2016年11月17日木曜日

美浜原発3号機の運転期間延長認める 原子力規制委

 ことし運転開始から40年になる福井県の美浜原発3号機について、原子力規制委は関電が行った施設の劣化状況の評価結果を妥当として、運転期間の延長を認めました。延長が認められるのは高浜原発に次いで2か所目です。
 
 当初は老朽原発の延長運転は非常にハードルが高く例外的に可能というニュアンスがありましたが、ふたを開けてみると申請のあった3基高浜原発は2基)すべてについて20年間の運転延長が認められました。
 申請側は確かに1500億円とか2000億円の改造費を負担していますが、それらは付属配管やケーブルの補強などであって、肝心の原子炉(圧力容器)や原子炉格納容器については構造上補強などは出来ません。
 どんなに周辺機器を丈夫にしてみても、心臓部に確信が持てないのであれば意味はありません。
 それに福島原発では、津波とは全く関係なく地震によって格納容器下部や建屋地階が破損しています。現在現場で四苦八苦している放射能汚水の問題の根本原因もそこにあります。
 
 十分にカネを掛けたからその見返りに延長を認めるというのは筋が違います。
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美浜原発3号機の運転期間延長認める 原子力規制委
NHK NEWS WEB 2016年11月16日
ことし運転開始から40年になる福井県の美浜原子力発電所3号機について、原子力規制委員会は、関西電力が行った施設の劣化状況の評価結果を妥当として、運転期間の延長を認めました。原発事故後に導入された運転期間を原則40年に制限する制度の下、延長が認められるのは高浜原発に次いで2か所目です。
 
運転延長の申請が出されている美浜原発3号機について、原子力規制委員会は、これまでに、地震対策や古い原発特有の課題になっている電気ケーブルの防火対策などが新しい規制基準に適合していると認め、設備の耐震性など詳しい設計を記した「工事計画」を認可しています。
 
16日の会合では、許認可で残されていた施設の劣化状況を評価する「運転期間延長認可」について議論が行われ、美浜原発3号機の場合、運転開始から60年たった場合も配管や電気ケーブルは健全性の基準を満たすと評価されていることなどが報告されました。
委員らは、平成16年に3号機の運転中に劣化した配管が破損し、高温の水蒸気が吹き出して作業員が死亡した事故を踏まえて、「美浜原発だけの問題ではないが、今後も規定に沿って劣化状況を確認してほしい」などと求めていました。
このほか委員から異論は出ず、最長20年の延長を全会一致で認めました。
 
これで美浜原発3号機は期限の今月末までに必要な許認可がすべて得られたことになり、最長の運転期間は2036年11月までとなります。
 
原発事故のあと導入された運転期間を原則40年に制限する制度の下では、同じ福井県にある高浜原発1号機と2号機に次いで2か所目になります。
実際の再稼働には安全対策の追加工事などを終える必要があり、関西電力は平成32年3月以降になるとしています。
 
規制委員長 「困難あったのでは」
美浜原発3号機の運転延長を認可したことについて、原子力規制委の田中俊一委員長は、「規制側は、要求することは要求してきた。事業者は、新しい要求に対応するため相当の困難があり、クリアーするように努力してきたのではないか」と述べ、運転延長は相当困難だとする考えを改めて示しました。運転延長は、多額の対策費用を投じれば、認められるのではないかという質問には、「一概に申し上げられない。全部が全部、お金をかけて努力すればクリアーできるかというとそういうものではなく、事業者側でいろんな思惑を持って判断していると思う」と述べました。また電力各社が、これまでに合わせて5原発6基で廃炉を決めたのは、新しい規制基準の影響か問われたのに対し、「実態としては、とう汰はされているんだろう」と述べました。
 
美浜町長「町民にしっかり説明を」
  (中 略)
 
規制委のビル前では抗議活動
美浜原発3号機の運転延長が認可されたことを受けて原子力規制委員会が入る東京・港区のビルの前には、原発の再稼働に反対する人たちが集まり、「美浜3号機を廃炉に」などと書かれた紙を掲げながら、「老朽原発は直ちに廃炉すべきだ」とか「60年延長は許さない」などと訴えていました。
東京・練馬区の66歳の女性は、「40年をすぎた老朽原発が稼働するのは危険で、事故が起きたら大変だと思う。とても不安で、やめてほしい」と話していました。
東京・八王子市の68歳の男性は「電気が足りている中、どうして古い原発を動かす必要があるのか、わからない。すぐに廃炉にすべきだと思う。原発が安全でないことは福島第一原発の事故ではっきりしていて、規制委員会は再稼働を推進する組織になっている」と話していました。
 
関電 丁寧な説明を継続する
  (中 略)
 
美浜3号の対策と計画
美浜原発3号機では、審査で見直した地震の想定に合わせた地震対策や古い電気ケーブルの防火対策がとられることになり、関西電力は、追加工事などのため、再稼働は、平成32年3月以降になるとしています。
【地震・津波対策】
関西電力は、審査の申請当初、美浜原発3号機では、北西にある長さ18キロの活断層などを震源として、最大750ガルの揺れを想定していました。しかし審査で規制委員会は、震源を浅く設定することや複数の断層の連動を想定することを求め、関西電力は、これを受け入れる形で地震の揺れの想定を最大993ガルに引き上げました。これに伴い関西電力は、耐震補強工事を行うとともに、原子炉の燃料を支える設備を交換したり、燃料プールの使用済み燃料を入れている「ラック」と呼ばれる設備を可動式のものに交換したりするとしています。また従来の耐震性の評価手法で地震の想定の引き上げを評価すると一部の設備が地震に耐えられないという結果になることから関西電力は、誤差が少ないとされる新しい評価手法の妥当性を実際の設備に振動を与える試験を行って確認し、規制委員会に了承されています。津波については、原発の北西150キロの日本海沖にある活断層と海底の地滑りによって、3号機の取水口前で高さが最大4メートル20センチと想定しています。3号機のある場所が海抜3メートル50センチと低いため、最大で高さ6メートルの防潮堤を建設するなどの安全対策を行うとしています。
【ケーブル】
古い原発に特有の安全対策の工事も必要になります。運転開始が昭和54年より古い原発は、内部の電気ケーブルが燃えにくい材質になっていないため、新しい規制基準で防火対策をとるよう求められています。昭和51年に運転を始めた美浜原発3号機も、長さおよそ1000キロに及ぶ電気ケーブルの対策が課題になり、関西電力は、長時間高圧の電流が流れるケーブルなど5割程度は、新しいものに取り替え、残りは、一定の基準を満たした防火シートで覆う対策を示し了承されました。
【緊急時対策所】
緊急時の対応拠点となる緊急時対策所については、3号機の北側に130メートル離れた場所に、およそ100人を収容できる耐震構造の建物を建設し、その中に設けるとしています。このほかすでに審査に合格したほかの原発と同じように移動できる冷却設備や電源車などを新たに設置するとしています。関西電力は、こうした新たな追加工事におよそ1650億円かかり、工事と検査が平成32年3月ごろまでかかる計画のため、再稼働はそれ以降になるとしています。
 
運転延長の判断は
関西電力の高浜原子力発電所1号機と2号機、それに美浜原発3号機と、ことしこれまでに申請のあった3基すべての運転期間の延長が認められ、原子力規制委員会が「相当困難」としてきた運転延長は多額の追加対策の費用をかければ認められることを示す形となっています。
一方で電力各社にとっては、電力自由化や裁判所の判断など、運転を延長して採算がとれるかどうか、見通しづらくする要因が増え、今後運転開始から40年を迎える原発について、各社がどう判断するのか、注目されます。
原発の運転期間を原則40年に制限する制度の下、関西電力は去年、出力が34万キロワットの美浜原発1号機と、50万キロワットの美浜原発2号機は、出力が比較的小さく追加対策の費用をかけると採算がとれないとして廃炉にすることを決めた一方で、出力が82万キロワットある高浜原発1号機と2号機、美浜原発3号機の3基については延長を申請しました。
関西電力によりますと、今回延長が認められた美浜原発3号機の場合、運転することで1か月当たり35億円の収支の改善が見込めるということです。新しい規制基準に対応する追加対策の費用は1650億円に上り、今後、テロ対策の施設を設置すると数百億円以上増えると見られるうえ、審査をへて耐震対策を増やすなどしたため、工事の期間が2年以上延び、実際に運転できる期間は最長で16年余りと、当初の想定より短くなりましたが、採算がとれるとする判断は変わらないとしています。
これまでに全国で運転延長の申請が行われたのはこれら3基だけですが、ことしいずれも延長が認められ、原子力規制委員会が「相当困難」としてきた運転延長は多額の追加対策の費用をかければ認められることを示す形となっています。その一方で、電力自由化で経営環境が厳しさを増すことや、ことし3月、裁判所が運転の停止を命じる仮処分の決定を出した高浜原発3号機と4号機のように裁判で原発の運転が止まる可能性もあり、電力各社にとっては多額の追加費用がかかる運転延長の採算がとれるかどうか見通しづらくする要因が増え、判断はより慎重になると見られます。
全国の原発のうち、これまでに廃炉や運転延長を決めた原発を除くと、今後10年以内に運転開始から40年を迎える原発は合わせて9原発14基あり、各社がどう判断するのか注目されます。
 
全国の原発の状況
福島第一原発の事故を踏まえて作られた新しい規制基準の審査には、運転延長が認められた美浜原発3号機を含め、これまでに4原発8基が合格し、このうち鹿児島県にある川内原発2号機と愛媛県にある伊方原発3号機の2基が運転中です。
廃炉が決まった原発を除くと全国には16原発42基があり、建設中の青森県の大間原発を含め、これまでに26基で再稼働の前提となる審査が申請されました。
審査はPWR=加圧水型と呼ばれるタイプの原発が先行しています。申請のあった8原発16基のうち4原発8基がこれまでに審査の合格に当たる新しい規制基準に適合していると認められました。内訳は、川内原発1号機と2号機、伊方原発3号機、原則40年に制限された運転期間の延長がすでに認められた福井県にある高浜原発1号機と2号機、同じく高浜原発の3号機と4号機、そして美浜原発3号機です。
このうち、去年再稼働した川内原発1号機は先月6日から定期検査に入り、現在、運転しているのは川内原発2号機と伊方原発3号機の2基です。高浜原発3号機と4号機は、ことし1月以降、順次再稼働しましたが、4号機は再稼働の3日後にトラブルで原子炉が自動停止し、さらに大津地方裁判所の運転停止を命じる仮処分の決定を受け、2基とも決定が覆らないかぎり運転できない状態です。このほかのPWRでは、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機が事実上審査に合格したことを示す審査書の案が今月9日に取りまとめられ、一般からの意見募集を行ったうえで正式に審査合格となる見通しです。
福井県にある大飯原発3号機と4号機と北海道にある泊原発3号機は、川内原発などと同じ3年前に審査の申請をしましたが、いずれも合格の具体的な時期は見通せない状況です。
福井県にある敦賀原発2号機は、焦点となっている真下を走る断層の活動性から議論を始めていて審査は序盤です。
一方、事故を起こした福島第一原発と同じBWR=沸騰水型と呼ばれるタイプの原発はこれまでに新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原発など8原発10基で審査が申請されています。
このうち、東京電力柏崎刈羽原発の審査が終盤に入り、このタイプの原発の中で最も進んでいますが、緊急時の対応拠点の設置場所の方針変更に伴い、審査に遅れが出ていて、合格の時期は来年度以降になる見通しです。
 
今後40年を迎える原発は
全国の16原発42基のうち、すでに運転延長が認められた原発を除くと、今後5年以内に茨城県にある東海第二原発、福井県にある大飯原発1号機と2号機、佐賀県にある玄海原発2号機の3原発4基が運転開始から40年を迎えます。
  (後 略)