2013年3月9日土曜日

原発・放射能ニュース 13.3.6~10


3.10 

耐久性より増設優先 福島第一 急造タンク群 3年後破綻
東京新聞 2013310
 東京電力福島第一原発で、高濃度汚染水を処理した後の水をためるタンクが、増設のスピードを優先して溶接しなかったため耐久性が劣り、三年後には続々と大改修を迫られることが分かった。敷地内にタンクを増設する用地がなくなる時期とも重なる。処理水には除去が極めて難しい放射性物質も含まれ、このままでは、またも汚染水の海洋放出という事態を招きかねない。 (小野沢健太)
 処理水タンクは、帯状の鋼材をボルトでつなぎ合わせて円筒形にし、内側に止水材を施し、鋼材のつなぎ目はゴム製のパッキンを挟んで締め付ける構造。一千トン級の大容量タンクだが、一週間ほどで組み立てられる。溶接をして頑丈に造るより短期間で済むため、急増する汚染水処理をしのぐためには好都合だった。
 しかし、東電が「仮設タンク」と呼んでいたことが示す通り、長期の使用を想定していなかった。当初は2011年度中におおむね汚染水処理は終わる予定だったが、現実にはタービン建屋地下に、今も一日400トンの地下水が入り込み、原子炉から漏れ出す高濃度汚染水と混ざり、水量がどんどん増えている。
 処理した汚染水の一部は原子炉を冷やす水として再利用するが、使い切れない水は、次々とタンクを造ってためるしかない。処理水はセシウムこそ大幅に除去されているが、他の放射性物質が残る汚染水。漏れがないか、作業員が定期的にタンク群を見回ってボルトを締め直すが、無用の被ばくを招いているとも言える。
 タンクのパッキンなどの耐用年数は5年ほどで、16年春ごろから改修が必要。そのころには、現時点で計画中のタンク用地も使い果たしている見通しで、新たな用地確保とタンク増設、改修を同時並行で進めなければいけなくなる。
 東電によると、すでにタンクは1000基近くあり、このうち約270基の改修が必要となる。
 準備中の新たな除染装置が稼働すれば、約60種類の放射性物質は除去されるが、放射性トリチウムは残り、海への放出はできない。東電は一昨年4月、意図的に汚染水を海へ放出し、国際的な批判を浴びた。
 東電の担当者は「当初は急いでタンクを用意する必要があり、ボルトで組み上げるタンクを選んだ」と説明。最近になって東電は溶接したタンクを導入し始めたが、増える処理水に対応するので手いっぱいの状況だ。
 <放射性トリチウム> 原子炉内で発生する放射性物質の一つで、三重水素とも呼ばれる。水と非常に似た性質のため、現在、大量に処理する技術はない。福島第一にたまる処理水には、排出が認められる法定限度(1立方センチ当たり60ベクレル)の約38倍の約2300ベクレルのトリチウムが含まれている。新しい除染装置で処理してもトリチウムはそのまま残る。
 

3.9  


日本の対応の遅れを懸念=危険性高い原発は閉鎖を-
シュラーズ・ベルリン自由大教授
時事通信 201339
 【ベルリン時事】 東京電力福島第1原発の事故を受け、ドイツは2022年までの脱原発を決めた。一方、日本は30年代の原発稼働ゼロを目指すとした民主党政権の方針の見直しに入る。ドイツ政府に脱原発を提言した諮問機関の委員で、たびたび訪日しているベルリン自由大学のミランダ・シュラーズ教授(環境政策)は「事故から2年になるのに日本で原子力エネルギーの将来が決まらないのは驚きだ」と対応の遅れを懸念する。
 教授は、経済産業省や電力会社は原発の再稼働を目指しているが、「大多数の国民は反対している」と指摘。「日本はこの2年間、原発依存度を大幅に減らしながら何とかやってきた。50基の原発すべてを再稼働させる必要はない」と断言する。旧式のほか、活断層や人口密集地、大規模地震の発生予測地域に近い原発の恒久的閉鎖を訴え、「減原発」は節電や再生可能エネルギー開発の動機付けにもなると強調した。
 一方で、「全国規模の節電意識が電力需要の大幅な減少につながった」と述べ、事故をきっかけとした日本人の意識改革を評価。「原子力エネルギーについて、賛成派と反対派が自由に議論するようになった」と変化を感じている。
 ドイツの総電力に占める再生可能エネルギーの割合は、2000年の6%から12年は22%まで上昇した。教授は「日本が同様にできない理由はない」と力説。「日本は風力、太陽光、地熱、バイオマスの資源が豊富で、大きな可能性を秘めている」と語り、エネルギー転換を急ぐよう呼び掛けた。風力や太陽光の発電施設、送電網の建設には莫大(ばくだい)な費用がかかる。「エネルギー転換は安くはない」と認めつつ、「将来への投資。新技術開発の機会でもある」と訴えた。


福井の原発事故で汚染なら 琵琶湖代替水源なし
東京新聞 201339
 福井県の原発事故で琵琶湖(滋賀県)が放射性物質に汚染された場合、近畿地方の住民の四分の三が飲み水を確保するのが困難になることが、関西広域連合の調査で分かった。広域連合の担当者は「より広域な水の供給計画を立てていく必要がある」と話している。
 調査は、琵琶湖・淀川水系以外で、福井の原発から一定の距離があり、原発事故時にも汚染を免れるとみられる水源が、どれだけあるかを調べた。
 これらの水源を飲み水や生活用水として利用している人は、兵庫県の西部と北部、和歌山県全域に限られた。人口にして計三百五十万人程度で、琵琶湖・淀川水系で暮らす千四百五十万人の、四分の一にすぎなかった。
 これらの水源から遠隔地に水を運ぶのは手間がかかる上、量も乏しい。広域連合広域防災局の担当者は「琵琶湖水系の水がすべて使えなくなれば、ほかの水源では“焼け石に水”程度の量しか確保できない」と話した。
 広域連合は今後、近接する中部や中国地方の自治体などと水の供給体制を話し合う方針で、対応策を二〇一三年度以降の広域連合の防災計画に盛り込む。

◆長期影響の可能性
 京都大防災研究所の山敷庸亮准教授(水環境工学)の話 福井県の原発事故で琵琶湖が汚染されれば、高濃度の放射性物質が、土砂に混じって大阪湾まで流れ、影響が長期化する可能性がある。安定した水量で近畿地方を支えてきた琵琶湖・淀川水系の水が使えなくなれば近隣の地域からも賄うことは難しく、国家的な危機になる。

3.8 

日本原電が安全新基準工事先送り 再稼働遠のく、合理化強化
東京新聞 201338
 敦賀原発を抱える日本原子力発電(東京)が、原発の新安全基準への対応工事を最小限に抑え、大部分を2014年度以降に先送りすることが8日、分かった。保有原発の停止で先行きに不透明感が増しており、当面の資金を確保する。燃料のウラン売却や人件費削減など一段の合理化策も新たに実施する。
 原子力規制委員会が福井県の敦賀原発2号機直下に活断層の存在を指摘。新基準対応の工事を進めても、再稼働が認められない可能性がある。金融機関に自助努力を示し、融資継続に理解を求める。
 日本原電は東京電力福島第1原発事故後、再稼働へ準備してきたが、活断層問題の発覚で状況が一変した。 (共同) 

【社説】 テロとミサイル攻撃―脱原発こそ最良の防御だ
朝日新聞社説 2013年3月8日
 原発テロを想定した訓練を請け負う会社が米国にある。
 レーザー銃で「武装」した模擬部隊を編成し、実際に原発に突入する。迎え撃つのはやはりレーザー銃を持つ発電所の警備隊。レーザーが当たれば相手は倒れる想定だ。テロリストに原発が占拠されるか、警備隊が勝利して安全を守りきるか。
 米原子力規制委員会(NRC)が最低3年に1回、原発で行う「フォース・オン・フォース」という訓練だ。
 演習後、NRCは徹底的に発電所の成績を評価する。
 2001年9月11日の同時多発テロ以来、米国では原発へのテロを警戒し、全電源喪失に備えた機材の追加と訓練の強化を104基の原発に義務付けた。
 今、それでもテロ対策として十分ではないという声がある。福島第一原発の事故が敵に弱点をさらけ出したからだ。
 バックアップ機能も破壊し水と電気を遮断すればテロリストは福島の危機を再現できる。
 使用済み核燃料の貯蔵プールが原子炉格納容器の外にある原発は、安全確保が不十分である。米NGO「憂慮する科学者同盟」の上級研究員、エドウィン・ライマン氏は福島が示したアキレス腱(けん)をそう指摘する。

■次の脅威への備え
 米国の原発は、脅威の大きさに応じて設計基準を見直す「DBT」(設計基礎脅威)という考え方をとる。
 テロや事故で原発の弱点が明らかになれば脅威のレベルはあがり、基準が修正される。福島の事故の後、NRCは改善策の導入をすすめている。
 サイバー攻撃への警戒も高まる。システムに侵入され、電源系統の遠隔操作によって冷却機能がまひする恐れもある。
 9・11以後、施設の改善に業界全体で12億ドルをかけたという米原子力エネルギー協会(NEI)は「世界貿易センター(WTC)に比べて核施設は小さく、飛行機によるテロ攻撃は困難だ。サイバー対策はネットを外部から孤立させれば心配ない」と説明する。
 しかしサイバーテロに詳しい米科学者連盟のチャールズ・ファーガソン会長は「USBメモリーを持ち込めば、システムをウイルス感染させることはできる。相手は表も裏もある人間なのだから」と警鐘を鳴らす。
 高まる脅威にどこまで対策を打つか。国際テロの再発防止に大国の威信をかける米国ですら、見えない敵への対処法は暗中模索である。

■ジレンマの中の日本
 2月、日本の原子力規制委員会の緊急事態対策監がNRCを訪ねた。7月に策定する原発の新安全基準の骨子を説明し、意見を求めるためだ。
 新基準の柱の一つがテロ対策だ。航空機激突で全電源が喪失する。その時に備え、原子炉を冷却するため電源設備を分散して配置する。100メートル以上離れた所に第2制御室も必要――。
 これらの過酷事故対策を、今までのように電力会社まかせにせず、法律で義務化する。
 日本はすでに国際原子力機関(IAEA)の核物質防護勧告に基づき、立ち入り制限区域の設定や重要施設周辺の柵、カメラなどの設置を進めてきた。
 だが、今月4日に開かれた規制委の核セキュリティーに関する検討会の初会合では、原発で働く作業員の身元も精査されていない実態が報告された。
 日本は他国から核セキュリティー後進国とも指摘される現状を、まず認識する必要がある。
 他方で、民間警備員も武装する米国方式をそのまま導入するのは無理がある。では、どんな危機対応が最適なのか。ジレンマの中にある。

■核燃料は特殊容器に
 「ミサイルで日本の原発を攻撃すれば、広島型原爆の320倍の爆発が起こる」。北朝鮮の朝鮮労働党幹部がこう講演したと、韓国のネットメディアが昨秋、報じた。
 真偽は定かではない。だが現実に日本海沿岸のものを含めて多くの原発が、北朝鮮の中距離弾道ミサイルの射程内に入る。
 2007年、イスラエル空軍の戦闘爆撃機がシリアに侵入、東部の核施設を空爆したとされる。原発攻撃は、あり得ない話と切り捨てられない。
 国内の原発などには1万数千トンの使用済み核燃料がある。原発を再稼働すれば、新たに使用済み核燃料が出てくる。
 どうすべきなのか。100%の迎撃率を望めないミサイル防衛に命運はあずけられない。テロ対策を無限に拡大するわけにもいかない。
 リスクを減らすには、やはり、原発をできるだけ早く減らしていくしかない。同時に、プールにある使用済み核燃料を空冷式の頑丈な容器に移し変えていくことも必要だ。
 安倍政権は、民主政権の「30年代の原発ゼロ」の白紙化を強調する。再稼働にも前向きである。原発攻撃へのリスクをどう考えてのことだろうか。 

敦賀原発「活断層」に異論出ず 専門家、廃炉強まる
東京新聞201338
 日本原子力発電敦賀原発(福井県)の敷地内断層を調べた原子力規制委員会の調査団は8日、「2号機直下に活断層がある可能性が高い」とした報告書案について、現地調査に参加していない専門家から意見を聞いた。大きな異論は出ず、調査団は近く開催する評価会合で報告書をまとめる予定となり、「活断層」の評価は確定的となった。
 原電は断層の追加調査を続行する構えだが、報告書を受けて規制委が活断層との評価を覆すことは考えにくく、原電が2号機の廃炉を迫られる可能性はより高まった。
 8日の会合には、座長の石渡明・日本地質学会会長(東北大教授)と、敦賀原発を担当しない調査団メンバーの計7人が参加。 (共同) 

大震災2年 福島第1原発 増え続ける汚染水
    しんぶん赤旗 201338
 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)が、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9・0)とそれに伴う巨大な津波で史上最悪の原発事故を引き起こして丸2年がたとうとしています。いまだに放射性物質を空気中に放出し続けるなど「収束」とは程遠い状況で、とりわけ放射性物質を含んだ大量の「高濃度放射能汚染水」の問題は深刻です。 「原発」取材班
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「収束」にほど遠く
 福島第1原発の1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋の地下には、溶け落ちた燃料を冷却するために注水している水が、放射性物質を溶かし込みながら流入しています。東電は、高濃度放射能汚染水を処理して放射性セシウムなどを取り除き、再び原子炉に注水していますが、処理した後に出る塩分の濃い水や廃液などがたまり続けています。
 その量、なんと約26万トン。福島第1原発構内に所狭しと並んだ巨大なタンクに貯蔵していますが、原子炉建屋やタービン建屋の地下に1日約400トンの地下水が流れ込んでいるため、増設しても“焼け石に水”状態です。東電は、70万トンまでタンクを増設するとしていますが、福島第1原発の高橋毅所長は2月28日の会見で実際につくれるか明言しませんでした。
 仮に70万トンに増設しても、このまま汚染水の量が増え続ければ、約2年半でいっぱいになります。タンクの耐用年数も5年程度です。東電は建屋地下への地下水流入を減らす目的で、地下水を上流側でくみ上げて海へ流す、地下水バイパスの運転を予定しています。しかし、効果がどの程度かは不明です。
 このままではあふれかねない汚染水をどうするのか―。 

汚染水海洋放出狙う東電
 東電が狙うのが汚染水の「海洋放出」です。東電はたびたび海洋放出をほのめかし、漁業関係者などから批判されると「関係省庁の了解なしに海へ出さない」といいますが、その意図を隠そうとしません。
 処理後の汚染水といっても放射性ストロンチウムをはじめ、さまざまな放射性物質を含んでいます。そのため東電は、処理後の汚染水をさらに「多核種除去装置(アルプス)」で処理する計画を進めています。62種の放射性物質を法令で定める基準値以下にできるとしています。 

“水”の形で含む
 しかし、アルプスが東電の説明どおりの性能だとしてもトリチウムはほとんど取り除けません。トリチウムは水素に3種類ある同位体(原子核を構成する陽子の数は同じで中性子の数が異なるもの)の一つで、放射性物質です。3重水素とも呼ばれます。トリチウムは“水”の形で汚染水に含まれており、トリチウム以外の水素でできた水と区別することがむずかしいからです。
 東電によれば、処理後の汚染水に含まれているトリチウムは1リットル当たり100万~500万ベクレルです。貯蔵されている処理後の汚染水には最大1300兆ベクレルのトリチウムが含まれていることになります。それでも、東電は汚染水の海洋放出に固執しています。
 2月28日に公表した「福島第一原子力発電所でのトリチウムについて」と題した資料には、トリチウムが自然界に大量に存在すること、1ベクレル当たりの被ばく線量は放射性セシウムなどに比べて少ないことなどが書かれています。トリチウムが入っている水を海洋へ放出してもたいした影響はないと言わんばかりです。 

高線量廃棄物に
 高濃度の放射能を含んだ汚染水をめぐってはさらに困難な課題があります。
 アルプスを稼働させても除去可能な62種の放射性物質が、消滅するわけではありません。
 放射性ストロンチウムなど1立方センチ当たり数十万ベクレルを含む汚染水を同施設で処理すると、砂状の吸着材や泥状の液体に濃縮されて移行。23万トンの汚染水(濃縮塩水)を処理した場合、新たに高線量の廃棄物が約2900トン発生します。
 東電はこれらの廃棄物を高性能容器(HIC)と呼ばれる、直径150センチ、高さ180センチのポリエチレン製の容器に入れ、コンクリート製の箱状容器内に収めて約20年間「一時保管」させる計画です。
 20年後にこれらの廃棄物をどうするか、何も決まっていません。
 HICは、米国で低レベル放射性廃棄物の最終処分用に使用されている容器ですが、その耐久性に疑問が出ています。一つは放射線による劣化です。放射線照射による劣化の試験は米国における古いデータしかなく、劣化が始まると進展が早いことが指摘されています。さらに、紫外線にさらした場合の推定寿命が1~2年であるなどの問題があります。このため原子力規制委員会の専門家会合は、再試験の必要性を指摘しています。
 たまりつづける汚染水の問題は、廃炉に向けた工程の進行を阻んでいます。抜本的な対策を早急に検討する必要があります。 

需給逼迫せず 今冬節電きょう終了 火発の供給安定
北海道新聞201338
 今冬、道内で行われた目標付き節電が、8日午後9時で終了する。厳冬のため、日々の最大電力需要が節電の目安となる538万キロワットを上回った日はこれまでに8日間あった。だが、火力発電所で大きなトラブルが起きなかったため、需給が逼迫(ひっぱく)することはなかった。
 今冬は泊原発全3基(後志管内泊村、出力計207万キロワット)が停止しているため、仮に、火発で昨年度最大のトラブル(供給力96万キロワット低下)が起きても電力が不足しないよう、節電が要請された。日々の最大需要を、2010年度に記録した過去最大値579万キロワットから7%以上減らし、538万キロワット以下に抑え込むことを目標とした。
 昨年12月10日の節電開始以来、これまでに需要が最も高まったのは、全道的に厳しく冷え込んだ1月18日の552万キロワット。この日を含め、節電の目安となる538万キロワットを超過した日が、昨年12月に3日間、1月に5日間あった。 

遺言は原発ゼロ処方箋 故加藤寛氏の著書あす出版
東京新聞201338
 国鉄民営化など政府の行財政改革に尽力し、一月に八十六歳で死去した加藤寛慶応義塾大学名誉教授の遺作が九日発売される。 
 晩年は「原発ゼロ」を目指して活動した加藤氏。あとがきでは「本書は私の遺言である。少なくとも『原発即時ゼロ』の端緒を見届けないかぎり、私は死んでも死にきれない」と締めくくったが、著書の初稿に目を通した後、帰らぬ人となった。
 著書は電力システム改革の処方箋を描いた力作で、「日本再生最終勧告~原発即時ゼロで未来を拓く」(ビジネス社)。教え子の研究者と勉強会を重ね、完成させた。原発は政治家と官僚、電力会社がそれぞれ身内の利益を優先する「たかりの構図」に陥っていたと指摘。「ただちにゼロにすべきだ」と強く訴えかけている。 

3年内に原発再稼働 首相答弁「代替エネ獲得まだ」
東京新聞201338
 衆院予算委員会は七日午後、安倍晋三首相と全閣僚が出席し、二〇一三年度予算案に関する基本的質疑を続けた。首相は、施政方針演説で原発を再稼働させる考えを明言したことに関連し「この三年で再稼働させるものは再稼働させる。安定的な電力をしっかりと得ることが経済成長、安心できる生活にもつながっていく」と重ねて強調した。
 「三年」は施政方針では触れていなかったが、自民党の衆院選公約「再稼働の可否は三年以内の結論を目指す」に沿った答弁で、政権として原発維持の姿勢をさらに鮮明にした。首相は再稼働への手続きとして、原子力規制委員会による安全確認が前提との方針をあらためて説明し「原発比率を低減させていくのは目指すべき方向だが、今の段階では代替エネルギーを獲得していない」と指摘した。
 首相は「三年でできる限り再生可能エネルギー(の普及)、イノベーション(技術革新)を促すために国家資源を投入し、原子力の代替エネルギーにしていく」とも述べた。
 一二年度補正予算と一三年度予算案に盛り込んだ公共事業費に対し、バラマキとの批判が出ていることには「地域の成長力、生産性の向上につながるものを厳選し、今回の予算に盛りこんだ」と反論した。 

3.7

福島原発事故で被災者ら11日に集団提訴 原告1600人超える見通し
産経新聞201337
 東京電力福島第1原発事故をめぐり、国と東電への集団訴訟を検討している被災者らと弁護団が7日、東京都内で会見し、原告数が1600人を超える見通しであることを明らかにした。11日に福島地裁など4地裁・支部に訴えを起こす予定で、原告らは「国の責任を明確にしたい」としている。 

 原告の一人で、福島県いわき市の佐藤三男(みつお)さん(68)は震災当日、市民団体の集会に参加中に強い揺れに襲われた。長机が音を立てて波打ち、「もうだめかと覚悟した」と振り返る。その後、「原発事故の完全賠償をさせる会」を結成、東電との交渉を試みたが、「誠意のある回答は得られなかった」と憤る。
 事故以降、東京に住む5歳と3歳の孫が、自宅を訪れたのは1度だけ。「放射能で子供たちにどんな影響が出るか分からず、呼ぶことができない」という。
 かまぼこや梨など、東京へ届けていた地元の物産も、今は送っていない。放射線量が高いとされるため、趣味の山登りも自粛している。
 「原発事故で生活が変わった」と佐藤さん。「国と東電の責任を認めてもらい、被災者を救済するための法律や制度作りにつなげたい」としている。 

不動産登記7割に不備 東電賠償、難航の恐れ
東京新聞 201337
 東京電力福島第1原発事故による福島県内の不動産の賠償をめぐり、対象となる土地や建物の登記が正確な世帯はわずか3割で、7割は未登記だったり、登記簿上の所有者が既に亡くなったりしていることが、7日までに東電の調査で分かった。
 東電は賠償の前提として、請求権を持つ所有者を確定させるため、登記簿による確認が必要としている。被災者は「登記がなくても、実際に住んでいれば賠償するべきだ」と求める人が多く、今後始まる交渉は難航しそうだ。 (共同)

玄海原発廃炉など要請 操業停止訴訟の有志 
佐賀新聞 20130307
全国の5千人以上が原告となっている九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)操業差し止め訴訟の原告有志が6日、佐賀県の古川康知事に玄海原発の廃炉と、再稼働をしないよう要請した。
 有志は昨年12月、同原発近くから風船を飛ばし、事故が起きた場合の放射性物質の拡散を予測。最も遠い場所で約555キロ離れた奈良県で見つかったことなどを伝え、徹底した防災体制の構築や核エネルギーに依存しない県政の実現を求めた。
 要請した長谷川照原告団長は「風船は、市民の関心が高い放射性物質の広がりを示す象徴。本来は行政がやるべきこと」と指摘。「想定外が起こることが福島の教訓で、県民の命を守る行政の責任を果たしてほしい」と訴えた。
 風船を飛ばす活動は季節ごとに予定し、次回は4月14日に実施する。  

福島原発廃炉作業/漏水と地下水流入を防げ
 河北新報 20130307
 福島第1原発事故によって廃炉が決まった1~4号機で、放射性物質に汚染された大量の水の処理が深刻さを増している。
 タンクに入れ原発敷地内で保管しているが、1日当たり数百トン規模で発生している。このままではいずれ敷地内も満杯になり、海洋放出などしか手段がなくなる。だが、関係者から容認されないだろう。
 冷却水漏れも問題になっている。炉心溶融(メルトダウン)した核燃料の冷却は最重要課題であり、確実に実行し続けなければならない。
 大量の汚染水と冷却水漏えいは廃炉作業に重大な支障をもたらしかねず、解決に全力を注ぐべきだ。
 1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)した福島第1原発の廃炉は、今後30~40年もかかる途方もない作業だ。プールに大量の使用済み核燃料が残る4号機の問題も抱えている。
 最大の難問はメルトダウンした核燃料の取り出し。メルトダウンは1979年の米スリーマイル島(TMI)原発事故でも起きたが、核燃料は原子炉圧力容器の内部にとどまった。
 TMIは原子炉1基。福島第1原発では、1~3号機とも溶けたウランが圧力容器を突き抜けて格納容器に落ちたのが確実だ。状況はTMIよりはるかに厳しい。
 廃炉に至るまでには何よりもまず大量の水をきちんと循環させて、核燃料を冷やし続けなければならない。冷却が不十分になると不測の事態を招きかねないし、廃炉作業全体に悪影響を及ぼす。
 ところが1号機では格納容器からの水漏れが起き、場所の特定もできないでいる。損傷箇所などを突き止め早く対策を取らないと、水漏れが拡大する危険性もあるだろう。
 放射能で汚染された膨大な量の水も厄介だ。タンクに入れて原発敷地内に保管している汚染水は既に26万トンに上る。冷却に使った水に加え、地下水が1日に400トンも流れ込んでいるためだ。
 このままでは敷地内保管も限界に達し、敷地外に運び出すか海に放出するか、いずれかの選択を迫られる。海への放出となれば、漁業者はもちろん諸外国の反発を受けることは必至だ。
 東電は冷却水漏れと地下水流入を何としても防ぎ、汚染水の発生量を極力減らさなければならない。
 福島第1原発の廃炉をめぐり、各国の協力を求める動きが出ている。国際原子力機関(IAEA)は近く調査団を来日させるほか、自民党も「国家プロジェクト」と位置付け海外の協力も仰ぐという。各国の協力を受けても簡単に進むとは思えないが、東電だけに任せるのが心もとないのも確かだ。
 福島第1原発の後始末は始まったばかり。気が遠くなるような作業が待ち受けている。原因をつくった東電が責任を負うのは当然だが、原子力規制委員会や国会も一層、監視機能を強めていくべきだ。 

埼玉県の空間線量測定費 東電「賠償の対象外」
東京新聞 201337
 東京電力が、福島第一原発事故関連の損害賠償を求めている埼玉県に対し、県が学校などで行った空間放射線量測定費用を賠償の対象外とする、と伝えていたことが分かった。東電は「政府の指示で実施を余儀なくされた検査ではない」と説明したが、県は「県民の安心・安全のために測定は不可欠だった」として、東電に見直しを申し入れた。
 県は昨年八月、二〇一一年三月~一二年三月分の計約三億円を東電に請求した。
 この中には汚染土壌や廃棄物の処理費のほか、県内の小中学校や高校の校庭などで放射線量を調べるための測定機八台(計約三百七十万円)や、測定時の人件費なども含まれている。
 東電が二月に県に配布した資料では原発事故後の放射線量について、文部科学省が全国のモニタリングポストなどで測定した結果、「一定の安全は確保されている」と指摘。自治体独自の線量測定は「政府の指示で実施を余儀された検査ではなく『必要かつ合理的な検査』に当たらない」として、測定費を賠償対象外とした。 

3.6

今夏めどに帰還工程表を作成 原発避難区域見直しへ 帰還困難区域などの状況
朝日新聞 201336
 安倍政権は、東京電力福島第一原発事故で避難している住民の「早期帰還・定住プラン」をまとめた。国はインフラ復旧や雇用確保などに取り組み、関係自治体は今年夏をめどに工程表をつくる。新たに福島県の浪江町、富岡町、葛尾村の避難指示区域を見直す方針も決め、浪江町の大半を5年以上帰れない「帰還困難区域」に指定する。
 プランは7日に開かれる復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会議で示される。この場で3町村の避難区域の見直しも決める。
 政権は今春をめどにすべての避難区域の見直しを終える方針。プランでは早期帰還を目指す「避難指示解除準備区域」を念頭に、1~2年で住民が帰還し、定住できるようにするための国の取り組みを定めた。  

【静岡】 レーダーで津波監視 浜岡原発の周辺海面
中日新聞 201336
◆中電が24時間態勢で
 中部電力は五日、浜岡原発(御前崎市)に押し寄せる津波を検知するレーダーを原発近くの高台に設置し、二十四時間態勢で観測を始めた。津波監視技術の研究の一環で、将来は原発の中央制御室で監視できるようにし、運転停止や作業員避難といった早期対応に活用する。
 レーダーは、原発の東側約七キロの高台に観測所とともに設置した。原発前の海域に電波を飛ばし、反射させて海表面の流速や向きなどを二十キロ沖合まで観測できる。当面は観測所でデータを蓄積。研究を進め、津波が発生したときに、原発までの到達時間を把握できるようにする。
 今後、アンテナを増やして観測範囲を七十キロまで拡大するほか、原発敷地内にもレーダーを設置し、観測地点を二カ所に増やす。
 中電は「高感度カメラを使った海面の監視など他の技術も組み合わせ、津波を早く確実に検知できるように研究を進めたい」と説明している。 

【福井】 学校や病院、放射線防護の改修へ
中日新聞 21336
 (福井)県は、原子力災害に備えた対策として、原発五キロ圏内の小学校など十一カ所に放射線防護措置を施す。すぐに遠隔地へ避難するのが難しいお年寄りや妊婦らの一時的な避難施設として活用し、被ばくリスクを軽減する。
 県議会に五日上程された二〇一二年度県補正予算案に事業費十八億円が計上された。県は三月中に原発五キロ圏内の住民避難計画を策定する方針で、これらの施設の運用方法なども盛り込む。
 県危機対策・防災課によると、敦賀、美浜、大飯、高浜の各原発の五キロ圏内のほか、交通利便性が低い原発近郊の半島部から、大人数が収容できるなどの条件を備えた建物の中から施設を選定。放射線防護の改修を実施する。
 特殊なサッシを用いて窓や扉の気密性を高めるほか、フィルター付きの換気設備などを備える。対象施設は現在、小学校や公民館、病院などを軸に選定を進め、最終的には地元住民や施設所有者と協議して決める。
 補正予算案ではこのほか、原子力防災対策として放射線測定機器の購入に一億三千百万円を計上。計五百三十五台を買い入れ、市町や消防・警察機関、小学校などに無償貸与する。(桂知之)