2016年3月27日日曜日

川内原発 緊急時対策所は耐震施設で対応と 九電が免震を取り下げ

 九電川内原発の緊急時対策所については当初は「免震重要棟」で申請しましたが、稼働後の昨年12月に建設済みの耐震施設「代替緊急時対策所」を流用したいと申し出ました。それに対して規制委は「納得できない」と批判したので再度検討していましたが、25日、九電は耐震施設を流用することで問題ないという結論に達したということで、「免震重要棟」新設の申請を取り下げました。
 
 それに対して東京新聞は、パスさえすれば態度を翻し、いわば契約違反公約違反をするとは、地域を代表する大企業らしからぬ振る舞いだと批判しました。
 
 新規制基準は、「緊急時対策所」の免震化を求めてはいずに、設置にも猶予期間を設け、未整備のままの再稼働を認めています。そうした規制委の緊急事故対策所軽視の考え方が、九電がこうした態度に出ることにつながっています。
 
 余震が続く中で事故対応を的確に行うためには、免震である方がはるかに適しています。また初期の事故対応を行うためには100人ほどが1週間は泊り込めるキャパシティや設備が必要とされます。
 それらが中越沖大地震時の柏崎刈羽原発事故、東日本大震災時の福島原発事故時の経験から得られた貴重な経験でした。それなのに、それらが新基準に反映されていないのは理解しがたいことです。
 また流用する対策所は免震以外の点でもその条件を満たしていないと聞いています。
 
 信濃毎日新聞新聞は、九電や規制委には、福島事故の教訓が生きているのか安全性確保に何が必要なのか、もう一度考える必要があるとしています。 
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川内原発「耐震施設で対応」、九電が規制委に申請
読売新聞 2016年03月26日  
 九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の「免震重要棟」建設問題で、九電は25日、免震棟を建てず、耐震施設で対応する計画を原子力規制委員会に申請した。今後、規制委が妥当性を審査する。
 東日本大震災後に発効した原発の新たな規制基準は、重大事故が発生した際の対応拠点となる「緊急時対策所」の設置を電力会社に義務づけている。
 九電は川内原発の稼働に向けた審査で、2015年度に免震棟を完成させ、その中に緊急時対策所を設置する計画を申請したが、稼働後の昨年12月、建設済みの耐震施設「代替緊急時対策所」を対策所に格上げする計画に変更した。ところがこれを規制委が「根拠に欠ける」などと批判したため、九電は免震棟の建設を再検討していた。
 
 
社説九電免震撤回 規制委も問われている
東京新聞 2016年3月26日
 審査さえパスすれば、約束をほごにしてもいい-。そんなのありか。原発に免震施設があるかないかは、住民の命に関わる重大事。このまま見過ごしてしまっては、規制委への信頼も保てまい。
 川内原発は、事故発生時の対策拠点となる免震施設の新設を安全対策のメニューに盛り込んで、再稼働の審査に“合格”した。
 しかも、3・11後の新規制基準下での再稼働第一号として、約二年の原発ゼロ状態に終止符を打ち、後続の“お手本”にもされていた。
 ところが、免震棟は造らず耐震施設で済ますという。
 
 パスさえすれば態度を翻す。
 商売で言えば契約違反、選挙で言うなら公約違反、入試ならカンニングにも相当するような、地域を代表する大企業らしからぬ振る舞いとは言えないか。
 免震施設建設の実績がないという理由は、いかにも説得力に欠けている。従来のレベルを超える対策こそが、今必要とされている。
 規制委はなぜ、“合格”を取り消すことができないか、非常に素朴な疑問である。
 一般に耐震では建物自体を強化する。しかし、地震の揺れを抑えるのは難しい。
 
 免震は地面と建物を切り離し、建物に揺れを伝わりにくくする。従って、建物内での作業性が保たれる。だからこそ、3・11当時の東京電力社長が国会事故調で「あれがなかったらと思うとぞっとする」と、ふり返っているのである。免震施設は、コストがかさむ。もし対策費を考えての変更だとするならば、3・11の教訓を踏みにじり、安全神話を復活に導くことにならないか。
 九州電力の瓜生道明社長は林幹雄経済産業相に「地域への説明不足があった」と詫(わ)びた。
 地域への説明やコミュニケーション不足以前に、安全への配慮が足りなくないか。
 
 3・11を教訓に生まれたはずの規制基準は、「緊急時対策所」の免震化を求めてはいない。設置にも猶予期間を設け、未整備のままの再稼働を認めている
 巨大地震は明日来るかも分からない。規制基準や規制委に対する信頼性も問われている。
 規制委への信頼なしに、原発は動かせない。
 再稼働の審査を申請中の原発の約半数が、川内のように免震の撤回や再検討を始めているという
 九電の翻意を、このまま認めてしまってはならない。
 
 
(社説)川内原発 免震棟撤回は許されぬ
信濃毎日新聞 2016年3月26日 
 九州電力がきのう、昨年8〜10月に再稼働した川内原発(鹿児島県)に免震重要棟を新設する計画の撤回を、原子力規制委員会に申請した。耐震設備で代用するという。
 免震重要棟は東京電力福島第1原発の事故で収束作業の拠点となり、重要性が再認識された。川内原発の再稼働に向けた新基準の適合性審査では、九電は今月までに建設すると説明していた。新設は合格の前提だったはずだ。
 九電は昨年12月にも免震棟を撤回することを申請している。規制委から「納得できない」と批判されたため、九電が再検討していた。その結果、耐震設備で安全性に問題はないと判断したという。
 
 当初の計画通りなら、免震棟はすでに完成していた。それがないまま川内原発の運転を続けるのは、規制委の適合性審査を無視しているのに等しい。規制委は審査合格を取り消し、停止させるのが筋である。
 今回の計画変更は安全性向上に逆行する懸念もある。規制委は厳しく対応するべきだ。
 
 変更の背景には、費用面の問題があるとみられる。
 免震棟は、建物と地盤の間に緩衝装置を設け地震の揺れを建物に直接伝えない構造だ。これに対し、耐震施設は壁や骨組みなど建物の強度を高め損傷を抑える。
 一般的に免震構造は室内の揺れを抑える効果が最も大きい一方、建設費や維持費は高いとされる。九電は昨年末に計画変更を表明した際「費用面も全く無関係ではない」と説明した。コストを優先した変更は許されない。九電の姿勢に疑念を抱かざるを得ない。
 
 免震棟完成前の再稼働を認めた規制委の対応にも問題がある。
 災害はいつ起きるか分からない。完成前に事故が発生し対応が後手に回ると、被害を受けるのは周辺住民である。
 
 2007年の新潟県中越沖地震では、東電柏崎刈羽原発(新潟県)の外部変圧器に火災が発生し、専用の通信設備がある事務本館の緊急対策室に入れず、通報が遅れた。東電が福島第1原発に免震重要棟を建設したのは、その反省からだ。完成したのは事故発生の8カ月前だった。
 東電社長だった清水正孝氏は国会事故調査委員会で「あれ(免震重要棟)がなかったら、と思うとぞっとする」と語っている。
 九電や規制委には、福島事故の教訓が生きているのか。安全性確保に何が必要なのか、もう一度考える必要がある。