2021年9月30日木曜日

二審も国と東電に賠償命令 原発避難巡る松山訴訟

 福島原発事故で愛媛県に避難した人たちが、国と東京電力を訴えた裁判で、2審の高松高裁は1審に続いて「政府の機関が公表した地震の評価は、専門家の審議によるもので信頼できる。国は、これに基づいて津波の危険性を予測できたはずだ」国の責任を認め、国と東電にあわせて4620万円(1審は2700万円)の賠償を命じました。

 約30件の同種訴訟で高裁判決は4例目で、国と東電の賠償責任を認めた高裁判決は、福島訴訟の仙台高裁判決と千葉訴訟の東京高裁判決に続き3例目です
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二審も国と東電に賠償命令 原発避難巡る松山訴訟
                             共同通信 2021/9/29
 東京電力福島第1原発事故で福島県から愛媛県に避難した住民ら23人が、国と東電に計約1億3200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁(神山隆一裁判長)は29日、一審松山地裁判決と同様に国と東電の責任を認め、賠償額も上積みして計約4620万円の支払いを命じた
 原告側によると、約30件の同種訴訟で高裁判決は4例目。国と東電の賠償責任を認めた高裁判決は、福島訴訟の仙台高裁判決と千葉訴訟の東京高裁判決に続き3例目
 神山裁判長は、国が原子力政策を積極的に推進した事実を踏まえ「国の責任範囲を限定するのは相当ではない」と言及し、上積みが相当と判断した。


原発避難者訴訟 2審も国の責任認める
                  NHK 愛媛 NEWS WEB 2021年9月29日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で愛媛県に避難した人たちが、国と東京電力を訴えた裁判で、2審の高松高等裁判所は1審に続いて国の責任を認め、国と東京電力にあわせて4600万円あまりの賠償を命じました
この裁判は福島第一原発の事故で愛媛県に避難した人たちが、生活の基盤を失い精神的な苦痛を受けたなどとして国と東京電力に賠償を求めたもので、1審の松山地方裁判所はおととし、国の責任を認めて東京電力とともに2700万円あまりの賠償を命じていました。
きょうの2審の判決で、高松高等裁判所の神山隆一裁判長は、「政府の機関が公表した地震の評価は、専門家の審議によるもので信頼できる。国は、これに基づいて津波の危険性を予測できたはずだ」と指摘して、1審に続いて国の責任を認めました。
そのうえで「慣れない場所で避難生活を続けて平穏な日常生活を営むことができなくなり、故郷も失った住民たちの精神的な苦痛はきわめて深刻だ」として、ほとんどの原告について1審から慰謝料などを増額し、国と東京電力に対して控訴した23人にあわせて4600万円あまりを支払うよう命じました
原発事故で避難した人たちが国に賠償を求めた集団訴訟の高裁判決は全国で4件目で、国の責任を認める判決はこれで3件目です。

「これで改善できるのか」規制委員長が東電を批判 柏崎刈羽原発

 原子力規制委の更田豊志委員長は29日の記者会見で、東電が柏崎刈羽原発のテロ対策不備の原因分析と改善策をまとめた報告書について「具体性が読み取れず、これで本当に改善できるのか分からない」「世界最大級の原発でテロ対策が重視されてしかるべきなのに、どうして軽視されたのか。他の発電所に比べ、経営層の関与や意識が低すぎた」と東電の姿勢を批判しました。
 今後本格的検査に入りますが終了まで1年以上かかる見通しです。
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「これで改善できるのか」規制委員長が東電を批判 柏崎刈羽原発のテロ対策不備を巡る報告書巡り
                          東京新聞 2021年9月29日
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は29日の記者会見で、東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策不備の原因分析と改善策をまとめた報告書について「具体性が読み取れず、これで本当に改善できるのか分からない」と述べ、東電の姿勢を批判した。
 柏崎刈羽原発では2015年ごろから、侵入検知装置が多数故障し、監視カメラなどによる代わりの対応も不十分な状況が常態化。東電は22日公表の報告書で、テロの脅威について現場担当者の理解が足りず、発電所長や本社側も実態を把握していなかったなどの問題点を挙げた。
 更田委員長は「世界最大級の原発でテロ対策が重視されてしかるべきなのに、どうして軽視されたのか。他の発電所に比べ、経営層の関与や意識が低すぎた」と話した。
 この日の規制委の定例会合でも東電の報告書に批判が相次いだ。田中知さとる委員は「表面的で踏み込んだ検証がされていない」、山中伸介委員も「第三者委員会の検証内容が十分に反映されていない」と指摘した。
 規制委は報告書が妥当かを確かめるため、東電の追加検査に1年前後かける。「自律的な改善が見込める状態」と判断するまで、4月に出した事実上の運転禁止命令を解除しない。
 柏崎刈羽は1~7号機があり、総出力は820万キロワットと世界最大規模の原発。6、7号機は再稼働に必要な新規制基準に適合している。(小野沢健太)


東電報告書は「表面的」 原子力規制委、テロ対策不備で
                             共同通信 2021/9/29
 原子力規制委員会は29日の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策などの核物質防護に不備があった問題を巡り、東電が22日に提出した報告書について議論、委員から「表面的で踏み込んだ解析が少ない」などの意見が出た。規制委は今後、計画を策定し、本格的な検査に入る。終了まで少なくとも1年以上かかる見通し

 会合では、東電が設置した第三者検証委員会が、役職員らにアンケートするなどしてまとめた報告書の内容が、報告には十分反映されていないとの意見も出た。更田豊志委員長は「検証委の報告書をどのように理解、反映させようとするか今後の検査で聞いていく」と話した。 

30- 「あぶくまもち」震災後初の稲刈り 飯舘、大熊町でも

 飯舘村を中心に栽培されていた福島県オリジナル水稲品種「あぶくまもち」(もち米)の震災後初となる稲刈りが27日、同村前田地区の実証水田で行われまし。同銘柄は09年に村内の1ヘクタールで栽培が始まり、10年には19・4ヘクタールに作付面積を拡大しましたが、翌年に福島原発事故が起きて全村避難となり栽培途絶えていまし
 また大熊町は29日、帰還困難区域のうち復興拠点となっている熊地区で試験栽培のコメを刈り取りました。町は昨年は下野上地区で試験栽培を実施し、今年は場所を変え、復興拠点の熊地区の水田3アールで行いました。
 検査に必要な約1キロのコシヒカリを鎌で刈り取り、県の検査機関に玄米を送り、放射性セシウム濃度を調べ、来年から出荷が可能な実証栽培に移行する予定です
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「あぶくまもち」震災後初の稲刈り 飯舘、普及へ11年ぶり栽培
                        福島民友 2021年09月28日
 東日本大震災前に飯舘村を中心に栽培されていた県オリジナル水稲品種「あぶくまもち」の震災後初となる稲刈りが27日、同村前田地区の実証水田で行われた
 今回は村の事業による実証栽培で、あぶくまもちの普及が目的。栽培を生産者に委託する形で5月に始まった。16アールの水田に県農業総合センターで保管されていたあぶくまもちの種子6キロ分の苗を植えた。
 稲刈りには生産農家や杉岡誠村長、村職員ら関係者約20人が参加。参加者は鎌とコンバインで、たわわに実った稲を刈り取った。
 今回は収穫したコメの販売は行わず、切り餅やおこわなどの加工品の試作を予定している。
 今後、作付けを拡大するかどうかを収量や品質を基に判断し、村の新たな特産品として栽培、発信していく計画だ。
 参加した同村の農業青田豊実さん(50)は「無事に稲刈りができて一安心。(あぶくまもちを)高値で買い取ってもらえるよう、新たなブランドとして普及してほしい」と話した。
 あぶくまもちは、村の気候条件を生かすために開発されたもち米で、2008(平成20)年に県の奨励品種に指定された。09年に村内のほ場1ヘクタールで栽培が始まり、10年には19.4ヘクタールに作付面積を拡大したが、翌年に東日本大震災が発生。東京電力福島第1原発事故の影響で村は全村避難となり、あぶくまもちの栽培は途絶えていた。


復興拠点で試験栽培のコメを刈り取る 福島県大熊町の熊地区
                            福島民報 2021/09/29
 福島県大熊町農業委員会と町は29日、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)となっている熊地区で試験栽培のコメを刈り取った
 町は昨年から復興拠点の水田でコメの試験栽培を行っている。昨年は下野上地区で実施し、今年は場所を変え、復興拠点の熊地区の水田3アールで行った
 この日は根本友子会長や町職員ら合わせて5人が作業し、検査に必要な約1キロのコシヒカリを鎌で刈り取った。県の検査機関に玄米を送り、放射性セシウム濃度を調べ、来年から出荷が可能な実証栽培に移行する予定。
 根本会長はイネを手に「春の田植えの時は土壌の状態から、少し心配したが、しっかり実ってうれしい。安全な米が取れることを証明し、町民が安心して帰還できるよう取り組んでいく」と語った。

2021年9月29日水曜日

東電不公正な賠償 果樹農家にルールよりも10倍差の少額提示

 福島県農民連は27日、原発事故による農産物被害への賠償をめぐり、個別に請求した農業者への賠償が、農協などを通じて請求した人より低く抑えられていた問題で、政府、東京電力と交渉しました。

 日本ナシ、ブドウなどで、農民連の支援を受けるなど個別に請求した人の場合、農協などを通じて請求した人に比べ、指数に2倍以上の開きや、賠償額が10倍近い差が生じました。
 東電側は誤りを認め農家には差額をさかのぼって支払うことを約束しました。
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不公正な賠償ただせ 農産物被害で交渉 福島県農民連が東電、政府と
                       しんぶん赤旗 2021年9月28日
 福島県農民連は27日、東京電力福島第1原発事故による農産物被害への賠償をめぐり、個別に請求した農業者への賠償が、農協などを通じて請求した人より低く抑えられていた問題で、政府、東京電力と交渉しました。
 この問題は、農民連の指摘で発覚。参加者は「まったく不公平、不正なやり方だ」とし、社会への公表、差額支払い、対象者へ周知などを求めました。
 農産物被害の賠償について東電は、2019年度以降、卸売市場での価格をもとに「全国平均価格変動指数」を決め、事故前の単価に同指数をかけた「基準単価」と請求対象月の実際の単価との差額に、販売数量をかけて賠償額を算出しています。
 今回、農民連の指摘で、日本ナシ、ブドウなどで、農民連の支援を受けるなど個別に請求した人の場合、農協などを通じて請求した人に比べ、指数に2倍以上の開きが生じています。
 東京の参院議員会館とオンラインで、根本敬会長、佐々木健洋事務局長、ナシ生産者の阿部哲也さんらが参加。
 根本会長は「事故から10年たつなか、ずっと公正な賠償を求めてきた。なぜこうなったのか明らかにするべきだ」と述べ、阿部さんは「過程もわからないやり方で加害者が計算している。不条理だ」と批判。参加者からは「このやり方を決裁したのは誰か」などの声が上がりました。
 東電福島原子力補償相談室中央・団体相談グループの平澤朋部長は「誤りだった」としたものの、「指数」について誰が決めたのかは回答を拒否。一方、経済産業省担当者は「農民連の今回の申し入れ書を見て初めて知った」と答えました。
 日本共産党の紙智子、岩渕友の両参院議員が同席。紙氏は「ここまでの経過と責任を明らかにするべきだ」と指摘し、岩渕氏は「この事態を招いた国の監督責任は重大だ」と述べました。


原発事故の果樹賠償、東電がルールよりも少額提示 10倍差も
                             毎日新聞 2021/9/28
 東京電力福島第1原発事故に伴う風評被害に対する賠償で、個人で請求した果樹農家に対し、東電が事前に決めたルールより少ない額を提示していたことが明らかになった。賠償額に10倍近い差が出たケースもあり、福島県農民連は27日、国・東電とオンラインで交渉し、「記者会見して説明を」などと訴えた。【高橋隆輔】
 東電は、2019年に果樹の一部について賠償の仕組みを変更。事故前5年の平均に、その年の全国的な価格変動を係数にして掛け合わせて基準価格を設定し、実際の販売価格との差額を被害と認定することにしていた。
 この際、取引量の少ない月は正確な係数を計算できないため、調整しない取り決めだったが、個人請求した農家には、取引量の多い時期も調整しない月があった。基準価格が低くなったため実際の販売価格との差額も小さくなり、結果的に賠償額も抑えられた。
 東電によると、半分以下や2倍以上など極端な係数になる場合は不正確と判断し、市場価格が跳ね上がった月も調整しなかったという。一方で、農協を通じた団体請求者には調整をしており、賠償額に10倍近い格差が生じたケースもあった
 この日の交渉で、農民連側は、団体交渉との間で格差が生じている点を追及した。東電側は「2倍を超えて相場が上がることに備えがなかった」と陳謝。故意性は否定し、農家には差額をさかのぼって支払うことを約束した。一方で、「各団体の個別の交渉への言及は控える」として、団体請求と対応が違う理由は説明しなかった。
 農民連側からは不信感をあらわにする声が続出した。交渉後、根本敬会長は「東電は少数者をないがしろにしている。被害はきっちり賠償させる機運を高めたい」と話していた。

伊方原発3号機の火災感知器 140カ所で不適切設置

 四国電力伊方原発3号機(伊方町)で約140カ所の火災感知器が消防法施行規則を満たさない状態で設置されていたことが27日、分かりました。

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消防法施行規則満たさず
伊方原発3号機の火災感知器 140カ所で不適切設置
                         愛媛新聞 2021年9月28日
 四国電力伊方原発3号機(伊方町)で約140カ所の火災感知器が消防法施行規則を満たさない状態で設置されていたことが27日、分かった。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準は、火災発生時に熱や煙を検知する火災感知器を規則に準じ設置するよう求めているが、不適切な設置状態で原発が運転されていた。四電は「近くに複数の感知器を設置しており原発の安全性に問題はなかった」とし、9月14日までに全て移設し解消したという。
 規則では、火災感知器を換気口などの吹き出し口から1・5メートル以上離して設置することを求めている。伊方3号機の制御盤室では、原子力規制委員会が20年7~9月の検査で熱感知器1台が約1・2メートルに設置されていたことを確認した。その後四電が約4千台の熱や煙感知器を確認し、規定以上の距離をとっていない箇所が合計約140見つかった。
 感知器が換気口の近くに設置された場合、空調の影響を受けて感知が遅れる可能性があり、規制委は「感知機能の信頼性を損ねることは容易に予測可能」と評価している。伊方3号機は感知器設置後16年8月~17年10月、18年10月~19年12月に3号機を運転した。四電によると、不適切な設置による検知の遅れなどは確認されていないという。
           (残り:232文字/全文:760文字

電力の地産地消へ 再生エネ発電新会社 大熊町とエイブルが設立

 福島県大熊町と建設業「エイブル」は28日、地域新電力会社「大熊るるるん電力」を設立しました。太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電し、特定復興再生拠点区域(復興拠点)を含めた町内全域への供給で地域内循環を図り、電力の地産地消を目指します。

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電力の地産地消へ新会社 福島県大熊町とエイブル「大熊るるるん電力」設立
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 福島県大熊町と建設業「エイブル」(本社・大熊町)は28日、地域新電力会社「大熊るるるん電力」を設立した。太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電し、特定復興再生拠点区域(復興拠点)を含めた町内全域への供給で地域内循環を図り、電力の地産地消を目指す。
 株式会社で、社名は町の復興・脱炭素の基本理念である、地域資源を活用した新しいまちなどを「創る、巡る、贈る」にちなみ付けられた。再エネ発電、電力小売り、スマートコミュニティ、地域ビジネスの4事業を展開する。
 当面は他社から電力を調達し、来年4月に町内での小売りを始める計画。太陽光や風力、波力など自社の発電設備を拡充し、電力の地産地消を進め、2025(令和7)年頃には、余剰分の町外販売開始も見据える
 町が筆頭株主となり、エイブル、東邦銀行と大東銀行が出資している。28日、町役場で会社設立式が行われた。社長に就任した吉田淳町長と副社長に就いたエイブル再生可能エネルギー部の渡辺亜希子部長らが臨んだ。
 町は2040年に二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにするゼロカーボンの目標を掲げている。


福島・大熊町が再エネ会社 地元企業と設立、脱炭素へ
                             共同通信 2021/9/28
 東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町は28日、再生可能エネルギー導入を進めるための新会社「大熊るるるん電力」を地元企業とともに設立した。原発事故で約8年の全町避難を強いられた町は、原発や化石燃料に頼らず、2040年度に二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにするゼロカーボンの目標を掲げている。
 町が新会社の筆頭株主となり、プラント建設業者と金融機関が共同出資。当面は他社から電力を調達し、来年度から町内で小売りを始める。太陽光や風力、波力など自社の発電設備を拡充し電力の地産地消を進め、25年ごろに余剰分の町外販売開始も目指す。

29- 中国、第2位の原発大国に 米に次ぐ

中国、第2位の原発大国に 仏の発電量抜き、米に次ぐ

                             共同通信 2021/9/28
 中国の原子力発電量が2020年に原発大国のフランスを抜き、米国に次ぐ世界第2位になったことが28日、国際チームが公表した「世界原子力産業現状報告21年版」で分かった。11年の東京電力福島第1原発事故を経て、世界全体の原子力発電量は12年以降に再び増加しはじめたが、20年は2兆5530億キロワット時余りで約4%減り、全体的な退潮を印象付けた。
 チームメンバーでエネルギーコンサルタントのマイクル・シュナイダー氏は「中国を含めて再生可能エネルギーが急拡大して発電量が増える中、原子力の役割は低下している」と指摘している。

2021年9月28日火曜日

「ふくしま夢実現クエスト」都内で始まる 来年2月に成果発表

 福島県は25日、首都圏の若者をターゲットにした新たな関係人口創出事業「ふくしま夢実現クエスト」をスタートさせました。「ふくクエ応援会議」と題するワークショップの初回を東京・中央区で開き、2030代の参加者21人のうち初回は11人が出席しました。

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福島県の課題に首都圏の若者の声反映へ 「ふくしま夢実現クエスト」都内で始まる 来年2月に成果発表
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 福島県は25日、首都圏の若者をターゲットにした新たな関係人口創出事業「ふくしま夢実現クエスト」(略称・ふくクエ)をスタートさせた。「ふくクエ応援会議」と題するワークショップの初回を東京・中央区で開き、福島県内の地域課題について意見交換した。
 首都圏の若者に本県の地域課題の解決策を考えてもらう中でつながりを深め、将来的な移住・定住につなげるのが狙い。20~30代の参加者21人のうち、初回は11人が臨んだ。
 参加者は3チームに分かれ、福島牛の活用や、人口減少地域での関係人口づくりなど、公募で寄せられた課題(クエスト)の計11項目についてアイデアを出し合った。一部課題に関しては関係者の講演も聞いた。
 ワークショップは10月30日、11月27日にも開く。その後、県内の対象地域でのフィールドワークを経て来年2月にふくクエコンテストを開き、活動成果を発表する。

28- 英、原発事業から中国企業を排除へ

 英政府は、サイズウェルC原子力発電所の建設事業にフランスのEDFとともに274ドルを出資し、中国の原発会社、中国広核集団(CGN)を排除する計画です

 詳しい理由は不明ですが米国の中国排斥に歩調を合わせたものと思われます。
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英、原発事業から中国企業排除を計画=ガーディアン紙
                             ロイター 2021/9/27
[ロンドン 25日 ロイター] - 英政府は、中国国有の原子力発電会社、中国広核集団(CGN)を国内の新規電力事業から排除する計画。英紙ガーディアンが25日に報じた。
同紙によると、英政府はイングランド東部のサフォーク州にあるサイズウェルC原子力発電所の建設事業にフランスのEDFとともに200億ポンド(274億ドル)の出資を検討している。
その結果、現在サイズウェルに20%出資しているCGNがこの事業から排除されることになる。来月にもこの計画が発表される可能性があるという。

2021年9月27日月曜日

27- 原発訴訟から司法を考える(澤藤統一郎氏)

 澤藤統一郎弁護士が、「23期弁護士ネットワーク」オンライン学習会で開かれた「原発訴訟から司法を考える」会合での井戸謙一弁護士(元裁判官)の発言内容をブログ「澤藤統一郎憲法日記」に紹介しました(同ブログは一日も休まずに発行されています)。

 井戸謙一弁護士は、裁判官時代に志賀原発2号機の運転差止を認める判決を下したことで有名ですが、そうすれば自分の裁判官としてのキャリアに影響あるので、ローンなどは早めに完済するよう心がけていたと語ったということです。要するに裁判官の人事部門である最高裁事務総局はいわば原発賛成派なので、「反原発の判決を下した判事はそこで出世が止まる」という意味です。
 前段の「島田広弁護士」のところで、「大飯原発福井訴訟団長として、いわゆる樋口判決を得るも控訴審等で最高裁シフトを経験」と記述されているのは、最高裁事務総局がその後すぐに2人の超エリート判事を差し向けて、控訴審等で樋口判決を覆させたことを示しています。
 裁判官も、「良心のみに従って判決を下す」のはなかなか容易ではない状況にあるということです。
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『原発訴訟から司法を考える』ー 23期ネットワーク主催オンライン学習会
                    澤藤統一郎の憲法日記 2021年9月25日
 コロナ禍がもたらした思いがけない福音に、オンライン会議の普及がある。これまでは東京周辺の人としかできなかった会合が、オンラインなら全国の誰とでも可能となった。交通の時間も費用もかからずに。
 50年前に、司法修習と修習生運動を共にした23期の弁護士の気の合った仲間が、「23期弁護士ネットワーク」というグループを名乗って、今年の4月、まず「司法はこれでいいのか」という本を出版し、4月24日には出版記念の集会を開催した。その準備はZoom(ズーム)での会議がなければできなかったこと。
 その後も頻繁にZoom(ズーム)会議を開いて、意見交換をしている。札幌、東京、名古屋、京都、大阪などの参加者が、簡単に顔を合わせ、話し合うことができるのだから、これは便利だ。
 23期共通の関心事は司法問題。どうすれば、《憲法が想定する、真に独立した人権の砦としての裁判所》をつくることができるだろうか、という問題意識。
 そのような観点からの活動の第一歩として、本日は、オンライン学習会を開催した。『原発訴訟から司法を考える』とタイトルした企画。
 企画書は次のように述べている。
 「今回は、3・11の福島原発事故以後の原発差止訴訟を取り上げます。ご存じの通り、全国各地で差止訴訟が提起されていますが、勝訴判決はわずかですし、勝っても上級審では全て覆されています。あれだけの被害を出し、史上最大最悪の公害と言われる原発被害を経験したのにもかかわらず、この結果は何を意味するのでしょうか、また何が原因となっているのでしょうか。さらには、どうすれば裁判所を変えていけるのでしょうか。それらを探りながら、前回の集会に引き続き、再度、ハードケースで勝訴判決が出ない司法の問題点、現状を議論し、今後の裁判に役立てたいと思い、今回の企画を準備しました。」

パネリストは次のお二人。
*島田広弁護士50期
 大飯原発福井訴訟団長として、いわゆる樋口判決を得るも控訴審等で最高裁シフトを経験。

*井戸謙一弁護士(元裁判官)31期
 裁判官時代志賀原発2号機の運転差止を認める判決を下す(当時全敗の中)。差止訴訟に限らず、「ふくしま集団疎開裁判」等の団長も
 メインの講師、井戸さんのお話は、明晰で興味深いものだった。司会をお願いした北村栄弁護士が、周到な準備を経た質問をしてくれたおかげもある。いくつか、印象に残ったことを、私なりの理解で書き残しておきたい。
✦刑事訴訟とは実体的真実を見極めるための手続ではない。「ギルティ(⇒有罪)」と証明できない限りは、「ノットギルティ」なのであって、被告人が真に潔白であるか否かは問題にならない。
✦実は、民事訴訟も同様に挙証責任の配分というルールに従っての判断に至る手続で、本来は安全性具備の挙証責任は被告の電力会社側にある。ところが、多くの原発差し止め事件判決が、先例とされている行政訴訟の伊方原発事件の法理に従って、挙証責任を逆転させて住民を敗訴させてきた。私は、民事訴訟のルールの通りに判決したまでのこと
✦それでも、初めての差し止め判決を出すには緊張感が伴ったし、その後も変わった裁判官という目で見られた印象を拭えない。自分の裁判官としてのキャリアに影響あることは予てから覚悟していた。だから、ローンなどは、早めに完済するよう、心がけていた。
裁判官を説得するには、争点を絞り、書面は短く、記録は薄く、主張は簡潔に、専門的なことを噛み砕いて文系の裁判官に分かり易くということが望ましい。現実にはなかなか困難だが。
✦原告の主張を実現するには法廷外の運動も大切だと思う。傍聴席が満員であれば、国民が注視している事件だという緊張が生まれる。公正判決要請などの署名は、書記官限りで裁判官にまで上がってこない扱いが多いが、なんとなくたくさんの署名があったということは話題になるもの。
✦いま大切だと思っていることは、科学的知見を裁判所に納得してもらうために、良心的な科学者集団の叡智を結集すること。具体的には、これまで余り注目されなかった地盤工学に関する研究者たちの助力を得ている。
✦原発関連訴訟に関しては、3・11事故による被害の確認は重要だと思う。事故直後のあの緊迫感は時とともに風化しつつあると思わなければならない。
✦国を被告にする事件だからといって、裁判官が国におもねることはないと思う。しかし、国策の根幹に関わるような事件では、話は別。たとえば、沖縄の問題ではそれが顕著に表れていると思う。
かつては、結論では棄却の判決でも、その理由中の傍論で原告の望む事実認定をし、あるいは違憲違法を語った例が多かった。最近ではそれが少ない。安保法制違憲素諸判決には一件もない。裁判官の意識の変化かも知れない。
裁判官は、組織に隠れた存在になってはならない。評価すべき判決も批判すべき判決も、裁判官・裁判長の固有名詞を冠して特定すべきだ。だから、ネットで実名を挙げての裁判批判もあって当然だと思う。

2021年9月26日日曜日

グリーン水素の共同利活用を宣言へ 福島県浪江町と米ランカスター市

 福島県浪江町と米国カリフォルニア州ランカスター市は101日、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の利活用を共同で進める「水素社会の実現に向けた自治体パートナーシップ宣言」に調印します。
 水素は燃料電池式自動車の原料になるとともに、直接燃料として使ってもCO2を発生させません。但し通常の化学反応を利用した水素製造ではCO2を発生させるので意味がないのに対して、太陽光発電による水の電気分解方式であればCO2は発生せず、浪江町では同方式による世界最大級の水素製造装置が既に稼働しています。
 ランカスター市は米国の自治体で初めて、再生可能エネルギーの発電量が市内の全消費電力を上回り、昨年11月に「水素宣言都市」を表明していました。
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グリーン水素の共同利活用を宣言へ 福島県浪江町と米ランカスター市 10月1日に調印
                             福島民報 2021/09/25
 福島県浪江町と米国カリフォルニア州ランカスター市は10月1日、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の利活用を共同で進める「水素社会の実現に向けた自治体パートナーシップ宣言」に調印する。グリーン水素の利活用を掲げた自治体間の調印は、世界初とみられる。先進的な研究や実証事業を進めている日米の自治体が主導して水素の製造、貯蔵、配送、公共施設や地域での使用を促進し、次世代エネルギーの社会実装を目指す。
 ランカスター市は米国の自治体で初めて、再生可能エネルギーの発電量が市内の全消費電力を上回った。昨年11月に「水素宣言都市」を表明した。
 一方、浪江町では、太陽光発電で稼働する世界最大級の水素製造実証拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が昨年3月に開所した。町は「なみえ水素タウン構想」を掲げ、FH2Rを拠点に国内の企業・団体とさまざまな分野で実証事業を展開している。
 浪江町の取り組みを知ったランカスター市のレックス・パリス市長が2020(令和2)年、在ロサンゼルス日本総領事館を通して連携を提案。吉田数博町長とパリス市長が今年7月、オンラインで覚書に署名した。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興を進める町にとって、米国都市との提携は水素社会実現に向けた先駆けの地として国際社会に発信していくことにつながる。
 両市町の担当者は毎月、オンラインで会議を開き、情報を共有している。先進的な知見や取り組みを互いの施策に反映させ、次世代のまちづくりに結び付けていく。
 調印式は10月1日、浪江町の福島いこいの村なみえとランカスター市をオンラインで結んで行われる。

 FH2Rの実証事業の実施主体である国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大平英二燃料電池・水素室長は両市町の調印を歓迎する。温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を世界的に目指す中で「自治体が主体的にそれぞれの資源を使って、まちづくりのモデルを構築していく必要がある」と強調。「自治体が連携して情報や知識を相互活用すれば効果的に進む」と期待した。 

コメを主軸に対米輸出品目拡大へ 福島県

 これまで福島県は米国向けの農産物輸出実績は牛肉のみにとどまっていましたが、米国が県産食品の輸入規制を撤廃したことを受け、今後は県産米を主軸に輸出実績を増やしていく予定です。

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コメ主軸に輸出品目拡大へ 福島県、米国の輸入規制撤廃受け
                    福島民友ニュース 2021年09月25日
 県は、米国が県産食品の輸入規制を撤廃したことを受け、積極的な情報発信を通じて輸出品目の拡大に乗り出す。県によると、これまでの米国向けの農産物輸出の実績は牛肉のみにとどまっており、今後は県産米を主軸に輸出実績を増やしていきたい構えだ。
 米国政府は現地時間21日、東京電力福島第1原発事故後から続いていた日本産食品の輸入規制を撤廃した。この機に合わせ、食味ランキングで4年連続日本一に輝いた県産米の品質の高さを発信することなどを通じて、コメを中心に輸出品目を増やしていく。
 米国への輸出を巡っては、新たな販路開拓という側面に加え「東アジアを中心に続く輸入規制の撤廃につなげたい」(県産品振興戦略課)という狙いがある。現在、中国や韓国、台湾など14カ国・地域では輸入規制が続いており、状況の打開に向けた一歩となることを期待している。
 県議会代表質問で、矢吹貢一議員の質問に国分守観光交流局長が答えた。

26- 「脱原発」に揺れる立地党員 河野氏持論に警戒感

 西日本新聞が、脱原発派と見られている河野総裁候補に対する原発立地町(薩摩川内市)の警戒感を報じました。

 河野氏は脱原発を鮮明にしたわけではなく、核燃料サイクルの廃止を述べただけなのですが、同市住民の警戒感には驚くべきものがあります。
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「脱原発」に揺れる立地党員 河野氏持論に警戒感、論戦には期待も
                            西日本新聞 2021/9/26
29日に開票される自民党総裁選は、脱原発が持論の河野太郎行政改革担当相が出馬し、原発を巡る議論が争点の一つになった。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)と川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を抱える地元では、選挙戦で優勢が伝わる河野氏に多くの自民党員が警戒感をあらわにする。他方、国政選挙で回避されがちな原発論争の深まりに期待する党員もいる。
歴代の自民党政権が推進してきた政策。いまさら脱原発を言うのは、私たち立地地域のはしごを外すのに等しい行為だ」
23日、玄海町。自民党員で町議の井上正旦さん(66)は河野氏の姿勢を批判した。総裁選は原発維持の主張が明確な高市早苗前総務相に投票するつもりだ。
町の人口は5300人余り。原発関係者は少なくない。町は昨年、コロナ禍の経済対策で8万円の商品券を全町民に配った。原発の交付金があるからこそできた政策だ。
21日は町議選が告示されたが、定数10に9人しか立候補せず、全員が無投票で当選。町で原発を議論する機会が奪われた
党員の別の町議は21日、当選祝いに訪れた県選出で自民の山下雄平参院議員に「なぜ河野さんを応援するのか」と詰め寄った。山下氏が河野氏の推薦人に名を連ねたからだ。「原発の地元議員としてあり得ない」。町議は憤った。
玄海町にも河野氏に投票した党員はいる。男性(74)は国民人気が高い河野氏の「選挙の顔」としての効果を重視したという。脱原発の主張は相いれないが「河野氏は再稼働を容認した。トップになれば暴走はしないだろう」と話す。
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川内原発のある薩摩川内市でも、多くの党員が河野氏の勝利を懸念する。
「河野さんが首相になったらと考えると正直怖い」。市内で機械メンテナンス会社を営む中間則行さん(47)は「怖い」を繰り返した。従業員は25人。受注のほとんどが原発関連だ。「脱原発」はたちまち経営を直撃する。「河野さんは今は多少封印しているのかもしれないが、信念は変わらないと思う。脱原発を言うなら、住民が食べていくための代替産業を示さないと無責任だ」と手厳しい。
原発の法定運転期間は原則40年。川内原発は1号機が2024年7月、2号機は25年11月に期限を迎える。手続きを踏めば20年の延長が可能で、九電は遠くない時期に延長を求めるものとみられるが、ときの首相が反対すれば難しくなる。
「総裁選で河野氏だけには入れないでほしい」。60代の党員は、九電関連会社の関係者から頼まれた。「河野氏が首相になることへの電力業界の危機感を強く感じた」という。
一方、「河野氏の出馬で、原発の議論が活発になったのはよかった」と考えるのは、市内で宅地建物取引業を営む党員、松永博志さん(72)だ。地元経済のほか日本の電力事情も踏まえ「しばらくは原発は必要」と河野氏以外を支持したが、福島第1原発の事故以来、将来は脱原発に移行しなければならないとも考える。「フクシマは人ごとじゃないから」
薩摩川内市では、国政選挙で原発が争点になることは少ない。各候補とも賛否両派の支持取り込みを狙うためだ。「総裁選が原発を真正面から議論するきっかけになってくれるといい」。松永さんは語った。 (金子晋輔、湯之前八州)

2021年9月25日土曜日

柏崎刈羽原発のテロ対策報告書 地元の受け止め(詳報)

 毎日新聞が「柏崎刈羽原発のテロ対策報告書」についての地元関係者の見解氏として桜井雅浩柏崎市長らの所見をやや具体的に報じましたので、詳報として紹介します。
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            (9月24日)柏崎市長が東電報告書を批判
 柏崎市長は「分析自体は正しいが原発は潜在的に大きなリスクを抱えた発電方法との意識の希薄化と国に支えられている会社であるとの認識不足がある」と指摘しまし
 反原発団体「柏崎刈羽市民ネットワーク」の竹内英子代表は、不祥事の度に言ってきたことと変わらず、また同じことが繰り返されるのではないか」と危惧を示しました。
 立石雅昭・新潟大名誉教授「社内の『安全文化醸成』という改革は過去の不祥事の度に実行してきたはずで、その中身と今回の事案との関連について分析が深められていない」『廃炉にする』と宣言するのが本来の責任の取り方だと思う」「新潟県や立地自治体は原子力規制委に任せるだけでなく、この改善策が実施されることを最後まで見届けるべきだ」と語りました
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柏崎刈羽原発のテロ対策報告書 地元「東電、変わっていない」
                         毎日新聞 2021年9月24
 東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)で相次いで発覚したテロ対策の不備に関する報告書を原子力規制委員会に提出したことを受け、同原発の地元関係者からは内容に対する厳しい見方が示された。「分析が甘い」といった指摘のほか、「東電は何も変わっていない」などと改めて原発事業者としての資質を疑問視する声が上がった。【内藤陽、露木陽介】
 東電が22日公表した報告書は、東電社員が他人のIDカードで中央制御室に不正入室
▽侵入検知設備が長期間故障していたのに十分な代替措置を取っていなかった——という二つの事案の原因や背景を分析し、改善計画を提示。主な原因として核物質防護に対する認識の甘さや、上層部が現場の実態を把握していなかったことなどを挙げた。
 報告書の公表を受けて23日に記者会見した柏崎市の桜井雅浩市長は「考察が甘い」と苦言を呈した
 二つの事案に共通する根本原因を「直接」「背後」「深層」に分けて導き出した結論と改善計画について「分析自体は正しいが、果たしてそうだろうか」と疑問視。福島第1原発事故とその影響も踏まえ「根底にあるのは原発は潜在的に大きなリスクを抱えた発電方法との意識の希薄化と、国に支えられている会社であるとの認識不足だ」と指摘した。
 東電は福島事故後、柏崎刈羽原発の核防護設備のリース・保守契約を見直して自社設備に切り替えた。これが核防護設備の不備につながったとの見方もあり、桜井市長は「コスト削減の狙いもあったのではないか。それを認めてほしかった。(東電の説明は)根底にあるものを提示していない」と述べた。
 報告書には東電社員4000人を対象にしたアンケート結果も盛り込まれた。「経営層に費用が高い、仕事のスピードが遅いと怒られた」「安全最優先と言いながらコスト削減や工程順守が横行していた」といった声が提示され、桜井市長は「現場の気持ち」と受け止めたという。
 また、原子力部門を統括する「原子力・立地本部」を東京の本社から新潟に移転する東電の計画については歓迎する意向を示した。
 反原発団体「柏崎刈羽市民ネットワーク」の竹内英子代表(52)は、報告書や東電の説明に「東電は何も変わっていない」との印象を抱いたという。「経営陣は『最後の機会』『生まれ変わる』などと大げさな言い方をしていたが、不祥事の度に言ってきたことと変わらず違う言い方をしているだけだ。また同じことが繰り返されるのではないか」と危惧を示した。
 「社内の『安全文化醸成』という改革は過去の不祥事の度に実行してきたはず。その中身と今回の事案との関連について分析が深められていない」。立石雅昭・新潟大名誉教授(地質学)も批判的な見方を示した。
 また、同原発は再稼働が見通せない中で膨大な資金が注がれていることから「経営と将来の見通しを考えたときに『廃炉にする』と宣言するのが本来の責任の取り方だと思う」とも述べた。
 立石教授は再稼働の可否を判断する根拠となる県独自の「三つの検証」の技術委員会で3月まで委員を務めていた。報告書は今後、同委員会でも議論され「東電が核防護を担うだけの力量があるのかという部分まで踏み込んで議論してほしい。県や立地自治体は原子力規制委員会に任せるだけでなく、この改善策が実施されることを最後まで見届けるべきだ」と語った。