「レイバーネット日本」に安田幸弘氏の「汚染水海洋放出の本当の理由〜『30~40年後に廃炉完了」の大ウソ」との記事が載りました。
政府は30年で廃炉が完了するかのような計画を立てていますが、これまでの経緯を見ればそんな風に進捗するとはとても思えません。廃炉するには先ずデブリを取り出す必要がありますが、事故から12年半が経つのにいまだに1グラムも取り出せていません。
そもそもどんな風にしてデブリを取り出して、どんな風に保管するのかもまだ決まっていません。英国はかなり前に廃炉には100年以上かかるだろうと見ていますが、そちらの方に余程信憑性を感じます。
そもそも海洋放出が30年程度で終るという見通しもウソです。
現状タンク内に保存されているトリチウムの総量は780兆ベクレルなのに対して、年間に放出が可能な量は22兆ベクレル/年なので、放出に要する期間は
780÷22=35・5年 となり、実際には40年が掛かると思われます。
仮に40年で終るとしてもその間に新たにアルプス処理水量が
90トン×365日/年×40年=131万4000トンが発生するので、それを放出する間にまた新たな水がたまるという繰り返しになります。
⇒(8月26日)汚染水放出のしくみ(しんぶん赤旗)
国のいうことは矛盾だらけです。
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汚染水海洋放出の本当の理由〜「30~40年後に廃炉完了」の大ウソ
安田幸弘 レイバーネット日本 2023-09-05
なぜ政府・東電は漁民との約束を破り、近隣諸国の反発を買ってまでALPS処理水の放出をしなければならなかったのか。
政府は敷地の確保だとか、いろいろ言い訳を並べているけど、本当のところはおそらく廃炉の期間だ。つまり、「30~40年後に廃炉完了」の実現は困難だからだ。福島第一の廃炉が完了するには100年かかるかもしれない。200年かかるかもしれない。つまり、海洋放出をしなければ汚染水の貯蔵タンクを100年、200年と作り続け、補修し続けなければならないが、それはさすがに無理だ、海に捨てられるようにしてほしい、ということなんだろう。
それならそうだと言えばいいのに、政府は「30〜40年」という脳天気な数字を引っ込めようとしない。それどころか、この脳天気な数字を根拠にしているのか、放出の期間は30年程度だと言い張る。もちろん、この数字に科学的、あるいは技術的な根拠なんてない。今後、100年以上、放出が続くものと考えるべきだろう。
現在のところ、放出の期間は30年という前提で「安全かどうか」が問題になっているが、廃炉までに100年以上かかることを前提にして汚染水の処理――だけじゃなくて、廃炉計画全体――を考え直さなきゃいけないんだと思う。
政府も東電も、「できないものはできない」と表明して、「やっちゃいけないことはわかってるけど、我々の技術ではどうしようもない。できるだけのことはするから、なんとか放出を認めてほしい」ぐらいのことを言えばいいのに、「科学的に安全なんだから放出する。それぐらい理解しろよ、バカ!」みたいに居直ってみせるから、余計議論が混乱する。
メルトダウンは起こす、臨界事故も起こす、高速増殖炉はお手上げ、再処理工場はいつのことやら…と、日本の原子力関連の技術なんて、何一つまともにできたことがない。スリーマイルやチェルノービルの例を思い出せば、日本の技術で30〜40年で廃炉が完了して処理水の放出も終わるなんて、誰が信じるだろう。
政府には「廃炉には100年以上かかるかもしれない」なんて言ったら政治的に持たない、という判断があるのかもしれない。
だけど厳しい現実から目をそらし、「30年」なんてウソをつきつづけることが本当に福島のために、あるいは日本のためになるのだろうか。。