福島第1原発:東電の和解対応は不誠実 文科省が改善要請
毎日新聞 2013年03月05日
文部科学省は5日、福島第1原発事故の被害者との和解交渉で「不誠実な対応が後を絶たない」として、東京電力に「被害者の迅速な救済という損害賠償の原点に立ち、誠意ある対応の徹底を改めて要請する」と、文書で改善を求めた。
文科省によると、和解を仲介する政府の「原子力損害賠償紛争解決センター」が12年に受けた電話の問い合わせ1万2364件のうち、33%は東電の対応への不満や要望だった。「文科省の審査会が賠償基準を示した中間指針に具体例の記載のない損害について、賠償に応じてくれない」との苦情が多いという。また、住民がセンターに仲介を申し立てると、その他の内容に争いがないはずの交渉も拒否する例が複数あったという。センターはそのつど東電に是正を求めているという。
東電は取材に対し、「賠償の迅速化や円滑化、きめ細やかな対応など賠償労務全体の品質を向上させていきたい」としている。
一方、センターには4日現在で計5659件の仲介申し立てがあり、うち和解成立は31%。審理に平均約8カ月間かかり、継続案件は55%の3088件に上る。その他は交渉打ち切りや取り下げなど。センターは「人員拡充などで平均4〜5カ月の審理を目指したい」としている。 【阿部周一】
原発「国がやらせた」=麻生財務相が異例発言-諮問会議
時事通信 2013年3月5日
内閣府が5日公表した2月28日の経済財政諮問会議の議事要旨で、麻生太郎副総理兼財務相がエネルギー政策に関連して「間違いなく電力会社に対して、国として原発政策をやらせた」と述べていたことが明らかになった。原発推進に対する政府の責任を真っ向から認める閣僚発言は異例だ。
麻生財務相はまた、東京電力福島第1原発事故後の原発運転停止を踏まえ、「こうなったらいきなり『あなたたち(電力会社)の責任』みたいな顔をすると、『大丈夫だと言ったのは国ではないか』ということになる」と電力会社の本音も代弁。
東京電力福島第一原発 現場を行く
NHK
NEWS web 2013年3月5日
おととしの原発事故からまもなく2年になるのを前に、NHKは、東京電力福島第一原発で単独の現場取材をしました。
事故現場は、今なお、放射線量が高く、津波や爆発の被害も多くが当時のまま残されていて、40年かかるとされる廃炉に向けた厳しい道のりが改めて浮き彫りになりました。
福島第一原発の現場取材は、これまで、報道機関が共同で行ってきましたが、今回の単独取材は、NHKの働きかけによって実現したものです。
5日は午前10時ごろに福島第一原発の敷地に入り、まず、水素爆発を起こした原子炉建屋がカバーで覆われている1号機の周辺を訪れ、これまで放射線量が高いためにバスの車内からしか取材できなかった場所で、放射線の管理を厳重に行うことを条件に、報道機関として初めておよそ10分間歩いて取材しました。
1号機の周辺では、メルトダウンで溶け落ちた核燃料を冷やすために事故当時、原子炉への注水で使われた消防車のホースや、津波で流され壊れた大型のタンクが、そのまま放置されています。
現場で放射線量を測定したところ、1時間当たり100マイクロシーベルトと、一般人の1年間の限度とされる量に僅か10時間で達する値でした。
作業が行われている現場には、地面に沈着した放射性物質による放射線から作業員を守るために、地面の至る所に厚さおよそ4センチの鉄板が敷き詰められていました。取材のなかで放射線量が最も高かったのは、事故で最も多くの放射性物質を放出したとみられる2号機と3号機の前をバスで通りすぎたときで、1時間当たり300マイクロシーベルトを超えていました。
水素爆発した4号機では、廃炉に向けた最初の工程として、ことし11月に計画されている使用済み核燃料プールからの燃料の取り出しに向けて、多くの作業員が鉄骨製の巨大なカバーの建設に当たっていました。
また今回の取材では、汚染水の浄化設備を動かす制御室に初めてカメラが入り、長時間の滞在ができるよう空調システムが整っているなかで、マスクで顔を覆っていない作業員が、モニター画面に映し出されるさまざまな設備の運転状況を確認していました。
敷地内には、汚染水をためるためのおよそ930のタンクが設置されていて、高さ11メートルの水1000トンをためる巨大なタンクは、僅か2日半でいっぱいになる勢いで汚染水が増えているということです。
事故からまもなく2年を迎える福島第一原発では、収束作業のための新たな設備や施設が建設される一方で、放射線量が高い現場や津波や爆発の被害が今もあちこちに残されていて、40年かかるとされる廃炉に向けた厳しい道のりが改めて浮き彫りになりました。
最初は4号機の燃料取り出し
40年かかるとされる、世界でも過去に例のない福島第一原発の廃炉の作業では、メルトダウンによって溶け落ちた核燃料を、冷却しながら外に取り出したあと、原子炉建屋を解体する計画です。
その最初の工程となるのが、ことし11月から始まる予定の、4号機にある使用済み核燃料のプールからの燃料の取り出しです。
政府と東京電力が工程表にまとめた福島第一原発の廃炉の作業では、メルトダウンによって原子炉内や格納容器に溶け落ちた1号機から3号機の燃料を、循環させる水で冷却しながら、20年から25年後までに外に取り出したあと、最長で40年かけて原子炉建屋を解体する計画です。
この廃炉に向けた最初の重要な工程として、ことし計画されているのが、4号機にある使用済み核燃料プールに保管された燃料の取り出しです。
4号機は、水素爆発で使用済み燃料プールがある原子炉建屋が大きく壊れているうえ、福島第一原発で最も多い1533体の燃料が保管されていることから、東京電力は、できるだけ速やかに燃料を取り出す考えです。
このため東京電力は、燃料の取り出しを1か月早めてことし11月中旬から始め、取り出しを終える時期は1年早めて来年12月になるとしています。
また燃料の取り出しに向けて、壊れた原子炉建屋を高さ53メートルのカバーで覆ったうえで、燃料をつり上げるクレーンを設置する予定で、ことし1月からカバーの建設作業が続けられています。
汚染水との戦いが喫緊の課題
福島第一原発では、増え続ける汚染水を保管するためのタンクの置き場が2年半後にはなくなることから、汚染水との戦いが喫緊の課題となっています。
福島第一原発の原子炉建屋やタービン建屋などの地下には、放射性物質に汚染された水が、およそ10万トンたまっていて、建屋の外から地下水が流れ込んでいる影響で、1日に400トンのペースで増え続けています。
汚染水は、放射性物質のセシウムを取り除いたあと、一部は原子炉の冷却に使われますが、海や大気中などの環境に出さないようするため、その大部分は敷地内に設置したタンクにためて管理しています。
タンクは、原子炉が立ち並ぶ海沿いから山側に進んだ場所に並べられていて、大きいもので、高さ11メートル、直径12メートルもあります。
現在設置されているタンクはおよそ930台で、その容量をすべて合わせると、およそ32万トンに上り、このうちおよそ75%が汚染水でいっぱいになっています。
東京電力は、今後2年間かけてタンクを、70万トンにまで増やすことができるとしていますが、タンクの置き場が2年半後にはなくなることから、汚染水との戦いが喫緊の課題となっています。
また東京電力は、汚染水から、これまで取り除けなかった放射性ストロンチウムなど62種類の放射性物質を除去する装置を設置し、近く、汚染水を使った試験を始める計画で、タンクから漏れ出た場合でも環境への影響を抑えたいとしています。
しかし、この装置では、「トリチウム」という放射性物質を取り除けないことから、汚染水の問題を抜本的に解決する見通しは立っていません。
東京電力は、汚染水の増加の原因となっている地下水を井戸を掘ってくみ上げて建屋への流入を抑える対策を進めることにしています。
東電常務「汚染水処理の将来まだ分からない」
東京電力の小森明生常務は、「汚染水の処理を、将来、どうするのか、まだ分からないが社会にしっかりと状況を説明し解決策を探していきたい。
事故から2年がたつが、事故を起こした責任を胸に刻み1歩ずつでも廃炉に向けた作業を進めていきたい。
今後、使用済み核燃料や溶け落ちた燃料を取り出すとなると、もっと高い放射線量での作業になるので、遠隔操作の装置やロボットなどを開発し課題を解決していく必要がある」と話していました。
3.4
廃炉への道、阻む高線量=事故から2年、福島第1原発 【震災2年】
時事通信 2013年3月4日
史上最悪レベルの原子力災害から2年。東京電力福島第1原発では、40年後の廃炉に向けた作業が進められている。2011年12月の「収束宣言」後も、メルトダウン(炉心溶融)した3基の原子炉から放射性物質の放出は続き、建屋の至る所に残る高い放射線量が作業を阻んでいる。
東電によると、事故の復旧や廃炉に関わった作業員は約2万5000人。作業中に倒れるなどして6人が死亡した。昨年4月以降、累積被ばく量が新たに50ミリシーベルトを超えた作業員はおらず環境改善が進んでいるが、7月には一部で線量計に鉛カバーが装着されていた問題が発覚。被ばく管理の徹底に不安を残した。
喫緊の課題は、増え続ける汚染水への対処だ。東電は既に40万トン近い保管用タンクを設置したが、増設を検討。流入する地下水の低減策や、セシウム以外の放射性物質を減らす新型装置にめどが立つ一方、処理後も残る三重水素(トリチウム)を含んだ水の海洋放出には漁業関係者らの強い反発が予想され、「水との戦い」は続きそうだ。
1~3号機原子炉の冷却はほぼ順調で、炉内の温度は20~30度で安定している。ただ、水素爆発防止用の窒素封入装置が停止したり、原子炉への注水量が突然減少したりするトラブルが頻発。冷却には今も仮設設備が使われており、信頼性の向上が課題だ。
廃炉に向けた作業では、4号機プールからの燃料取り出しを年内に予定。昨年7月には未使用燃料の試験取り出しに成功した。一方、放射線量が高い1~3号機は内部の状況を十分調査できず、ロボットを使った遠隔操作技術の開発が必要。政府は今年1月、最長40年とされる廃炉計画の前倒しを検討し始めたが、大幅な短縮は難しそうだ。
原子力特別委 開催できず 規制委監視 進まぬまま
東京新聞 2013年3月4日
一月下旬に国会に新設された衆院の原子力問題調査特別委員会が、審議範囲をめぐる与野党の対立から、一度も開かれていない。特別委が監視する原子力規制委は事務局幹部が電力事業者に内部情報を漏らす不祥事が発覚。審議が必要な課題は多いのに、入り口で停滞している。 (城島建治、清水俊介)
東京電力福島第一原発事故に関する国会の事故調査委員会は昨年七月、規制委を監視する常設委員会を国会に設けるよう提言。特別委が一月二十八日に設置された。
特別委の役割について、自民党側は事故調の提言が規制委の監視となっていることを踏まえ、審議は規制委関連に限定すべきだと主張。閣僚を委員会に呼ぶのは原則として全会一致の時だけにしようとしている。
民主党側は、衆院が特別委を設置した目的として「原子力に関する諸問題」を挙げているため政府の原子力政策も審議すると主張。「原発再稼働は規制委が安全性を確認した上で、政府が再稼働の是非を判断する。政府の見解を問う必要もある」として、閣僚の出席を限定的にすることに反対している。
原子力、原発問題に関しては、規制委の事務局ナンバー3の名雪哲夫元審議官が、敦賀原発(福井県)の活断層問題で揺れる日本原子力発電(原電)幹部に対し、公表前の評価報告書の草案を渡したことが二月初めに明らかになった。
規制委は詳細な事実調査と公表を渋り、原子力行政の信頼失墜に拍車をかけた。
東京電力が昨年、福島第一原発1号機の建屋内を調べようとした国会事故調査委員会に「(建屋内は)真っ暗で危険」などと虚偽の説明をして調査を断念させた問題も二月に発覚した。
「原発いらない」 5000人 名古屋
しんぶん赤旗 2013年3月4日
東日本大震災と原発事故から2年を前に「さよなら原発イン愛知 明日につなげる大集会」(同実行委員会主催)が3日、名古屋市中区で開かれ、約5000人が参加し、集会後、繁華街を2コースに分かれてパレードしました。
集会では、詩人のアーサー・ビナードさん、俳優の山本太郎さんが訴え、画家の増山麗奈さんが“桃色ゲリラ”の衣装で絵を描くパフォーマンスを披露しました。
会場には「市民が決めるエネルギー」「震災と原発・心&心交流」など6ブースがつくられました。エネルギーのブースには、日本共産党愛知県委員会も出展。参加した井上さとし参院議員と、もとむら伸子参院選挙区予定候補が会場内をあいさつして回りました。団結広場では「名古屋・革新市政の会」の柴田たみお市長予定候補があいさつしました。
2歳の長男を連れて参加した女性(33)=日進市=は「安倍首相が原発推進なのは怖い。もっと活動していかないと」と話しました。
3.3
「耐震指針ない原発 無条件に廃炉」元国会事故調の田中氏
原研労組が講演と討論
東京新聞 2013年3月3日
原発について考える日本原子力研究開発機構の労働組合(岩井孝委員長)の講演と討論会が二日、東海村の真崎コミュニティセンターで開かれた。国会事故調査委員会元委員で元原子炉設計技術者の田中三彦氏、元格納容器設計技術者の後藤政志氏が講演、東京電力福島第一原発事故で浮かんだ原発の問題点をあぶり出した。
田中氏は、二〇〇六年に新耐震設計審査指針ができた後も、古い原発に適用されてこなかった事実を問題視。福島第一原発事故が、地震による機器の破損に起因していた可能性を示し「耐震指針のない一九六〇~八〇年代の原発は無条件に廃炉」と結論付けた。また、国が東北電力女川原発と日本原子力発電東海第二原発を被災原発と認めず、再稼働させる可能性を指摘。「原発を選択することはどういうことなのか、もう一度考えなければならない」と訴えた。
後藤氏は、シビアアクシデント(過酷事故)で水素爆発を防ぐため、放射性物質を外部に放出するベントを「格納容器の自殺」と断言。原子力規制委員会の新安全基準骨子案については「人の命を奪い、国を滅ぼす最悪の結果でなく、事故の発生確率で(安全性を)評価しようとしている」と批判した。(林容史)
原発防災指針 対策の実効性が問われる
信濃毎日新聞 2013年3月3日
原子力規制委員会が原子力災害対策指針を改定した。甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の家庭への事前配布などを加えている。
細部の詰めはこれからだ。災害への備えは、原発を再稼働させていいか判断する材料の一つになる。関係自治体の地域防災計画を含め、実効性を持たせられるかが問われる。
指針は、原発で事故があった場合に放射線による住民への影響を最小限にするため、自治体があらかじめ取る対策や避難方法を定めるものだ。規制委が昨年10月に大枠を決め、積み残した課題について検討を続けている。
ヨウ素剤は原発の半径5キロ圏内の家庭に配るとした。住民は、原子炉の冷却機能が失われたりしたら、すぐに避難してヨウ素剤を服用する。5キロ圏外について毎時500マイクロシーベルトの放射線量が測定されればすぐ避難することも決めた。
なお課題は多い。ヨウ素剤を配る手順や服用の指示などについては今後検討する。福島の事故では独自の判断でヨウ素剤を配った町に対し、福島県が「国の指示がない」として回収を指示した経緯がある。万が一のとき、混乱しないよう詰めなくてはならない。
改定に先立つ意見公募では、3千件余が寄せられた。「避難基準の数値が高過ぎる」「ヨウ素剤をもっと広く配るべきだ」といった意見が多かったものの、指針への反映は文言の修正程度にとどめている。国民の疑問や不安に今後も丁寧に応える必要がある。
関係自治体は、指針を基に3月18日までに地域防災計画を作ることになっている。改定から3週間弱しかなく、間に合わない自治体も少なからず見込まれる。規制委や政府は期限にこだわらず、柔軟に対応すべきだ。
福島の事故を受け、指針では災害に備える「重点区域」が従来の原発の半径10キロ圏から30キロ圏に広げられた。今回、新たに計画を作る所も多い。原発によっては県境をまたいで避難する態勢も整えないといけない。広域的な調整など国の適切な支援が求められる。
指針や計画を形だけ整えても意味はない。規制委の田中俊一委員長は「計画を作って訓練し、さらに改善を図ることの繰り返しが肝心だ」と述べている。住民への周知を含め、時間をかけて実効性を高める姿勢も大事になる。
安倍晋三首相は施政方針演説で安全確認を前提に原発を再稼働させる考えを示した。施設の安全性に加え、災害対策の徹底も条件になることを政府に念押ししたい。
3.2
井戸12本の掘削完了 増え続ける汚染水対策
東京新聞 2013年3月2日
今週(2月23日~3月1日)、東京電力福島第一原発の専用港内でとったアイナメから、魚類では過去最大値となる1キログラム当たり51万ベクレルの放射性セシウムが検出された。
国が定める一般食品の基準値の5100倍に当たる。東電は港外に魚が出ないよう、堤防の間に網を設置しているほか、港内の魚の捕獲を進めている。
福島第一では増え続ける汚染水の問題が深刻だが、水量を増やす原因になっている建屋地下に流入する地下水を減らすための井戸12本の掘削工事が終わった。井戸から地下水をくみ出し、汚染がなければ、海に放出する計画。
一方、事故収束に当たってきた作業員約2万1千人の被ばく線量の記録が、データを一元管理する公益財団法人「放射線影響協会」に提出されていないことが発覚した。
2011年3月の事故後の10年度分と11年度分が未提出のままで、約2万1千人のうち約1万7千人は下請け会社の作業員だった。東電は「事故後の混乱で、紙で管理していた記録の電子化に手間取った」と説明。今月中に提出の予定。
福島の山林の生物、セシウム蓄積 カエル6700ベクレル
東京新聞 2013年3月2日
東京電力福島第1原発から西に約40キロ離れた福島県二本松市の山林で、カエルから1キログラム当たり最高6700ベクレル超のセシウム137が検出されるなど、食物連鎖の上位の生き物に高濃度の放射性物質が蓄積する傾向があることが2日、東京農工大と北海道大の研究チームの調査で分かった。
境優・農工大特任助教は「地面に落ちている葉などの濃度に応じて生物の濃度が高くなるほか、食物連鎖で濃縮している可能性がある」と指摘。陸の生物は、狩猟対象の鳥獣など一部を除きデータが少なく、調査結果は放射性物質が生物にどう蓄積するかを解明する手がかりになる。 (共同)
3.1
【社説】 首相施政方針 再稼働論じる時期なのか
新潟日報 2013年3月1日
安倍カラーが鮮明に打ち出されたといえよう。総理の口から踏み込んだ言葉が出た。 第2次内閣発足後、初の施政方針演説で安倍晋三首相は、安全が確認されたことを前提にした上で「原発は再稼働します」と明言した。
産業空洞化に直面し、デフレからの脱却に向けて責任あるエネルギー政策を構築する-。その一環としての再稼働という論理立てだ。
東京電力福島第1原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会の下で、「妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げる」と、首相は熱弁していた。
原発の安全神話が崩壊し、新たな安全文化をどう創るかは議論百出で、有効な手段は見いだせていない。
経済政策の「アベノミクス」が市場で評価されている。内閣支持率も高く、野党に勢いが見られない。 今を好機と捉えて、以前の自民党政権時代の原発推進へとかじを切ったのではとの疑問が拭えない。
演説の中で、首相は東日本大震災の被災地を何度も訪れ、避難者の声に耳を澄ませたと説明した。
原発事故に苦しんでいる福島の子供たちは、屋外で十分に遊べないことまで触れたはずである。
急ぐべきは、首相が自ら挙げた除染、風評被害の防止、早期帰還である。これは論をまたない。
ただ、その先にあるとした「復興」「希望」のための経済成長に欠かせないのが、「アベノミクス」であり、ひいては原発再稼働という考え方のようにも読めた。 福島原発事故の検証ですら、道半ばなのである。津波が原因なのか、地震の揺れが影響したのか。意見が分かれている。
安全性を審査する規制委の現地調査で、活断層の可能性が高いと判断された原発もある。
演説で述べた再生可能エネルギーの最大限の導入と、原発依存度の低減の方に政策の力点を置く姿勢こそが、何より望まれよう。
総理の言葉は重い。今が再稼働を論じる時期なのか、もう一度熟考するべきである。 重要課題である環太平洋連携協定(TPP)は、政府の責任で交渉参加について判断するとした。
自民党も参加を事実上容認する方向だ。国内に賛否がある中、首相は参加を表明することになろう。
災害への備え、国民の安全を守るため国土強靱(きょうじん)化が「焦眉の急」と力説したが、公共事業優先の旧来型政治に戻らないか懸念される。
外交・安全保障では、日米同盟について「不断の強化が必要」と表現し、先のオバマ大統領との首脳会談での成果を強調した。
日中関係では、レーダー照射の問題で中国に自制を求める一方で、「私の対話のドアは、常にオープンです」と語った。このバランスは持ち続けることが肝要だろう。
夏の参院選まで「安全運転」を心掛けるというなら、ただ突き進むのではなく、他党の主張や国民の多様な意見に配慮した慎重なハンドルさばきも首相には求めたい。
福島第一原発の男性作業員 体調不良で死亡
NHK NEWS web 2013年3月1日
東京電力福島第一原子力発電所の復旧作業に当たっていた50代の男性作業員が、体調不良を訴えて病院に運ばれ、27日夜、死亡しました。
東京電力は、「診断書を確認していないため、男性の死因は公表できない」としています。
東京電力によりますと、今月25日の午前9時すぎ、福島第一原発3号機の原子炉建屋で、カバーを設置する準備作業を行っていた50代の男性作業員が、福島県広野町にある会社の資材置き場で体調不良を訴えて一時心肺停止状態となり、いわき市の病院に運ばれました。
その後、27日午後11時半すぎに、男性が亡くなったと会社から東京電力に連絡があったということです。
この男性は、おととし6月から福島第一原発の復旧作業に当たっていて、これまでの被ばく量は、作業員の通常時の年間限度となっている50ミリシーベルトより低い、25ミリシーベルト余りだということです。
東京電力は、「診断書を確認していないため、男性の死因は公表できない」としています。
福島第一原発では事故のあと、これまでに男性作業員5人が心筋梗塞などで亡くなっています。
手抜き除染「断ればクビになるかと」 作業員ら会見
朝日新聞 2013年3月1日
福島第一原発周辺の除染で働いた40~50代の男性3人が28日、国会内で記者会見し、「手抜き除染」を指示された状況を語った。作業員が公の場で「手抜き」を告白するのは初めてだ。
3人は昨年11月、福島県田村市の山林の川沿いの斜面で下請け会社の班長から指示され、本来は回収しなければならない枝や葉を川に流した。40代男性は「『いいのかな』と思いながら枝葉を川に落としました。断るとクビになるかもしれないし。目の前で班長自身もやっていました」と証言。50代男性は「指示を受け、まずいんじゃないか、と同僚と顔を見合わせました。工期が迫り、早くやらないとならないから回収せずに流せ、ということです」と語った。
環境省はこの場所での手抜き除染について「断定するには至らなかった」と結論を避けている。別の40代男性は「環境省は自分に1時間以上も聞き取りをしたのに、結局、自分の証言を認めていない」と話した。
増え続ける汚染水、福島第1原発 事故2年、溶融燃料手つかず
東京新聞 2013年3月1日
東京電力は1日、福島第1原発事故発生から2年を前に廃炉に向けた作業現場の状況を報道陣に公開した。放射性物質を含む汚染水は増え続け、敷地内には貯蔵タンクが立ち並ぶ。溶けた燃料をどうやって取り出すかはまだ検討段階で、長期的取り組みを着実に進められるかが課題だ。
11月には4号機の原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールから燃料の搬出を始める予定で、クレーンを備えた新たな設備の建設が建屋のそばで進む。
一方、保管中の汚染水は26万立方メートル。貯蔵容量はあと6万立方メートルしかない。東電は2015年には70万立方メートル分のタンクが必要として、増設を進める。 (共同)
コクチバスから4千ベクレル超 環境省、福島の生物調査
東京新聞 2013年3月1日
環境省は1日、福島県の河川や湖、海域で昨年夏に採取した魚類や甲殻類、昆虫に含まれる放射性セシウム濃度の測定結果を公表した。真野ダム(飯舘村)のコクチバスから、国が定める一般食品の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を大幅に超える1キログラム当たり4300ベクレルを検出した。
ほかに真野ダムのナマズで1980ベクレル、イワナで1590ベクレル、新田川(南相馬市)のニゴイで1620ベクレルなど。海域では相馬市沖のイソガニで300ベクレルを検出した。
調査は昨冬、昨春に続き3回目。 (共同)