2025年2月17日月曜日

第7次エネルギー基本計画案の問題点+

 15日付のしんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 国の中長期エネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画(エネ基)」案で原発回帰方針が鮮明に打ち出されました。
 福島県の原発いわき市民訴訟の元原告団長で、原発問題住民運動全国連絡センター代表委員の伊東達也さんに「エネルギー基本計画案の問題点」を聞きました。
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エネルギー基本計画案の問題点 いわき市民訴訟告団長 伊東達也さん
                       しんぶん赤旗 2025年2月15日
    いとう・たつや 宮城県生まれ、福島県いわき市在住。原発問題住民運動全国連
          絡センター代表委員、原発事故からの蜃旧・復興を求める会代表。

 国の中長期エネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画(エネ基)」案で原発回帰方針が鮮明に打ち出されました。他方で、原発事故の被害が続いている福島の現状・実態への言及はありません。福島県の原発いわき市民訴訟の元原告団長で、原発問題住民運動全国連絡センター代表委員の伊東達也さんに聞きました  (福島県・野崎勇雄)

「原発2割」全稼働でも無理 大事故繰り返す危険性増す

 計画案が示している2040年度の電力構成

 

 

2023年度    実績

6次計画      (30年度目標)

7次計画      (40年度目標)

 

 

 再エネ

229%

36%~38%

4~5割程度

 

 

 原発

85%

20%~22%

 2割程度

 

 

火力など

686%

42%

3~4割程度

 

-計画案は、原発事故の教訓に背を向け、被災者の気持ちを踏みにじるものですね。
 「計画」案のなかの「原発事故後の歩み」では、「経験、反省と教訓を肝に銘じて、エネルギー政策を進めていくことが原点である」「福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なし」と書いています。
 ところが改定案では、東京電力福島第1原発事故後に掲げられた「可能な限り原発債存度を低減する」との文言を投げ捨て、臆面もなく「最大限活用」を掲げました。「福島の事故を反省し、教訓にする」と言うのは言葉だけで、これほど福島県民をばかにした話はありません。

-原発の最大限活用の打ち出しをどう見ますか
 計画案で示す電力構成は別表の通りです。今の6次計画では目標を数字で示しましたが、2040年度の7次計画案では割程度とあいまいな表現で、よく分かりません。
 再生可能エネルギー(以下再エネ)は4割から5割程度。6次計画よりは少し増やすとしているが、大部分を再エネにするという意思表示はまったくありません。再エネを思い切って増やすのが一番だと思うし、国民の多くもそうではないでしょうか。
 石炭や石油による火力発電については維持宣言だということが明白です。
 こう見ていくと原発最大限活用は大きな問題だということが際だってきます
 計画案の「エネルギー政策の基本的考え方」では、原発最大限活用の前提として、今後電力需要増加が見込まれること、原発は脱炭素電源であり、かつ経済成長や産業競争力強化に資するということの3点をあげています。そのうえで、▽「特定の電源や燃料源に過度に依存しない」ようバランスをとる必要がある ▽再エネか原子力かと対立させない考えがきわめて大切だと強調しています。
「特定の電源に過度に依存しない」とは再エネで大半をまかなうことを目標しないための言い訳だし、「対立させない」は原発増加の別表現ということが明らかです

原発の最大限活用でうなりますか。
 源発最大限活用は原発による危険性を最大限にることでもあります。国内で現在稼働している原発は13基で、全電源の85%です。計画案ではこれを40年度時点で2割程度にするとしていますが、電力需要量を12~22%増えると見込んでおり、原発の総発電量は現任の実に3倍近くにもなります。
 これを達成するためには、世論を無視して新増設しても間に合いません。たとえ強引に再稼働した原発を軒並み60年稼働させても、また今動いていない原発を全部動かしても、3倍はできそうにありませんしかし、計画では達成できると想定しています。第7次案を達成しようと無理に無理を重ね、拍車をかければかけるほど、間違いなく大事故発生を繰り返す危険を格段に増すことになります。
 計画案はまた、廃炉が決まった同じ場所に限定しいた原発の建て替えを規制緩和し、同じ電力会社であれば他の場所の原発敷地に建設することを認めるとしています。さらに新設の原発は「開発・設置に取り組む」と明記しました。これは40年以降も原発を主要電源とするものです。
 原発は「脱炭素電源」だから、建設費の上振れ分を消費者負担として電気料金から確実に回収できるようにする制度づくりをめざすとしています。また計画通りに原発の最大限活用を図れば、出力調整のため再工ネ発電を一時的に止める「出力抑制」がさらに増えることになります。

第7次計画案で触れていないものありますね。
 原発コストなどいろいろありますが、その最たるものは福島の実情です。事故から14年近くたっても「避難者の4割がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を疑われている」(早稲田大学・辻内琢也教授)のは、「ふるさとが剥奪」され、「コミュニティーが破壊」され、「家族が崩壊」したことにあります。
 国は現在の避難者総数を2万5610人(24年11月1日)と発表していますが、復興公営住宅に住んでいる人や住宅を購入した人は除外され、この人数には含まれません。そのため、例えば福島県内の避難指ボ区域に住民票があり、現在もいわき市内に住んでいる1万6000人余の避難者はゼロ扱いで、実情とかけ離れています。避難者の実数はどんなに少なく見ても4万5000人余にのぼるのではないでしょうか。
 いわき市を含む指定避難13市町村の合計水稲収穫量(24年産)は原発事故前年と比べて37・2%、役場ごと全住民が避難した9町村だと13・9%へと激減しました。避難指示が解除された区域での小中学校の通学者数は24年度で15%にすぎません。

 原発事故とその膨大な被害は、なお今も続いています。福島はかくも大きな苦しみを背負わされました。責任の所在は明白であり、「事故の責任は国にない」とした22年6月17日の最高裁判決は、国に忖度した不当なものです。これを覆すことも当面する大きな課題です。