柏崎刈羽原発の運転禁止命令が27日に解除されたことで、再稼働の焦点は「地元同意」に移りました。
今月19日、新潟県や原発周辺7市町の首長らは原子力防災担当の滝沢求副内閣相と面会し、柏崎刈羽原発を巡る安全対策の徹底や、事故時に住民がスムーズに避難できる体制作りなどを求める要望書を提出し、磯田達伸・長岡市長は提出後、報道陣に「国は安全対策の全てをやってほしい。実現しない限り再稼働の議論に応じるつもりはない」と語りました。再稼働には立地自治体3者の同意が前提となります。
一方、花角氏は今夏に複数の自民県議を集め、再稼働の是非について出直し選挙をほのめかす発言をしたとされています。知事周辺には「ワンイシュー(単一争点)の選挙は望ましくない」との慎重論もあるのを承知の上の発言なので、その本気度は疑問です。
民意を問うというのであれば再稼働の是非についての投票をすれば済むからです。
それよりも県が行うべきは、3つの検証委員会で行った検証結果をキチンと県民に公表するとともに、検証委員会が指摘した諸々の課題について県の見解を明らかにすることです。
県にはパフォーマンスではなく検証委の指摘に対する真剣な対応が求められます。
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地元同意に出直し知事選? 柏崎刈羽原発、一筋縄でいかぬ再稼働
毎日新聞 2023/12/27
原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令を27日に解除したことで、再稼働の焦点は「地元同意」に移った。だが、今年に入ってからも東電社員によるテロ対策上のトラブルは相次ぎ、新潟県内の不信感は根強く残る。花角英世知事は再稼働を判断する際は「県民に信を問う」と再三発言し、出直し選挙も視野に入れている。
今月19日、新潟県や原発周辺7市町の首長らが東京・霞が関を訪ねた。原子力防災担当の滝沢求副内閣相と面会し、持ってきた要望書を渡した。ちょうど翌20日に規制委が「命令解除」の方針を示すことが確実視されたタイミングだった。
要望書は「(再稼働の)議論を始める前に住民の安全・安心を守るため」と前置きした上で、柏崎刈羽原発を巡る安全対策の徹底や、事故時に住民がスムーズに避難できる体制作りなどを求めた。再稼働を急ぐ政府をけん制した格好だ。
原発がある柏崎市では2022年12月、記録的大雪に見舞われた。各地で大規模な交通障害が発生し、原発事故時の避難路となる国道8号が22キロにわたり約38時間通行止めに。東電への不信で原発事故の不安を拭えない地元や周辺自治体の住民からは、豪雪時の避難を不安視する声が上がった。原発30キロ圏内の長岡市の磯田達伸市長は提出後、報道陣に「国は安全対策の全てをやってほしい。実現しない限り再稼働の議論に応じるつもりはない」と語った。
東電は原発立地自治体の県、柏崎市、刈羽村と安全協定を結んでおり、再稼働には3者の同意が前提となる。だが、要となる花角知事は再稼働への考え方を明らかにしていない。ただ、18年6月の知事就任時に再稼働を判断する際は「職を賭して確認することもあり得る」と出直し選挙の可能性を示唆している。
県議会で約6割を占める最大会派の自民は「再稼働は容認しても、東電の管理には反対」との意見が大勢だ。東電が信用できないとして「代わりの事業者を探すべきだ」と実現性を度外視した主張さえする議員も少なくない。今年5月に東電社員が安全対策の書類を紛失したことが明らかになった直後は柏崎、長岡両市長も別の事業者を求めた。
それでも再稼働の条件は整いつつあり、水面下の動きが見え隠れする。経済産業省の幹部らは、再稼働に向けた認識の隔たりを埋めようと、自民県議に頻繁に接触している。
一方、花角氏は今夏に複数の自民県議を集め、出直し選挙をほのめかす発言をしたとされる。自民内には、利害が絡み合う再稼働の是非について「県議会で決めたら、矢面に立たされる」(ベテラン県議)との危惧があり、出直し選挙の待望論も上がっている。だが、知事周辺には「ワンイシュー(単一争点)の選挙は望ましくない」との慎重論もあり、一筋縄ではいかない。
花角知事は27日の定例会見で再稼働について「判断を示す時期は全くイメージがない。どこかで県民の意思を確認したい」と強調。民意を問うための選択肢として「選挙という考えはもちろんある」と語った。
県は来年1月、有識者が原発の安全性を確認する県の「技術委員会」を開き、まずは規制委から命令解除についての説明を受ける方針だ。担当者は「委員が疑問に思うところがあると思う。1回で終わらなければ、再び説明の場を設けてもらう可能性はある」と話した。
【中津川甫、内田帆ノ佳、内藤陽】