2018年1月3日水曜日

03- 原発事故から7年ぶり 漁船の出初め式

 福島県はそれなりの調査結果に基づいて近海の漁を開始できるとし、2日に漁船の出初め式が行われました。漁民にとって漁ができるかどうかは文字通り死活問題です。

 東電と国が密かに構想しているトリチウムの放流は、国内的にも認められない状況になりました。
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 原発事故から7年ぶり、出初め式
ロイター通信 2018年1月2日
 東京電力福島第1原発事故の避難指示が2017年3月に一部解除された福島県浪江町の請戸漁港で2日、漁船の出初め式が行われた。事故と東日本大震災前の11年以来7年ぶり。約20隻が色鮮やかな大漁旗を掲げ、豊漁と海の安全を祈った

 午前8時半ごろ、多くの家族や友人らに見守られて出港し、沖合でお神酒を海にささげた。地元漁協の高野一郎さん(70)は「目標だった出初め式を行えて感慨深い。本格操業への道のりはまだまだ遠いが、復興を成し遂げたい」と力を込めた。

 夫の勇姿を見送っていた主婦佐藤恵利華さん(31)は「このような日が来るとは思っていなかった」と話した。【共同通信】

2018年1月2日火曜日

玄海原発に乾式貯蔵を導入

 九州電力は、玄海原発で、使用済み核燃料を「乾式貯蔵する新施設を建設する方針を固めました。玄海原発34号機は使用済み核燃料プールの余裕がなく、再稼働すれば5年程度で満杯になる運転できなくなるからです
 乾式貯蔵方式は、核燃料の集合体を乾式キャスク(ステンレス製容器 直径2・4m高さ6m程度)に納めたのち、換気設備をもった建屋内に収納して空気冷却させるものです。
 この保管方式は日本では東海第二原発(と福島原発の極一部)で行っているのみですが、海外では沢山の実績があります。

 他の原発でももしも再稼働するのであれば、プールのキャパシティの関係でいずれこの方式に転換させることになります。各原発の使用済み核燃料プールにはそれぞれ広島型原発数千個分以上のウランが保管されていて、それが福島原発で証明されたように水素爆発を起こすと大々的に壊れてしまう様な屋根の下に設置されています。これではミサイル攻撃を受ければ日本は勿論世界も破滅しかねないほどの量の放射能が放散されることになります。

 従って再稼働以前の課題として、各原発に「耐ミサイル仕様」の乾式貯蔵所を作って早急に使用済み核燃料を移すことが絶対に必要です。
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核燃料を空気で冷却、玄海原発に乾式貯蔵導入へ
読売新聞 2018年01月01日
 九州電力は、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)で、使用済み核燃料を貯蔵する新施設を建設する方針を固めた。

 燃料を入れて密閉した容器を空気で冷やす「乾式貯蔵」を同社として初めて採用する。国内原発で乾式貯蔵はほとんど普及してこなかったが、安全性の高さが評価されており、今後は広がりそうだ。

 九電は3~5月に計画している玄海3、4号機の再稼働後、乾式貯蔵について原子力規制委員会に申請する方向で建設時期などを詰める。電力各社は原発内のプールに燃料を貯蔵し、電力ポンプで水を循環させて冷やす方式が主流だ。2011年の東京電力福島第一原発事故では電源が失われ、プール内を冷却できなくなり、放水車などで注水した。
 乾式貯蔵はプールで一定期間冷ました燃料を陸上の容器内に移し、自然の空気で冷やすため、水や電気が必要ない。福島第一原発では乾式貯蔵されていた燃料もあり、事故時も問題が起きなかったため、規制委は乾式貯蔵を促している。

(以下は有料ブログのため非公開)

02- 将来原発をどうするか 重要な議論の年

 日テレが、原発の関する今年(以降)の課題をまとめました。
 客観的な報道になっています。
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将来原発をどうするか 重要な議論の年
日テレニュース 2018年1月1日
2016年11月、温室効果ガス排出削減のための新たな国際枠組み「パリ協定」が発効した。
日本は国際社会に対し2050年までに80%の排出削減という高い目標を掲げている。二酸化炭素を大幅に減らしながら必要なエネルギーをどうやって確保するのか。資源エネルギー庁は去年夏に「エネルギー情勢懇談会」という会議を立ち上げ、今年3月までをメドに、将来のエネルギー政策について議論を続けている。しかし革新的な発電技術は見つかっておらず、再生可能エネルギーの普及も進まない現実。この会議では「やはり原発に頼らざるを得ないのではないか」という見方が強まっている。

去年の総選挙では希望の党や立憲民主党が原発ゼロを公約に掲げたが、その具体的な行程を示せていない。国民的な議論が深まる事のない一方で、国で行われている議論は徐々に煮詰まりつつある。日本は将来の原発をどうするのか。原発を続けるには未解決の問題が残ったまま。

一つが不可避的に生じる核のゴミをどこに捨てるのかという問題。核のゴミとは使用済みの核燃料を再処理した際に生じる高レベル放射性廃棄物だけではない。原発を廃炉にした際に生じる大量の低レベル放射性廃棄物。さらには福島第一原発の廃炉で生じる廃棄物。1000トンにも上るとみられる燃料デブリ等々。これらの問題にはいずれも道筋はついていない。

さらに福島第一原発事故の検証。これも全て終わったわけではない。事故がどのように進展したのか。コンピューターシミュレーションによって分析が行われているが、実際にメルトダウンした3つの原子炉の中を十分に調べたわけではない。去年からは原子炉格納容器の内部調査が本格的に始まり、今月末にも2号機の再調査が予定されているが、得られた情報はまだ限定的。

先月、東電は「福島原子力事故発生後の詳細な進展メカニズムに関する未確認・未解明事項の調査・検討結果」という資料を公表した。こうした調査結果の公表はこれで5回目。今回は「水素爆発を引き起こした水素はどこから流れてきたのか」「非常用の自家発電機が機能不全に陥ったのは津波浸水のためと言えるのか」といった事故進展のメカニズムに関し、重要な調査・分析結果をまとめた。福島第一原発での事故から間もなく7年。こうした事故の分析は続いているが、まだ分かっていない事が多く残っている状況。

先月27日、東京電力柏崎刈羽原発6・7号機に対して原子力規制委員会が正式に新規制基準を満たしているとの合格書が出た。資源エネルギー庁のある幹部は「柏崎刈羽原発は将来の原発政策の軸の一つだ」と話している。しかし地元新潟は福島第一原発事故の検証が終わるまでは再稼働の判断はできないとの考えを示している。

国は今年、長期的なエネルギー政策の方針である「エネルギー基本計画」を見直す。原発を将来どうするのか、今年はその方向性が決まる重要な年になる。

2018年1月1日月曜日

なぜ人々は原発再稼働に無関心なのか

 現代ビジネスが、「週刊現代」の記事「なぜ人々は原発再稼働に『無関心』なのか」を転載しました。

 11月に東海第二原発の運転延長を申請した日本原電は、原発廃炉のための「解体引当金」(東海第一・第二及び敦賀1・2号機の4基で合計1800億円)を敦賀3・4号機の原発建設費用に流用しました。勿論違反行為でですが別に処罰されるわけではなく、その穴埋めは電気料金の値上げによって国民が負担することになります。

 福島原発事故後、東電は賠償資金として77105億円を原賠機構から受け取りましたが、それらを含めて合計215兆円と試算される事故関連費用は、すべて血税と電気料金によって国民が支払うことになります。国は単に血税を投入するだけで、東電には何の責も負わされません(現状)。

 記事の冒頭部分で、経産省の最高幹部のひとりが、「仮に原発が事故を起こしたとしても、規制委が過剰すぎるほどの安全基準で検査して合格させたわけですから、それは技術の限界ですよ」と、要するに安全基準に合格した原発が事故を起こしてもそれは仕方がないとうそぶいていますが、「不必要で危険」な原発は動かさねければいいだけの話で、原発を動かすことを至上命題にしているから、そんなお粗末(没論理的)なことを言うことになるわけです。

 原子力ムラが、暴利をむさぼ(り続けてい)るだけでなく回復しがたい悲劇を国民に与えても、それが許容されている背景には「みんなで払えば怖くない」とばかりに簡単に全ての負担を容認する国民の「無関心」があることを自覚すべきです。
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なぜ人々は原発再稼働に「無関心」なのか
のど元過ぎれば、ということ…?
現代ビジネス 2017年12月29日
いつの間にか、「脱原発」のムードに倦んでしまった世間を尻目に、原子力ムラは次々と原発再稼働を推進している。だが、ムラのやりたい放題にカネを出させられるのは、われわれ国民なのだ。

廃炉費用で原発建設
経産省の最高幹部のひとりは、冷徹な表情で記者にこう語った。
仮に原発が事故を起こしたとしても、規制委が過剰すぎるほどの安全基準で検査して合格させたわけですから、それは技術の限界ですよ。隕石が原発に落ちる可能性だってあるんですから、想定外を考えて物事を進めるなんて成り立たない」

11月24日、日本原子力発電(原電)は東海第二原発の運転延長を原子力規制委に申請した。東海第二原発は、40年間の運転期限が迫っている。その期限ぎりぎりの「20年延長」申請で、再稼働を目指す。だがこれは、原子力ムラの「カネ」の都合に過ぎないようだ。
「原電は、稼働している発電所が現在ひとつもなく、東電など電力大手9社とJパワーからの基本収入と債務保証で、かろうじて存続を維持しています。
しかし、東海第二を動かさないと宣言した瞬間に、基本料収入も債務保証もなくなるでしょう。つまり、再稼働しないかぎり、会社が破綻してしまう状況にあるのです」(ジャーナリスト・町田徹氏)
原電が保有する原発は4基あるが、東海と敦賀1号機は廃炉作業中だ。敦賀2号機は、建屋直下に活断層が走っている可能性が指摘されているため、実は頼みの綱はこの東海第二だけなのだ。

だが、原電が今回の延長申請を行う1週間前、驚くべき事実が明るみになった。原発廃炉のための「解体引当金」(原電の場合、4基で合計1800億円)を流用し、なんと敦賀3・4号機の原発建設費用に充てていたというのだ。その結果、緊急時に使える手元の現預金は3月末で187億円しか残っていなかった。
東海第二の廃炉のための引当金は530億円だった。はなから廃炉するつもりなどないということだ。さらには、新規建設のカネに使っていた! さすがに言語道断だというのは、原子力資料情報室共同代表の伴英幸氏だ。
「外部機関で廃炉資金を積み立てるシステムがないから起こる事態です。原電は、福島事故の前に、将来の廃炉を想定せず、敦賀原発の増設にどんどん解体引当金を使っていった。このままでは、増設も廃炉もできないから再稼働をさせたいという論理につながります」

だが、原電の目論み通りに、規制委が東海第2の再稼働を認めたところで、原電は1700億円を超える安全対策費を調達せねばならない。そのツケを払うのは国民だ。
「原電は電気卸売業ですから、電力会社への卸価格に廃炉費用や安全対策費が含まれます。おカネが足りなければ卸価格に上積みされ、結果的には国民が電気料金の値上げによって負担することになります」(前出・伴氏)
ボロボロの実家の解体費用を貯金していた男が、奥さんに黙ってそのカネをギャンブルに使ってスッてしまった。もはや解体できないので、すみません、リフォームするので国民の皆さんに払ってもらいます――こう言っているのに等しい。

人の道に外れてないか
福島第一原発の事故の後、すでに東電は賠償資金として7兆7105億円を政府から受け取っている
このカネは、原賠機構を通じて支払われるため、一時的に政府が立て替え、最終的には東電や電力会社が負担することになる。つまりは電力料金の値上げによってなされるのだ。
賠償資金だけではない。廃炉・汚染水への処理費用8兆円、除染費用4兆円、中間貯蔵施設の整備費用1.6兆円という巨額のカネは、すべて電力会社と国が負担する。
合計21.5兆円と試算される事故関連費用は、血税と電気料金で、我々が支払うのである。ここに、再稼働の安全対策費が、さらに上乗せされていく。

再稼働に向けたカネの使い放題、ちょっと人の道に外れているのではないか。だが5年前の民主党政権時代を思い起こそう。
野田佳彦首相(当時)は「2030年代に原発ゼロを可能とする」目標を政府方針に初めて盛り込んだことがある。福島第一事故の後、原発の危険性を学んだ人たちの多くは、これに賛同した。
だが、原発再稼働推進の安倍政権の気焔のもと、気がつけば「脱原発」ムードは風化した。現行のエネルギー基本計画では、「'30年代にゼロ」どころか「'30年に原発比率を20~22%」に代わったのだ。

「東海第二の20年延長は、3.11後に再構築された原子力規制のあり方を問う重要な論点を含んでいるのに、大きなニュースになっていません。表面的な議論しか展開してこなかったメディアの問題と国民の圧倒的な無関心がそこにある」
こう語るのは、立命館大学准教授の開沼博氏だ。
「国民としては、問題は何も解決していないのに、『まだその話か』『またか』となってしまい、カタルシスも得られない以上、関心を持たなくなってしまったのです」

喉元過ぎれば再稼働。知らぬ間に、事態は進行している。3年前には福井地裁が運転差し止め判決を下したはずの大飯原発3・4号機に関して、11月27日、福井県の西川一誠知事が再稼働に同意した。
その翌28日に経産省で開かれた有識者会議では、原発新増設を踏まえた議論さえなされた。東海第二のような20年延長を重ねたところで、'50年までには廃炉が相次ぎ、原発比率を維持することができない、というのだ。

大飯再稼働には、世耕弘成経産相からの強い働きかけがあったとされるが、冒頭の経産省の最高幹部はどこ吹く風だ。
「大飯の再稼働容認は、あくまで福井県知事の判断ですよ。あちらは地元経済活性化のため、原発立地交付金を満額もらいたいだろうし、そのために早く動かしてほしい。経産省は、あくまで再稼働しなければ電気料金は高いままになりますよ、というスタンスでした」

現場はどうなっているのか。11月末、東海第二原発を訪れた。国道245号線を日立方面に向かい、原子力機構前の交差点を通過すると、この国道が拡幅工事中だと気づく。
しばらく進み右手の進入路に入ると、東海第二原発が姿を見せる。その先には、建屋を足場で覆われた東海原発が、紅白の煙突をのぞかせる。
原電が第二原発内で運営する博物館「東海テラパーク」。女性スタッフに話を聞いた。

――20年の延長で、丁寧に検査しても、本当に安全なのかという声もある。
「飛行機に乗っても車に乗っても、事故を起こすことがあります。でも乗るまでわかりません。100%安全だとは言うことができないんですよ」

――延長は必要ですか?
「お気持ちはわかります。福島事故後に、太陽光発電がグッと伸びてきましたが、価格の問題などあるようですし、これからのエネルギーを考えますとやはり必要なのではないかと……ごめんなさい。ちょっと失礼します」

経済より命が大事でしょ
一方、原発3キロ圏内の住民たちは、総じて複雑な心境をのぞかせた。

「もともと畑もロクにできず、何もなかった土地なんですよ。発電所が来たおかげで、大きな道路が通り、人がたくさん来てくれた。私たちが受け取ったものを、反対派の人は忘れてしまったのですか?」(80代・女性)
「福島の事故が起きてからは、やっぱり怖い。でも、ここから離れるわけにはいかないから、原発は安全な形で動かしてほしいです」(70代・男性)

不安なままこの地で生活を続けていかねばならない葛藤のなかで、苦衷の表情を浮かべていた。福島第一原発の事故前、双葉町や大熊町で見られた反応と同じである。
電源3法に基づく自治体への交付金のうち、大半を占める「電源立地地域対策交付金」は、いまだ年間約824億円。これが地方自治体への「原子力ムラ」のアメの一つとして使われている。

だが、何度同じことを繰り返すのか。なぜ人々は原発再稼働に無関心なのか。宗教学者の山折哲雄氏は言う。
「人間の欲望というのは、抑えることができない。なぜ地震大国でこんなにたくさん原発があるのか――西洋の知のエゴイズムにかぶれた知識人が、大衆を理解しないまま勝手に物事を進めている。
福島の事故があっても、それは変わらないどころか、ますますはっきりしてしまった。原発政策はおかしいと思いながらも、政治には無関心を決め込んでいる層の『内なるもの』が表に出るような事件が起こらないと、もうこの国は変わらない」

実質的に東電を「国営化」した経産省からすれば、無関心こそ、再稼働政策を推進する格好の鍵になる。「原発再稼働なくして経済成長なし」と、刷り込みを続けていきさえすればいいのだから。しかし、同志社大学教授の浜矩子氏はこう言う。
再稼働を牽引する人たちは『経済合理性』を主張しますが、経済合理性には『人々の人権、生存権を脅かさない限りにおいて』という前提があることを忘れてはなりません。
事故が起これば、人権も生存権も侵害することを日本人は目の当たりにしたはず。なんのため、誰のための経済活動なのか、という地点から考え直さねばなりません」

「原発」問題に飽きていた諸氏も、一歩立ち止まる時期かもしれない。
「週刊現代」2017年12月16日号より

英核施設解体に120年  福島第1原発廃炉の参考に

 英国セラフィールドで本格的に進められている、核兵器製造に使った施設や原子力発電所の核燃料、汚染機材の除去、解体処理は、福島原発の廃炉作業と共通するところが多く、東電も視察団を派遣しているということです。
 英国は、汚染物の除去や解体に120年かかると見ていて、40年やそこらで福島原発の廃炉が出来ると考えている日本の見込みのいい加減さとは対照的です。数百年は掛かるだろうというのが彼らの見方です。
 日経新聞が現地を視察しました。
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英核施設、解体に120年  福島第1原発廃炉の糧に
日本経済新聞 2017年12月31日
 。「120年がかり」という長大なプロジェクトで、周辺には専門のベンチャー企業も育っている。ノウハウは事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の廃炉にも役立ちそうだ。

 田園風景の中に鉄条網やコンクリートブロックに守られた「街」が突如現れる。英原子力廃止措置機関(NDA)が管理運営するセラフィールド拠点だ。総面積6平方キロメートル。山手線に囲まれた面積の約10分の1の敷地に、放射性物質で汚染された200以上の建物や施設が所狭しと並ぶ。

 1950年代に核兵器用プルトニウムの製造に使われていた古い施設などが多い。57年に火災を起こしたウィンズケール原子炉は2本の煙突のうち1本がほぼ元の姿で残る。日本の使用済み核燃料を再処理してきた工場もあり、18年に稼働を停止する。

 「最優先で取り組まねばならないのは高濃度に汚染された池やサイロだ」とNDAのエイドリアン・シンパー戦略技術部長は説明する。
 池とは原子炉の使用済み核燃料などを再処理する際、冷却用に使っていた屋外水槽のことだ。サイロは核燃料の被覆材や核兵器の製造過程で出てきた汚染物質の収納に使った、コンクリート製の多数の小部屋を指す。放射性物質の拡散は観測されていないが、いずれもリスクは高い。

 これらには「後で取り出すことはまったく考えずに何でも入れていた」(シンパー部長)。内部はブラックボックスに近い。中身を回収し危険度に応じて安全な容器などに移すが、まず中の状態を知る必要があり、放射線に耐える遠隔操作ロボットや高感度カメラなどが要る。セラフィールドの英国立原子力研究所の拠点と大学やベンチャー企業が協力して技術開発を進め、現場に投入している。

 セラフィールドで働いた経験のあるマーク・テルフォード氏が創業し社長を務めるフォース・エンジニアリングはNDAと連携するベンチャー企業の一つだ。汚染された池に見立てた25メートルプールより一回り大きい水槽で、試作したロボットやカメラ、解体用の重機などが水中で機能するか実験する
 マンチェスター大学と遠隔操作型の水中遊泳ロボットを開発し、今年10月に直径15センチメートルほどの隙間からセラフィールドのサイロに入れて内部を観察した。指先ほどの小型のカメラも実用化し、池の調査に使い始めている。

 複数のロボットを、信号ケーブルを使わず高周波の音波によって動かす方式も開発中だ。手のひらサイズのドローン(小型無人機)を数十機飛ばし、互いに交信しながら効率よく放射線測定などをするアイデアを温める。「昆虫の交信などからヒントを得た」(テルフォード社長)
 多くの技術は石油や天然ガス開発とも共通する。廃炉は市場が限られるが、同じ基盤技術を異なる分野に応用できれば事業展開しやすくなる。

 セラフィールドの近くにある別のベンチャー企業、クリエーテックはオックスフォード大学で医療診断画像などを研究したマット・メラー社長らが創業した。陽電子放射断層撮影装置(PET)の技術を応用し、放射線の一種のガンマ線を周囲360度にわたって測れる装置を開発した。
 毎時1シーベルト程度の極めて高い線量下でも正常に機能する。ドローンからレーザー光を出して室内の形状や機器の配置を測定できる他の装置と組み合わせれば、サイロ内などの放射能分布の立体マップが作れ、作業計画を立てやすい。

 高濃度に汚染された空間の内部の様子がよくわからない点で、セラフィールドと福島第1原発は必要とする技術が似ている。「東京電力から視察団が来て、ガンマ線測定装置は福島第1原発で使われた」とクリエーテックのメラー社長はいう。

 4つある危険な池のうち容量約1500万リットルの最古の池の処理が14年に本格化し、これまでに大型機材、核燃料の搬出を終えた。17年2月にヘドロ状物質の除去と密閉容器への移管が始まり、19年から水抜きする。既存技術の応用や大学、ベンチャー企業との連携でヘドロ処理は計画よりも10年早く進み、費用は半分の約1億ポンド(約150億円)にとどまったという。

 大量の高濃度汚染物質の最終処分地は未定で、今後コスト増をもたらす可能性がある。息の長い複雑な作業を支える人材の確保も課題で、大学と廃炉技術やプロジェクトマネジメントなどの教育研究プログラムを設けて若手を育成する。(編集委員 安藤淳)

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