中部電力 浜岡原発の耐震データ不正に関して 京都新聞と神戸新聞が掲題の社説を出しました。
京都新聞は経営トップの辞任や再稼働審査の取り下げは当然であり、組織と事業の根本的な見直しがないままの幕引きは許されないとして、浜岡原発は南海トラフ巨大地震の想定震源域内にあり、被災するリスクが大きいので、何よりも重要な耐震性能を不正に取り繕う事業者には任せられない(要旨)と手厳しく批判しました。
神戸新聞も、経営陣の姿勢が不正につながったと認定された以上引責辞任は当然として、問題の「基準地震動」のデータの捏造はあまりにも悪質で、そこには倫理意識の欠如と、「再稼働を正義とする」おごりが見られるとして、法令順守を軽視する体質を批判しました。
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社説:中電の原発不正 稼働担えぬ独善の病巣
京都新聞 2026/9/16
最優先すべき安全をないがしろにし、原発事業者で不正が横行していた。経営トップの辞任や再稼働審査の取り下げは当然であり、組織と事業の根本的な見直しがないままの幕引きは許されない。
中部電力は、浜岡原発(静岡県)の耐震データ不正について、社外の弁護士による調査委員会の報告書を公表した。
不正は遅くとも2012年度から始まり、耐震設計で目安とする最大の揺れ「基準地震動」を決める過程で、虚偽説明や隠蔽(いんぺい)などで評価数値208件の不適切行為を確認したとされた。
背景に早期再稼働へのプレッシャーが現場にあったと指摘した。
重大な要因と認定したのが、経営層の働きかけである。審査の実態を理解しないまま、スケジュールの遅れについて現場を叱責(しっせき)するなどして不正を誘発した可能性に言及した。
「不正の指示」までは認められなかったが、内部通報が19、21年に2度あり、経営層まで届いていながら十分に対処せず、不正をはびこらせた責任は重大だ。会長や社長のすげ替えでは済むまい。
報告書からは、再稼働を急ぐ企業の論理優先と、安全倫理の欠如が浮かぶ。
現場部門も専門性の高さからブラックボックス化し、「安全性に影響はなく『自分たちは正しいことをしている』」と独善的な正当化の論理があったと指摘された。病巣の根深さを示していよう。
ほかにも不祥事が相次いで露見している。原発の安全対策工事の精算手続きを怠っただけでなく、廃炉する1、2号機の費用請求書類の改ざん、電気料金の過大徴収もあり、コンプライアンス軽視の姿勢は目を覆うばかりである。
中部電は将来の再稼働を目指す方針を変えていないという。
浜岡原発は南海トラフ巨大地震の想定震源域内にあり、被災するリスクが大きい。不正で取り繕って市民の安全を顧みない事業者に任せられようか。
11年の停止から1兆円以上の安全対策投資を続けながら再稼働を見通せない状況では、全基廃炉の選択肢こそ現実味を帯びよう。
原子力規制委員会は、不正の全容解明とともに、他電力でも同様の問題はなかったか、自己申告ではない再検証が不可欠だ。
虚偽申請への罰則といった事業者任せの対応にとどめず、独自の計算や開かれた評価検討など、審査方法そのものの抜本的な改革も必須である。
<社説>中部電引責辞任/再稼働目指すのは早計だ
神戸新聞NEXT2026/9/16
中部電力が再稼働を目指してきた浜岡原発3、4号機(静岡県御前崎市)の審査を巡る耐震データ不正問題で、同社は外部の弁護士による調査委員会の報告書を公表した。調査委は不正の要因について、再稼働のスケジュール遅れに関する経営陣からの叱責(しっせき)が現場への圧力となった点などを挙げた。これを受け、林欣吾社長と勝野哲会長、水野明久相談役が辞任を表明した。再稼働審査の申請も取り下げるとした。
経営陣の姿勢が不正につながったと認定された以上、引責辞任は当然だ。中部電は安全を最優先とする組織風土を醸成できるよう、抜本的な改革に取り組まねばならない。
不正があったのは、原発の耐震設計に関わる「基準地震動」のデータだった。想定地震の最も大きな揺れを示す重要な値で、再稼働を審査する原子力規制委員会に示した。
報告書は225通りの地震動評価のうち、少なくとも208通りで不正が確認されたとした。20の地震波から最も平均に近い波を「代表波」にすると規制委に説明していたにもかかわらず、実際は恣意(しい)的に代表波を選び、つじつま合わせで残りの19波を後付けしていた。あまりにも悪質な虚偽説明と隠蔽(いんぺい)工作である。
不正の背景として、早期の再稼働へ圧力がかかる中、「社内に独自の正当化理論があった」と報告書は分析した。「自分たちは正しいことをしている」と考え、確信や信念を持って不適切な行為をした担当者もいたという。倫理意識の欠如と、再稼働を正義とするおごりを感じる。
問題を指摘する2度の内部通報が適切に処理されなかった事実も、法令順守を軽視する体質を物語る。原発には何よりも安全性の確保が求められる。経営陣から現場までの意識が変わらない限り、原子力事業者の資格はないと言わざるを得ない。
驚いたのは、林社長が「再申請を目指す」と述べたことだ。浜岡原発ではデータ不正だけでなく、安全対策工事の精算手続きや1、2号機の廃炉費用請求で不祥事が相次ぐ。再稼働に言及するのは早計だ。
再申請にこだわるのは、3~5号機が動けば1年間で約2500億円の収支改善効果が見込まれるためだろう。だが、再稼働ありきの姿勢では問題の再発防止は望めまい。中部電は再稼働の断念も視野に入れ、経営戦略を見直すべきではないか。
政府は2040年度の電源構成に占める原発の割合を2割程度と見込む。既存33基の大半を動かすのが前提だが、現状は15基にとどまる。浜岡原発の再稼働が難しければ、目標はさらに遠のく。政府は再生可能エネルギーなど、原発以外の脱炭素電源の拡大に注力する必要がある。