2023年6月19日月曜日

トリチウム水放出 近く設備完成 放出秒読みも反対の声強く 開始判断が焦点

  河北新報が、福島第1原発のいわゆる「処理水」=トリチウム含有水の海洋放出についての「要点」をまとめた記事を出しました。


 イラストのコピーができなかったのでご覧になりたい方は下記から原記事にアクセス願います。↓
   処理水近く設備完成 放出秒読みも反対の声強く 開始判断が焦点
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処理水近く設備完成 放出秒読みも反対の声強く 開始判断が焦点
                         河北新報 2023年6月19日
 東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水の海洋放出設備が完成間近となった。試運転も始まり、政府と東電が目指す夏ごろまでの放出開始に向けた準備は最終段階だ。ただ風評被害を懸念する漁業者をはじめ反対の声は根強く、「関係者の理解」という政府の約束が果たされるのかは見通せない

処理水]東京電力福島第1原発1~3号機にある溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やした水に加え、原子炉建屋に雨水や地下水が流れ込むことで増える汚染水を浄化した水。技術的に分離が難しい放射性物質トリチウムは取り除けない。現在の保管量は約133万トンで、上限約137万トンの97%。雨水の流入対策が進み、東電は保管タンクが満杯になる時期を「2023年秋」から「24年2~6月ごろ」に変更した。トリチウムは自然界にも存在し、水道水にも含まれている。
 放出設備のイメージはイラストの通り。処理水は多核種除去設備(ALPS)で62種類の放射性物質を取り除く。外部機関の分析を経て、トリチウム濃度が環境への排出基準の40分1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう海水で薄め、海底トンネルから約1キロ先の沖合に流す
 安全対策として、処理水の送水を止める緊急遮断弁を2カ所に設置。うち1カ所は海抜11・5メートルの場所で防潮堤で囲った。既に周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を強化しており、放出後の一時停止を判断する「異常値」も設定した。
 処理水などの保管タンクは1073基に上り、第1原発の敷地を圧迫。政府と東電は、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しや保管用施設の整備にはタンクの撤去が必要として「海洋放出は廃炉を進める上で避けて通れない」(西村康稔経済産業相)と説明する。

 処理水に含まれるトリチウムの総量は、2021年4月時点で約780兆ベクレル。海洋放出は当面、トリチウム放出量が年22兆ベクレルを超えない範囲で行い、完了まで数十年かかる計画だ。

 処理水を巡り、政府と東電は15年、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と福島県漁連などに約束した。一方で「海洋放出が現実的で確実」とした政府小委員会の報告も踏まえ、当時の菅政権は21年4月、2年後をめどに海洋放出する方針を決めた。
 東電は21年12月、立て坑の掘削を原子力規制委員会の認可が不要な「環境整備」として開始。22年8月に本格着工した。設備本体の工事費は現時点で約440億円を見込んでいる。
 トリチウムは国内外の原子力施設から海や大気に排出されており、科学的に問題はないとされる。海洋放出計画を検証した国際原子力機関(IAEA)の包括報告書は6月中にも公表される見込みで、それを「前提」とした放出開始時期の政府判断が焦点となる。
 東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は「国と連携し、科学的根拠に基づく国内外への分かりやすい情報発信と風評対策に全力で取り組む」と話す