNSでも大きな話題になっている。寒い日が続くことによるエアコン・電気ストーブの使用や、コロナ禍以降に増えた自宅でのリモートワークなど、家庭の電気代が上がる要因は様々ある。SNS上には「先月と比べて1万円近く値上がりした!」との悲鳴に似た声も多く投稿されている。
 埼玉県在住の幼稚園教諭で育休中のトモコさん(仮名、32歳)は、こう頭を悩ませていた。
 「昨年出産し、現在育休中です。子供が小さく一日中家で過ごす日が多いため、先月の電気代は5万円を超えました。今は仕方がないとは分かっていますが、これでは育休手当ての半分が電気代で消えてしまいます……」
 トモコさんの育児休業給付金(育休手当)は月に約10万円。出産前は、子供の将来の為にもできるだけ貯蓄に回すつもりだったが、現実は難しく、頭を悩ませているという。育児疲れや家計のことを考えるとイライラすることが多く、時には夫にあたってしまうことも増えたそうだ。
 「このままでは家族がダメになってしまう……、そんなことで悩んでいた時に出会ったのが近所にある児童館でした。ここに行けば、子供も遊べるし、自宅にいる時間が少なくなるので節電になると思ったんです」(トモコさん)
 午前中は児童館へ行くことを習慣にしたトモコさん。同じように育児をするママ友ができたことで気分転換にもなっているという。「今月の電気代は抑えられたのではないでしょうか。明細書が楽しみです」と嬉しそうだったが、はたしてどうなるか。

節電に燃える妻
 都内在住の会社員・マサシさん(仮名、48歳)は、専業主婦の妻からの過度な節電要求に頭を悩ませていた。妻と高校生の子供2人の4人家族で、住まいは木造一戸建てだという。
「妻の話によると、今月の電気代は4万円だったようです。正直キツいですけど、このご時世だし仕方がないのかな……と思っていたのですが、妻は節電に燃えていました」(マサシさん)
 マサシさんの妻の節電について話を聞くと、かなりストイックであることが分かった。
リビングの電気は4つのライトのうち1つだけにしたり、暖房器具の使用は極力控えて毛布をかぶるよう指示されたり……。子供たちからは『ケチくさい!』と非難の声。私も子供たちと一緒になって不満を言うのですが、『文句言う暇あるなら残業して電気代を稼いできてよ!』と怒られてしまうんです」(同前)
 両親から相続した自宅は築40年越え。隙間風が気になるほど老朽化しており、自宅に居ても暖かくならないため心が休まらないという。リフォームや建て替えをしたいところだが、今後かかる子供たちの学費のことを考えると、躊躇してしまったそうだ。
「妻は専業主婦と言っても両親の病院送迎や生活のサポートをしており、働きに出られる状態ではありません。私の収入が増える見込みもなく、出費ばかり増えます。少々気性の荒い性格ではありますが、家族のことを想っての節電だと考えると強く反論はできません」(同前)
 妻の言うとおりに節電に取り組んでいたマサシさんだったが、部屋が寒かったせいか、先日風邪をひき病院にかかったそうだ。受診料は約2000円。そのことを聞いた妻は「節約もほどほどにしないとだめね」と言ったという。現在、妻は過度な節電を見直す方針で、単発で働けるバイトを探すなど世帯収入を上げるよう頑張っているとのことだ。
 生活スタイルや地域によっても金額は様々だが、どの家庭も電気代の値上げに頭を悩ませているのではないだろうか。節電意識を持った生活を送ることも大切だが、その状況にストレスを感じ、家族内でトラブルになるのは望ましくない。メリハリをつけた対策が大事なようだ。(了)

2023年2月26日日曜日

原発の運転期間延長 検討チーム初会合(詳報)

 22日、60年超原発の安全性を確認するための技術的な評価基準などを検討するチームの初会合が開かれましたNHKの報道を詳報として紹介します。会議では、
60年から先も現在の老朽化対策の延長線上で十分か検討すべき
時間が来たらそれ以上動かせないという規定にしておいたほうがよい
などの意見が出されたということです。
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原発の運転期間延長に対応 具体的基準の検討開始 原子力規制委
                    NHK NEWS WEB 2023年2月22日
原子力規制委員会は、原子力発電所の運転期間を実質的に延長する政府の方針を受けて、原発の老朽化に対応するための具体的な基準などの検討を始めました。
現在の法律で最長60年とされている原発の運転期間を、実質的に延長する政府の方針を受けて、原子力規制委員会は老朽化に対応する、新しい制度を賛成多数で決定しました。
22日は、運転開始から60年を超えた原発の、安全性を確認するための技術的な評価基準などを検討するチームの初会合が開かれました

出席した委員からは「現在もやるべきことはやっているということはきちんと示す必要があるが、十分やっているかと言うと足りないところがあると思う」とか「日本という自然災害のリスクが高い特殊な環境で、できることはないか考えるべき」などと、60年から先も現在の老朽化対策の延長線上で十分か検討すべきという意見が相次ぎました。
また、会合には、60年を超える運転を認めることに反対した石渡明委員も出席し「時間が来たらそれ以上動かせないという規定にしておいたほうがよい」と改めて主張しました。
検討チームでは、新制度の国民向けのわかりやすい説明についても検討し、1か月程度で概要をまとめることにしています。

泊原発 北電12月までに再稼働申請の説明を終了と

 泊原発3号機の再稼働に関しては、地震・津波・火山のそれぞれの影響と、防潮堤の安全性の4つの項目が焦点となっています。北電は24審査会合で、これまで審査に必要な説明を今年9月までに終了したいとしていましたが、説明終了時期を今年12月までとする新たなスケジュールを示しました。
 「基準津波」の説明で、地震による津波・地滑りなどの組み合わせについての分析が時間を要していることなどを理由の1つとして挙げています。
 3号機は12年5月に停止してからまもなく10年になります。
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【泊原発の説明】長期化の原子力規制委員会・審査会合 12月までの説明終了予定を示す 北海道電力
                       STVニュース北海道 2023/2/25
2012年5月から運転を停止している泊原子力発電所3号機について、北海道電力は再稼働に向け、原子力規制委員会の審査会合が続いています。
この審査会合では、地震・津波・火山のそれぞれの影響と、防潮堤の安全性の4つの項目が焦点となっています。
北海道電力は、2月24日に開催された審査会合で、これまで審査に必要な説明を今年9月までに終了したいとしていましたが、3か月延ばし、説明終了時期を今年12月までとする新たなスケジュールを示しました。
北海道電力では、津波対策の目安となる「基準津波」の説明で、地震による津波・地滑りなどの組み合わせについての分析が時間を要していることなどを理由の1つとして挙げていて、説明時の論理構成などを改善して対応したい考えを示しました。
現在、泊原発は3基すべてが停止中で、2013年7月から始まった審査会合は長期化し、まもなく10年になります

26- 川内原発基準地震動の見直し大幅遅れ 九電社長「真摯に反省」と

 原子力規制委は24日、川内原発の基準地震動の設定が大幅に遅れているとして、九州電力から意見聴取しました。池辺和弘社長は「真摯に反省し、必要な経営資源を最大限投入する」として、社長をトップとしたプロジェクトチームを設置したことを報告しました。基準地震動の値は川内1、2号機で審査が進む40年超の運転延長にも影響します。

 先に「未知の震源」による地震は規制委が決めた新手法で評価することになりました。それに基づいて九電は再申請をしましたが、規制委は妥当性に欠けるとしています。
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川内原発巡り九電社長「真摯に反省」 許可期限過ぎると止まる可能性
基準地震動の見直し大幅遅れ
                           南日本新聞 2023/2/25
 原子力規制委員会は24日、新規制基準に基づく川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)の見直しが大幅に遅れているとして、九州電力から意見聴取した。池辺和弘社長は「真摯に反省し、必要な経営資源を最大限投入する」と述べ、技術者の増員など態勢強化を図るとした
 オンラインでの意見交換会で山中伸介委員長は、「九州電力の準備不足は否めない。継続的な安全性向上の取り組みに欠けがあった。十分反省を」と指摘。九電の大坪武弘執行役員は「認識が甘かったところは当然ある」と述べた。
 2024年4月の許可期限を過ぎると、川内原発は止まる可能性がある。九電は社長をトップとしたプロジェクトチームを設置したと報告。協力会社を含めた人員増強に加え、地震計の増設や地下深部の地震を観測する追加の掘削の検討を進めるとした。
 規制委の杉山智之委員は、川内1、2号機で審査が進む40年超の運転延長にも言及。「(今回の基準地震動の審査と)別問題ではない」と述べ、影響が及ぶ可能性を示唆した。九電の豊嶋直幸副社長は、40年を超える高経年化への評価を踏まえ「機器類への影響がどの程度かも含めてしっかりと対応する」と答えた。
 原発の地震対策の新規制基準は、「未知の震源」による地震を新手法で評価するよう要求。川内は申請済みだが、追加評価が必要となっている。許可に必要な敷地下の地盤モデルについて九電はこれまでの審査会合で説明を続けてきたが、規制委側から「妥当性がない」と退けられている。

2023年2月25日土曜日

原発60年超運転可能は 危ない原発ほど延命される愚策 古賀茂明氏

 週刊朝日3月3日号に、元経産官僚古賀茂明氏による「AERA dot. 」の記事が転載されました。

 古賀氏は、原発の運転期間に関する定めを規制委所管の法律から経済産業省所管の法律に移し、60年超の原発運転期間の長を可能にしたのは、岸田首相が規制委の山中伸介委員長と二人三脚で暴走を始めたものだとし、特に原発が停止した期間を延長分に加算できることにすれば、規制委の審査で20年稼働停止していれば、60年を超えて80年まで運転期間延長が認められるという、驚愕の改正だと指摘しています
 原発では「心臓部」にあたる原子炉圧力容器核分裂で生じる強い中性子線にさらされ劣化するので、安全性と運転期間が無関係というのはあり得ないとして、日本は世界の地震の10分の1が発生している地震大国なので、安全性には念には念を入れるのが当然で、地震や津波の審査を担当する石渡委員が延長に反対したのに、それを無視して多数決で押し切るなら規制委の存在意義はないと述べました
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危ない原発ほど延命される愚策 古賀茂明〈週刊朝日〉
                     古賀茂明氏 AERA dot. 2023/2/21
 危ない原発ばかりが延命されると言えば、そんな馬鹿な、と思う。だが、現にそういうとんでもない法律改正に向けて岸田文雄首相が原子力規制委員会の山中伸介委員長と二人三脚で暴走を始めた。安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃を目指しているのだ。
 3.11の翌年2012年に原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間は原則40年とし、1回に限り20年までの延長を認めた。最長でも60年で廃炉だ。これが「40年ルール」である。政府が現在検討中の法改正案では、まず、原発の運転期間に関する定めを規制委所管の法律から経済産業省所管の法律に移す。原発推進官庁であり福島第一原発の事故を起こした主犯格の同省に任せること自体が驚きだ。さらに、「40年ルール」の骨格を維持すると言いつつ、実際には、規制委による審査などで停止していた期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする。規制委の審査で20年稼働停止していれば、60年を超えて80年まで運転期間延長が認められる。驚愕の改正だ
 現在、管理体制に不備があったり、活断層の存在が疑われるなどの理由で、規制委の審査を通らない原発がいくつもあるが、この改正により、そういう「危ない原発」ほど長い運転期間が認められることになる。どう考えてもおかしい。
 40年ルールの根底には、どんな設備でも経年劣化により故障や事故が増えるという「常識」がある。原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器とこれを覆う格納容器は交換できない。特に、圧力容器は核分裂で生じる強い放射線の中性子線にさらされ金属材料が劣化する。古くなれば危ないと考えるのは当然だ。

 マクロン仏大統領が原発建設を推進していると報じられるが、その理由は、同国の原発の約半数が老朽化による金属劣化や補修予定により稼働が停止し、停電リスクが高まったからだ。原発の老朽化リスクが顕在化しているのがわかる。
 しかし、山中委員長は「原発の寿命は科学的に一律に定まるものではなく、規制委員会として意見を言う立場にない」として、ルール変更を容認した。原発の経年劣化を考えれば、安全性と運転期間が無関係というのはあり得ない。一方、5人の規制委委員の一人石渡明氏は「科学的・技術的な新しい知見に基づくものではなく、安全性を高める方向での変更とは言えない」と述べて反対を貫いた。科学者の矜持を示したのだ。
 大地震に襲われたトルコは複数のプレートの境目にあるが、日本も4つのプレートが境を接する国である。世界の地震発生地点を赤丸で示す気象庁の地図では、日本は真っ赤に染まり空白地点はない。この小国で世界の地震の10分の1が発生しているという。そんな国で原発を運転するのだから、念には念を入れてと考えるのは当然だ。石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら規制委の存在意義はない
 40年ルール撤廃でより危険な原発の再稼働が促進される。国民は、この危機的事態に声を上げなければならない。
                 週刊朝日  2023年3月3日号

「国と規制委は説明を」 東海村長、原発運転期間延長巡り

 東海第二原発が立地する茨城県東海村の山田修村長は24原発の60年超運転を可能にする法改正を目指す国の方針に対応するため、原子力規制委が新たな規制制度案を決めたことについて、「国民に理解してもらうような説明があるべきだ。国、規制委がどう国民に説明するかを見ていく」と述べまし

 原子力ムラのかなめ(要)となっている経産省の主導で一挙に60年超運転が可能になった訳なので、国と規制委には国民が納得できる説明をすべき義務があります。
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「国と規制委は説明を」 東海村長、原発運転期間延長巡り 消防車出動要請増で苦言も
                         東京新聞 2023年2月25日
 原発の六十年超運転を可能にする法改正を目指す国の方針に対応するため、原子力規制委員会が新たな規制制度案を決めたことを巡り、日本原子力発電東海第二原発が立地する茨城県東海村の山田修村長は二十四日の記者会見で、「国民に理解してもらうような説明があるべきだ。国、規制委がどう国民に説明するかを見ていく」と述べた。
 規制委の議論では、石渡明委員が「科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とは言えない」などとして規制案に反対。委員の意見が割れたまま、異例の多数決で決定した経緯がある。
 山田村長は「専門家の一人がそういう話をするということなら、そういう側面もあるのだろう。国の方で、その意見も含めてきっちり説明責任を果たしてもらいたい」と求めた。
 東海第二原発は二〇一一年五月以降、新規制基準への対応などのため停止中。四十年の運転期限を迎える直前の一八年十一月、最長二十年の運転延長の認可を得たが、新たな制度が施行されれば、審査などによる停止期間は運転期間から除外されることになる。
 一方、村長はこの日の会見で、東海第二など村内の原子力施設で昨秋以降、「非火災」と判断されたケースも含め消防車の出動要請が急増していることに「身近なところの安全管理が壊れているのだろう」と苦言。「上からしかりつけるというよりは、なぜそういうことになったのかを現場で考えられるような文化、風土を作っていくしかない」と促した。 (宮尾幹成)

◆村長と直接対話、本格化へ 再稼働問題もテーマ 東海村新年度予算案
 東海村は二〇二三年度、無作為に選ばれた村民が山田修村長と直接対話するタウンミーティング(TM)を本格的に始める。新年度一般会計当初予算案に事業費約百六十万円を計上した。村内に立地する東海第二原発の再稼働問題についても、原則としてテーマに含める方針という。
 村は二〇年十二月〜二一年十二月、無作為抽出の村民が原発について話し合う「自分ごと化会議」を全五回開催。会議を終えた参加者たちが、原発への賛否を問わず多様な村民が参加する議論の場を引き続き設けるよう提言したのを受け、二二年度は六地区で試行的にTMを開いた。
 新年度のTMは六〜八月と九〜十一月に、二つの中学校区でそれぞれ三回ずつ、計十二回実施。主なテーマは「まちづくり」とするが、山田村長は二十四日の記者会見で「まちづくり(の議論)をやっている時に、原子力を除いて福祉と教育の話だけというのはバランスが悪い」と述べ、原発の話題も毎回取り上げるべきだとの考えを示した。
 当初予算案は、三月一日開会の村議会定例会に提出する。(宮尾幹成)

六ケ所村 核燃料再処理工場で2時間消灯し IAEA監視不能に(詳報)

 六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場で、IAEA=国際原子力機関監視業務の対象となる部屋の照明が消えて2時間監視が行えなくなっていたこと22日原子力規制庁から規制委員会の定例会に報告がありました。

 先月28日に、電源盤のメンテナンスのため一部の照明を消したところ、前記の部屋の照明が全灯消えました。メンテは別の電源盤につながる3つの照明をつけたままにする予定でしたが、3つとも電球が切れていたということで、古いものでは、2017年から切れたままになっていました。保障措置の担当部門には伝わっていませんでした。
 これは3日付の産経新聞の記事を紹介済みですが、NHK版と内容が異なっているので「詳報」として紹介します。
関連記事
 (2月22日)六ケ所村再処理工場で全消灯 IAEAが監視不能に/東海第二で非常用電源が停止
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青森 使用済み核燃料の再処理工場で一時 IAEAの監視業務できず
                     NHK NEWS WEB 2023年2月22日 
青森県にある使用済み核燃料の再処理工場で、核物質が核兵器などに転用されるのを防ぐため、IAEA=国際原子力機関が行う、保障措置と呼ばれる監視業務の対象となる部屋の照明が切れたまま、一時、監視が行えなくなっていたことがわかりました。
これは、22日に開かれた原子力規制委員会の定例会で、事務局の原子力規制庁から報告されました。
それによりますと、監視が行えなくなっていたのは、青森県六ヶ所村の再処理工場で、使用済みの核燃料を貯蔵施設から受け入れて、せん断するための設備に送り込む部屋です。
この部屋には、核燃料の移動を検知するために監視カメラが設置されていますが、先月28日に、電源盤のメンテナンスのため一部の照明を消したところ、すべての照明が消えていることに、映像を見たIAEAが気付き、今月、原子力規制庁に問い合わせがあったということです。
別の電源盤につながる3つの照明をつけたままにする予定でしたが、3つとも電球が切れていたということで、古いものでは、2017年から切れたままになっていましたが、保障措置の担当部門には伝わっていませんでした
すべての照明が消えていたのは、午前10時ごろから正午ごろまでのおよそ2時間で、当時、この部屋に使用済み核燃料はなかったということですが、原子力規制委員会は、事業者の日本原燃に対し、原因の調査と再発防止を行うよう指導しました。
田中知委員長代理は「保障措置上、大変憂慮すべき事象だ。わが国の信頼喪失にもつながる大きなもので、事業者は重く受け止めなければならない」と厳しく指摘しました。

25- 原発汚染水放出、G7の承認を得ようとする日本を中国メディアが批判

 日本政府が福島第1原発の放射能汚染水を海に放出する案についてG7の承認を得ようとしているこについて中国国営グローバルタイムズは23日本は西側国家を汚染水放出計画に動員しようとしているとして、海洋放出は環境と人間の健康に取り返しのつかない被害になると反発しました。

 こうした問題でG7の合意を取り付けて箔付けに使おうというのには無理があります。
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原発汚染水放出、G7の承認を得ようとする日本…中国メディア「隣国に被害」
                        中央日報日本語版 2023/2/24
日本政府が福島第1原発の放射能汚染水を海に放出する案に関連し、主要7カ国(G7)の承認を得ようとしている。これに関連し中国国営グローバルタイムズは23日(現地時間)、自国の立場を代弁する専門家を引用し、環境と人間の健康に取り返しのつかない被害になると反発した
共同通信など日本メディアによると、今年のG7議長国の日本は広島で開催されるG7の共同声明に、汚染水放出のための「透明性のあるプロセスを歓迎する」という表現を盛り込もうとしている。先月、日本政府と東京電力は今年の春または夏に汚染水の放出を始める計画を発表し、海底トンネルなど放出に必要な施設を設置する工事が進行中だ。
中国黒竜江省社会科学院北東アジア研究所のダ志剛研究員はグローバルタイムズのインタビューで「ウクライナ事態と朝鮮半島の緊張状況に対応し、日本は西側国家を(汚染水放出)計画に動員しようとしている」と主張した。
米国はすでに日本の汚染水放出計画を支持する意思を明らかにした。米国務省が声明を出し、「日本は世界的に通用する原子力安全基準に基づきプロセスを採択したとみられる」という意見を出した。
韓国政府は日本の汚染水が国際法と国際基準を満たす方式で処理されるよう持続的に検証するという立場を明らかにした。
福島汚染水の放出に関連して14日に開かれた国連安全保障理事会の会議では中国とロシアの代表が懸念を表明した。中国の張軍国連大使は「日本が原発汚染水を海に放出すれば、地球の海洋環境と生態系、すべての国の国民の生命と健康を深刻に脅かす」とし「日本政府は汚染水放出プログラムを強制的に承認させることに血眼になっている。そのような行動は極めて無責任だ」と非難した。

2023年2月24日金曜日

親しんだ会津若滅市を離れ、故郷へ帰る子どもたちが感謝の「創作劇」

 東日本大震災当時、福島県大熊町にあった町立の小学校2校・中学校1校は、原発事故で福島県会津若松市へ避難し、同市で小学校として使われていた建物新たな学び舎となりました。当初は体育館いっぱいになるほどの子どもたちは、着の身着のまま避難してから約1ヵ月後大熊町の小学校2校が同じ場所で学ぶことになりました。
 それから12年小・中学校3校は統合されて「学び舎ゆめの森」生まれ変わり、体育館を埋め尽くしていた子どもは8人に減りました。今年4月からは12年ぶりに大熊町へ戻ることになりました。
 4年生の後藤愛琉さんは、避難先の会津で生まれ育ったため、大熊町に住んだことはありませんが、いずれ父親の故郷帰ることを見すえて避難先の「学び舎ゆめの森」通い続けてきました。両親が建てた家を手放してまで帰る決断をしたのも、やり子ども達の学びのためで、「引き続き娘のサポートしっかりします」と話します。
 8人は、これまで支えてくれた会津の人へ創作劇で感謝を伝えまし。観劇した会津若松市の人たち「本当に元気もらって。なんか涙ばっかり出ます、寂しくて。逆に私達が感謝したいくらいです」と話します。
さよなら”じゃない行ってきます”」…感謝といまの素直な思いを伝えた子どもたち。2023年春、新たな一歩を踏み出します。
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「行ってきます」親しんだ地を離れ故郷へ帰る子どもたち 劇に込めた避難先への感謝<福島・大熊町>
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       【9分半の動画が見られます ↓ 】
       https://news.yahoo.co.jp/articles/4a4c2a77dbf3b8c350543e13ef8cf53c9772849a 
東日本大震災当時、福島県大熊町にあった町立の小・中学校3校は、原発事故で福島県会津若松市へ避難した。2022年に義務教育学校の「学び舎ゆめの森」に形を変え、2023年4月には12年ぶりに大熊町へ戻る。町内では、新しい校舎の建設も進められている
復興の一歩ではあるが、子どもたちにとっては慣れ親しんだ場所を離れる寂しさもあって、思いは複雑だった。
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<震災・原発事故 学校が通えない場所に>
2011年に発生した東日本大震災。大熊町は、地震と津波の被害に加えて、原発事故で町の全域に避難指示を受けた。
「3月11日」…この日を境に、通いなれた学校は”通えない場所”となった。
そして新たな学び舎となったのが、避難先の会津若松市で小学校として使われていた建物
2011年4月19日・始業式で児童代表が語ったのは「住み慣れた大熊町とは違って、まだ慣れない場所なので、本当は不安がありますが、前からの友達や沢山の新しい友達と力を合わせて頑張って行きたいと思います。熊小の皆さん、大野小の皆さん、そして先生方、どうぞ宜しくお願いします」という言葉。
体育館がいっぱいになるほどの子どもたち。大熊町の小学校2校が、同じ場所で学ぶことになった。着の身着のまま避難してから、約1ヵ月後の再スタート。会津の人たちは、学校と子どもたちを温かく迎え入れてくれた。

<12年の避難生活>
再スタートから12年。小・中学校3校は統合されて、義務教育学校の「学び舎ゆめの森」へ生まれ変わり、体育館を埋め尽くしていた子どもは8人に減った
一方、大熊町では避難指示の解除が進み、2023年4月に学校は12年ぶりに大熊町へ戻ることになった。8人のほとんどは学校と一緒に町へ戻る予定だが、思いは少し複雑なようだ。
斎藤羽菜さん(8年生):「自分の故郷に帰れるとなると楽しみではあるけれど、やっぱり会津若松市と別れるのは寂しいです」

<避難先で生まれ育つ 大熊町を知らない>
4年生の後藤愛琉さんは、避難先の会津で生まれ育ったため、大熊町に住んだことはない。それでも大熊町は、父親の故郷で自分も暮らすはずだった場所。いずれ帰ることを見すえて、大熊町の学校へ通い続けてきた
後藤愛琉さん:「大熊の学校に行ったら友達も増えるので、お友達と一緒に遊ぶのが楽しみです」
学校と一緒に大熊町へ戻るかどうか。選択を迫られた後藤さん家族は、愛琉さんの教育環境を優先し、少人数だからこそ手厚いサポートが期待できると考えて大熊町へ帰ることに決めた。
母・仁美さん:「建てた家を手放してまで、あっちに帰るっていう決断をしたのも、やっぱり子ども達の学びのため。引き続き娘のサポートしっかりします

<創作劇に感謝を込めて>
住み慣れた会津若松市、そして通いなれた学校から離れることになる子どもたち。
これまで支えてくれた会津の人へ、創作劇で感謝を伝えた
後藤愛琉さん(4年):「会津の皆さんに伝えたい事は”私達を支えてくれてありがとう”って言いたい
会津の生活で感じたこと・学んだこと、これまで支えてもらったことへの感謝のメッセージ。そしてこれからも繋がっていたいという思いを込めた。
観劇した会津若松市の人は「本当に元気もらって。なんか涙ばっかり出ます、寂しくて。逆に私達が感謝したいくらいです」と話す
劇を終え、斎藤羽菜さんは「ありがとうという思いを乗せて、言葉や動きに出して表現出来たので、すごく嬉しい」 また、後藤愛琉さん(4年)は「緊張したけれど、頑張って発表出来たなと思いました」と語った。
さよなら”じゃない行ってきます”」…感謝といまの素直な思いを伝えた子どもたち。2023年春、新たな一歩を踏み出す。