2024年4月27日土曜日

2024年4月24日水曜日

「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演

 2014年に大飯原発3、4号機再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長、樋口英明氏(71)が7日、柏崎市住民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」主催の講演会で、原発の耐震性について「一般に考えられているよりはるかに低い」と指摘し、「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張しました。

 また原発の本質とは「原発は人が管理し続けなければ暴走する」「暴走時の被害は想像を絶するほど大きい」の二つだとし、「(これを理解していなければ)間違った判決や政策になる」と結論付けました。毎日新聞が24日、報じました。
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「原発安全」は思い込み、耐震性も低い 元裁判長、樋口氏が講演
                        毎日新聞 2024 年 4 月 24 日
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟で、2014年に再稼働を認めない判決を出した元福井地裁裁判長、樋口英明氏(71)が新潟県柏崎市で講演した。樋口氏は能登半島地震(M7・6)発生時の北陸電力志賀原発の例から、原発の耐震性の低さを指摘。「日本の原発はそれなりに安全だろうという先入観が脱原発を妨げる」と主張した。

 講演のテーマは「能登半島地震と原発」。地元住民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」(本間保・共同代表)の主催で7日にあり、市民ら約160人が耳を傾けた
 能登半島地震では、石川県志賀町で最大震度7、北陸電力志賀原発(同町)で震度5強を記録した。志賀原発では外部電源から電力を受ける変圧器が破損し、約2万3400リットルの油が漏れた。樋口氏は原発の耐震性について「一般に考えられているよりはるかに低い」と指摘した。
 原発に関心のない人は、日本の原発はそれなりには安全だろうと思い込んでいる」とし、福島第1原発事故までは自身もその一人だったと告白。「日本の原発の最大の弱点は耐震性だが、私たちは耐震性が高いと思い込んでしまっている」と話した。脱原発を妨げているのは「原発回帰にかじを切った岸田(文雄)政権でも、電力会社でもない。私たちの先入観だ」と話した。
 また樋口氏は原発の本質とは「原発は人が管理し続けなければ暴走する」「暴走時の被害は想像を絶するほど大きい」の二つだとし、「(これを理解していなければ)間違った判決や政策になる」と結論付けた。【内藤陽】

屋内退避の期間は? 解除の基準は? 検討チームが初会合 今年度末までにとりまとめ

 原子力規制委は22日、原発事故が起きた際の屋内退避について、その実施期間や解除の基準などを検討するチームの初会合を開きました。

 山中委員長は検討チーム設立の趣旨について、「屋内退避の実施時期や解除の基準を明確にすること」としていますが、丸1年掛けてそんなことを決めたとしても、家屋倒壊の危機や津波の危険性があるときに、そもそも「屋内退避が可能であるのか」という根本問題への解決にはなりません。それはその次に行うということでしょうか。
 原発の「60年超運転」を容認したときもそうでしたが、山中氏が何を考えているのか理解に苦しみます。
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屋内退避の期間は?解除の基準は?検討チームの初会合 今年度末までにとりまとめ 原子力規制委員会
                       JNN TBS NEWS  2024/4/22
原子力規制委員会はきょう、原発事故が起きた際の屋内退避について、その実施期間や解除の基準などを検討するチームの初会合を開きました。
原子力規制委員会が策定した「原子力災害対策指針」では、原発事故が起きた際に原発から半径5キロメートルから30キロメートルに住む人は、被ばくを抑えるために自宅などの屋内に退避することになっています。
しかし、これまで屋内退避の実施期間や解除を判断する基準など具体的な運用は決まっていないため、原子力規制委員会が立ち上げた検討チームの初会合がきょう開かれました。

原子力規制委員会 伴信彦 委員
「どうやったら柔軟な運用ができるのか、柔軟な運用するための勘所は何なのか。それをできるだけ明らかにしたい」
一方で、今年1月の能登半島地震では、石川県の志賀原発の近くを含む広い範囲で建物が倒壊し、自然災害と原発事故の「複合災害」が起きた場合、屋内退避すること自体の難しさが浮き彫りとなりました。
宮城県担当者
「能登半島地震につきましては、屋内退避自体が困難であるケースが生じております。原子力防災においては、万が一を想定することは避けられず、実際は屋内退避できない場合の対応策を持ち合わせておかなければいけない」

初会合で原子力規制委員会側は、「屋内退避は被ばく線量の低減には有効だが、余震で建物が倒壊しないなどの健全性が必要であるほか、ライフラインが維持されていないと継続は困難である」などと意見を述べました。
検討会は今年度末にも、とりまとめを行う予定です。


屋内退避指針見直しで初会合 原発事故時、専門家ら検討 規制委
                             時事通信 2024/4/22
 原子力規制委員会は22日、原発事故時の屋内退避に関する現行指針を見直す専門家検討会の初会合を開いた。
 検討会は外部有識者や自治体関係者らで構成され、今年度内に報告書を取りまとめる方針。
 東京電力福島第1原発事故後に規制委が策定した原子力災害対策指針(防災指針)では、重大事故で放射性物質の放出が予想される場合、原発から5~30キロ圏内の住民に被ばくを避けるための屋内退避を求めているが、期間や解除のタイミングなどについては明示されていなかった。
 この日の会合では、事故時に原子炉で著しい損傷が生じないケースや、フィルターを通じて放射性物質の放出を抑制できたケースなど複数の状況を想定し、それぞれに応じた屋内退避の対象や期間を検討する方針を確認。解除時の判断基準についても議論するとした。 

柏崎刈羽原発 「UPZ議員研究会」 圏内7市町にも「国は再稼働の理解要請を」と

 柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、30km圏内の自治体の議員たちでつくる「UPZ議員研究会」が23日、国に対し「国には少なくとも原発30㎞圏内の7市町にも直接理解を要請するよう求める」声明を発表しました。

 関三郎会長(見附市議は、東電が7号機に核燃料装荷を実施したことで、「再稼働に向かって進んでいると実感している。要請文を国に要請するしかない」と訴えました。
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柏崎刈羽原発から30km圏内「UPZ議員研究会」圏内7市町にも「国は再稼働の理解要請を」
                        UX新潟テレビ21 2024/4/24
東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、原発から30km圏内の避難準備区域にある自治体の議員たちでつくる「UPZ議員研究会」が23日、国に対し、圏内の7市町にも再稼働の理解を要請するよう求める声明を発表しました。

UPZ研究会は長岡市や上越市、小千谷市などの市議や県議ら66人が所属しています。
23日に開いた会見で発表した声明で、柏崎刈羽原発の再稼働について「電力事業者が福島原発事故を起こした東京電力であることなど、他地域の原発とは状況が大きく異なる」と指摘。「立地自治体よりも広い範囲での理解が必要」とした上で、「国には少なくとも原発30㎞圏内の7市町にも直接理解を要請するよう求める」と訴えています。
今年に入り、経済産業省は県や、原発立地自治体である柏崎市、刈羽村に再稼働に向けた理解を要請しましたが、他の自治体には要請していません。今後、研究会は経産省に声明文を提出するほか、各議員が地元の議会でこの声明文をもとに質疑に臨むとしています。

研究会の会長を務める関三郎見附市議は、東電が7号機の原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷」を実施したことに言及し、「再稼働に向かって進んでいると実感している。要請文を国に要請するしかない」と訴えました。

東北電力 東通原発の安全対策工事完了時期を見直しへ

 東北電力は22日、青森県や東通村などに対し、原子力規制委による審査長期化していることを理由に、今年度としていた東通原発1号機の安全対策工事の完了時期を見直すことを報告しました。

 樋口康二郎社長プラント審査に関し「準備には1年半ぐらいの期間を要する」としたことに対して、宮下宗一郎知事「できるだけ早い時期に見通しを示してほしい」と求めました。
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青森・東通原発の安全対策工事、完了時期を「今年度」から見直しへ 東北電力
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東北電力は22日、青森県や東通村などに対し、今年度としていた東通原発1号機の安全対策工事の完了時期を見直すことを報告した。原子力規制委員会による審査の長期化が要因。新たな完工時期はプラント(本体)審査の準備が整い、今後の工程の見通しが得られた段階で示すとしている。
同原発の再稼働の前提となる安全対策工事の審査では、想定される最大規模の津波や耐震設計の目安となる揺れに関する議論が終了。一方で、プラント審査に向けて「確率論的リスク評価」で「1千万年に1回程度発生する可能性のある津波」への対応も検討する必要があることから、審査や工事に一定の期間を要すると判断した。

県庁で宮下宗一郎知事に報告した樋口康二郎社長は、プラント審査に関し「現在、スケジュールを精査しているところであり、準備には1年半ぐらいの期間を要する」と述べ、理解を求めた。宮下知事は「できるだけ早い時期に見通しを示してほしい」と求めるとともに、確率論的リスクに疑問も投げ掛けた。

24- 中国電、上関町で中間貯蔵用にボーリング調査

 中国電力は23日、原発から出る使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の建設を巡り、山口県上関町でボーリング調査を始めました。地下100~300mの範囲でい、活断層の有無や地層・地質の分布などを調べるということです。
 地中深くに中間貯蔵するというのでしょうか。
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中国電、中間貯蔵でボーリング調査 山口・上関町への立地見極め
                            時事通信 2024-04-23

 中国電力は23日、原発から出る使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の建設を巡り、山口県上関町でボーリング調査を始めた。調査は半年間の予定。地下100メートルから300メートルの深さで行う。活断層の有無や地層・地質の分布などを調べ、立地が可能かどうかを見極める。「適地」と判断すれば、建設に向けた同意を町に求める方針だ。  

2024年4月22日月曜日

柏崎刈羽原発再稼働「疑問」呈する研究者らによるシンポジウム

 柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり21日、新潟県の検証のあり方に疑問を呈する研究者らによる「市民検証委員会」がシンポジウムを開きました。
 県の避難委員会で副委員長を務めた佐々木寛氏らが出席し佐々木氏は柏崎刈羽7号機への燃料装荷の開始などについて、「形だけで再稼働に向かっていることを非常に懸念する」と述べました。
 上岡直見氏は、「どこが通れるかその時にならないと分からんという状態では、そもそも避難計画は成立しない。中越地震と中越沖地震のとき、どこで道路通行止め箇所が発生したかというと全域になっている」、「避難できない以上、再稼働はあり得ない」などと述べました。
 避難が出来なければ再稼働は出来ないというのは「鉄則」であり、それを無視して議会の多数決で再稼働を進めるのはお粗末に過ぎ 話になりません。
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柏崎刈羽原発再稼働「疑問」呈する研究者らによるシンポジウム
                        UX新潟テレビ21 2024/4/22
柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、県独自の検証のあり方に疑問を呈する研究者らによる「市民検証委員会」がシンポジウムを開きました。
21日に開かれたシンポジウム。県の避難委員会で副委員長を務めた佐々木寛氏らが出席し、佐々木氏は柏崎刈羽7号機への燃料装荷の開始などについて、「形だけで再稼働に向かっていることを非常に懸念する」と述べました。
また能登半島地震の被害をうけて、県内で地震がおきれば避難路の確保が難しくなるとの指摘が出ました。

■上岡直見 元県避難委員会委員 
どこが通れるかその時にならないと分からんという状態では、そもそも避難計画は成立しない。中越地震と中越沖地震のとき、道路通行止め箇所がどのように発生したかというと、全域になっている。これでどうやって避難するのか。」
立地自治体の市議らも現状を報告し、「避難できない以上、再稼働はあり得ない」などと述べました。


地震と原発事故が同時に発生…新潟県独自の「3つの検証」元委員が避難方法を疑問視
                          BSN新潟放送 2024/4/21
原発を巡る新潟県独自の「3つの検証」の元委員によるシンポジウムが開かれ、原発事故における避難方法の実効性などを疑問視しました。
新潟市で開かれたシンポジウムは福島第一原発の事故をめぐる県独自の「3つの検証」の元委員らで構成される「市民検証委員会」が開きました。
この中で3人の元委員が登壇し、原子力災害時の安全な避難方法を検証した避難委員会の上岡直見元委員は、能登半島地震や中越地震では多くの道路が通行止めになったとし、地震と原発事故が同時に起きる複合災害では安全な避難は難しいと語りました。
避難委員会・上岡直見元委員
自動車はどこか1か所でも通れない所があると、そこでおしまい
また県が試算した避難時間も現実的ではないと指摘しました。
避難委員会・上岡直見元委員
食事、水そういうところを考えられていない。まだまだ机の上だけの検討にとどまっている
このほか、柏崎刈羽原発の近くには多数の活断層があり、危険性があるとの意見も出ました。市民検証委員会は今後、これらの点について市民と議論を深めるとしています。

柏崎刈羽原発の再稼働 女川原発に見る“地元同意”のプロセスは

 新潟テレビ21宮城・女川原発における“地元同意”のプロセスを検証しました。
 女川原発は、最大会派自民党・県民会議の議員が、電力の安定供給のためとして「再稼働を進める請願」を採択することで、再稼働の「地元同意」が成立したとされました。
 この流れは宮城県にとどまらないもので広く全国で行われています。
 しかしこれだとキチンとした避難計画の有無にかかわらず、県民からの請願」という形式を取って議会で採択すれば、常に原発の再稼働が可能ということになります。
 地震国であり災害大国の日本で本当に避難が可能なのかを議会はトコトン詰めることが必要で、そこを素通りした議決は許されません。
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柏崎刈羽原発の再稼働議論の行方 宮城・女川原発に見る“地元同意”のプロセスとは
                        UX新潟テレビ21 2024/4/19
宮城県にある東北電力・女川原発は、地元同意を得て、今年9月に2号機の再稼働が想定されています。地元の自治体が再稼働を認めるまでにどんなプロセスがあったのか。
宮城県の事例から、柏崎刈羽原発のいまを考えます。
2023年末、原子力規制庁から事実上の運転禁止命令が解除された、柏崎刈羽原発。3月、資源エネルギー庁長官が花角知事に再稼働への理解を要請しました。
■資源エネルギー庁 村瀬佳史長官
「東日本全体の電力需給構造の強靭化に向け、柏崎刈羽原発の再稼働が非常に重要です。」
■花角知事
「話は承りました。県民がどういう風にこの問題を受け止めていくか。それを丁寧に見極めていきたい。」

東京電力は15日から、柏崎刈羽原発7号機の原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷」を開始。機器の不具合で一時中断があったものの、その後再開し進めています。
燃料装荷とその後の検査が終われば、再稼働できる状態が整うことになりますが、花角知事は…
■花角知事
燃料装荷はあくまでも安全対策の過程、検査の過程の一つでしかないので。それだけのこと。なぜそんなにみなさん、慌ただしい思いを持つんですか?」

宮城県女川町にある、女川原子力発電所。すでに、再稼働のための「地元の同意」を得て、事業者の東北電力は9月ごろ、2号機の再稼働を想定しています。始まりは、今の柏崎刈羽原発をめぐる動きと同様でした。2020年3月。宮城県の村井知事に対して、当時の資源エネルギー庁長官が理解を要請しました。その4か月後には宮城県独自の「安全性検討会」が女川原発2号機「健全性や安全性の向上に対して否定的な意見はない」と報告。8月には、県が原発から30km圏内・UPZで住民説明会を開催。しかし、原発が立地する女川町では不安の声が上がりました

■住民
「規制庁の方は東北電力の事業者のための規制をやっていて、人を守るという観点が抜けているんではないかと思います。」
「内閣府は、住民の安全を考えるよりもいかにして避難計画を紙の上で、机の上で作るかということに終始したのではないかと思う。」
■宮城県 村井嘉浩知事
「総合的に判断した上で、自分なりに国の方に返事をしたいと思います。また、東北電力にも対しましても返事をしたいというふうに思っております。」
そして2020年10月。地元商工会から提出された「再稼働に向けた請願」が宮城県議会に諮られました。再稼働に反対する野党系の県議は。
■みやぎ県民の声 佐々木功悦議員
何十万という人の移動を想定する大がかりな避難計画なしでは成り立たないエネルギー施設、原発は本当に必要なのでしょうか」。
一方で最大会派、自民党・県民会議の議員は、電力の安定供給のため、として請願の採択を求めました。
■自民党県民会議 佐々木幸士議員
「原子力発電の社会的現実に基づいた必要性を十分にご認識いただき、当面は原子力発電所の稼働は必要です。」
結果、「再稼働に向けた請願」は35対19の賛成多数で採択。
再稼働反対の請願は野党の賛成少数で不採択地元同意について「県議会の判断を重要視する」としていた村井知事は。
■宮城県 村井嘉浩知事
「これは大きな節目を迎えたと私は捉えています。非常に今回の判断を重く受け止めていますが、まだ私として意思決定をしたわけではない。(再稼働容認については)当然色々な思いはあるが、コメントは控えたい。」
女川原発の地元、女川町議会・石巻市議会も、再稼働への請願を採択し、地元議会の意思が示されました。もう一つ、地元の同意の形成の背景に、地元市町村長の意見があります。宮城県内35市町村長は、会議の中で避難計画の実効性への懸念や県民の不安など、賛否があった中、「知事と原発が立地する2市町トップに判断をゆだねる」という結論に至りました。
そしてその宮城県・女川町・石巻市は国の理解要請を受け入れることを決定。村井知事にとって「苦渋の決断」だったといいます。

■宮城県 村井嘉浩知事
「再生可能エネルギーで日本のエネルギーがすべて賄える技術に達するまでは、私は原発は必要だと思う。」
国の理解要請から約8カ月。村井知事は、経済産業大臣に対して、再稼働の同意を伝えました。
いま、県内でも、理解要請を始め政府が再稼働に向けて動いています。しかし自治体トップは疑問を投げかけています。
■長岡市 磯田達伸市長
原発の安全性と避難の実効性、一定解決されない限り原発再稼働の議論に入るべきでないと。そういう動きが出てきているのは、ある種の違和感を持つ。」
■新潟市 中原八一市長
「私としてはこのタイミングとしてはやや早い。自治体の状況、考え方や不安をよく考えていないのではないかと考えている。」

これに対して花角知事は…
■花角知事
「どういう形で議論するのか、特段のものはないが、意見交換はいろんなやり方がありえるし、1度で終わる話ではないので、複層的にコミュニケーションをとる場はあると思う。」
また花角知事は、原発時の際の避難路の整備が課題としています。
■花角知事
「気持ちとしては6方向くらいに扇のように放射状に6方向に逃げる幹線ルートがあると思っている。それらがUPZを超えて幹線交通に接続する部分まで災害などに対して十分避難ルートとして使えるように整備が進んでおくことが必要。」

立地自治体トップと宮城県知事の最終判断で、再稼働に同意した女川原発2号機。柏崎刈羽原発の再稼働の是非も、今後「地元の同意」、花角知事の判断が最大の焦点となります。
■花角知事
「県としては柏崎刈羽原発の再稼働の今後の議論の進め方については、福島第一原発に関する3つの検証の取りまとめ、原子力規制委の追加検査を踏まえた判断、技術委員会における安全対策などの確認、原子力災害発生時の避難の課題への取り組みなどを材料に議論を進め、県民などの意見を聞き、その上で判断・結論を出して県民の意思を確認することを考えている。」

国や東京電力が、どう県や県民に説明し要望に応えていくのか。それを踏まえ、花角知事がどう判断するのか、大きな焦点となりそうです。 

柏崎刈羽原発「核燃料装荷」なぜ今? 東電に聞いてみたが

 これまで原発への核燃料装荷は地元の同意を受けてから行ってきましたが、柏崎刈羽原発7号機への装荷ではその過程を省略しています。

 毎日新聞がその理由を聞いたのに対して、東電「今回の燃料装荷は設備の健全性を確認するために行った。作業を進める中で課題が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる」と回答し、核燃料の装着には地元の同意は必要ないと述べました。
 これまで様々な不都合から再稼働に向けての動きが長期間に渡り止まっていたので、その焦りが大きいのでしょう。

 一方、新潟県内全30市町村で構成する「原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事を務める長岡市の磯田達伸市長は3月29日の記者会見で「原発の安全性や避難の実効性など積み残された課題が一定程度解決されない限り、再稼働の議論に入るべきではない」と慎重な対応を求めています。
 この考え方が真っ当です。但し「避難の実効性」に関しては「一定程度の解決」ではなく完全な解決策が実施済みであることが再稼働の条件になります。
 花角知事の発言は当たり障りのないものに徹していて真意が測りかねます。磯田長岡市長に見習ってもっと分かりやすく話すべきです。
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柏崎刈羽原発「核燃料装着」なぜ今?東電に聞いてみた
                            毎日新聞 2024/4/21
 東京電力は4月15日、再稼働を目指している柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の原子炉に核燃料の装着を始めた。東電の原発事故後に再稼働した全国の6原発12基は、いずれも地元が同意した後に核燃料を装着しており、地元の同意前は異例だ。なぜ今、前例を破り、核燃料の装着を始めたのか、東電に聞いてみた。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】

 新潟県の花角英世知事は再稼働に同意するか否か、態度を明らかにしていない。花角知事は能登半島地震や2022年の大雪を踏まえ、原発事故時の避難に課題があると指摘。4月3日の記者会見では「避難の課題はたくさんある。いろいろな課題ごとに整理をしてきているので、少しずつ進んでいくと思う」と慎重な考えを示している。
 柏崎刈羽原発をめぐっては、斎藤健経済産業相が3月、花角知事に電話で再稼働への同意を要請。斎藤氏は4月16日の閣議後会見で「原子炉への燃料の装荷は再稼働そのものではない。設備や機能の健全性を確認するためのプロセスの一環だ」としたが、「避難道路の整備を含む原子力防災対策については、関係府省と連携しながら取り組んでいきたい」と述べるにとどまった。

◇「課題は解決していない」と長岡市長
 柏崎刈羽原発は7号機が17年12月、原子力規制委員会の安全審査に合格したが、21年に東電社員のIDカードの不正利用などが相次いで発覚。原子力規制委は事実上の運転禁止を命じたが、改善がみられたとして23年末に運転禁止命令を解除した。
 新潟県では柏崎刈羽原発が立地する柏崎市と刈羽村の両議会が早期再稼働を求める請願を採択し、両首長は再稼働に前向きな姿勢を示している柏崎市の桜井雅浩市長は「原子力規制委の検査の結果は昨年12月に出ている。原発の安全性のジャッジは国のみにできることで、国のみが責任を負うべきだ」と、3月1日の記者会見で述べている。
 一方、県内全30市町村で構成する「原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事を務める長岡市の磯田達伸市長は3月29日の記者会見で「原発の安全性や避難の実効性など積み残された課題が一定程度解決されない限り、再稼働の議論に入るべきではない」と述べ、慎重な対応を求めている。

◇知事は「信を問う」と言うが
 今回の核燃料装着は、東電が「7号機のプラントの健全性確認を進めるため」として原子力規制委に申請し、承認を受けた。すべての核燃料を装着するには2週間程度かかるが、必要な検査に合格すれば、再稼働に向けた準備が整うことになる。
 しかし、東電が実際に7号機を再稼働させるには、地元の柏崎市や刈羽村、新潟県の同意が必要となる。花角知事は今回の核燃料装着について「東電はやりたいことを自分たちでできるところまで進めるということなのだろう」と述べ、静観する構えだ。
 花角知事は再稼働について「県民に信を問う」としているが、具体的な時期や方法は明らかにしていない。このため地元では「最終的に信を問うという知事の言葉は、この4、5年間ずっと繰り返されているが、信を問う方法は明らかになっていない。議論がいつまで続くのかもわからない」(桜井・柏崎市長)といった不満の声もある。

◇核燃料の装着に地元同意は必要ない?
 能登半島地震は原発事故時の避難に課題があることを浮き彫りにし、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる問題をさらに複雑にしている。住民の不安が高まり、地元の同意が得られない現状で、東電はなぜ核燃料を装着したのか。
 そんな筆者の質問に東電は「今回の燃料装荷は7号機の設備の健全性を確認するために行った。作業を進める中で課題が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる」と回答。再稼働とは異なり、核燃料の装着には地元の同意は必要ないとの考えを示した。

 7号機では4月17日、制御棒の駆動用モーターの電源に不具合が発生し、東電は核燃料の装着作業を一時中断した。原子力規制委の山中伸介委員長は同日の記者会見で「十数年ぶりに燃料を装荷する試験なので、いろんなトラブルは生じるだろうと思っている。安全上、何か問題のあることではないが、慎重にやっていただきたい」と述べた。
 東電によると、柏崎刈羽原発が再稼働すると1基当たり年間約1100億円の収支改善効果があるという。東電が原子力損害賠償・廃炉等支援機構と21年8月に策定した「第4次総合特別事業計画」では、7号機を23年10月、6号機を25年4月に再稼働させると「仮置き」している。

 7号機で想定した再稼働の時期は、既に半年ほど過ぎている。1基約1100億円の収支改善効果は東電にとって大きい。柏崎刈羽原発は12年3月に定期点検のため、6号機が停止して以来、全7基が停止したままだ。これは東電の経営にとって重しとなっている。
 福島第1原発事故の賠償や廃炉費用を捻出するため、東電は柏崎刈羽原発の核燃料の装着を急ぎ、一日も早い再稼働に持ち込みたいのではないか。原発回帰の岸田政権の後押しもあり、東電は再稼働に前のめりになっているのではないか
 さらなる筆者の質問に、東電は「そんなことはない。再稼働は地元の理解があってのことと考えている。再稼働のスケジュールは申し上げる段階にない」と否定した。それ以上は、聞いても多くを語らなかった。
 これまでも東電は柏崎刈羽原発の再稼働を目指してきたが、何度も先送りとなってきた。地元同意は見通せないが、核燃料の装着は東電が原子力規制委のお墨付きを得て、今度こそ本気で再稼働を目指す意思表示であることは間違いない。

22- 災害には250人が避難できる目的体育会が完成 静岡・牧之原市

 浜岡原発の近くに原子力災害発生時には避難所にもなる多目的体育館が完成し、20日に落成式が開かれました。

 鉄筋コンクリート造り2階建ての体育館で、災害発生時にはエアシェルターがメインフロアに配備され、高齢者など介護が必要な要配慮者250人が避難できるということです。
 エアシェルターとは骨組みが無く、送風機で送風して膨らませて立ち上げるテントのことで、簡単に設営できるだけでなく、室温や清潔さを保つことができ津波や水没にも対応できます。最初から避難所にもなり得る設計になっていて安心できます。
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原子力災害発生時には250人が避難できる避難所にもなる多目的体育会が完成 静岡・牧之原市
                         静岡朝日テレビ 2024/4/20
 浜岡原発の近くに原子力災害発生時には避難所にもなる多目的体育館が完成し、落成式が開かれました。
 多目的体育館が建設された牧之原市須々木は浜岡原発から半径5キロのPAZ圏内にあり、式典では杉本基久雄市長が「要配慮者全員が避難できる施設の整備が完了した」と挨拶しました。
 鉄筋コンクリート造り2階建ての体育館は、バスケットボールコート2面分の広さをもつメインフロアなどがあります。
 原子力災害発生時にはエアシェルターがメインフロアに配備され、高齢者など介護が必要な要配慮者250人が避難できるということです。

2024年4月20日土曜日

柏崎刈羽原発再稼働を問う 新潟県知事経験者インタビュー(上)(下)

 柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、政府は立地自治体の新潟県に同意を要請していますが、まだ安全な避難の確実性がソフト面でもハード面でも「全く担保されていない」中であり得ない話です。
 東京新聞が新潟県知事経験者の衆院議員米山隆一氏(立憲民主党、新潟5区)泉田裕彦氏(自民党、比例北陸信越)に再稼働について聞きました。
 現役の時から再稼働には反対していた米山氏の発言はそれと整合していますが、現役時代は慎重な姿勢を見せていながら、退任後に自民党議員になって整合性を疑われた泉田氏も、米山氏と同様に慎重な発言をしています。
 現在再稼働に関する賛否を明らかにしていない現役の花角知事も是非両者の慎重な姿勢を見習って欲しいものです。

 自治体が避難計画を作るに当たっては、原子力規制委が示す原子力災害対策指針を参考にします。ところが規制委は2月、問題が山積している「屋内退避」は「できるという前提で議論する」と明言した一方で、方針の見直しには1年かかるとしています。また柏崎刈羽周辺が豪雪地帯で冬場の避難は困難を極めるとみられます。
 まずはそれらに対する規制委の基本方針が決まり、それに対応した道路や家屋、避難所などのハード面の整備が完了することが再稼働の最低の条件になります。
 まだまだ首長に再稼働への同意を迫れるような段階でないことを、まずは政府は理解すべきです。
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<再稼働を問う 新潟県知事経験者インタビュー㊤> 東京電力・柏崎刈羽原発
米山隆一氏、再稼働の意思確認は「住民投票でやるべきだ」 判断材料まだ不足
                          東京新聞 2024年4月18日
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を巡り、政府は立地自治体の新潟県に同意を要請しており、花角英世知事の対応が焦点となっている。一連の動きをどう見るか。原発と向き合ってきた新潟県知事経験者の衆院議員2人のうち、まずは米山隆一氏(立憲民主党、新潟5区)に聞いた。(宮尾幹成)

◆東京電力は「コストを払う」意思表示をうやむやにしている
 —県が再稼働同意の可否を判断する機は熟しているのか。
 判断の材料を県も国も示していない事故時の避難経路は相当程度に渋滞して、一定期間被ばくするのはほぼ確実。だから、そのシミュレーションを基にした避難計画をちゃんと作った上で、東京電力はそのコストを払うという合意があってしかるべきだ。それをうやむやにしている

 —花角知事は、県民の意思確認について「信を問う」と、出直し知事選も示唆している。望ましい意思確認の方法は。
 住民投票でやるべきだ。出直し選挙は党派性や人格などが混じってしまい、実は原発再稼働を問うていないというようなことが起こる。今、出直し選挙をやったら再稼働反対派の野党系が勝つ確率が5、6割あるので、何ならやってもらってもいいが、原理原則では住民投票だ。

◆新潟県は「再稼働に都合のいい情報」だけ出している
 —国からの同意要請については、県議会の自民党からも「時期尚早だ」との声が上がっている。
 政局的なうがった見方をするなら、自民党が花角知事に知事選に打って出てほしくなくて、けん制する意味もあるのではないか。

 —原発事故について県独自の「三つの検証」を総括する有識者会議が花角知事と対立し、事実上休止した。県が報告書を取りまとめる事態となった。
 例えば避難道路の整備について、ただ道路を造るような話になっている。みんなが一斉に逃げた時に渋滞しない道路なんて無理なわけで、むしろ何時間か渋滞することを前提に考えないといけないのに、県の志が低い。再稼働という結論に向かって、都合のいい情報だけ示している。

◆再稼働「選択の問題で、全否定するつもりはない」
 —超党派の地方議員グループに、再稼働の同意の対象を立地自治体だけでなく、避難計画の策定が義務づけられている30キロ圏の自治体まで広げるよう求める動きがある。
 実務的にちょっと難しいのではないか。今の行政の枠組みでは、広域自治体は県という形になっている。30キロ圏の人の声はちゃんと県が集約するという代表の仕方しかないと思う。

 —そもそも、柏崎刈羽の再稼働は必要なのか。
 選択の問題で、全否定するつもりはない。エネルギーコストを考えて再稼働を取るという選択はできるが、同時に大きなリスクと、リスクに対処するためのコストも伴う。それをきちんと示して選ぶべきだ。

米山隆一(よねやま・りゅういち) 1967年、新潟県湯之谷村(現魚沼市)生まれ。医師、弁護士。2016年10月〜18年4月に新潟県知事。前任の泉田裕彦氏が福島第1原発事故を県独自に検証するために設置した有識者会議「原発の安全管理に関する技術委員会」に「原発事故による健康と生活影響に関する検証委員会」「原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」と「検証総括委員会」を追加した。21年衆院選で初当選し、22年9月に立憲民主党入り。

  ◇    ◇
◆花角英世知事、再稼働同意の前に「信を問う」と明言
 柏崎刈羽原発7号機は原子炉内に核燃料全872体を入れ終えて、核燃料体から制御棒を引き抜けば、再稼働する。東京電力は地元の同意なしでは「制御棒を引き抜かない」とする。
 花角知事は同意の是非の判断に当たり「県民の信を問う方法が責任の取り方として最も明確であり、重い方法だ」と明言。2022年に再選した際には「『信を問う』との一般的な語感からすれば、存在をかけるという意味合いが強い。知事選も当然一つの形だ」と、任期途中での出直し知事選をほのめかした。一方で「議会の不信任や住民投票も、可能性としてはあるかもしれない」とも語った。
 同じ新潟県の旧巻町(新潟市西浦区)では、計画された東北電力巻原発の建設の是非を巡り、1996年に住民投票を実施。投票率は88.3%で住民の関心の高さを示した。建設反対(1万2478票)が賛成(7904票)を上回り、東北電力は計画断念に追い込まれた
 東京電力福島第1原発事故後に再稼働した6原発では、知事が同意を判断する際、県議会の同意を一つの根拠としてきた。知事選や住民投票を実施したケースはない。(荒井六貴)


<再稼働を問う 新潟県知事経験者インタビュー㊦> 柏崎刈羽原発
泉田裕彦氏、知事在任中に出くわした東京電力の「ウソ」 再稼働の判断前に必要なことがある
                         東京新聞 2024年4月19日
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けた動きについて、新潟県知事を経験した衆院議員2人に聞く連続インタビュー。2回目は泉田裕彦氏(自民党、比例北陸信越)に語ってもらった。(宮尾幹成)

◆「30キロ圏には40万人の住民がいる」
 —政府が県に再稼働の同意を要請した。判断の機は熟しているか。
 熟していない。2007年の中越沖地震や11年の東日本大震災で明らかになった課題に対処できていない。やるべきことをやっていないのが今の段階だ。
 (自然災害と原発事故の)複合災害で屋内退避が行われた時に、電気・ガス・水道のどれか一つ止まれば煮炊きはできない。道路の復旧はどうするのか。雪が降っていたら誰が除雪するのか。こうしたことを全く決めていない。大混乱が生じるのは火を見るより明らかだ。
 (広域避難計画策定が義務づけられている)30キロ圏には40万人の住民がいる。何万人もの被災者への対応を自衛隊だけでできるというのは幻想で、民間との役割分担が必要だが、こういうことも考えていない。

◆やるべきことをやらないから「今、意思を問うたところで…」
 —知事が県民の意思を確認するのは、どんな方法が望ましいか。花角英世知事は「『信を問う』」と述べている。
 その議論をしたら一人歩きして、やるべきことがこんなにあるというメッセージが伝わらなくなる事故になれば何が起きるかを県民に伝えた上で、どんな体制を組むかが先だ。今、意思を問うたところで、分からない人に聞くことになり、賛成する人も反対する人も不利益になる。

 —超党派の地方議員グループが、再稼働の事前同意の対象を、避難計画の策定が義務づけられている30キロ圏内の全自治体に広げるよう求めている。この動きをどう見るか。
 県がやるべきことをやらないで逃げているから、こういう声が出てくる。やるべきことをやった上で、市町村に負荷をかけないようにしていれば、また別の風景が見えるかもしれない。

 —東京電力の原発事業者としての信頼性は。
 ない。ゼロだ。福島第1原発事故で4号機が爆発して少し落ち着いた後に、柏崎刈羽の幹部に説明に来てもらったが、メルトダウン(炉心溶融)しているんでしょうねと聞いたら、していないと。最初から分かっていたはずなのに、原発立地県の知事にこういううそをつく

 —そもそも、柏崎刈羽の再稼働は必要か。
 やるべきことをやっていないのだから、それも議論する段階にない。

泉田裕彦(いずみだ・ひろひこ) 1962年、新潟県加茂市生まれ。通商産業省(現経済産業省)を経て、2004年10月〜16年10月に新潟県知事。13年2月に有識者会議「原発の安全管理に関する技術委員会」を設置し、東京電力福島第1原発事故について県独自の検証を始めた。17年衆院選に自民党公認で立候補し初当選。現在2期目。

  ◇    ◇
◆前提崩れた「屋内退避」…原発の避難計画の現状は
 原発30キロ圏内の自治体に義務付けられている避難計画には、深刻な事故が起きた際、自治体から住民への情報伝達、甲状腺被ばくを抑えるヨウ素剤の配布方法、避難先までのルートや交通手段、介護が必要な人への対応などが記される。新潟県柏崎市が公表する避難計画はA4判で120ページになる。
 自治体が避難計画を作るに当たっては、原子力規制委員会が示す原子力災害対策指針を参考にしている。
 指針は5キロ圏内は即時避難で、5〜30キロ圏はいったん屋内退避し放射線量を基に段階的に避難すると示す。
 ただ、能登半島地震では、水道や電気が止まり、住宅が倒壊すれば、屋内退避は困難であることが改めて浮き彫りになった。仮に、学校などに避難し屋内退避できたとしても、原発事故で水や食料などが十分に届くのかは分からない。
 規制委は2月、指針の見直しに着手する方針を示したが、「屋内退避できる」との前提で議論することとした。この見直し議論でも1年近くかかるとされる。
 柏崎刈羽でいえば、屋内退避の問題に加え、周辺が豪雪地帯で冬場の避難は困難を極めるとみられる。そうした対応が決まっておらず、内閣府は避難計画を最終的に了承していない。(荒井六貴)