2026年5月4日月曜日

書評 原発事故で暗転、温和な老人を追い詰めたのは何だったのか

 青木 『百年の挽歌 原発、戦争、美しい村』について 永江 朗による書評毎日新聞に載りましたので紹介します。
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原発事故で暗転、温和な老人を追い詰めたのは何だったのか―青木 理『百年の挽歌 原発、戦争、美しい村』永江 朗による書評
                          毎日新聞 2026年5月2日
2011年4月。東電福島第1原発の破滅的な事故から1カ月後、ひとりの老人が自殺した。102歳だった。温和な老人を追い詰めたのは何だったのか。ジャーナリストが追及する長編ノンフィクション。
その人、大久保文雄は福島県飯舘村で生まれ育った。平均標高約500メートルの村は冷涼で、たびたび冷害と凶作と飢饉(ききん)に襲われた。機械化どころか馬や牛を使うのも難しく、彼は文字通り自分の手と足で田畑を開墾した。弟は硫黄島で戦死した。苦労ずくめの人生だったが、老いてようやく穏やかな日々を手に入れた
ところが原発事故で暗転する。全村避難を命じられ、大久保文雄も村を離れなければならなくなる。しかし、彼は避難よりも死を選んだ。苦しんだのは彼だけではない。家族の悲しみは深い。
国が原発を進め、電力会社がずさんな運転をした。国と電力会社が老人を死に追いやった。だが、大久保文雄は特殊な例ではない。あの原発のために多くの人が傷つき、苦しみ、いまも続いている。事故の後始末どころか、廃炉作業さえ遅々として進まない。それなのに自維政権は原発を推進する。バカである。

[書き手] 永江 朗 フリーライター。
1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。

[書籍情報]『百年の挽歌 原発、戦争、美しい村』
著者:青木 理 / 出版社:集英社 / 発売日:2026年01月26日
                ISBN:4087890244