2018年1月14日日曜日

英向け原発輸出の日立に異例の政府保証 リスクは国民が負担 

 日立は2012年に買収した英原発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーを通じ、英西部アングルシー島原発2基20年代前半稼働の新設計画を進めていますが、これについて日本とイギリスの両政府が総額3兆円の巨額な投資や融資をする方向を確認しまし
 融資主体は政府系の国際協力銀行(JBIC)で、3メガバンクも政府の債務保証を受けたうえで各千数百億円融資する見通しで、総額1兆1000億円の全額を政府が債務保証して融資します。英国側も同額を出資します。
 日立は最終判断を19年に下す予定で、米原発事業の損失で経営危機に陥った東芝の例があるので、ホライズンを連結子会社から外せない場合は計画を断念する考えです

 日立が抱え込むリスクを抑制するための政府支援なので巨額損失が出た場合には当然国民負担することになります。一企業の事業に国がそんな風に関与するのは通常あり得ないことですが、経団連の次期会長に内定している日立中西宏明会長は安倍首相を囲む財界人有志「さくら会」のメンバーなので、安倍首相としては何の抵抗もないのでしょう。

 アベ友企業と政権の癒着であるとともに、原子力ムラへの特別待遇に他なりません。


「危うい原発輸出に異例の政府保証 アベ友企業と政権の癒着」と銘打った日刊ゲンダイの記事を紹介します。

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危うい原発輸出に異例の政府保証 アベ友企業と政権の癒着

日刊ゲンダイ 2018年1月12日
(阿修羅 赤かぶ 2018.1.12 より転載)
 あまりにもタイミングがよすぎやしないか。経団連の次期会長に日立製作所の中西宏明会長が内定し、発表されたのが9日。そうしたらきのう(11日)、日立の原発輸出を日英政府で全面支援することで大筋合意したと報じられた。
 日立は2012年に買収した100%子会社の英ホライズン社を通じて、英西部アングルシー島に原発2基を建設する計画で、20年代半ばの運転開始を目指している。総事業費約3兆円というビッグプロジェクトなのだが、その資金スキームは驚くほどの“政府丸抱え”なのだ。

 日英で折半する融資額2兆2000億円の日本分1兆1000億円の融資主体は政府系の国際協力銀行(JBIC)。3メガバンクも融資する見通しだが、1兆1000億円全額を政府系の日本貿易保険(NEXI)が保証する方向で検討されているという。NEXIの全額保証は本来、途上国向けで、先進国である英国の事業に適用するのは異例であり、例外的措置である。
 さらにホライズン社に対し、政府系の日本政策投資銀行が出資もする。中部電力など大手電力会社にも出資を募るというが、理由は、日立自体の出資比率を50%未満に下げたいから。米国の原発事業で経営危機に陥った東芝みたいにならないよう、ホライズン社を日立の連結から外し、“リスク回避”するのだという。

 つまり、日立自身が原発輸出が経営的に“ヤバイ事業”だと認めているようなもので、だからリスクを政府が肩代わりする、というスキームなのだ。
 プロジェクトが失敗すれば、当然国民負担となる。国会で議論することもなく、国民に詳しい説明もなく、こんなスキームが許されるのか?

「東芝や三菱が大失敗し、もはや原発を推進してくれるのは日立しかない。そこで日本政府が日立のビジネスを丸抱えしてオールジャパンで英国に原発を輸出する。国民の血税を担保にしてでもやる。まあ、ひどい話です。こんなビジネスは通常ではあり得ない。資本主義国家である日本では、ビジネスは透明性や公正が求められる。これでは独裁国家ですよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
 日立の中西氏は、JR東海の葛西敬之名誉会長や富士フイルムHDの古森重隆会長ら財界人有志が安倍首相を囲む「さくら会」のメンバー“安倍ポチ”の榊原定征経団連会長は、自身の後任について「政権との近さ」を条件にしていた。中西新会長内定のこのタイミングで「日立の原発輸出の政府丸抱えスキーム」が表面化したことはどうにも無関係とは思えないのである。

海外向け原発の安全性をチェックする仕組みがない
 日立自体が認識するほど、このプロジェクトはリスクが高い。背景には福島原発の事故以降、世界中で脱原発が進んでいるという環境もあるが、それだけじゃない。そもそも日本の原発輸出のしくみ自体がズサン極まりないのだ。
 まず、海外へ輸出する原発の安全性をチェックするしくみが、事実上ないも同然。かつては経産省の外郭団体だった「原子力安全・保安院」が輸出向けプラントや資機材の安全管理を実施していた。しかし3・11後、保安院が廃止され、環境省所管の「原子力規委員会」に移行。規委の監督範囲は国内の原発のみとされ、海外向け原発のチェック機関が存在しなくなってしまったのである。

 それでも原発輸出を諦めない政府は、15年10月、新たに、内閣府、財務省、経産省で構成する「検討会議」なるものを設置。そこで安全確認することになったが、技術的な知見はほとんど入らず、不十分な体制のままになっている。そのうえ、安全確認した内容は公開されず、事後的な「議事要旨」が出されるのみだ。
 矛盾しているのは、原発輸出を含むインフラ輸出戦略を所管する内閣府が、安全確認も行うというフザけた体制であること。推進の旗振り役が輸出のブレーキになりかねない安全性のチェック役などできるわけがない。

 インドへの原発輸出が検討されたように、核拡散防止条約(NPT)非加盟国にも原発が売れるズサンさも残ったままだ。
 こうした原発輸出の問題に警鐘を鳴らし続けている岐阜女子大客員教授の福永正明氏があらためて言う。
「輸出する原発について、安全を確認する体制ができていないことが最大の問題です。少なくとも、保安院は技術的な資料は読んでいた。いまは融資や保証を行うJBICやNEXIが『これでどうでしょう』と政府に打診し、政府は書類審査するだけ。相手国に避難計画があろうがなかろうが関係なく輸出が決まる。安全は二の次で、金儲けしか考えていないのです」
 日本はそんな無責任な金の亡者に成り下がっているということだ。

安倍政権と経団連 二人三脚の金儲け至上主義
 今回の原発輸出に限らず、安倍政権の政策はどれも経団連との蜜月がベースにある。
 民主党政権時代からの米倉弘昌前会長体制で安倍と距離があった経団連は、榊原体制になると百八十度方針転換して政権ベッタリ路線になった。榊原氏は14年6月に会長に就任すると、その年に経団連が斡旋する政治献金を再開。すると、自民党の政治資金団体である国民政治協会への企業団体献金は一気に13%も増え、政権交代前の09年時に匹敵する20億円台を回復したのだった。

 これに呼応するかのように、安倍政権は翌年、法人減税に踏み切り、法人実効税率は30%を切った。献金の見返りが法人減税という露骨。その後も法人税率は年々下がり、昨年末の税制改正では、「3%の賃上げ企業」「設備投資増」などの条件付きながら、給与支給増加額の15%の税額控除を認めるという形で、法人税の実質負担を最大20%まで下げることが決まった。

 一方で、サラリーマンは所得税の控除見直しで実質増税され、「森林環境税」や「国際観光旅客税」など訳の分からない増税メニューまで払わせられる。そのうえ、社会保険料の負担は毎年上がるというデタラメだ。政府にお付き合いして、3%の賃上げで法人減税の恩恵を受ける企業なんて、黒字のわずかな大企業だけだから、ほとんどの庶民は無関係である。

 この5年、安倍政権の政策は、経団連との二人三脚で進められ、何でも大企業優遇。原発輸出に武器輸出こそが成長戦略、という考え方でやってきた。政権と経団連の“癒着”とも言えるし、5年連続で増え続けた政治献金に対する形を変えた贈収賄にも見えてしまう。
 そんな中で、何の恩恵も受けない国民の血税が原発輸出の担保にされる。それも原発事故を起こし、その処理もままならない国が、である。これぞ悪魔的というしかない。前出の福永正明氏もこう言う。
「あれだけの原発事故を起こした日本に、原発を売る資格があるのでしょうか。倫理的にも問題です。事故などまるでなかったかのように、『さあ商売だ』とばかりに海外へ売りに出ていく。それも民間企業や銀行がまったく損をしないスキームで政府が全て責任を負う。安倍首相はこれから外遊する際、経団連会長になる中西氏を常に連れて行って、一緒に原発のセールスを行うつもりなのでしょう。一般国民は自分たちの税金がそんなことに使われていいのか、よく考えるべきです」

 12年、日立が受注したリトアニアの原発は、国民投票の結果、反対多数で否決され、その後、16年に計画自体が凍結された。同じく16年、ベトナムでも4基の原発建設計画が中止になっている。いずれも福島の事故の悲惨さを目の当たりにし、原発建設コストが高騰する中での方針変更だった。
 米国や中国ですら再生可能エネルギーに舵を切る中で、いまだ原発輸出が成長戦略という前時代的な日本。これをおぞましいと言わずに何と言おうか。