2023年12月2日土曜日

東海第2原発の重大事故時 避難者は「最大17万人」 茨城県が「30キロ圏内」対象に予測

 茨城県東海村は1日、学識経験者や住民代表らでつくる原子力安全対策懇談会を開き、東海第2原発の重大事故に備えた広域避難計画の素案を初めて示しました。ただ、具体的な避難先や避難経路は全て「調整中」とされ村は最終的な計画を改めて示す予定です。

 田修村長は避難計画を「年内公表」として来ましたが、現段階では方向性が示されたということに留まり計画の全貌は未定です。30キロ圏内の91万人中、避難対象者数を最大17万人に絞った点も問題です。
 東海村議員の阿部功志さん(無所属)は、実効性ある避難計画ではなく避難弱者を切捨てているし、避難の方法として「ターミナル方式」を採用したのも現有の職員数では各避難所の面倒を見ることが出来ないためで、上手くいかないと思われると語り、全体的に計画が余りにも粗雑で無責任であり、何故こんなに公表を急ぐのかと批判しました。
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東海第2原発の重大事故時…人口91万人でも避難は「最大17万人」 茨城県が「30キロ圏内」対象に予測
                        東京新聞 2023年11月29日
 茨城県は28日、日本原子力発電東海第2原発(同県東海村)で炉心が損傷する重大事故が起きた場合、放射性物質が周辺にどのように拡散するかのシミュレーション(予測)結果を公表した。事故対応状況や気象条件を変えた計22パターンのうち、原発から30キロ圏内の避難者は最大で約17万人に上った。県は予測結果を活用し、避難計画の実効性を検証する。

◆原発30キロ圏内の人口は全国最大の91万人超
 東海第2原発は首都圏唯一の原発で、2011年の東日本大震災後、運転停止中。東海村など重大事故時に即時避難する半径5キロ圏内に6万4451人が居住。毎時20マイクロシーベルトの空間放射線量で避難となる半径30キロ圏内を含めると、14市町村で全国最大の計91万6510人が住む。
 予測は県が日本原電に要請した。事故状況をフィルター付きベントなど事故対策設備の一部が機能した場合と、「ほぼ全て」が機能喪失した場合の2通りを想定。それぞれ気象条件を
 (1)同じ風向きが長時間継続
 (2)同じ風向きに加えて降雨が長時間継続
 (3)ほぼ無風
と変え、24時間後の放射性物質の拡散範囲を分析した。

◆避難者が最大となるのは「水戸市方面が風下かつ降雨あり」
 避難者が最大となったのは、原発から南西、水戸市の方向が風下となり降雨を伴った場合で、対象人口はひたちなか、那珂両市で計10万5191人。5キロ圏内からの避難者を合わせると計16万9642人となる。同じ風下方向で降雨がない場合でも、水戸市で約5万9000人の避難者が出た。
 一方、原子力規制委員会の審査で用いる重大事故を想定したもう一つのケースでは、5キロ圏内を除いて避難が必要となる地域は発生しなかった。
 東海第2の事故時の広域避難計画は県のほか周辺5市町が既に持ち、他自治体も今後策定する。県の担当者は「予測結果をもとに、計画での避難にかかる時間や車両配備などの実効性を検証する」としている。
 予測結果は県ホームページ「原子力安全対策課」で公開している。(竹島勇)

◆大井川和彦知事は避難の実効性に自信を見せるが…
 茨城県が重大事故時の放射性物質の拡散予測を公表した日本原子力発電東海第2原発は、岸田政権が再稼働を目指す原発の一つに挙げる。再稼働は地元自治体の広域避難計画策定が条件で、予測結果は計画づくりの大前提となるが、想定には甘さが否めない
 東海第2の再稼働を巡っては2021年3月、水戸地裁での訴訟で「避難計画の実効性がない」などの理由から運転を認めない判決が出た。大井川和彦知事は28日の記者会見で「最大でも17万人の避難という結果が出た。相応の準備をすれば(避難計画の)実効性は確保できる」と述べた。

◆想定が少なすぎる?
 ただ今回の予測は、安全対策が「機能した」「機能しなかった」の二つの想定しかなく、放射性物質の放出時間も事故後24時間限定で、想定規模は福島第1原発事故より小さい。避難者が出るケースも隕石(いんせき)落下やミサイル攻撃など「現実的には考えにくい」とするが、ウクライナ紛争では実際に軍事攻撃の標的になるなど「想定外」はあり得る
 実際に重大事故が起きれば、避難対象地域外で自主避難者も出る。原子力防災に詳しい環境経済研究所(東京)の上岡直見代表は「人員や車両を整えれば避難はできても、その間に住民の被ばくが許容量を超えたら意味がない。被ばくに関しどう実効性を検証するのかが見えない」と話す。
 県は条件や設定を追加した分析を原電に求めた。真に「実効性ある」避難計画づくりにはまだまだ時間を要する。(長崎高大)


東海村、原子力安全対策懇で素案提示 避難先や経路「調整中」 「年内公表」は不透明
                          東京新聞 2023年12月2日
 茨城県東海村は1日、学識経験者や住民代表らでつくる原子力安全対策懇談会を開き、東海第2原発の重大事故に備えた広域避難計画の素案を初めて示した。ただ、具体的な避難先や避難経路は全て「調整中」とされた。村は最終的な計画を改めて示す予定だが、山田修村長が目標とする「年内公表」は不透明な状況だ。
 素案では避難方法を「ターミナル方式」とした。村の広域避難先の取手、守谷、つくばみらい3市内に数カ所の「避難経由所」を設け、村民は小学校区ごとにいったん指定の経由所に避難する。経由所を基点に、受け入れ態勢が整った避難所から順に避難先が割り振られる。
 村によると、計画で最終的に示されるのは「避難経由所」のみで、村民が実際に避難生活を送ることになる具体的な施設名は記載されない見込み
 避難手段は自家用車での避難を基本としている。自家用車が利用できない場合は、徒歩で村内の一時集合所へ行き、そこからバスで避難したり、自宅から福祉車両で避難したりすることを想定。バスや福祉車両の手配は県や国が行う
 山田村長は計画の年内公表を目標に掲げており、懇談会冒頭のあいさつで「懸案となっている避難先の確保は、どうにか全村民が避難できる見通しがついた」と説明した。しかし村によると、個別の避難所確保はまだ調整中で、最終的に計画を承認する村防災会議が年内に開催できる見通しは立っていない。(長崎高大)


<東海第二原発 再考再稼働>(59)
東海村議編 実効性ある避難計画 不可能 無所属・阿部功志さん(68)
                         東京新聞 2023年12月1日
 東海第2原発を再稼働させるべきでない理由はたくさんあるが、広域避難計画の策定ができないことは大きな理由の一つだ。山田修村長は年内に村の計画を公表すると言っているが、まともなものは出てこないだろう。
 計画策定の課題として当面問題となるのは、避難先をどう確保するかという点。もう一つ、バスや福祉車両など避難手段をどうするのかという問題もある。村は、高齢者や障害者など支援を要する人の個別の避難計画ができているかには関係なく、避難先が決まれば広域避難計画を公表すると言っている。これは、実際に避難できない人がいても構わないからとにかく公表するということで、随分乱暴だと思う
 避難先の確保について、山田村長は村の広域避難先になっている取手、守谷、つくばみらいの3市の公共施設だけでは足りないから、民間施設も含めて見通しがついたと説明している。ただ、東海村の3万8千人の住民が3市に避難すれば、各市の人口規模からも大きな混乱が起こるだろう。
 避難の方法としては「ターミナル方式」を採用すると言っている。これは、最初に決めていた「地区ごとの避難」ではなく、大規模な施設を基幹避難所に設定し、準備ができた避難所に、どの地区からを問わず村民を先着順で避難させるやり方だ。つまり、全く知らない人だらけの場所で避難生活を送ることになる。それでコミュニティーが維持されるとは思えない
 このやり方だと多くの村民が基幹避難所に殺到することになる。長蛇の列で待たされたり、渋滞や駐車スペースの問題などが想定されるが、それらの対策はおそらく考えていないだろう全村民をあらかじめ避難所に割り振る当初のやり方だと各避難所の面倒を見る職員数が圧倒的に足りないから、ターミナル方式が持ち出されたのだろうが、うまくいかないと思う

 危機管理の考え方の根本にあるのは、最悪の事態を想定することだ。「100%はあり得ない」とよく言われる。結果としてそういう部分はあるかもしれないが、少なくとも計画段階では99・9%ではだめで、100%じゃないといけない。例えば100人いて99人が逃げられればいいだろうという計画は、最初から立ててはいけない。
 ところが、村は要支援者の具体的な避難手段の見通しがないにもかかわらず、広域避難計画を公表しようとしている。「避難先や車両の確保はできていないが、それは県の役割。村として準備するものは全て整ったから公表していいんだ」と考えているのなら、あまりに粗雑で無責任だ。それが県の仕事だと言うなら、少なくともその見通しがついたと県から報告があるまで、村の避難計画を公表するべきではない。
 複合災害を全く想定していないことも問題だ。1次避難所だけでもここまで調整に手間取っており、当初に設定していた避難所が使えない場合を想定した2次避難所については、おそらく全く考えていないだろう。このほかにも多くの問題を抱えているため、実効性のある広域避難計画の策定は不可能だというのが、私の主張だ。
 ここまで欠陥の多い状態の避難計画なのに、なぜむきになって公表を急ぐのか。計画ができたことにして再稼働に進みたいという思惑が見え見えだ。山田村長は事業者や権力者の方ばかりを向いており、村民の方を向いていない。(聞き手・長崎高大)
                   ◇ 
 東海第2原発の重大事故時の放射性物質拡散予測の結果が公表された。これを受け周辺自治体では、再稼働の前提となる広域避難計画づくりが進むとみられる。東海村は年内に計画公表を予定し、来年1月改選の村議会での議論が活発化する。今回の「再考 再稼働」は「東海村議編」として、会派や立場が異なる村議4人の意見を紹介する。

あべ・こうし> 1954年生まれ。北茨城市出身。東京教育大(現筑波大)卒。定年まで県内で高校教諭(国語)として勤務後、2016年東海村議選で初当選し、2期目。東京電力福島第1原発事故後、「原発は反倫理的で絶対悪」と考え、村議会では東海第2の再稼働反対の立場で活動する。