2026年10月26日月曜日

福島 津島原発訴訟 なぜ国の責任認めないのか

 福島県浪江町津島地区の除染はわずか1・6%しか進んでおらず、今も大半は帰還困難区域のままです。現在居住しているのは12軒で、内7軒は町外からの移住者です
 津島地区の住民631人が、国と東電に事故前の放射線量レベルに戻す原状回復などを求めた「ふるさとを返せ!津島原発訴訟」の仙台高裁判決が16日にあり、国の責任を否定し東電のみに損害賠償を命じました。これは22年6月に最高裁が別の原発訴訟で国の責任を否定する判決を出して以降、各地の裁判所はそれに従って来たので、想定はされていました。
 判決を言い渡しの前日、原告の三瓶春江さん(66)は「国の責任が認められなかったとしても、暗闇の中で前ヘ歩くためには1本のローソクのような言葉を一言でも判決に書いてほしい」と語っていました。
 石垣陽介裁判長は主文と判決要旨を言い渡した後、付言として「国および浪江町は、津島住民の思いを丁寧にくみ取り、津島の除染と復興に取り組むよう切に願う」と述べました。
 弁護団共同代表の小野寺利孝弁護士は「裁判長としての良心を述べたのが付言だ。判決は何も資するものがないが、付言は住民要求を実現する上で活用できる」と語りました。
 仙台高裁は結審(3月)の際 和解勧告をし、原告団は除染や復興のために住民意見を聞く協議体設置を提案しましたが、国と東電は拒否していました。
 原告団と弁護団は、被害住民の意向を反映した除染・復興再生を進めるために国、東電、自治体に住民を加えた4者による継続的協議こそが不可欠だと訴えます。
 しんぶん赤旗日曜版の記事を紹介します。
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福島 津島原発訴訟 なぜ国の責任認めないのか
                  しんぶん赤旗日曜版 2026年10月25日
 東京電力福島第1原発事故で全町避難となった福島県浪江町津島地区の住民631人が、国と東電に事故前の放射線量レベルに戻す原状回復などを求めた「ふるさとを返せ!津島原発訴訟」。仙台高裁は国の責任を否定し、東電のみに損害賠償を命じました(16日)。半決を受け、原告団と弁護団は判決を不服として最高裁へ上告すると表明。原状回復請求を退けた不当判決に住民らは「屈することなく断固奮闘する」と語ります。
                                 田中智己記者

不当判決に住民が上告決意 故郷を再び暮らせる場所に戻して
「100年は帰れない」。事故後、避難生活などについての住民説明会で国の担当者は、住民からの質問によどみなくそう答えたといいます。津島訴訟原告団団長の今野秀則さん(79)は、このときの記憶が抜け落ちたままです。当時は闇の中にいるようだったと振り返ります。

「事故なければ・・・」
 仙台高裁で判決が言い渡される数日前、記者は今野さんと津島地区を訪れました。秋晴れで気持ちよい風が吹く日でした。福島第1原発から直線距離で約30キロ離れた同地区は、阿武隈山地の中腹にある自然豊かなふるさとでした。事故前は、同地区に約1400人の住民が助け合いながら穏やかな日常を過ごしていました。
「原発事故さえなければ住み続けることができた」と今野さん。事故直後、避難を強いられたときも数日から1週間で元の日常に灰れると思っていたと話します。住民の多くは今も帰還できずにいます。
 避難解除区域に雑木林が生い茂る場所がありました。今野さんはもともと立派な一軒家があった場所だと説明します。事故後の15年の間に多くの住家や商業施設、工場が解体され地域の風景は一変しました。除染は地区のわずか1・6%しか進んでおらず今も大半は帰還困難区域のまま。現在居住しているのは12軒で、7軒は町外からの移住者です。
 今野さんは、国と東電を相手に提訴した思いを語ります。「津島では住民が共に助け合い、喜びを感じ、生きがいをもって暮らしていました。その日常が突然奪われ、いつ帰れるのか先の見通しはありません。ここを再び暮らせる場所に戻す責任が国や東電にあると法に訴えなければ、ふるさとを取り戻せない危機感がありました」

ー審で認めた賠償責任 覆した高裁
 しかし、仙台高裁が言い渡した判決は住民にとって冷酷なものでした。
「原発被害者に対する悪意に満ちた判決といっても決して言い過ぎではない」。原告団と協議後の18日に開いた記者会見で弁護団の白井剱事務局長は語気を強めて語りました。
 一審の福島地裁郡山支部は、原状回復請求を認めなかったものの国の賠償責任は認めていました(2021年)。しかし、22年6月に最高裁が別の原発訴訟で国の責任を否定する判決を出して以降、各地の裁判所は国の責任を否定するようになりました。
 今回、一審で認めていた国の責任を否定。判決を精査すると、原告の4分の1にあたる約150人が控訴審で東電からの賠償すら認められなかったことが明らかになりました。
 今野さんは会見で「原状回復請求も国の責任も認められず、とうてい許すことができない」と述べ上告を表明しました。
 原告団・弁護団は、国の不作為による責任だけではなく、原発設置にかかわる作為の違法を追及していました。米政府は同時多発テロ(01年9月11日)を機に、全原発に長時間、電源喪失をしても原子炉の冷却を続けるための対策「B.5.b」を義務化。国は米国からこうした情報提供を2度も受けながら関係機関との情報共有や原発事業者へ対策を指示していませんでした。
 しかし、判決は「B.5.b」について「津波を含めたあらゆる原因事象による全交流電源の喪失を想定し、対策を求めているとは直ちに解されない」と正当化しました。
 原状回復請求に対しては、放射性物質が大気中に放出されるとコントロールが現実的に不可能だとして国側の管理下にないとする主張を認めました。

4者協議が不可欠
 仙台高裁から判決を言い渡される前日、原告の三瓶春江さん(66)は語っていました。「国の責任が認められなかったとしても、暗闇の中で前ヘ歩くためには1本のローソクのような言葉を一言でも判決に書いてほしい」
 仙台高裁の石垣陽介裁判長は主文、判決要旨を言い渡した後、付言として「国および浪江町は、津島住民の思いを丁寧にくみ取り、津島の除染と復興に取り組むよう切に願う」と述べました。
 弁護団共同代表の小野寺利孝弁護士はいいます。「裁判長としての良心を述べたのが付言だ。判決は何も資するものがないが、付言は住民要求を実現する上で活用できる」
 仙台高裁は結審(3月)の際、和解勧告をしていました。原告団は除染や復興のために住民意見を聞く協議体設置を提案しましたが、国と東電は拒否していました。
 原告団と弁護団は、被害住民の意向を反映した除染・復興再生を進めるために国、東電、自治体に住民を加えた4者による継続的協議こそが不可欠だと訴えます。