2015年6月8日月曜日

福島県飯舘村の山菜 高濃度に放射能汚染

 福島原発事故で汚染された福島県飯舘村の山菜の放射能レベルは、いまも、コシアブラ:1万4774ベクレル/キロ(以下同)、コゴミ:1741~4651、ワラビ:2364~3047などと高度に汚染されたままです。
 国は、宅地や農地を除染して住民の帰還を促そうとしていますが、地元の人は「村の人たちは日常的に山菜を食べてきた。山は大切な生活圏。宅地や田畑を除染しただけでは暮らせない」と訴えています。
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山菜 高濃度セシウム 飯舘村の山 除染手つかず
東京新聞 2015年6月7日
 東京電力福島第一原発事故で汚染された福島の山は今、どうなっているのか。本紙が飯舘村の山で採取した山菜の放射性セシウム濃度を測ると、種類によってばらつきはあるものの、ほとんどが食品基準の濃度を超え、安心して食べるには程遠い現実があった。国は、宅地や農地を除染して住民の帰還を促そうとしているが、調査に同行した地元の男性は「村民にとって山は大切な生活圏。宅地や田畑を除染しただけでは暮らせない」と訴えている。(大野孝志)
 
 今年四月上旬から五月上旬にかけて、村にある民間農業研修所の管理人、伊藤延由さん(71)とともに、飯舘村南東部の小宮、蕨平(わらびだいら)両地区の山に入り、複数種類の山菜と土壌を採取した。両地区は昼間だけ立ち入りできる居住制限区域。
 山菜は普段食べる葉や茎を水洗いし、水分を拭き取った後に刻んで測定用の容器に詰め、独協医大のゲルマニウム半導体検出器で四~八時間計測した。土壌も同じ検出器で四時間ほど測った。
 
 結果は図の通り。てんぷらなどで食べるコシアブラの葉は、一キログラム当たり一万四〇〇〇~二七万ベクレルだった。食品基準(同一〇〇ベクレル未満)の一四〇~二七〇〇倍に当たる。
 コシアブラは、セシウムの大半があるとされる地中の浅い部分に根を張るため汚染されやすいといわれていたが、その通りだった。根が張っている深さ五センチほどの腐葉土を調べると一万ベクレル以上だった。
 ほぼ同じ深さで根を張り、てんぷらやおひたしで食べることが多いコゴミやワラビ、フキノトウも汚染の度合いに差はあったが、食品基準を超えるセシウムが検出された。一方、深さ一〇~一五センチで根を張る山ウドは、表土が一万二〇〇〇ベクレル以上あるにもかかわらず、四三~一一九ベクレルと意外なほど低かった。
 
 与党は五月、避難者の帰還を促すため、居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示を二〇一七年三月までに解除するよう政府に提言。宅地や農地の除染は進むが、山の除染は山崩れを招く恐れもあり、国は「今後、調査結果を踏まえて方法を検討する」としている。
 福島市の仮設住宅と村を行き来し、独自に山菜やキノコの汚染を調べ続けてきた伊藤さんは「村の人たちは日常的に山菜を食べてきた。村民が戻っても、元の暮らしは取り戻せない。国や東電は、人がここで生きていけるかどうかを念頭に置いて、物事を考えてほしい」と話した。
 
◆根が浅いほど濃縮
 調査に参加した独協医科大学の木村真三准教授(放射線衛生学)の話 根を浅く張る山菜ほど、腐葉土から放射性物質を吸収して濃縮する。すべての山菜が食べられないわけではないが、国が指定する出荷制限区域では採らないことが肝心だ。最も安全なのは、食べる前に放射性物質の濃度を測ることだ。
 
写真
図は汚染レベルをグラフで示したもので、
右側の数字が汚染度のメモリ
 

2015年6月7日日曜日

原発事故ドキュメンタリー映画 「ナオトひとりっきり」完成

 福島原発事故後、現在も全域が避難区域となっている富岡町に一人残る松村直登さんを追うドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」が20日から神戸市で上映されます。
 松村さんは55歳のときに年老いた両親が暮らす富岡町へ戻り、そこで原発事故に出会いましたが、ふるさとに住めなくなった怒りがその地にとどまらせました。
 畜産の経験はゼロでしたが、知人が飼っていたウシ26頭とポニー1頭の世話を買って出て、そこに脱走してきたダチョウ2羽、イヌ、ネコも加わりました。
 
 撮影は2013年夏にスタートし、「スタッフを被曝させるわけにいかない」と映画監督の中村真夕さんが一人でカメラを担ぎ、月1、2回のペースで延べ8カ月、富岡町に通って仕上げました。
 中村監督は「過去から学ぼうとせず、あまりに忘却のスピードが速い日本人へのアンチテーゼとして、この映画を見てほしい」と話しています。
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原発事故、ドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」
       中村真夕監督 20日、神戸
神戸新聞 2015年6月6日
 東京電力福島第1原発事故後、現在も全域が避難区域となっている福島県富岡町に一人残る松村直登さんを追うドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」が20日から神戸市中央区元町通4、元町映画館で上映される。放置された動物の世話を淡々と続ける松村さん。「だからといって何もなかったことにはできない」と中村真夕監督は力を込めて語る。(片岡達美)
 
 事故から時間がたった福島の現状を伝えたいと考えていた中村監督は、海外メディアが紹介する松村さんに興味を持った。現地を訪ね、「私も被ばくの危険を負うが、松村さんを撮ろうと決意した」。
 
 撮影は2013年夏にスタート。「スタッフを被ばくさせるわけにいかない」と一人でカメラを担ぎ、月1、2回のペースで延べ8カ月、富岡町に通った。
 
 当時55歳の松村さんはもともと、建設業に従事。原発建設に携わった後、東京近郊で働いたが、バブル崩壊後に仕事が減り、年老いた両親が暮らす富岡町へ。妻子とは別れた。
 その後、原発事故が起き、避難指示が出るが、「ふるさとに住めなくなった怒りが、とどまらせている」と中村監督。
 畜産経験ゼロの松村さんだが、知人が飼っていたウシ26頭とポニー1頭の世話を買って出た。そこに脱走してきたダチョウ2羽、イヌ、ネコも加わる。栄養状態が悪く弱って死ぬウシがいる一方、子どもを産むウシもいる。
 住んでいるのは、避難指示解除準備区域。水道が止まったままで、湧き水を使う。東京電力からの補償金などで生活し、地震後に出会った女性との間に子どもが生まれた。
 
 風向きによって、中村監督持参の放射線測定器の数字が振り切れることもあるが、「生物の命は脈々と続いていく。町がのどかな理想郷に見える瞬間さえあった」。
 先月、東京での上映に合わせ、菅直人元首相と松村さんの「2人のナオト」が対談。「事故に翻弄(ほんろう)され、反原発への思いを強めた者同士、盛り上がった」という。
 
 中村監督は「過去から学ぼうとせず、あまりに忘却のスピードが速い日本人へのアンチテーゼとして、この映画を見てほしい」と話している。
 
 元町映画館TEL078・366・2636
 
「ナオトひとりっきり」の一場面
「ナオトひとりっきり」の一場面

「今年の春、その後のナオトさんを追う短編を撮った」と話す中村真夕監督=大阪市淀川区十三本町1
「今年の春、その後のナオトさんを追う短編を
撮った」と話す中村真夕監督=大阪市淀川区

伊方原発 中央構造線が動けば大惨事に

 今回の小出裕章ジャーナルは、再稼動に向けて新規制基準合格となった四国電力伊方原発を取り上げています。
 同原発は、愛媛県の全長約40キロの佐多岬という細長い半島の根元に設置されているので、事故が起きた場合に岬に住んでいる人たちは陸路では逃げることが出来ないという問題をかかえています。
 それに加えて同原発の敷地の前面に日本最大の活断層:中央構造線が走っているので、もしもそれが動くようなことになれば、壊滅的な被害を受けることになります。
 
 現実に福島原発事故が起きているのに、日本は未だに目を覚ますことができない、この国の指導者や経済人たちは一体どういう人たちなのかと述べています。
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伊方原発「適合」の問題
小出裕章ジャーナル(第126回) 2015年06月06日
 
 「日本最大の活断層、中央構造線が動くようなことになれ
 ば、おそらく壊滅的な被害を受けるだろうと思います」
 
湯浅誠:  今日はですね、伊方原発3号機の適合問題ということなんですけれども、5月20に原子力規制委員会が伊方原発3号機が新規制基準を満たしているという審査案を了承したと。九州電力の川内原発1・2号機、そして、関西電力の高浜原発3・4号機に続いて3例目ということなんですが、今回の伊方原発が抱えている独自の問題点というかですね、というのは、どういうところにあるんでしょうか?
小出さん: はい。原子力発電所というのは、みんな問題を抱えているわけですけれども、それぞれにかなり特色のある問題を抱えています。
    例えば伊方原子力発電所の場合には、愛媛県に佐多岬という細長い半島があってですね、四国から九州に向かって伸びているのですが、一番太い所でも6キロ程度だろうと思います。長さで言えば、40キロもあるというようにですね。細長く九州に向かって伸びているのです。
    それの付け根の所に伊方原子力発電所が立地しています。もし原子力発電所で事故が起きた場合に、岬の先の方にいる人達は一体どうやって逃げることができるのだろうかと、私は昔から思っていましたし、福島第一原子力発電所の事故が事実として起きた今、もう到底、岬の先端の方の人達は逃げることができないだろうと、私は思うようになりました。この佐多岬という半島には伊方町のですね、多分5000人を超えるぐらいの人が住んでいるはずで、その人達がもし逃げるとすれば、何か船に乗って九州に逃げるという、そんなやり方しかたぶんないだろうと思います。
 
湯 浅: そういう避難計画っていうのは、愛媛県ないし伊方町は作ってるんですかね?
小出さん: ええ、これから要するに作ることになるのでしょうけれども、一番初めに新規制基準に適合されたと認められた川内原子力発電所の場合も、もう到底逃げることなんかできないよということで、鹿児島県の知事自身がそのことを認めてしまうという状態になったわけです。伊方の場合にはもっと厳しく、逃げることができないだろうと思います。 
 
湯 浅:  鹿児島県知事は、だいぶ原発再稼働に前向きだった人でしたけども、愛媛県は中村知事ですかね、中村知事はどういう態度? 
小出さん:  今のところ曖昧な態度ですので、どうなるのかは予断は許しませんけれども、基本的には原子力発電所を立地されてしまった自治体というのは、原子力発電所によって、私は麻薬患者にされたと言ってるわけですけれども、さまざまなお金でがんじがらめに縛られてしまっていますので、これからも認める方向に行くんだろうなと私は心配しています。
 
湯 浅:  伊方町長はもう前のめりというか。再稼働して欲しいという立場なんですね?
小出さん: はい。残念ながらそうです。
 
湯 浅:  周辺自治体はどうですか?
小出さん:  多分、もし意見を言えるようになれば、あれこれと意見を言い出すだろうと思いますけれども、川内原子力発電所の場合も立地自治体、薩摩川内市と鹿児島県の同意だけあればいいということにされてしまったわけですし、伊方原子力発電所の場合も伊方町と愛媛県さえ「うん」と言えば、あとの自治体はほったらかしにされるという可能性が高いと思います。
 
湯 浅: それに加えて、伊方原発の近くには大きな活断層がある。南海トラフ地震の被害を受ける可能性があるということも言われているようなんですけれども。
小出さん: はい。昔、小松左京さんが『日本沈没』という小説を書いたことがあるのですが、あの小説は日本最大の活断層に中央構造線という活断層があるのですが、中部地方からずーっと関西を横断して、四国を横断して、九州まで伸びていくという巨大な活断層なのです。
    その『日本沈没』では、巨大な中央構造線の活断層が割れて、日本が太平洋に滑り落ちていくという、そういうことを書いた小説だったのですが、伊方原子力発電所の敷地の前面に、その日本最大の活断層、中央構造線が走っているのです。もし、それが動くようなことになれば、おそらく壊滅的な被害を受けるだろうと思います。
    その上、伊方の場合にはそれだけでは済みませんで、「日本でこれから巨大な地震が起きる」と世界中の地震学者が言っていまして、東海地震、東南海地震、南海地震と呼ばれているような中部地方から関西、四国、九州に伸びてくような地域に、巨大なやはり地震の渦がありまして、そこで、近い将来必ず大きな地震が起きると世界中の地震学者が言ってるわけですから、伊方原子力発電所というのは中央構造線のおそれ、そして、南海地震のおそれというように、南北から挟まれた形で存在しています。
 
湯 浅:  非常にまあ危ない…伊方原発だけじゃないですけどねえ。危ない所にあるということですが、川内、高浜、伊方と、結構ここのところ続々というか、いよいよ本格的にというか、再稼働に向けての準備が進んでいて、高浜原発は運転延長まで申請したと、20年間のですね、ということなんですが、小出さんからしてみれば、「それはそう来るに決まってんだよ」ということなんでしょうけども、いかがでしょうかね? 
小出さん: あまりにも愚かな選択だなと、私は思います。大きな原子力発電所の事故など決して起きないと言ってきた人達が、事実として事故が起きているのに、未だに目を覚ますことができない。ほんとに、この国の指導者達、あるいは経済界の首脳達、どういう人達がやってるのかなあと、私は大変残念だし情けなく思います。
 
湯 浅: 今日もありがとうございました。
小出さん: こちらこそ、ありがとうございました。
 

2015年6月6日土曜日

政府は原発のリプレイス(建て替え)を進めようとしている

 経産省の有識者会合「長期エネルギー需給見通し小委員会」が、2030年に必要な電力の20~22%を原発、22~24%を再生可能エネルギーで賄うとする報告書案を大筋で了承した問題は、5日にも本欄で取り上げた※ばかりですが、5日付の日経ビジネスに、電源構成案の目的は「原発の新増設とリプレイス」にあるとする記事が載りました。
※ 6月5日 電源構成案 原発優先は「公約違反」 
 
 同記事は、原発のライフを40年で限度にすると、2030年段階では原発の依存度は14~15%になってしまうのを敢えて20~22%にしたのは、特例として認められている稼働期限を20年延長することで賄おうとしているのではなくて、原発を新たに建設する「新設」に踏み切るか、今ある発電所内に原子炉を「増設」するか、古い原子炉をつぶして建て直す「リプレイス」の選択肢のうち、恐らく、リプレイス(建て替え)の動きを「立地自治体」から出させることにあるのだろうと観測しています。
 
 老朽原発を稼働し続けるよりも、より安全性の高い最新鋭の原発に建て直して欲しいという地元の要望の方がより合理的なので、それに経産省や電力会社が乗るというわけです。
 実に巧妙な作戦です。
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安倍内閣、原発依存度「実質引き上げ」の真意
     「増設」「リプレイス」はなし崩しに進むのか
磯山 友幸 日経ビジネス 2015年6月5日
 経済産業省は6月1日、2030年の日本のあるべき電源構成(エネルギーミックス)を決定した。一般からの意見を募集する「パブリックコメント」を7月1日まで実施し、7月半ばに正式決定する。
 
 焦点だった原子力発電の割合は、総発電電力量1兆650億キロワット時を前提に20~22%とした。経産省の原案を有識者会議が認めた格好だ。LNG(液化天然ガス)火力27%、石炭火力26%、石油火力3%とした。再生可能エネルギーは22~24%だが、これには水力の8.8%~9.2%が含まれる。太陽光は7%、バイオマスは3.7~4.6%、風力1.7%、地熱1.0~1.1%となっている。
 
 安倍晋三内閣は昨年4月、第4次エネルギー基本計画を閣議決定し、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた。民主党政権が「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」とした方針を転換したわけだが、一方で、「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」としていた。その具体的な姿を示したのが、今回のエネルギーミックスである。
 
実質的には依存度引き上げ
 今回決定した「長期エネルギー需給見通し」の文書の中に、「東日本大震災前に約3割を占めていた原発依存度は、20%~22%程度へと大きく低減する」と書かれているのは、基本計画の「可能な限り低減させる」という一文に従ったからだ。だが、現実は、2014年は原発の稼働はすべて停止されており、原発依存度はゼロ。実質的に、これを大きく引き上げることを決めたわけである。
 エネルギーミックスを議論する過程で、原発をどう位置付けるのか、ほとんど国民的な議論は行われなかった。安倍内閣は、世界最高水準の安全基準に適合したものから再稼働する、という方針は打ち出しているものの、原子力規制委員会での審査の遅れなどもあり、実現していない。
 
 4月には福井地裁が高浜原発3、4号機の再稼働を差し止める仮処分を決定する一方で、鹿児島地裁は川内原発の再稼働差し止め申請を却下、司法の判断も分かれている。原発を巡る国民のコンセンサスが得られているとは言えない状況の中で、20~22%という数字が打ち出された。
 実は20~22%という数字には大きな問題が隠されている。
 
 現在ある原子炉のうちすでに廃炉が決まっているものを除いた43基は、運転開始から40年がたった段階で廃止されることになっている。このルールに従えば既存の原発はどんどん廃炉になっていくのだ。2030年には現在の半分、2040年には2割となり、2049年に稼働原発はゼロになる。
 2010年の原子力比率は28.6%だった。2030年の発電量はほぼ同じだから、原子力が半分になると原発依存度は14~15%になってしまう。これを20~22%にするには、手を打つ必要が出てくる。
 
目的は新増設とリプレイス
 ひとつが特例として認められている稼働期限を20年延長することだ。今ある原子炉をすべて60年間まで稼働延長すれば、計算は成り立つ。それでも2060年ごろには2割になる。
 しかも、原子力規制委員会が、今あるすべての原発を安全と認める保証はない。さらに20年の稼働延長にも安全性審査が別途必要になる。今回の決定文書にも「原子力発電比率は、2030年度時点における電源構成上の見通しを示したものであり、個別の原子力発電所の安全性に関する原子力規制委員会の審査に影響を与えるものではない」とわざわざ書かれている。逆に言えば、原子力規制委員会の判断によっては、稼働延長だけでは20~22%という比率を維持できなくなる可能性も小さくないのだ。
 そうなると、原発を新たに建設する「新設」に踏み切るか、今ある発電所内に原子炉を「増設」するか、古い原子炉をつぶして建て直す「リプレイス」を行うしかなくなる。こうした原発の新増設やリプレイスはまったくと言って良いほど議論されていない。それでも言外にそうした可能性を示唆しているのだ。
 つまり、今回の決定は、最低でも、稼働から40年以上たった老朽原発の運転延長が明確に織り込まれているうえ、新増設やリプレイスの可能性も含まれていると読むことができるのである。
 「いやあ、あれは、リプレイスをやるということですよ」
 資源エネルギー庁の幹部を務めた原発推進派の経産省OBは言う。原発をどうするかという議論抜きに、なし崩し的にリプレイスが始まるというのだ。「このままでは電力が足りなくなる」「電気料金がどんどん上がる」という"脅し"によって原発再稼働を行おうとしてきた手法と同じである。
 
 今回は、経産省の中にも、真正面から原発をどうするか議論したうえで、エネルギーミックスの原発依存度を決めるべきだ、という声があったが、最終的には議論を避ける「なし崩し」派が多数を占めた。
 首相官邸でも「説明のつく15%でいくしかない」という声があったが、「それでは原発をやめると言っているのに等しい」という原発推進派に反対された。安倍首相の回りにいる経産省出身の官僚は原子力政策に携わってきた推進派が多い。
 恐らく、リプレイスの動きは「地元」から出てくる。老朽原発を稼働し続けるよりも、より安全性の高い最新鋭の原発に建て直して欲しいという要望が出されるのだろう。もちろん、その背後に経産省や電力会社の原発推進派がいるのは明らかだ。
 
またしても時の流れにゆだねるのか
 老朽原発よりも最新鋭の原発の方が安全性が高いのは自明だが、それを政府が主導していくとなると、そもそも原発をどうするのか、という根本問題に触れざるを得なくなる。
 また、老朽原発が危ないのなら40年で廃炉すべきだという声が挙がることになりかねない。それだけに「なし崩し」でリプレイスにもっていくのが世論の反発を浴びずに済むという経産省の腹づもりのようだ。
 
 「そもそも私たちに原発依存度を言わせるという事が問題。政治家がきちんと議論をして決めるのが筋だろう」と有識者会議のメンバーの1人は吐き捨てる。だが、原発推進にせよ、反原発にせよ、火の粉をかぶる覚悟で政策を取りまとめていこうという議員は自民党内にほとんどいない。選挙民を刺激するテーマは触りたくないという意識がミエミエなのだ。
 
 問題を見据えてきちんと議論することなく、時の流れにゆだねるというのが日本人の旧弊だろう。東日本大震災で引き起こされた、福島第一原発事故の教訓が生きていない。
 

2015年6月5日金曜日

原発依存度20% 認めちゃダメと小泉元首相

 
 小泉元首相が鹿児島市で脱原発の講演を行いました。
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原発問題「選挙で言ったこと忘れたのか」 小泉純一郎氏
朝日新聞 2015年6月4日
■小泉純一郎元首相
 原発事故後、政府も原発依存度をできるだけ低く、低減させると言っていた。それが今、これからも原発依存度を20%程度維持しなきゃならんと。認めちゃ駄目だ。原発を維持したいために、自然再生エネルギーが拡大していくのを防ぐ意図としか感じられない。選挙で言ったことを、もう忘れちゃったのか。
 
 核燃料を燃やした後のゴミ(使用済み核燃料)をどうするのか。依然として(最終処分場が)見つからない。再稼働すればどんどん増えていく。せめてもう一切増やしません、出しません。これまでのゴミ、そのための処分場は国民(に)協力してくれということじゃないと、各地域の住民は了解してくれない。
 
 ゴミの捨て場所を見つけない限り、産業廃棄物業者は作ることができない。核のゴミは産廃以上に危険だ。捨て場所がないのに国はなぜ(再稼働を)許可するのか。捨て場所を九州電力は確保しているのか。(鹿児島市のホテルで行った講演、会見で)
 

電源構成案 原発優先は「公約違反」

 経産省の有識者会合「長期エネルギー需給見通し小委員会」は1日、2030年に必要な電力の20~22%を原発、22~24%を再生可能エネルギーで賄うとする報告書案を大筋で了承しました。複数の委員から反対意見が出されましたが、最終的に委員長一任を取り付けました。2日から1カ月間意見公募を実施し、7月には正式に決定します。
 
 まず問題になるのは再生可能エネルギー(以後「再生エネ」と略します)の比率の低さで、すでにある水力発電を除くと、風力発電と太陽光発電だけの合計は2030年の段階で僅かに9%弱に過ぎません。
 これは再生エネの割合が2014年度上半期で、ドイツ30%、スペイン50%、イタリア40%、デンマーク40%など、欧州の現状に比べて異常に低い値です※。中国でも現在ものすごい勢いで再生エネの比率が伸びています。
※ 5月27日 自然エネルギー発電が決定的に遅れている日本
 
 現状は、全原発が停止中でも電力は十分に賄えているのですから、コストメリットもなく危険で問題山積の原発は当然ゼロになるべきものです。それを敢えて20~22%という高比率にするために、再生エネの比率を世界の趨勢に反して異常に抑制したものと思われます。
 そもそも経産省の提案は、政府が昨年4月にまとめたエネルギー基本計画:「可能な限り原発への依存度を引き下げ、再生エネを拡大する」にも反する「公約違反」のものです。
 東京理科大の橘川武郎教授と名古屋大大学院の高村ゆかり教授は経産省の提案に反対を表明しましたが、同省がメンバーを選んだ小委員会なので多勢に無勢で押し切られました。
 
 ところで原発の運転期間の限度を40年にすれば2030年には自然に比率が15%程度に下がるのに、なぜ20~22%なのでしょうか。それは40年を超えた原発を次々と20年延長させて運転することを想定しているからです。このままいくと2030年段階では、運転期間が40年超の原発が1/3を占めているという数値になります。
 中性子アタックに曝されている超高圧容器=原子炉を40年間も使い続けるということですら危険な綱渡りなのに、それを60年運転を常態にしようというのですから常軌を逸しています。規制委はどんな根拠でそれを認めようというのでしょうか。
 
 経産省は原子力ムラの利権を維持するために住民はおろか国自体を危険に晒そうとしているのに、有識者会議である小委員会もそのことを阻止できないという構図になっています。
 
 老朽原発を使い続けるのではなく原発の新設、増設を視野に入れたものという見方もあります。それもまた何のメリットもない原発を、「ムラ」の利益の維持のために敢えて作り続けようという話にほかなりません。
 
 北海道新聞の社説を紹介します。
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電源構成案 原発優先は「公約違反」
北海道新聞 2015年6月4日
 経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会が、2030年の電源構成比率で、原発を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%とする政府案を了承した。
 意見公募を経て、7月中にも正式決定される。
 原発維持を優先したエネルギー政策の将来像が、このまま決まってしまうのは納得できない。
 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、原発に頼らぬ社会を目指す民意にも反している。
 一部委員は、再生エネの導入を最大限加速し原発依存度を可能な限り低下させるとうたった安倍晋三政権のエネルギー基本計画との食い違いを指摘し、「公約違反」と批判した。正論である。
 そもそも、原発比率20~22%という想定自体がおかしい。原発の運転期間を原則40年に制限するルールを厳密に適用すれば、30年には比率は15%程度に下がる。
 1回に限って最大20年の延長が認められるが、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「相当困難」との見方を示した。
 あくまでも例外である40年超の運転を前提とした政府目標は、福島の事故の教訓から独立性を与えられた規制委の審査に対して圧力となる恐れもある。
 政府は、電力各社が安全対策を強化することで、過酷事故の発生確率は低下すると主張する。
 だが、政府の想定通りであれば、30年には多くの老朽原発が稼働することになる。そんな状況で、なぜ事故リスクが減るのか、国民は理解に苦しむだろう。
 
 規制委の有識者調査団は、北陸電力志賀原発(石川県)の敷地内に活断層がある可能性を指摘した。評価が確定すれば、活断層認定は3例目で再稼働は困難だ。
 こうなると、原発比率の目標達成を理由に、経産省が近い将来、原発新増設を持ち出してくるのは想像に難くない。
 再生エネの比率は原発をわずかに上回っただけだ。固定価格買い取り制度で電気料金に上乗せされる賦課金の負担を抑えるため、太陽光と風力が抑えられた。
 しかし、20年間の買い取り期間が終了すれば、賦課金は減少していく。輸入に頼る化石燃料とは異なり、国産の再生エネに投じられた資金は、自治体や地域住民を含む国内事業者に回る。
 政府案は、こうした可能性にあえて背を向けている。
 最初から「原発ありき」の審議会方式で、エネルギー政策の議論を終わらせてはならない。
 

2015年6月4日木曜日

福島第一原発の作業の実態 元作業員が7日に講演

 都内の郵便局を定年退職後福島原発の三次下請会社に就職し、昨年8月から今年4月末まで全面マスク等を着用しながら作業を続けた池田さんは、休日が日曜日だけになって週末に東京の妻のところに戻れなくなったことなどから退職しました。
 そして「もう現場に戻らない。東電の発表でなく、生の声を伝えよう」と決意して、7日に実名で現場作業の実態を話すことにしました。
 
 何よりも驚くことは、過酷な労働であるにもかかわらず、手当てが1日わずか1万円で、危険手当が4千円という安さであることです。東電はそれよりも遥かに高額な賃金を支払っているのですが、上位の元請・下請会社にピンハネされる結果です。そのため三次下請けはまだ相対的に上位の方であるにもかかわらずこの額になっています。
 
 危険手当(日額)については、東電は13年12月から、マスク着用なら2万円、ボンベやアノラック着用なら3万円、タングステンベスト着用なら3万円以上を元請に支払っている筈です。(共産党 塩川哲也衆院議員HP2014.9.4より
 この滅茶苦茶な中間ピンハネは以前から問題になっていましたが、いまだにその実態は変わっていないということです。
 東電の工事代金の原資は電気料金であり税金です。それがそんな風に横取りされているわけです。
 
 放射線の管理は比較的徹底されていたようですが、休日が契約とは違っても、「上意下達でものが言えない軍隊みたいな世界」だったということです。
 
 池田さんは八王子市で開かれる福島現場の「現状や労働環境を聞く会」(7日)で講演します。
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福島第一原発 事故処理実態伝えたい
 元作業員・池田さん八王子で7日講演
東京新聞 2015年6月3日
 東京電力福島第一原発で事故現場の処理に携わっていた元作業員男性を招き、現状や労働環境を聞く会が7日、八王子市で開かれる。実名で話す世田谷区の池田実さん(62)は「誰かがやらなくてはいけない仕事。大変な現場を経験した者として情報発信したい」と話す。 (村松権主麿)
 
 池田さんは高校卒業後、都内の郵便局で勤務し、二〇一三年三月に定年退職。再雇用も考えたが、「原発事故は日本の大きな転換点。事故現場で働き、役に立ちたい」と、ハローワークで仕事を探した。六十歳以上の募集は見つからず、昨年二月から福島県浪江町で除染作業に従事した後、原発で作業をする三次下請けの会社に採用された。
 昨年八月から今年四月末まで九カ月働き、その大半は、手付かずだった施設の整理を担当。書類や機器などを分別し、コンテナに収納した。早朝、いわき市の寮を車で出発し、約五十分かけて午前六時半ごろ原発に到着。本人確認をして防護服に着替え、同九時から昼ごろまで作業をした。
 顔に全面マスク、胸には線量計。一日の被ばく許容量は〇・八ミリシーベルト。その五分の一を超えるとアラームが鳴り、一日に三回鳴ると退避する決まり。その経験はないが、一回鳴ったことは計三日あった。
 「被ばく量管理はしっかりされていた」が「放射線は痛みもにおいもない。時限爆弾を抱えていくよう。将来、『爆発』しない保証はない」と不安を感じる。死亡事故もあり、危険と隣り合わせだが、労働条件は決してよくないという。
 
 池田さんの場合、一日一万円の賃金と危険手当四千円で、月の手取りは約二十七万円。ボーナスはなく、年収では郵便局の再雇用とあまり変わらない。「危険なのに賃金が安く、危険手当などに格差がある。多重の下請け構造が問題。国は雇用や労働環境の整備にも関与すべきだ」
 四月初め、担当の仕事が変わった。使用済みの防護服を圧縮した袋を開き、小分けする作業で、休みは日曜だけ。週末に妻(61)の待つ東京に帰れなくなった。「土日と祝日が休みの契約とは違った。上意下達でものが言えず、軍隊みたいな世界」。八畳間に二人で寝起きする生活に苦痛を感じ、「帰ってきて」という妻の言葉で福島を離れた。
 
 今年一月と五月、労組に関わる知人らの依頼で、原発での経験を話す会に匿名で出席した。「もう現場に戻らない。東電の発表でなく、生の声を伝えよう」と今回、実名で話す決心をした。
 八王子の会の題名は「いま福島原子力発電所は?~事故処理に働く人の生の声を聴こう」。北野市民センター(京王線北野駅北口)で午後二時~四時半。資料代五百円。問い合わせは、同市を拠点に市民講座を企画している団体「まなび・つなぐ広場」=電070(5567)0168=へ。