2026年2月2日月曜日

原発回帰が加速の裏で苦悩する“核のごみ”問題 日本が進むべき道は?

 TOKYO MX(地上波9ch)が掲題の記事を出しました。
 核のごみは、使用済み核燃料を再処理工場で再処理し、ウランやプルトニウムを取り出した後に、再利用できない廃液を溶けたガラスと混ぜて固体化したもので、一般的に「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれています。
 長期間強い放射線を出し続けることから地下300mよりも深いところに埋めて最終処分を行うことが法律で定められていますが、その場所はいまだに決まっていません。
 北海道教育大学の岡村聰名誉教授などで構成する地質学会は、「変動帯の非常に激しい日本列島は地層処分には不適」との見解を早くから公表しています。要するに「日本列島は非常に小さい島で10万年間安定である地層を選ぶのは難しい」ということです。
 一方経産省によると、使用済み核燃料は2023年時点で全国に約1・9万トンで、保管できる容量の80%以上に達しており、あと数年で満杯になると言われています。
 再処理工場については青森県・六ヶ所村にウランやプルトニウムを取り出す施設を建設中ですが、1993年の着工から完成時期が27回延期されており、現在は2026年度中の完成を目指していますが、本当にそうなるかは何とも言えません。
 東京大学の貝沼准教授は、核のごみの問題のポイントとして原発の安全性、信頼の担保を挙げ、その上で「フェーズが変わる非常に大きなターニングポイントが来ている」とし、「負の再分配をしなければならない時代に入ってきている。それをいかに分配していくかという問題に向き合うべき」であると述べます。
 哲学者の萱野稔人さんは「核のごみの処理を進めているが、それが進むと原発を正当化してしまうと処分場の建設に反対する人もいる。しかしそれは本末転倒で、処分の問題と原発賛成・反対の議論は分けるべき」と注意を促します。
 いまは核のゴミをどう処分していくかみんなが向き合わないといけない、昔のままにしておくことはできない状況にあります。
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原発回帰が加速、その裏で苦悩する“核のごみ”問題…必要な電力を確保するために日本が進むべき道は?
                          TOKYO MX 2026/1/31
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、原子力政策に詳しい東京大学大学院の貝沼博准教授を迎え、“核のごみ問題”について議論しました。

◆原発回帰が加速、一方で核のごみの問題は?
東京電力は新潟県にある柏崎刈羽原発について、再稼働にむけて準備を進めています。国は原発を必要な電源と位置づけており、事実上、原発回帰が加速しています。しかし、それを推進するためには大きな壁が。それは使い終えた燃料、いわゆる“核のごみ”の問題です。
核のごみは、使用済み核燃料を再処理工場で再処理し、ウランやプルトニウムを取り出した後に、再利用できない廃液を溶けたガラスと混ぜて固体化したもので、一般的に「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれています。長期間強い放射線を出し続けることから地下300mよりも深いところに埋めて最終処分を行うことが法律で定められています。しかし、その場所はいまだに決まっていません。国はこの問題を将来世代に先送りしないとしながらも具体的な道筋を示せていないのが現状です。
今回は、そんな原発と核のごみの問題について、原子力政策の専門家・貝沼准教授を交えて徹底議論します。

◆使用済み核燃料、このままだとあと数年でパンク!?
経産省によると、使用済み核燃料は2023年時点で全国に約1.9万トン。保管できる容量の80%以上に達しており、あと数年で満杯になると言われています。そして、再処理工場については青森県・六ヶ所村にウランやプルトニウムを取り出す施設を建設中ですが、1993年の着工から完成時期が27回延期されており、現在は2026年度中の完成を目指しています。また、茨城県東海村には小規模な再処理施設があるものの、こちらは廃止が決まっています。
貝沼准教授は、まず今回の問題のポイントとして原発の安全性、信頼の担保を挙げ、さらには「CO2や国際情勢の問題、そして物価高の根本にエネルギーの問題がある」と指摘。その上で「フェーズが変わる非常に大きなターニングポイントが来ている」、加えて「負の再分配をしなければならない時代に入ってきている。それをいかに分配していくかという問題に向き合うべき」とも。
一方、哲学者の萱野稔人さんは「この議論で出発点とすべきは“現状の危険性”をどこまで認識できるか」と語る傍ら「政府も国際的な合意が取れている方法で核のごみの処理を進めているが、それが進むと原発を正当化してしまうと心配して処分場の建設に反対する方もいる。それは本末転倒で、処分の問題と原発賛成・反対の議論は分けるべき」と注意を促します。
すると貝沼准教授は萱野さんの意見に同意した上で「(今後は)中国やロシア、インドも原発を作る時代になっていくし、最終処分も向こうでやるというような話もある。それぞれの社会、政治的な条件もふまえながら、どう処分していくかみんなが向き合わないといけない。昔のままにしておくことはできない」と主張。
また、フリーキャスターの伊藤聡子さんは「AIの進展で今後電力消費量は伸びていく。エネルギーをどう確保していくかは国の存続、安全保障という意味でも非常に重要。そして、貝沼さんが言うように脱炭素も考えないといけないとなると、私は今の状況だと日本には原子力発電も再生可能エネルギーも火力発電も必要だと思う」と私見を述べます。
さらには「私たちは原子力発電の恩恵を受けて暮らしてきた。であれば、全員が(核のごみは)自分が出したごみという感覚で考えて、(最終処分場を)どこかに決めないといけないし、私たちはその地域に何ができるのかという視点も持っておかないといけない」と思いの丈を語ります。

◆なかなか決まらない最終処分場
核のごみは地下に埋める「地層処分」とすることは決まっていますが、その最終処分場の場所は決まっていません。
この場所を決めるための調査は3段階に分けられ、自治体が調査を受け入れるとまずは文献をもとに火山や断層の活動状況などを調べる“文献調査”が行われます。期間は2年程度で、国からの交付金は最大20億円。その次はボーリングなどを行い地質や地下水の状況を調べる“概要調査”で期間は4年程度。交付金は最大70億円です。さらに、地下に調査用の施設を作り、岩盤や地下水などの特性が処分場に適しているか調べる“精密調査”には約14年程度かかります。
なお、現在文献調査を受け入れているのは北海道の寿都町と神恵内村。そして、佐賀県の玄海町の3つです。
ここで貝沼准教授は最終処分場を巡る大きな問題“NIMBY”に言及。NIMBYとは「Not In My Back Yard(自分の家の裏庭には置かないでくれ)」の略で「どこかに(最終処分場を)作らないといけないことはわかっているが『ウチの近くには作ってくれるな』という話で、私たちはこの問題にちゃんと向き合わないといけない」と声を大にします。
NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんはここまでの話を聞き「電力消費量は圧倒的に都市が多いけど、最終処分場を都市に置こうという話には基本的にはならない。私は今、東京に住んでいて電力の恩恵を受けているけど、(最終処分場は)どうせ東京にはできないだろうという前提でこの議論を見てしまっている」と率直な心境を吐露。
一方、萱野さんからは「(最終処分場の候補地選びは)地震が少ない、地層が安定している、(核のごみは)船で運ぶから海に近いとかいろいろな条件があって適地は限定されてしまう。そうして選んだ上で関心がある自治体と調査をしている段階だが、まずは私たちが理解するところから始める必要がある」との意見もありました。

最終処分場について、専門家である北海道教育大学の岡村聰名誉教授に話を聞いてみると「変動帯の非常に激しい日本列島は地層処分には不適」と日本特有の問題を指摘し、地層処分のあり方に疑問を呈します
岡村名誉教授は「日本に適地はない」という声明を発表し、国に対し処分の抜本的な見直しを求めたメンバーの一人であり、「3.11や能登半島地震に代表されるように日本は断層運動が激しく、それによって地震が頻発している。どこで亀裂が発生し、大きなずれが起こるかは予測できない」と警鐘を鳴らします。
特に北海道の寿都町と神恵内村は地層処分には不向きだそうで「本当に安全に地層処分するのであれば、暫定保管しながら多くの目で、いろんな立場の人が賛成反対を超えて議論することが必要」と訴えます。
また、岡村名誉教授同様、国に処分の見直しを求めた佐賀大学の角縁進教授も「日本列島は非常に小さい島で、10万年間安定である地層を選ぶのは難しい」と懸念しています。
なお、北海道の寿都町と神恵内村は文献調査が終了しています。その際に寿都町が得た交付金は18億5,000万円で、公園や公共施設の整備に活用されています。次の段階である概要調査への移行については道が反対姿勢を示しており、北海道の鈴木知事は最終処分の問題は重要だが国民的議論になっていない、北海道だけが問題を引き受けるのは疑問としています。
この問題に貝沼准教授は「都会は豊かさを享受し、地方はどんどん衰退していく構図の中で交付金という制度がある。一方で(交付金に対して)『札束で頬を叩かれている』といった見方をする人いる。そして、(候補地も)社会のために貢献したい思いがあり、そこは尊重しなければならない」と私見を述べ、さらには「私は福島の(原発)処理水の問題にも関わっていたが、(最終的な決断をする)スイッチを地域の方が押す役割を担うことは非常に難しい。その公平性をいかに保つかはみんなで考えないといけない」とも。

◆核のごみの問題とどう向き合っていくべきか?
最後に、「核のごみはどうすべきか」について議論の参加者が提言を発表します。能條さんは“交付金ではなく日本全体で適地調査”。「地下に埋めるしか選択肢がないのであれば、日本全体で(より本格的な)適正調査をして、データを整理するところからやった方がいい」と言います。
続いて萱野さんは“豊かさを享受した責任”。「私たちが豊かさを享受した結果、核のごみがあるという認識をすべき。これを安全に処分することは我々の責任であるしないと議論は進まない」と訴えます。
伊藤さんも萱野さんと同様に“自分のごみとして考える、決まったら処分状の発展に寄与する”。「私たちは恩恵を受けてきているので(核のごみを)自分のごみとして考える。そして、受け入れる場所が決まったら、そこが発展するためにはどうすればいいのか日本全体で考え、その地域のために貢献していくことが大事だと思う」と主張。
貝沼准教授は“自分がスイッチを持ってる自覚を”。「中国やロシアなら政府が決めれば終わる話。(日本はそうではなく)自分たちが(判断する)スイッチを持っており、これは民主主義であり続けることを問われている」と持論を述べます。
そして、キャスターの堀潤は“受益地と電源地 パブリックミーティングで交流”。恩恵を受けている側は現実を知らなすぎるだけに、電源供給をしている地域と受益している地域の交流を切望。「事実を共有するための議論、対話ができる受け皿が必要で、メディアこそそのためのパブリックミーティングをやり続けることが必要なんじゃないか」と提案していました。