2025年4月19日土曜日

19- 原発再稼働の是非問う県民投票条例案 新潟県議会 反対多数で否決

 柏崎刈羽原発再稼働の是非を問う県民投票条例案の審議は、特別委員会での16~18日の審議を経て18日午後、県議会臨時会において裁決が行われ、条例案は反対36票、賛成16票で否決されました。
 18日午前には特別委員会が開かれて、法案の裁決が行われました。県議会議員全員が特別委員会の委員になっているため、賛成反対の内訳は本会議と同様でした。

 13年1月の県議会に引き続いて今回も、県民が原発再稼働について意思を表明する機会が奪われたのは残念なことです。
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原発再稼働の是非問う県民投票条例案 特別委 反対多数で否決
                 NHK新潟 NEWS WEB 2025年04月18日
東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票の条例案は県議会の特別委員会で反対多数で否決されました。
この結果、条例案は、午後に開かれる本会議でも否決される見通しとなりました。
柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票の条例案を審議している県議会の臨時会は18日最終日を迎え、午前は特別委員会が開かれました。
この中で、最大会派の自民党の議員は「再稼働の是非について賛成または反対の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できない。原発の再稼働問題は、高度な専門知識を有する極めて複雑なテーマであり、県民投票の対象としてふさわしくない」などと述べ、反対する考えを示しました。
野党系会派の「未来にいがた」の議員は「国が再稼働への地元理解を求めるなどかつてない状況において県民の関心が高まるのは当然で、知事が県民の意思を確認する方法を明らかにしない以上、県民投票を求める声は妥当だ」などと述べ、賛成する考えを示しました。
続いて採決が行われ、条例案は自民党などの反対多数で否決されました。
この結果、条例案は午後に開かれる本会議でも否決される見通しとなりました。
一方、野党系会派の「未来にいがた」や「リベラル新潟」は、本会議で、花角知事が条例案の「知事意見」で指摘した、県民投票を執行する際の選挙事務に関わる文言などを見直した修正案を共同で提出することにしています


原発再稼働の是非問う県民投票条例案 反対多数で否決
                 NHK新潟 NEWS WEB 2025年04月18日
新潟県議会の臨時会は18日最終日を迎え、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票の条例案は、反対多数で否決されました
これにより、条例案による県民投票は、行われないことになりました。
柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票の条例案を審議している新潟県議会の臨時会は18日最終日を迎え、午後からは本会議が開かれました。

はじめに、18日午前に行われた特別委員会で条例案が反対多数で否決されたと報告されました。
次に、「知事意見」を受けて、野党系会派の「未来にいがた」と「リベラル新潟」が共同で提出した、県民投票を執行する際の選挙事務に関わる文言などを見直した修正案についての趣旨弁明が行われました。
このあと討論が行われ、最大会派の自民党は「原発再稼働の是非の県民投票という手段はあまりにも多くの総合的な判断が必要で、一般有権者の判断を超える。政策判断は専門的な立場による意思決定がなければ、責任も安全も、公平性も保てない」と述べ、反対の考えを示しました。
これに対し、野党系会派の「未来にいがた」は「住民投票は、間接民主主義を補完するものとして意義があり、広く県民の意思を確認することになる。知事が県民の意思を確認する方法を明らかにしない以上、県民投票の実施を求めることは妥当だと考える」と述べ、賛成の考えを示しました。
このあと採決が行われ、修正案は反対36票、賛成16票と自民党などの反対多数で否決されました。
そして条例案の原案も反対36票、賛成16票と、自民党などの反対多数で否決されました。
これにより、この条例案による県民投票は行われないことになりました。

東京電力が目指す柏崎刈羽原発の再稼働をめぐっては地元の同意が焦点になっていて、新潟県の花角知事は、安全対策や事故の際の避難計画などを踏まえた上で、是非を判断する考えを示しています。

【市民団体「引き続き声を上げていく」】
署名を提出した新潟県内の市民団体、「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」の事務局の吉田裕史さんは本会議のあと記者団に対し、「原発に対する不安がある中で、県民の意思を表示したいという声を受けて署名を集めてきた。3日間の審議の中で『二者択一では多様な県民の意見の把握はできない』と言われたが、返す言葉もなく否決され、非常に不安が残っている。引き続き声を上げていきたい」と述べました。

【花角知事「丁寧に議論進める」】
柏崎刈羽原発の再稼働の是非をめぐる県民投票の条例案が否決されたことについて、花角知事は本会議のあと記者団に対し「特に所感はありません」と述べました。
その上で自身の判断について、「県民の関心が高まってきている。丁寧に議論を進めてどこかの段階で判断し、結論を出したい」と述べました。
また、県民の意思を確認する方法については、まだ決めてるものはないとした上で、「私は7年間、一貫して『信を問う方法が責任の取り方としては明確で重い』と述べてきている」と説明しました。

【自民党「真剣に慎重に質疑」】
条例案に反対した自民党の岩村幹事長は本会議のあと記者団に対し、「過去の事案の研究などもして極めて深く真剣に慎重に質疑をしたなかで結論が出たと思う」と述べました。
そのうえで、柏崎刈羽原発の再稼働の是非をめぐる今後の議論について「知事の答弁にもあったように『材料が出そろいつつある』ということだが、避難対策の不安がまだ解消されていない。緊急時対応などいくつか残っているところがあるので、そのあたりを見極めながら党としても議論を進めていく」と述べました。

【未来にいがた「手段得られず残念」】
条例案に賛成した野党系会派「未来にいがた」の大渕代表は、本会議のあと記者団に対し「知事が県民の意思を確認する方法として、県民投票条例が成立したり、そうでなくても具体的な手段が明らかになったりすればよかったが、いずれの結果も得られなかったのは残念だ」と述べました。
そのうえで、柏崎刈羽原発の再稼働の是非をめぐる今後の議論について「勇み足や見切り発車で強引な判断をすることがないようしっかりとした議論を行い、知事が判断したあと信を問う段階では県民投票や県知事選挙を行うのが筋だと問うていきたい」と述べました。

【リベラル新潟「非常に残念」】
条例案に賛成した野党系会派「リベラル新潟」の小泉幹事長は、本会議のあと記者団に対し「予測された結果ではあったものの、非常に残念だ」と述べました。
そのうえで、柏崎刈羽原発の再稼働の是非をめぐる今後の議論について「市民団体とはこれからも連携しながらどのようなことができるのか、一緒に考えていきたい。最終的な目標は県知事選挙だと考えており、花角知事の任期満了までの1年あまりで、どのような活動や議論ができるのか、会派として検討していきたい」と述べました。

【傍聴人から声あがる】
議会事務局によりますと、18日の本会議には213人の傍聴人が訪れました。
条例案が反対多数で否決され、臨時会が閉会すると、傍聴人からは「県民の声を聞け」とか「主権者は県民だ」といった声があがっていました。
また、18日午前の特別委員会では、傍聴席から不規則な発言をしたとして委員長から退場を命じられた傍聴者が応じず、議事が進行ができなくなったため、委員会が一時休憩するなど混乱する場面もありました。

【市民団体がコメント発表】
署名を提出した市民団体、「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」は条例案が否決されたことを受けてコメントを発表しました。
この中で、「14万3196人の県民の切実な願いが実を結ばず、原発再稼働に関する意思表示の機会が奪われ、その思いを明らかにするための具体的な方策も示されなかったことは、大変残念だ」としています。
その上で、「花角知事が県民の意向を把握する方法も示さず、『信を問う方法が最も重い』などと答弁しながら具体的な手法を明らかにしなかったのは、きわめて不誠実だ」と指摘しました。
そして、「知事は『多様な意見の把握』をあらためて約束した。県政への信頼を損ねることのないよう、その具体的方法を明らかにし、実施することを求める」としています。

2025年4月17日木曜日

柏崎刈羽原発の再稼働巡り、県民投票条例案の審議開始

 柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を審議する新潟県議会4月臨時会が16日、開会しました。臨時会は条例制定を求める市民団体の直接請求を受けて招集されたもので、本会議では市民団体代表者が県議会に対し条例を成立させるよう訴えました。条例案は最終日の18日に採決されます
 なお意見陳述を聞く傍聴者で傍聴席はほぼ満員となったということです。

 17日と18日の特別委員会は10時開会です。インターネットで視聴することができますので、下記をクリックして新潟県庁のホープページにアクセスして下さい。
        インターネット中継
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柏崎刈羽原発の再稼働巡り、県民投票条例案の審議開始 新潟
                           毎日新聞 2025/4/16
 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を審議する新潟県議会4月臨時会が16日、開会した。臨時会は条例制定を求める市民団体の直接請求を受けて招集され、本会議では市民団体代表者が県議会に対し、条例を成立させるよう訴えた。条例案は最終日の18日に採決される。
  【写真】柏崎刈羽原発の内部は・・・
 同じ趣旨で招集された臨時県議会は2013年1月以来12年ぶり。この日の本会議の冒頭で「直接請求に係る条例審査特別委員会」の設置が議決され、引き続き本会議場で特別委が開かれた。
 特別委では市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」世話人で請求代表者の水内基成弁護士らの意見陳述があり、水内氏は「県民に主権を行使する機会を与え、再稼働の是非に向き合わせてほしい」などと訴えた。
 意見陳述で水内氏は、花角英世知事が18年の初当選以来、再稼働の是非に関して「県民に信を問う」と繰り返し言及しているが、現在まで「その具体的な方法や時期を明らかにしていない」と指摘。一方で、柏崎刈羽原発では7号機への燃料装着の完了など再稼働に向けた動きが加速しているとして、「一体いつ県民の声を聞いてもらえるのか」との不安から、今回の直接請求に向けた活動を開始したと説明した。
 そのうえで水内氏は、直接請求に署名した県民14万3196人は、原発再稼働に「賛成か、反対か、二択での県民投票実施を望んでいる」と主張。知事が政府から求められている再稼働への同意も「二択ではないか」と述べ、知事が賛否二択の県民投票では「県民の多様な意見を把握できない」などと慎重姿勢を示した条例案への意見書に反論した。

◇各会派からの代表質問も
 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を審議する県議会特別委員会は16日、意見陳述に続き、花角英世知事らに対する代表質問を実施した。
 自民党の質問者は、東電福島第1原発事故を受けた原子力への危険性認識を「強い感情」と表現。十分な情報を持たない県民が県民投票に臨めば「過去の恐怖や不安に基づく感情的判断に偏る」と指摘した。
 質問したのは中村康司氏(自民)。中村氏は福島事故で「多くの住民の間で原子力は危険であるという強い感情が根付いている」と言及。県民投票が感情的判断に偏る可能性をただした。
 これに対し、花角知事は、県民投票を行う場合は「県民に正確な情報の提供・共有を図る」と述べるにとどめた。
 また、中村氏は、県民投票で社会の分断が深まる可能性について質問。花角知事は「地域社会で不和等が生じる可能性を見通すことは困難だ」と答えた。

 このほか、樋口秀敏氏(未来にいがた)、小泉勝氏(リベラル新潟)が代表質問した。 

柏崎刈羽原発巡る県民投票条例案 直接請求の市民団体メンバーが実現求め県議会で意見陳述

 16日に始まった新潟県議会臨時会で、柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を直接請求した市民団体のメンバーらは、花角英世知事や県議に県民投票の実現を強く訴えかけました
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署名14万人超の重み強調、直接請求の市民団体メンバーが実現求め県議会で意見陳述 柏崎刈羽原発巡る県民投票条例案
                            新潟日報 2025/4/17
「県民投票条例の成立という大きな花を咲かせてほしい」-。16日に始まった県議会臨時会。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を直接請求した市民団体のメンバーらは、花角英世知事や県議に県民投票の実現を強く訴えかけた。
  県民投票条例案、県議会で審議始まる 花角知事は繰り返し課題指摘
 市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」による直接請求を基に行われる県議会の審議初日。主婦や学生を含む会のメンバー8人は意見陳述の席に立ち、はっきりとした口調で意見を述べた。
 「これだけの県民が再稼働に賛成か、反対か、二択での県民投票を望んでいる」。会の世話人で弁護士の水内基成さん(47)は...
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柏崎刈羽原発巡る県民投票条例案、県議会で審議始まる 花角英世知事は繰り返し課題指摘
                             新潟日報 2025/4/16
 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を審議する県議会臨時会が16日、開会し、論戦が始まった。市民団体から直接請求を受け、意見を付した条例案を本会議に提案した花角英世知事は「『賛成』『反対』の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できない」と、繰り返し課題を指摘。代表質疑では、知事に同調し県民投票実施に慎重姿勢を示した自民党に対し、非自民系会派は「県民の意見を聞く有効な方法」と知事に実現への同意を訴えた
 条例案は市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」(請求代表者・水内基成弁護士ら)が、14万3196人分の...
   (以下は会員専用記事のため非公開 残り562文字 全文:839文字)

市民団体 柏崎原発再稼働の工程表、説明・意見交換の場を 資源エネ庁に申し入れ

 市民団体「規制庁・規制委員会を監視する新潟の会」(桑原三恵代表)は15日、東電が作成した柏崎刈羽原発7号機の再稼働に向けた「工程表」について、経産省資源エネルギー庁に対して説明や意見交換の場を設けるよう申し入れました。
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柏崎刈羽原発7号機の再稼働巡る「工程表」、説明・意見交換の場を 市民団体が資源エネルギー庁に申し入れ
                            新潟日報 2025/4/16
 東京電力柏崎刈羽原発7号機の再稼働に向けた「工程表」を、本県関係者が政府筋から示されていたとする本紙報道を巡り、市民団体「規制庁・規制委員会を監視する新潟の会」(桑原三恵代表)は15日、経済産業省資源エネルギー庁に説明や意見交換の場を設けるよう申し入れた
  柏崎刈羽原発を「2025年夏に再稼働」…政府が描いた青写真
  原発問題に関する記事の一覧
 同会はエネ庁に対し、工程表を巡る報道や第7次エネルギー基本計画の柏崎刈羽原発に関する記載について、説明や意見交換を求めている。
 石破茂首相、武藤容治経産相、エネ庁の村瀬佳史長官に宛て、エネ庁柏崎刈羽地域担当官事務所(柏崎市)を通じて申し入れた。
 提出前に県庁で記者会見を開いた同会は、...
   (以下は会員専用記事のため非公開 残り110文字 全文:382文字)

柏崎刈羽原発6号機、非常用発電機が自動で停止

 柏崎刈羽原発6号機の非常用ディーゼル発電機24時間運転の自主検査を終えた後の15日に、外部電源から非常用発電機に電気が逆流することを防ぐ保護装置が作動し、停止操作をする前に自動停止しました。東電が詳しい経緯を調べています
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柏崎刈羽原発6号機、非常用発電機が自動停止 東京電力「外部への放射能の影響なし」
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 東京電力は16日、柏崎刈羽原発6号機の非常用ディーゼル発電機で24時間運転の自主検査を終えた後の15日に、発電機の停止操作をする前に出力が下がり、自動停止したと発表した。外部への放射能の影響はないとしている。
 ・柏崎刈羽原発6号機で発煙、変圧器が焦げる
 ・柏崎刈羽原発7号機原子炉建屋内で、また油漏れ
 ・柏崎刈羽原発7号機原子炉建屋内の非常用発電機で油漏れ

 東電によると、非常用発電機は原子炉建屋1階の放射線非管理区域にある。今回の検査は、再稼働を目指す中で行った自主的な検査。外部電源から非常用発電機に電気が逆流することを防ぐ保護装置が作動して停止したという。
 発電機の外観や操作手順に異常は確認されておらず、保護装置が作動した原因は不明で東電が詳しい経緯を調べている。6号機の非常用発電機は他に2台あり、...
   (以下は会員専用記事のため非公開 残り255文字 全文:536文字)


柏崎原発、非常発電機が自動停止 東京電力が原因調査「影響なし」
                            共同通信 2025/4/16
 東京電力は16日、新潟県の柏崎刈羽原発6号機の非常用ディーゼル発電機1台が試験中に自動停止したと発表した。外部への放射能の影響はなく、他の発電機で機能をまかなえるとしている。

 東電によると、15日午前11時10分ごろ、6号機原子炉建屋の1階で、発電機の動作確認を終えた後、出力が下がり停止した。東電は原因を調べる。 

17- 屋内退避目安は3日間 規制委報告書案に自治体から疑問の声

 週刊金曜日に掲題(趣旨)の記事が載りました。4月14日付となっているものの、実際には3月以前に書かれた記事と思われますが、「屋内退避」に伴う問題が指摘されているので紹介します。
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原発事故時「屋内退避の目安は3日間」の規制委報告書案に自治体から疑問の声
                           週刊金曜日 2025/4/14
 原発が冷却機能を失うなどの大事故を起こし、住民に放射線による影響が生じる可能性が高い状況を、政府は「全面緊急事態」と呼んでいる。原子力規制委員会(以下、規制委)が策定する原子力災害対策指針(以下、指針)では、この事態が発生した時、半径5キロメートル圏内(PAZ)の住民は遠方へと避難し、半径5~30キロ圏内(UPZ)の住民は「屋内退避を原則実施しなければならない」と定めている。規制委の検討チームは2月5日、この屋内退避期間の目安を「3日間」などとする報告書案を議論した。屋内退避の具体的期間などは現在の指針にはなく、原発周辺の自治体から求められていたものだ。ただ、検討チームのメンバーからは、説明や実施の難しさを指摘する意見などが相次いだ

今回の指針見直しは昨年1月、規制委が東北電力女川原発の地元や周辺自治体の首長との意見交換をきっかけとしたものだ。
 一部地域がUPZ内にある宮城県美里町の相澤清一町長は、規制委側にこう問題を提起した。
「原子力災害対策指針に基づき各市町が避難計画を策定しているが、実効性の確保が大きな課題になっている。指針には『段階的な避難やOIL(運用介入レベル)に基づく防護措置を実施するまでは屋内退避を原則実施しなければならない』とあるが、長期の屋内退避による心身の健康リスク、物資の枯渇、支援物資が届けられないなどの別のリスクもある。屋内退避は誰が何を基準にするのか」

実行の厳しさを指摘
 こうした問題提起を受けて、規制委は検討チームの発足を決定。原子力規制庁が報告書案の起草を務め、有識者や自治体関係者らもメンバーとなる検討チームが昨年4月から議論を重ねてきた。
 報告書案は、屋内退避について原発事故によって発生したセシウム137などの粒子状物質を含む放射性雲プルームによる「被ばくの低減を目的とする防護措置」と説明し、「プルームが通過してその地域に存在しなくなっている時点では、もはや屋内退避を継続する必要性は乏しい」と述べた。

 そのうえで災害対策基本法に基づき政府が策定する防災基本計画で、災害全般への備えとして水や食料の備蓄量を「最低3日間分、推奨1週間分」としているのを踏まえ、3日間を屋内退避の継続期間の一つの目安とする」と具体的な日数を示した
 報告書案を起草した原子力規制庁は同日、屋内退避に関して詳しく解説したQ&A案も検討チームメンバーに提示した。関係する自治体が、住民から説明を求められた場合に分かりやすく伝えるためのものだ。
 その中で、屋内退避を3日間とした根拠については ①原発事故が全面緊急事態のレベルにあり、屋内退避の解除には数日かかる ②災害時に生活を維持するための物資の備蓄量としては最低3日間とされている ③長期に屋内に留まるのは生活にストレスを与える―と述べている。
 ただ、その一方で報告書案では、実際には自然災害と原子力災害が同時に発生する「複合災害」になると思われることから、自然災害の後に原発が全面緊急事態になり、屋内退避が開始される時点では3日分の備蓄が残っていない場合も想定されると指摘。こうした場合には、「(国が)屋内退避の継続が可能であるかを判断する必要がある」と述べている。
 2月5日の検討チームの会議では、メンバーから「屋内退避の目安を3日間」にすることへの異論は出なかった。しかし、実際にこの内容で対応できるのかという疑問が強く示された。たとえば宮城県庁の担当者は「よくまとめていただいたが、自治体としてはやはりこれを実行していくのは、なかなか厳しい。(災害時に)食料はどこでもなくなってくる。この場合には(避難は)全域を考えざるをえないのではないか」などと指摘した。

 報告書は、指摘された点などを反映したうえで、3月にも正式にまとめられる予定だ。

2025年4月15日火曜日

15- 会報NO.33のテキスト版を掲示します

「原発をなくす湯沢の会会報 NO.33」が4月14日付で発行されました。そのテキスト版を掲示します。今回は4月16~18日の「県民投票条例案審議の臨時県議会を傍聴しよう」のリーフレットも一緒です。
同会報リーフレットPDF版は下記のURLをクリックすると開きます(下にスクロールするとリーフレットが現れます)
https://drive.google.com/file/d/144I4wGIZSjhiy00ACuWhp0VFPZ4rDUUK/view?usp=sharing 

 以下に,会報のテキスト版を紹介します。
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 原発をなくす湯沢の会会報 NO33  2025.4.14


 残雪のせいでしょうか4月になっても寒い日が続きます。湯沢らしい芽吹きの春はこれ
からのようです

■「原発県民投票条例案」最大の山場に
  前回の会報で、「柏崎刈羽原発再稼働の是非を問う県民投票条例の直接請求署名」
 について報告しました。
  湯沢町では、選管の審査を得て777筆が有効署名数となり、県全体の署名数
 143,196筆とともに3月27日に県知事に提出(本請求)されました。
  新聞等でご承知のように、請求に基づく「県民投票条例案」には県知事が意見を付
 し県議会に提出され、今月16日から3日間審議されることになっています。署名運
 動に力を尽くしてきた私だちとっても、いよいよ最大のハードルを迎えることにな
 ます。
  花角県知事は、「県民投票による賛成または反対の二者択一の選択肢では、多様な
 意見を把握できない。」との意見を付けつつ、条例案への賛否は明らかにしておらず、
 相変わらずはっきりしない姿勢を取り続けています。
  県議会の中では、かつて2012年に同じような内容の条例案が審議され、十分な議
 論も行われないまま否決された時とはだいぷ違った状況が生まれているようです。原
 発再稼働の良し悪し(是非)はともかく、県民の意思を反映しようという点では、賛
 同できる議員も多くなっているのではないでしょうか。
  なお、地元選出県議会議員の松良道さんを4月4日に訪問し、条例案に賛成して
 ほしい旨の要請を行ってきました。湯沢からは当会事務局の南雲(敏)が、南魚沼地
 域からは署名活動を推進してきた女性の方2人が参加しました。松原県議は「私は以
 前から原発には反対だ。」と明言していましたが、県民投票条例案への賛否は明らか
 にしてくれませんでした。
  松原県議をはじめ、県議会で何とか過半数の賛成が得られることを願うばかりです。

■2025年度総会を実施します。県民投票条例の結果が出ますので、その報告もあります。

       2025年度総会とDVD上映のご案内

  日時 4月27日(日)午後1時30分~同3時30分
  場所 湯沢町公民館 3F会議室
  議題 2024年度の活動報告と2025年度活動計画他
   総会終了後DVDを上映します
   「約束はどこへ 原発事故14年 さまよう除染土」【NHKスペシャル】
                   (変更する場合あり)


  (会報発行責任者 原発をなくす湯沢の会事務局 南雲敏夫 Tel 090-2674-9414)

2025年4月14日月曜日

県民投票条例案に対する新潟県知事の意見について(田中淳哉弁護士)

「憲法カフェ」でおなじみの田中淳哉弁護士が、ご自身のホームページに掲題のブログを掲載されました。
 県民投票条例案に対する新潟県知事の意見は、8日付新潟日報に載りましたが、田中弁護士はその翌日、それについて詳細に検討した結果を発表されました。
 知事の意見の骨子は下記の2つの項目でした。
1.二者択一の選択肢で再稼働の是非を判断することの適否について、
2.執行上の課題があることについて
 田中氏は1.については、
 「住民投票の意義・目的は以下の3点にあり、もともと多様な意見を把握する点にはありません」として、「国が特定の地域を狙い撃ちにすることを防ぐために規定された憲法95条の趣旨に照らせば、県民投票はむしろ実施されるべきものと言えるでしょう」と、「知事の疑念」を明快に退けました。
 ① 住民に意見表明を行う機会を提供する
 ② 投票までの取り組みによって対象となる問題に関する住民の理解が深まる
  ③ 住民の意思を全国、全世界に向けて広く発信することができる

 また 2.については、
(1)公務員の政治的行為を制限する法令に抵触する可能性があるという点について
(2)開票事務の主体が整理されていないという点について
のそれぞれについて 従来のケースを挙げて問題のないことを明らかにしました。詳細はブログを参照ください。

 なお、16~18日の臨時県議会の様子は議場傍聴席では勿論、インターネット(生中継、録画中継)でも視聴できるということで、記事の末尾で その具体的方法に辿りつけるようになっています。どうぞ活用してください。
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県民投票条例案に対する新潟県知事の意見について
                  上越中央法律事務所2025年4月9

知事意見の概要

新潟県の花角知事は、4月8日、「東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する新潟県民投票条例案に対する意見」を公表しました。

意見の内容は、以下の2つの項目に分けられていますので、順番に検討します。

  1. 二者択一の選択肢で再稼働の是非を判断することの適否について、
  2. 執行上の課題があることについて

二者択一の選択肢で再稼働の是非を判断することの適否について

(1)知事意見の要旨

知事の意見の核心部分は、①再稼働の是非については、国のエネルギー政策上の必要性、施設の安全性、避難計画の実効性、東京電力に対する信頼性など、多岐にわたる観点から議論されてきていること、②地域や国の経済・雇用、気候変動問題にも関わる広範で複雑な問題であることを指摘したうえで、③既に県民から様々な意見が寄せられているが、二者択一の選択肢では多様な意見を把握できないというものです。

(2)住民投票の意義・目的に照らして

しかし、住民投票の意義・目的は以下の3点にあり、もともと「多様な意見を把握する」点にはありません。

  1. 住民に意見表明を行う機会を提供する
  2. 投票までの取り組みによって対象となる問題に関する住民の理解が深まる
  3. 住民の意思を全国、全世界に向けて広く発信することができる

いま、「国策」として柏崎刈羽原発の再稼働が強力に推し進められようとしています。そのために政府から県議会議員に対して秘密裏に働きかけがなされたり(政府が2025年夏の再稼働に向けた工程表を作成していたことを報じる新潟日報記事)、経済団体のトップが相次いで柏崎刈羽原発を視察して早期の再稼働の必要性を強調したり(経団連会長の視察について報じる日経新聞記事経済同友会代表幹事らの視察について報じるTBSニュース東京商工会議所会頭の視察について報じる新潟日報記事)、国際機関のトップが柏崎刈羽原発を視察したうえで政府にも早期再稼働を要請したりしていることが報じられています(IAEAトップの視察について報じるNHKニュース)。

このように、「全体の都合」が強調され、地元自治体にのみリスクが押しつけられようとしている状況の下で、県民が意見を表明することには、極めて重大な意義があります。国が特定の地域を狙い撃ちにすることを防ぐために規定された憲法95条の趣旨に照らせば、県民投票はむしろ実施されるべきものと言えるでしょう。

このような住民投票の本来の目的や意義については何ら触れることなく、それとは別のものを持ち出してきてその点が不十分などといってケチをつけるのは、極めて不当であり、不誠実です。

(3)多様な意見を把握する方法はたくさんある

また、「多様な意見を把握する」ための方法としては、公聴会、アンケート、パブリックコメントなどが考えられます。デジタル技術が飛躍的に発達した現代では、その気になれば「多様な意見を把握する」方法は他にいくらでもあるでしょう。

いずれにせよ、「多様な意見を把握できない」ことは、県民投票を実施しない理由にはなり得ません。

(4)まとめ

知事は、意見の冒頭部分で、短期間に14万3000余筆もの署名が集まったことについて「大変重く受け止める」としています。しかし、今回公表された知事の意見は、たとえて言えば「あそこのカレー屋さんは確かにおいしいが、そこに行ってもラーメンを食べることはできない」と言っているようなものです。本当に重く受け止めているのであれば、このように透かした意見にはならないのではないでしょうか。

署名した14万3000人余の県民は、県知事の指摘を受けるまでもなく、原発再稼働が多岐にわたる観点から議論されている、広範で複雑な問題であることは重々承知の上で、二者択一での意見表明を求めている訳です。その思いを真摯に受け止めて、誠実な意見を出していただきたかったと思います。

執行上の課題について

執行上の課題については、主に2つの点が指摘されています。1つは、公務員の政治的行為を制限する法令に抵触する可能性があるという点があるという点で、もう1つは、開票事務の主体が整理されていないという点です。

これらは実施するうえでの課題ということなので、それを以下のような方法で解決すればよく、県民投票を実施しない理由にはなりません(知事も実施しない理由として挙げている訳ではないと思われます)。

(1)公務員の政治的行為を制限する法令に抵触する可能性があるという点について

知事は、「何人も」県民投票運動を自由に行えるとする条例案の条項が、公務員の政治的行為を制限する法令に抵触する可能性があるとしています。

規定の性質に照らすと、条例によって法律の制限を緩和しうるものではないため、原案の文言でも問題はないものと思われます。

ただ、誤解を招かないようにするために、「何人も」を削ることもあり得るとは思います。沖縄の県民投票条例でもそのように規定されています。

(2)開票事務の主体が整理されていないという点について

知事は、開票事務を知事が行うのか選挙管理委員会が行うのかについて整理されておらず、条例案の規定では市町村の協力を得ることができないとしています。

開票事務について県が市町村の協力を得るための方法には、以下の3つがあります。沖縄の県民投票では、1.の方法により実施されており、今回も同様の方法によることに大きな問題があるとは思われません。ただ、3.の方法による方が適切との意見もあるため、そちらに変更することもあり得ると思います。

  1. 条例による事務処理特例制度(地方自治法252条の17条の2)
  2. 地方自治法の事務の委託(同法252条の14)
  3. 事務の代替執行(同法252条の16の2)

この点については、鹿児島大学の宇那木正寛教授が『自治体法務研究』で、鹿児島大学の宇那木正寛教授が「住民投票制度の現状と課題①~③」としてまとめて下さっています。

県議会での議論に注目しましょう

知事の意見は、以上に述べたとおり、非常に不誠実で、残念なものでした。しかし議会では、知事の意見に縛られることなく、自由に議論することができます。

条例案の審議は、4月16日から18日にかけて開催される臨時県議会で行われます。

議会は、誰でも傍聴することができます(詳細はこちらのページをご確認ください)。また、インターネット中継(生中継、録画中継)を視聴することも可能です。

1人1人の県議会議員が、私たちの民意を重く受け止め、真摯かつ誠実に議論に臨んでいるかどうか、しっかり見極めましょう。