2018年9月27日木曜日

27- 東海第2の審査合格に 市民団体が抗議 8000人分の署名提出も

 原電 東海第2原発が26日、新規制基準適合審査に正式に合格したことに対し、市民ら10人以上が、議論開始前の午前十時ごろから規制委の入る東京都港区のビル前に集まり、「東海第二、不合格」「命を守れ」とシュプレヒコールを繰り返しました。
 そして「規制委の甘い審査で合格しても、安全とはいえない」などと再稼働を認めないよう求める抗議文と約八千人分の署名を規制委の担当者に提出しました。
 
 茨城新聞が、東海村の町の声を拾った記事も併せて紹介します。
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規制委前で「原発いらない」「命守れ」 市民団体が抗議 8000人分の署名提出も
茨城新聞 2018年9月27日
 「原発はいらない」。東海第二の再稼働に反対する青、黄、オレンジの色とりどりの横断幕やのぼりが風にはためいた。規制委が再稼働へ向けて正式な審査適合を決めた二十六日、市民グループのメンバーらが抗議の声を上げた。
 雨上がりのどんよりとした曇り空の下、メンバーら十人以上が議論開始前の午前十時ごろから、規制委の入る東京都港区のビル前に集まった。「東海第二、不合格」「命を守れ」とシュプレヒコールを繰り返した。
 「規制委の甘い審査で合格しても、安全とはいえない」などと再稼働を認めないよう求める抗議文と約八千人分の署名を規制委の担当者に提出した。
 
 規制委の議論が終わり、五人の委員が正式適合を了承すると、傍聴席からは「反対です」「原子力推進委員会だ」と次々に怒りの声が上がり、会場は一時騒然とした
 
 地元にも不安は根強い。再稼働に反対する市民団体「脱原発ネットワーク茨城」共同代表の小川仙月さん(54)は「電力会社が出してきた(再稼働)申請を追認するような規制委の審査のやり方には疑問がある。ここ二カ月の間に大きな水害や地震も起こった。これらも踏まえ審査をやり直すべきだ」と強調した。
 
 東海村の自治会役員の男性(68)は「ハード面の安全性は確認された」としつつも、事故の際に「一人で逃げられない人の移動手段をどうするかなど決まっていない部分は多い」と不安も口にする。再稼働の際に同意を求められる県などに対し「十分に議論し、再稼働の是非を考えてほしい」と訴えた。
 
 
東海第2、審査合格 村民の思い交錯 
    「原発頼らない村に」「危険は感じてない」
茨城新聞 2018年9月27日
日本原子力発電(原電)東海第2原発が26日、原子力規制委員会の新規制基準適合審査に正式に合格した。立地する東海村の中には、原発がもたらす経済効果や財源に期待する声が根強くある一方、甚大な被害を及ぼす原子力事故を懸念し再稼働に反対する意見もある。2011年の東日本大震災以降、止まったままの東海第2。11月には運転開始から丸40年がたつ。期待と懸念。長年共存してきた村民の思いが交錯する。
 
 「極めて理不尽なことだ」。前村議の相沢一正さん(76)は納得いかない様子。1999年のジェー・シー・オー(JCO)臨界事故を受け、原発反対派の村議になり、3期務めた。現在も脱原発を掲げ、住民団体の要職を務める。
 東海第2は防潮堤など安全対策費に約1800億円かかる。しかし原電は資金不足のため、福島第1原発事故の当事者である東京電力に資金支援してもらう予定。相沢さんは福島県の避難指示区域に足を運び、惨状を見た経験を踏まえ、「福島第1の事故が収束していない中、東電の資金支援を認める原子力規制委はおかしい」と非難する。
 約96万人が逃げる広域避難計画は規制委の審査対象外だ。「避難計画にタッチしない規制基準は不備だ」と訴え、「原発に頼らない村づくりをすべき」と主張する。
 
 村内で米穀類や弁当、酒類を販売する店の経営者、小薗江利之さん(54)は「国が決めた審査基準に合格すれば、基本的には稼働していいと思う」。
 東海第2は村の経済に貢献してきた。原発の運転中は常時約千人が働き、13カ月に1回、数カ月にわたって定期検査もあった。検査期間中は3千人近くが出入りし、多くが村内に宿泊して、飲食店にもお金を落としてきた。同店も米や酒を卸し、期間中は注文が増えた。
 直接的に原電と取り引きがなくても、地元に何らかの経済効果をもたらすのが原子力産業の構図だった。
 同店は1957年、原子力関連施設で働く作業員向けの食堂として創業。小薗江さんには「原電も地域に溶け込み、共に歩んできた」との思いがある。だが福島第1原発事故後、原子力業界に対する見方が変わった。「事業者は村民とコミュニケーションを取り、常に緊張感を持って(事業者を)チェックできる関係が重要」と考える。
 
6歳と4歳の子ども2人を育てる女性(41)は福島第1原発事故後、夫の実家がある同村内に移り住んだ。県外出身の女性は、村の子育て施設や予防接種の補助など充実した行政サービスを実感。これらの財源は、原子力関連施設の固定資産税や交付金が元になっている。
 女性は、子どもたちのために事故のリスクは減らしてほしいとは思うが、「恩恵を受けているし、原発が危険とは感じていない」と言い切る。ただ「目の前の子育てで精神的に余裕がなく、原発について深く考えたことはない」と語った。(斉藤明成)