大飯原発3、4号機の安全性を巡る訴訟で、大阪高裁は、設置を許可した国の原子力規制委の判断に関し、「看過しがたい過誤、欠落は認められない」として、違法とした一審の大阪地裁判決の取り消しを言い渡しました。
それに対して京都新聞は社説で、ばらつき条項を削った規制委や関電の主張を丸ごと受け入れた形であり、科学的な根拠の説明は十分と言いがたいと批判し、一審の運転差し止めや許可取り消しの判断が、二審で軒並み覆される「高裁の壁」が今回も立ちはだかったと指摘しました。
取り分け判決が指摘している、個々のデーターを「広めの断層面積で算出」しているので平均値で決めても差し支えないというのは、数理的にデタラメな主張です。
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社説:原発裁判の「壁」 安全性の評価避けるな
京都新聞 2026/6/5
起きうる最大級の地震に耐えられるのか。住民の不安に答えず、政府の原発回帰を追認するような判断に疑問が尽きない。
関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の安全性を巡る訴訟で、大阪高裁は、設置を許可した国の原子力規制委員会の審査判断に関し、違法とした一審の大阪地裁判決の取り消しを言い渡した。原告の住民側の逆転敗訴である。
高裁は、規制委の審査適合の判断に「看過しがたい過誤、欠落は認められない」と結論付けた。
15年前の東京電力福島第1原発事故を教訓に定めた新規制基準での許可に対し、初めて取り消した一審の結論を反転させた。だが、その妥当性を認める科学的な根拠の説明は十分と言いがたい。
各地の原発訴訟で、一審の運転差し止めや許可取り消しの判断が、二審で軒並み覆される「高裁の壁」が今回も立ちはだかった。行政の裁量に広く委ね、安全性への司法判断を避ける姿勢で、その責務を果たせるのか。
大飯訴訟で争われたのは、原発周辺で想定され、耐震設計の目安となる最大の揺れ(基準地震動)を巡る審査の在り方だ。
2020年の一審判決は、過去の地震に基づく平均値から大きく外れた数値の「ばらつき」を考慮するよう審査ガイドで示しながら、数値上乗せなどを検討せず規制委が許可したのは違法とした。
高裁判決は、ばらつきの考慮に確立した知見はなく、ガイドは数値の上乗せ検討を求める趣旨ではないと指摘。より大きな地震動となる広めの断層面積で算出しており、「ばらつきの問題も相応に考慮している」と認めた。
一審判決に反発し、ばらつき条項を削った規制委や、関電の主張を丸ごと受け入れた形といえる。
裁判長は主文のみ読み上げ、逆転の判決理由も述べず閉廷した。原告団が「住民の生命や健康が見切られた。政府への忖度(そんたく)」と批判するのも無理はない。
政府が22年以降に「原発の最大限活用」へ転換を図る中、原発訴訟では安全審査の中身に深入りせず、形式的な基準適合を是認する判決の傾向が指摘されている。
「審査に合格した原発の再稼働や新増設を」と政府は前のめりだが、中部電力浜岡原発で長期の安全審査データの不正が発覚し、国民の信頼は揺らいでいる。
再び「安全神話」に陥ることのないよう、国や事業者の不断の対策と、「最後のとりで」である司法の厳しい目を求める。
大飯原発の設置許可、取り消し認めず 住民側逆転敗訴 大阪高裁
毎日新聞 2026/5/28
福井県や近畿地方の住民が、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の国の設置許可を取り消すよう求めた行政訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(川畑正文裁判長)は28日、許可取り消しを命じた1審・大阪地裁判決(2020年12月)を見直して、住民側の請求を棄却した。住民側の逆転敗訴となった。
大阪地裁判決は11年の東京電力福島第1原発事故後に、原発の設置許可を否定した初の司法判断だったが、高裁で覆された。
大飯原発3、4号機は1991~93年に営業運転を開始した。原発事故を受けて厳格化された新規制基準に17年に適合しているとされ、18年から再稼働している。
訴訟では、原子力規制委員会による新基準に基づいた安全審査の妥当性が取り上げられ、耐震設計の目安となる「基準地震動」(原発運転中に発生しうる最大の揺れ)の設定を適切にチェックできたかが争われた。
1審判決は、関電による基準地震動の策定プロセスに着目。関電が計算式から算出した地震規模は平均値に基づくものであり、平均値より大きな地震規模になる「ばらつき」が考慮されていないとした。
それにもかかわらず規制委が大飯原発の審査で、ばらつきに基づく補正をする必要があるかを検討していなかったとし、こうした規制委の調査審議や審査の判断の過程には「看過しがたい過誤、欠落がある」と判断。国の設置許可は違法だったと認めた。
国側は基準地震動の評価は十分だとし、ばらつきを考慮する具体的な方法は「規制委の専門性に委ねられており、尊重されるべきだ」として控訴していた。
大飯原発は3号機が現在稼働中で、4号機は3月から実施していた定期検査を終えて6月の営業運転再開を目指している。【斉藤朋恵】
(参考記事)大飯原発訴訟、規制委審査過程に「過誤、欠落認められない」 1審取り消し、大阪高裁
産経新聞 2026/5/28
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を巡り、周辺住民らが国に対し原子炉の設置変更許可の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が28日、大阪高裁であった。川畑正文裁判長は許可は違法として請求を認めた令和2年の1審大阪地裁判決を取り消し、住民側逆転敗訴の判決を言い渡した。原子力規制委員会の判断に「看過しがたい過誤、欠落は認められない」と判断した。
主な争点は、原発の耐震設計で目安とするために関電が策定した「基準地震動」が適正だったか否かだった。
規制委の内規である審査ガイドには大飯3、4号機の審査当時、基準地震動を策定する重要要素となる地震規模について、数式で算出される数値と実際の観測データとのばらつきを考慮する必要があるという「ばらつき条項」があった。
地裁判決は条項について、実際の地震が数式で算出した数値を上回る可能性を考慮し、数値への上乗せが必要か否かを検討することを求めたものだと解釈。審査ではこうした検討が行われていなかったと断じ、許可取り消しの結論を導いた。
だが川畑裁判長はこの日の判決理由で、条項がガイドに入った経緯などを踏まえ、「上乗せが必要か否かを検討すべきことを意味するものとはいえない」として、地裁の解釈を否定した。
その上で、関電は想定される震源の断層面積など、さまざまな数式に当てはめる変数を地震動が大きくなるように設定しており、ばらつきを考慮していると指摘。住民側が主張するその他の争点を含め、規制委の調査審議や判断に「不合理な点は認められない」と結論付けた。
新規制基準は、東日本大震災の東京電力福島第1原発事故を踏まえ、平成25年に施行。大飯3、4号機は29年5月に合格して許可を得た。
規制委は判決を受け「引き続き新規制基準への適合性審査を厳正に進め、適切な規制を行う」とコメントした。