2018年3月21日水曜日

21- 福島 事業再開は3割

福島原発 30キロ圏内で事業再開3割 住民少なく不安
毎日新聞 2018年3月21日
 福島県商工会連合会が、東京電力福島第1原発の30キロ圏内にあるか、避難指示が出た地域の商工会を対象に調べたところ、地元で事業を再開した事業者は3割にとどまっていた。特に、昨年3~4月に一部で避難指示が解除された4町村(浪江町、富岡町、飯舘村、川俣町)が低い。地元再開が進まない理由について、同連合会は「住民が少なく、売り上げが見込めるか不安なうえ、若い従業員の確保が難しい」としている。【斎藤文太郎】
 調査は、同連合会が14商工会に聞き取りし、2月20日現在の再開状況をまとめた。

 地元再開率が6%にとどまった浪江町は、会員の597事業者のうち、262事業者(44%)が会社や店を再開したが、地元再開は34事業者。残りの228事業者は避難先などで再開していた。
 富岡町は478事業者のうち277事業者が再開したが、地元は60事業者(13%)飯舘村は167事業者のうち130事業者が再開し、地元は51事業者(31%)だった。全体では2804事業者の66%にあたる1840事業者が再開し、地元は860事業者(31%)だった。業種別でみると地元再開率は建設が37%と最も高く、製造(35%)、石材・その他(32%)、サービス(28%)と続く。復興工事がけん引している。
 浪江町は避難先が福島市などの内陸部と沿岸部に分かれ、通いながらの再開が難しいという。今年2月末時点の人口は1万7954人だが、居住者は516人。他に作業員もいるとみられる。震災前に営業していたスーパーの担当者は「人が戻らなければ従業員の確保も難しく運営できない」と話している。

赤字でも「町の光に」
 地元事業者の再開が進まない中、奮闘する事業者がいる。今月1日、浪江町中心部の国道沿いの空き店舗を利用し、焼き肉店「なみえ肉食堂」がオープンした。福島市で7店を営む渡辺貞雄さん(58)が出店した。
 最大の課題は従業員の確保。3人を雇ったが足りず、夜の営業は予約がある時だけ。当面は赤字の見込みだが、渡辺さんは「町民が帰還する機運が高まればうれしい」と話す。
 同町によると、昨年3月末の避難指示解除からの1年間で、飲食店6店がオープンした。県の補助のほか、同町も最大15万~30万円を補助している。

 「なみえ肉食堂」のオープンと同じ日、JR浪江駅近くのビルでも「焼酎BARひかり家」が新規開店した。店主の笹原広美さん(38)はいわき市で飲食店を経営しており、店を訪れた原発作業員が「福島のためにおれたちがやらないと」と語る姿に心を動かされて浪江町への出店を決めた。ビルの所有者の朝田宗弘さん(75)は「店から漏れ聞こえる音が懐かしく、涙が出そうになった」と話す。
 順風満帆な船出とは言い難い。翌2日は金曜だったが、最初の客が来たのは開店から約2時間半後だった。外に人通りはなく、看板と街灯が光っていた。笹原さんはその光景に震災直後のいわき市を重ねたという。「そっと町を照らすだけでいい。その光が少しずつ広がっていけばいい