2018年1月19日金曜日

日本の核燃料サイクル政策は破綻

 日米原子力協定が17日に自動延長されましたが、米国防総省や国務省の国際安全保障・不拡散局内には、日本が核兵器に転用可能なプルトニウムを大量保有していることへの懸念があります。当面米側から協定に疑問を出されることはないと日本は楽観していますが、米側で協定見直し論が浮上する可能性はあります。
 
 問題は「プルトニウムに核兵器以外の利用目的があるか」ということです。
 唯一それに適うのは、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工して再利用することですが、それによるプルトニウム消費量は原発1基当たり年04トン程度なので話になりません。既設の原子炉に流用して安全なのかという問題も未解決です。

 使用済み核燃料再処理の中核を担うとされていた高速増殖原型炉「もんじゅ」は、技術的限界で廃炉になりました。そもそも仮に当初の目的通りに稼働したとしても、プルトニウムが増殖されるので利用(消費)とは言えず、計画自体が矛盾したものでした。

 核燃料サイクルは経済的合理性が皆無であるだけでなく、プルトニウムを消費するという効能もなく、逆に正規に稼働すれば年間最大8トンのプルトニウムが新たに生じます。
 多額の費用が掛かり、無用で環境を汚すだけの再処理工場システムは全廃するか、少なくともプルトニウム抽出の工程については即刻廃止すべきです。
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日米原子力協定 自動延長確定へ 日米、見直し議論せず
毎日新聞 2018年1月16
 日本の核燃料サイクル事業を認める日米原子力協定は16日、自動延長が確定する。原子力政策の現状維持で日米の思惑が一致した結果だが、日本の核燃料サイクル政策は事実上破綻。日本政府の「利用目的のないプルトニウムは持たない」との国際公約は説得力を欠いているのが実情だ。

日米ともに原発輸出推進の立場 双方の思惑が一致
 日米両政府には、現行の原子力政策を維持するため、日米原子力協定の具体的な見直しは選択肢になかった。日本は核燃料サイクル政策を維持しているうえ、日米ともに原発輸出を推進する立場だ。双方の思惑が一致し、自動延長の方針が固まった。
(中 略)
 河野氏は今月11日放送のBS11の番組で、協定に関連して「プルトニウムの利用を国際社会に胸を張って説明できるような状況をつくる必要、義務がある」と懸念を示したものの、「協定は日本の原子力の平和利用の基盤になっている」とも述べ、見直しには言及しなかった。
(中 略)
日本の核燃料サイクル政策、実態は破綻
 日米原子力協定で認められている日本の核燃料サイクル政策は原子力政策の根幹をなしてきたが、実態は破綻している。

 核燃料サイクルは、原発の使用済み核燃料から「再処理」と呼ばれる化学処理によってウランとプルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工して再利用する。政府は当初、高速増殖炉でプルトニウムを増やしながら使う「増殖サイクル」を目指したが、中核を担う高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)はトラブル続きで2016年12月に廃炉が決まった。政府はプルトニウムを燃やして消費する「高速炉」をフランスなどと開発するとしているが、具体的なめどは立っていない。

 現在、国内でプルトニウムが利用可能な手段は、既存の原発でMOX燃料を使う「プルサーマル発電」のみ。電力大手でつくる電気事業連合会は09年、15年度までに全国の原発16~18基にプルサーマル発電を導入する計画を発表した。だが福島第1原発事故後の規制強化で稼働は関西電力高浜原発3、4号機(同県高浜町)の2基にとどまっており、電事連は16年に「計画を改訂・公表できる状況にはない」とプルサーマル発電の行き詰まりを認めた。

 プルトニウムは核兵器に転用できるため、政府は「利用目的のない分は所有しない」ことを国際公約にしている。日本が保有するプルトニウムは16年末現在、国内外で約47トンあるが、プルサーマル発電によるプルトニウム消費量は原発1基当たり年0・4トン程度に過ぎない。さらに年最大8トンのプルトニウムを生み出す能力を持つ日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が21年度上期に完成予定でもあり、日本がプルトニウムを消費できるめどは立っていない。

 核不拡散問題に詳しい阿部信泰・元原子力委員は「核燃料サイクルは実態としては動いていない。このままでは、使用目的のないプルトニウムは持たないという日本への国際社会の信頼は低下する。少なくとも再処理工場の稼働規模は小さくする必要がある」との懸念を示した。【岡田英】