2015年5月13日水曜日

原発発電コスト最安は無理な見せ掛け

 経済産業省の有識者による作業部会は11日、2030年時点の各電源ごとの発電コストを再検証した報告書をまとめました。それによると原発の発電コストは1キロワット時当たり10・3以上と、27日に示した原案より0・2円上昇しましたが、それでも火力発電や再生可能エネルギーなど他の電源と比べ、最も安い水準となりました。
 
 ただし27日の原案のときにも触れたように、原発のコストは「最低」~「最高」表示のうちの最低額のみが表示され、石炭火力、LNG火力は平均表示となっていて正しい比較とはいえない他に、英国の発電コスト16・1円/KWHや米国の発電コスト16・7円/KWHを大幅に下回っていて信憑性が疑われます。使用済み核燃料の処理費用を何処まで見ているのかも良く分かりません。
 4月29日 経産省の原発発電コスト 欧米を大幅に下回る!? 
 
 それに加えてしんぶん赤旗によると、電源立地交付金や高速増殖炉「もんじゅ」の研究開発費などを含む30年時点の「政策経費」年間総発電電力量で割るに当たり2030年時点で電源構成の原発比率20~22%をベースにしているが、それは廃炉判断した5基を除く43基すべてを仮に再稼働させ、原則40年で動かしても15%程度にしかならないので、非現実的な数字であると述べています
 
 いずれにしても無理して安く見せたという感じがぬぐえません。
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原発発電コスト、最安は維持 経産省報告書 
日経新聞 2015年5月11日
 経済産業省の有識者による作業部会は11日、2030年時点の各電源ごとの発電コストを再検証した報告書をまとめた。原子力の発電コストは1キロワット時当たり10.3円以上と、4月に示した原案より0.2円上昇した。最新の発電電力量の見通しを踏まえた措置。ただ火力発電や再生可能エネルギーなど他の電源と比べ、最も安い水準は維持すると試算している。
 
 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の作業部会がまとめた。原発の発電コストは運転維持や安全対策などにかかる費用を積み上げて算出した。東京電力福島第1原発事故を受け、各電力会社が追加の安全対策を実施しているため、11年の前回試算(同8.9円以上)より上昇すると見込んだ。
 4月に示した原案(同10.1円以上)からは上昇したが、他の電源と比べると最も安い試算になった。原発事故の費用が膨らめばコストが上振れする可能性もあるため、前回と同様に下限だけを示す試算にした。与党との調整などを踏まえ、最終決定する見通しだ。
 他の電源では、再生エネルギーのうち大規模太陽光(メガソーラー)が12.7~15.6円、陸上風力が13.6~21.5円とした。火力発電は石炭火力が12.9円、液化天然ガス(LNG)火力を13.4円とした。
 
 
「原発コスト安く見せる」「原発20%超」が前提
 発電コスト試算 有識者会議了承
しんぶん赤旗 2015年5月12日
 経済産業省の有識者会議が11日開かれ、2030年時点の原発や再生可能エネルギーによる発電コストの試算を見直した報告書を大筋で了承し、焦点となっている原発の発電コストは4月末の案に比べ1キロワット時当たり0・2円高い「10・3円以上」としました。これは同省が4月30日に示した、2030年時点の電源構成で原発比率を20~22%にするという方針をもとに試算した結果。老朽原発の運転延長や新増設、リプレース(建て替え)を予定することで、「原発コストを無理やり安く見せようとするもの」との、国民からの批判は必至です。
 
国民からの批判は必至
 発電コストは1キロワット時の電気をつくる費用。原発については、資本費や運転維持費、新規制基準への対応費用、放射性廃棄物の処分など核燃料サイクル費用のほか、損害賠償や除染を含む事故リスク対応費用などの社会的費用を盛り込んでいます。11年の試算では「8・9円以上」でした。その後、賠償など損害費用が増加したものの、新規制基準への対応策によって事故の発生確率が前回の半分になるなどとして、1・4円の上昇にとどまっています。
 
 報告書によると、このうち、電源立地交付金や高速増殖炉「もんじゅ」の研究開発費などを含む30年時点の「政策経費」について、約3446億円(14年度予算)を年間総発電電力量の2242・5億キロワット時で割り、そのコストを1キロワット時当たり1・5円と見込みます。
 問題なのは、この年間総発電電力量は2030年時点で電源構成の原発比率20~22%が前提になっていることです。総発電電力量が減れば、「政策経費」のコストは上昇します。
 すでに廃炉の判断をされた5基を除く43基すべてを仮に再稼働させ、原則40年で動かしても原発依存度は15%程度。それ以上見込むのは、危険な老朽原発をさらに20年延長させ、新・増設やリプレース(建て替え)を予定したものです。
 しかし、世論の多数が再稼働に反対するもとで、1年半以上1基の原発も動いておらず、この「20~22%」という数字自体に市民団体から「非現実的だ」と批判の声が上がっているほどです。
 
 他の電源では、石炭火力は1キロワット時当たり12・9円、液化天然ガス(LNG)が13・4円、陸上の風力が13・6~21・5円、太陽光(非住宅)は12・7~15・6円を見込んでいます。
 
図