2023年6月28日水曜日

トリチウム水の海洋放出 地元業者の了解は? 福島テレビ、テレビユー福島など

 トリチウム水の海洋放出に当たり、東電は放出ラインの緊急遮断弁「電源喪失でも空気喪失でもどんな形でも閉まる方向にしか行かない」いわゆる「フェールセーフ(最悪のケースでも安全側に作動する)」になっていると強調しました。それは当然のことであってトリチウム水を海水で希釈して放出することの問題性に比べれば微々たる事柄です。

 福島テレビは「国と東京電力は関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という条件をどう考えているのか、はっきり示す必要があると述べています。
 テレビユー福島も、福島県漁連会長「我々は廃炉過程の中でこの海洋放出に反対するという立ち位置としては、ここで漁業をやめない、ずっと続けていくというのが反対の意思表示」との発言を伝え、準備大詰めを迎えたものの、関係者の理解や風評への懸念など、課題は残ったままとしています。
 それは宮城県の関係者間でも全く同様に受け止められています。
 国(と東電)が何故これほどまでに怠慢を極めているのかどうしても理解できません。
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記者が見た 原発処理水・海洋放出に向けた現場
安全性を強調「緊急遮断弁」 処分の条件提示は?
                           福島テレビ 2023/6/27
6月26日 福島第一原発沖で行われた掘削機械の引き揚げ作業。放出口に土砂などが入り込むのを防ぐコンクリート製のフタの設置も行われた。
政府と東京電力が2023年夏頃までの開始を目指す処理水の海洋放出。
東京電力担当者:「ALPS処理水希釈放出設備等の実施計画に基づく工事が完了し、使用前検査の準備が整ったという判断をしております」
2021年12月のボーリング調査から約1年半、処理水を流す海底トンネルの工事が完了した。
28日から3日間、原子力規制委員会による設備の使用前検査が行われ、規制委員会が「合格」と判断すれば、処理水を薄めて放出する設備は使用できる状況になる。
IAEA・国際原子力機関は、最終報告書を6月中に公表するとしていて、近く「国際的な安全基準を満たしているかどうか」の判断も示される。
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工事が大詰めを迎えていた6月26日、福島第一原発を取材した。陸上に設けられた処理水の海洋放出に関わる設備は、すでに完成していて、東京電力は「設備面の安全性」を強調した。
福島テレビ・石山美奈子記者:「ALPSで処理された水は、こちらの黒い配管を通りまして、そしてこの水色の大きな設備で海水と希釈されます。この設備だけを見てもかなり大掛かりなことがわかります」
26日東京電力が公開した処理水の放出に関わる設備。

緊急遮断弁の前で東京電力担当者:「電源喪失でも空気喪失でもどんな形でも閉まる方向にしか行かないんです」
停電した場合などには「緊急遮断弁」が自動的に閉まって、処理水の放出がストップする仕組みになっていること。
当直責任者が持っている専用の鍵がなければ放出を行えないこと。
震度5弱以上の地震が発生したら手動で停止するとマニュアルで定めていること。
東京電力はトラブルへの備えを強調し、「人間も機械もミスがあるものと思い、大丈夫と過信せず対応を進めていく」と説明している。

<「処理水の海洋放出」の流れ>
燃料デブリに触れて放射性物質に汚染された水からほとんどの放射性物質を取り除く。これが「処理水」で、海水を加えて、トリチウムの濃度を下げてから海に放出する。緊急遮断弁は、放射性物質が多く残っていた場合や海水をくみ上げるポンプが止まった場合などに自動的に作動して放出を止める。
「弁」は何もしなければ閉じるように作られている。
運転している時は電気の力で弁を開けるが、停電で弁を開ける力が働かなくなると、弁が閉じる仕組みだ。

国と東京電力は安全面の備えだけでなく、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という条件をどう考えているのか、はっきり示す必要がある
政府と東京電力が放出開始を目指す「今年夏頃まで」の時期はすでに迎えている。考えを示さないことで膨らむ疑念もある。


【処理水 福島の葛藤(4)】
処理水放出設備、28日から原子力規制委検査 県漁連は改めて反対表明
                         テレビユー福島 2023/6/27
福島第一原発の処理水を海に放出するための海底トンネルについて、東京電力は、設備全体の試運転を問題なく終えたことを明らかにしました。

▼シリーズ「処理水 福島の葛藤」
東京電力は26日、海底トンネルを掘った掘削機を引き揚げ、処理水の放出設備の工事が完了しました。また、6月12日から行われていた真水と海水を使った試運転も26日で終了し、整備に問題がなかったことを発表しました。
28日から3日間は、原子力規制委員会による使用前の検査が行われ、異常があった時に処理水の放出を止める緊急遮断弁と、海水を混ぜる希釈設備などを確認する予定です。
この試験に合格すれば、放出に向けた設備面の準備が全て整うことになります。
処理水の海洋放出に向けた動きが大詰めを迎えるなか、福島県漁連の野崎会長は27日に福島県いわき市で行われた会議で、改めて反対の意思を示しました。
県漁連・野崎会長我々は廃炉過程の中でこの海洋放出に反対するという立ち位置としては、ここで漁業をやめない、ずっと続けていくというのが反対の意思表示だと思っています」
政府は6月末にも、IAEAがまとめる処理水に関する包括的な報告書をもとに、放出開始時期の具体的な検討に入る見通しです。

▼処理水 福島の葛藤
処理水の海洋放出に向け、準備が大詰めを迎えていますが、関係者の理解や風評への懸念など、課題は残ったままです。TUFでは、処理水をめぐる課題や現状をシリーズでお伝えしています。


福島第一原発の処理水放出へ工事完了 漁業や観光に依然として風評被害への懸念
                         khb東日本放送 2023/6/27
 福島第一原発の処理水を薄めて海に放出する計画について、設備面の準備は原子力規制委員会の検査を残すだけとなりました。放出の開始目標とする夏ごろが迫る中、漁業や観光関係者には風評への懸念が依然として残っています。
 平山栄大 カメラマン「処理水のトンネル掘削に使われたシールドマシンが船上に確認できます」
 東京電力は26日、福島第一原発から沖合1キロの海上で、処理水を送る海底トンネルを掘った機械を引き揚げました。
 これで放出設備の主な工事は全て終わり、28日にも設備全体の性能を確認する原子力規制委員会の検査が始まります。
 政府と東京電力は2023年夏ごろの放出開始を目指していて、計画は大詰めを迎えています。
 しかし、風評被害への懸念は宮城県にも依然残っています
 石巻市雄勝は、通年で生食用のカキが養殖できる全国でも数少ない漁場です。
 この地区でカキやホヤなどを養殖し販売、輸出を行う水産加工会社では、処理水の海洋放出への懸念は依然、払拭できていないと話します。
 海遊 伊藤浩光社長「今後しっかりちゃんと責任持ってやってくれるかどうかですよね。
曖昧にせずに漁業者と向き合って話をして、それで決めていくっていう方向にしないと海を生業としてるものとしてはね、そこらへんちゃんとしないでやられると一番不安もあるし、生活ができなくなるっていうことがあるんで」
 海洋放出に対する不安は、海のレジャー関係者にも広がっています。
 震災後、休止が続いていた雄勝の荒浜海水浴場は、今シーズン13年ぶりに開設されることになりました。
 震災前には多い年で1万人以上が訪れていた海水浴場だけに、地元からは不安の声が聞かれました。
 荒地区 高橋周一会長風評被害が一番怖いですね。できるならタイミングが合わない方が良かったんですけどね。このシーズンとにかく無事に終われればいいなと思っております」
 政府は、海洋放出の時期について規制委員会による検査結果とIAEA=国際原子力機関の報告書の内容を踏まえて判断する方針です。