2023年12月27日水曜日

霞む最終処分(6)第1部 中間貯蔵の現場 福島民報

序章 処理水は語る」を終了した福島民報の「霞む最終処分」は(6)から「第1部 中間貯蔵の現場」に進みました。
 環境省は最終処分量を減らすため、1キロ当たり8千ベクレル以下の除染土壌を道路や堤防、緑地などの公共工事に使う方針を打ち出していますが、現時点で使用する見通しは立っていません。
 視察では首長から「環境に影響はないのか」「本当に安全なのか」などと質問が相次ぎましたが、それ以前の問題としてそもそも膨大で高濃度の放射性土壌をあちこちにまき散らすのは「放射性物質は拡散させない」という大原則に反しています。
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霞む最終処分(6)第1部 中間貯蔵の現場
大量の土壌行き場なく 首長「あくまで一時保管」
                            福島民報 2023/12/27
 東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設(福島県大熊町・双葉町)内に、福島県内の除染で取り除いた土壌を保管・管理する場所が8カ所ある。遮水シートが施された上に、最大15メートルの高さまで積まれている。厚さ60センチの放射性物質に汚染されていない土で上部を覆い作業を終えた場所はグラウンドのようだ。表土に生えた雑草が寒風に揺れる。
 環境省が福島県内の市町村長を対象に開いた10月25日の現地視察会に、県内14市町村の首長らが参加した。初めて施設内に足を運んだ浅川町長の江田文男は「これほど大量の土を本当に処分できるのか」と規模の大きさに驚くと同時に、この地の行く末を案じた。
 除染廃棄物は2045年3月までに福島県外で最終処分を完了すると法律で定められている。期限まで残り22年を切った。環境省は最終処分量を減らすため、1キロ当たり8千ベクレル以下の除染土壌を道路や堤防、緑地などの公共工事に使う方針を打ち出しているが、現時点で使用する見通しは立っていない。行き場のない土が静かに眠る。
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 中間貯蔵施設は福島第1原発を囲むように整備され、敷地面積は約1600ヘクタール。湯川村の面積とほぼ同じで、全体の6割強が大熊町、残りが双葉町に位置する。県内52市町村で行われた除染で剥ぎ取った土や草木、1キロ当たり10万ベクレル超の焼却灰などを保管する。
 施設には2015(平成27)年3月の搬入開始から今年11月末までに除染土壌など1373万立方メートルが運ばれた。東京ドーム11個が満杯になる量だ。現在は帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域(復興拠点)からの搬入が進む。
 除染土壌を土と可燃物、石などに分別する設備は今年度中に全て撤去される予定。環境省が当初の段階で定めていた設置期間が終了したためだ。期間を超えて使用すれば、劣化などで事故の懸念が高まるという。
 このため今年の夏以降、施設内に搬入される土壌は黒い袋に入ったまま各所に置かれている。今後、帰還困難区域からの除染土壌の搬入量の増加などを踏まえて分別する設備を再び設け、処理するという。
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 視察では首長から「環境に影響はないのか」「本当に安全なのか」などと質問が相次いだ
 環境省福島地方環境事務所中間貯蔵総括課長の服部弘は「保管・管理する場所の空間放射線量は毎時0・2~0・3マイクロシーベルト程度。避難指示が解除された地域と大きな差はない」とし、安全に管理できていると強調する。この場にあり続けても問題はないとされる線量だが、江田は「あくまでも一時保管。県外で最終処分を成し遂げるべきだ」と国が必ず約束を果たすよう求めた。

 環境省が整備して除染土壌などを保管している中間貯蔵施設。広大な敷地の中で今、何が起きているのか。除染廃棄物の最終処分に向けた課題を探る。(敬称略)