2024年5月1日水曜日

福島第1原発事故 「廃炉」の課題と展望(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗の「科学」のページに題記の記事が載りました。

 政府は福島第1原発の「廃炉」を2051年に完了するとしていますが、諸々の工程が軒並み遅れている中でその現実性を疑う声が広がっています。
 しんぶん赤旗が核燃料の専門家岩井孝氏に同原発の廃炉の課題と展望について聞きました。
 岩井氏は、廃炉の工程についてはそろそろ具体的な工程を出すべきタイミングになっているのにと、工程の遅れに率直に疑問を呈しているだけでなく、デブリを完全に撤去して最終的に更地の状態にするという当初の計画(=構想)を見直す必要性にも言及しています。
 兎角これまでは、途中経過の報告が殆どないままで、大詰めになってから大幅に遅れることや失敗を明らかにするということが繰り返されて来ました。
 岩井氏は、外国では事故炉は勿論通常の原子炉の廃炉でも、時間をかけて廃炉の形を議論しながら進めていると述べた上で、事故炉の廃炉について経験がない政府や東電が、当初の計画に固執したまま推進するのは不合理であるとして、頭を下げるところは下げながら、絶えず最適な方向に向けて社会的合意を図るべきだと述べています。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
福島第一原発 「廃炉」の課題と展望
                       しんぶん赤旗 2024年4月28日
 発生から13年あまりたっても収束の見灘しもたたない東京電力福島第1原発事故。政府の工程表では、2051年までに「廃炉」を完了するとしていますが、その現実性を疑う声が広がっています。核燃料の専門家で、日本科学者会議原子力問題研究委員会の委員を務める岩井孝さんに、同原発の「廃炉」の課題と展望について聞きました。  (中村秀生)

日本科学者会議 原子力問題研究委委員 岩井孝さんに聞く
    いわい・たかし 1956年千葉県生まれ京都大学大学院:工:学研究科修士課程
      (原子核工学専攻)修了後、81年に日本原子力研究所(現・日本原子力研究
       開発機構)に入所2015年に退職するまで、おもに高速増殖炉用プルト
       ニウム燃料の研究に従事しながら、労働組員長なども務めました。

「40年で更地」可能か
―廃炉難関は、1~3号機で核燃料が溶けて炉心構造物やコンクリートなどと混ざって固まった『核燃料デブリ」の取り出しです。原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の小委員会が今年3月、デブリ取り出し工法を検討した報告書を公表しました。これをどうみますか
 報告書に書かれている通り、原子炉格納容器内は入ると死んでしまうほど放射線量が高く、デブリ取り出しは困難です。
 米スリーマイル島原発事故1979年)の場合、溶融した核燃料は原子炉圧力容器内にとどまりました。圧力容器に水を張て放射線を遮蔽しながら、上方からデブリをほぼ全量取り出すことができました。
 福島第1原発~3号機では、デブリは圧力容器の底を突き抜け、原子炉格納容器に落下しています。デブリには、燃料被覆管のジルコウムの酸化物などが含まれ、非常に硬いはずです。それを削ったり砕いたりして遠隔ロボットで回収するしかありません。
 格納容器内は調査されてきましたが、圧力容器の中はのぞいて見ることさえできていない。シールドプラグ(原子炉上部の板)がとてつもなく汚染され、開けることも難しい状況です。
 NDFの報告書は、3号機を対象に、①デブリを水につけた状態にして取り出す「冠水工法」、②気中で取り出す「気中工法、③(気中工法の選択肢として)充てん剤を注入してデブリを安定固化してから掘削などで取り出す工法を検討しています。私は、状況からみて気中工法は難しい思います。冠水工法なら時間をかければできるかもしれません。

2号機のデブリ数gの試験的取り出しも難航しています。51年までの廃炉」完了の現実性をどう考えますか?
 「できる」というためには、そろそろ具体的な工程を示さなければならない時期です。デブリの総量は推定880トン。3基から1日当たり計1トン回収したとしても880日かかります。年間の稼働日を200日とすれば4年超です。回収量が日当たり100キログラムなら40~50年かかります。
 しかし、報告書は工法のメリット・デメリットを並べただけでべどれくらい時間をかけてどれくらい取り出すのか、定量的な検討がありません
 こうした目標を立てようがないくらい、デブリ取り出しは行き詰まっていと言えます
 更地にできるのか、という問題もあります。
 日本子力学会の廃炉検討委員会による「国際標準からみた廃棄物管理ー廃棄物検討分科会中間報告」(2020年)では、デブリ取り出し後、汚染した機器や構造物、汚染土壌などを撤去して敷地が再利用できるようになるのに100年以上かかるとしています
 浜岡原発1,2号機で発生する低レベル放射性廃棄物の量は計2万トン。全国の原発をすべて合わせても50~100万トン程度ですが、処分先の見通しもありません事故を起こした福島第1原発では、780万トンにものぼると試算されています。これをどこに処分するのでしょうか。
 原子の専門家による科学的な検討は、福島第1原発の「廃炉」について、30~40年間でデブリを取り出して更地にするという考えに疑問を突きつけているといえます。これが大方の科学者の見方だと思います。

「廃炉」をめぐる、他の課題は?
 地下水などが原子炉建屋に流入すことで汚染水が増え続けています。このままでは、いつまでも汚染水を処理して海に流し続けることになります。汚染水処理で発生する放射能汚泥もやっかいです。容器から漏れ出すリスクがあるので、いずれは固体しなけれぱならないでしょう。
 汚染水を増やさないためには、地質学の専門家たちが提案している「広域遮水壁」の設置が有効だと考えます。具体的な工法も、およその建設費も示されています
 建屋への地下水流入を止めれば、海洋放出をする必要もなくなります。さらに広域遮水は、周辺の汚染土壌からの放射性物質の海への流出も防ぐこともできます。
 しかし政府や東電は、広域遮水について真剣に検討しているようにみえません。どんな都合があるのか、疑問です。
 、2号機の核燃料プル内に残っている燃料は、早めに取出して乾式貯蔵したほうがリスクは小さくなります。1号機はがれきの撤、2号機は高い放射練量が課題ですが、デブリと違て時間をかければ取り出せるとみています。

社会的合意か大切
事故の後始末をどうすべきだと患いますか
 「デブリを全量取り出して、更地にする」という方式にこだわらずに、まずは一定程度、安定な状態を早く実現し、それを守りながら時間をかけて国民的に議論するべきだと考えています。
 私の提案は、デブリ取り出しも原子炉解体もせずに事故機の建屋から堅固な構造物で覆って、下部にお椀状の「地下ダム」を設置して地下水と遮断する方式です
 その状態で安全を確保しながら、少なくとも数十年間はかせぎ″をして、デブリを取り出すのか、原子炉を解体するの、大量の廃棄物をどこに処分するのかなどの最終的な処分の形について、社会的な合意をつくることが大切です。
 外国では、通常の原子炉も事故炉も、時間をかけて廃炉の形を議論して進めています
 政府や東電をみていると、大多数の人が不可能と思っていることを「できます。やります」と言い、当初の「廃炉」のストーリーを動かさないことを最優先にしているように思えてなりません。
 それに固執することによって、デブリを取り出すために作業員が決死隊″のように線量の被ぱくをしたり、ストーリーを崩さないために有効な対策を遠ざけてしまうなど、変な方向に進まないかが心配です。
 政府は、現実から逃げずに、これまでの原子力政策を続けてきた責任として、頭を下げて方回転換することが必要ではないでしょうか。

他の原発の廃炉も進めれていますが、困難が予想されます。
 放射性廃棄物をどこにどう処分するのか、考えてこなかったツケです。ボタンを掛け違えたのではなく、ボタンを掛けてこなかったのです。
 しかし、現に発生したものは何らかの形で安全に保管せざるをえない。自分の目の前からなくなってしまえばいいということではないのです。いつまでもボタンを掛けないわけにはいきません。
 原子力政策に賛成してきた人も、反対の人も、正面から真剣に考えなければならない時期にきていると思います。


参考記事
汚染水ゼロ・デブリ長期管理を 原子力市民委
                       しんぶん赤旗 2024年4月28日
 脱原発社会の構築に向けた議論・政策提言などを行っている原子刀市民委員会(座長り大島堅一・龍谷大学教授)は3月、福島原発の廃炉について、「汚染水発生量ゼロ」の目標を明確化し、燃料デブリは取り出しを中止して安全に長期遮蔽管理するよう求める提言を発表しました。
 提言は、汚染水の大量発生を止められずに、漁業関係者や市民、近隣諸国からの強い反対を押切って開始された「ALPS(多核種除去設備)処理汚染水の海洋投棄が続くことは看過できないと指摘。しかし政府が定めた工程表(中長期ロードマップ)には、汚染水発生量ゼロの目標がないうえに、燃料デブリの全量取り出しの技術的見通しも立たず、その最終的行き先が不明であることから、工程表の見直しが必要だとしています。
 市民委は、提言について政府・東京電力と意見交換した結果を、4月16日のオンライントークで報。担当した川井康郎さんは、海洋放出を強行して政府・東電は「汚染水ゼロ」へのモチベーションを失ったのでないかぺ感想を述べました。

汚染水をゼロに デブリ長期管理を 原子力市民委が提言

 原子市民委員会(座長大島堅一・龍谷大学教授)は3月、福島原発の廃炉について、「汚染水発生量ゼロ」の目標を明確化し、燃料デブリは取り出しを中止して安全に長期遮蔽管理するよう求める提言を行いました。

 先ずアルプス処理汚染水を海洋放出する方式は、デブリからの発熱がある限り半永久的に継続する必要があり(デブリから放出される放射性物質は一見希釈されるように見えて、その実全量が海に排出されます)科学の最先端とは対極にあるものです。
 この愚行を止める具体策は、別掲の記事「福島第1原発事故 『廃炉』の課題と展望」で岩井氏の提案した「デブリ取り出しも原子炉解体もせずに事故機の建屋から堅固な構造物で覆って、下部にお椀状の「地下ダム」を設置して地下水と遮断する方式」によって実現できます。
 政府はIAEAが現行の方式を認めているからということではなく、この際 地球(=海)を汚さない本格的な対策を志向すべきです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
汚染水ゼロ・デブリ長期管理を 原子力市民委
                       しんぶん赤旗 2024年4月28日
 脱原発社会の構築に向けた議論・政策提言などを行っている原子刀市民委員会(座長り大島堅一・龍谷大学教授)は3月、福島原発の廃炉について、「汚染水発生量ゼロ」の目標を明確化し、燃料デブリは取り出しを中止して安全に長期遮蔽管理するよう求める提言を発表しました。
 提言は、汚染水の大量発生を止められずに、漁業関係者や市民、近隣諸国からの強い反対を押切って開始された「ALPS(多核種除去設備)処理汚染水の海洋投棄が続くことは看過できないと指摘。しかし政府が定めた工程表(中長期ロードマップ)には、汚染水発生量ゼロの目標がないうえに、燃料デブリの全量取り出しの技術的見通しも立たず、その最終的行き先が不明であることから、工程表の見直しが必要だとしています。
 市民委は、提言について政府・東京電力と意見交換した結果を、4月16日のオンライントークで報。担当した川井康郎さんは、海洋放出を強行して政府・東電は「汚染水ゼロ」へのモチベーションを失ったのでないかぺ感想を述べました。

新潟市の津波高は30cmではなく“1m”だった 津波研究専門家が現地調査

 能登半島地震時に津波の高さが30cmとされていた新潟市は28津波研究の専門家 有川太郎中央大学教授が現地調査に入った結果、少なくとも津波の高さは1mだったとの見通しを立てました。

 上越市には能登半島地震の発生から約20分で同市関川に達しました。
 上越市船見公園で内陸へ駆け上がった津波の遡上高が最大58mに到達していたことが明らかとなりました、
 津波発生時の避難場所やそこまでの避難ルートなどを確認しておくことが重要です。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新潟市の津波30cmではなく“1m”だった? 津波研究の専門家が現地調査「きちんと逃げることが大事」
                       NST新潟総合テレビ 2024/4/29
能登半島地震からまもなく4カ月。復旧に向けた動きが進む一方で津波の実態も明らかになってきています。
津波の高さが30cmとされていた新潟市では4月28日、津波研究の専門家が現地調査に入り、少なくとも津波の高さは1mだったとの見通しを立てました
今年1月、能登半島地震の発生から約20分上越市関川に設置された国土交通省のカメラが捉えていた「津波」。
気象庁は県内では柏崎市鯨波で最大40cm、新潟市と佐渡市鷲崎で最大30cmの津波が観測されたと発表していましたが…
中央大学 有川太郎 教授】
計算上だと1m~2mの高さまでは津波が上がってきたんじゃないかと思っている
新潟市中央区の海岸に押し寄せた津波についてこう話すのは、中央大学で津波などの研究を行っている有川太郎教授です。
有川教授は能登半島地震発生後、調査が可能な範囲で石川や富山など津波が観測された地点で現地調査を行ってきましたが、28日からは国交省のカメラが撮影していた当時の津波の映像を見ながらさらに詳しい調査を進めています。
中央大学 有川太郎 教授】
「漂流物というか、ああいうものは基本的には波で打ち上がるので、そうすると当時の津波だけではないかもしれないが、少なくともあの辺くらいまでは(津波が)来ているんだろうなということは分かる」
映像と比較しながら機材を使って津波の高さを調べた結果、新潟市中央区の海岸では気象庁の発表した30cmよりも高い、1mほどの高さまで津波が来ていたという見立てに。
有川教授は津波は数十cmでも十分に人を流す力があるとした上で、地震が発生して津波が押し寄せている情報があった際には、しっかりと高台などに逃げることが大事だと呼びかけます。
中央大学 有川太郎 教授】
「実際に警報が出ている高さよりも(実際には)かなり高い津波が押し寄せる可能性があるということがまず一つ。なので、もちろん警報がすべてではなく、津波が来るぞと言ったらきちんと逃げるという態勢をとっていただくことが大事」
上越市船見公園でも内陸へ駆け上がった津波の遡上高が最大58mに到達していたことが明らかとなっていて、津波発生時の避難場所やそこまでの避難ルートなどを確認しておくことが重要です。

【霞む最終処分】(31)~(34)

 福島民報が断続的に掲載している「霞む最終処分」シリーズのバックナンバーを4編ずつ掲載して行きます。
 今回は(31)~(34)を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【霞む最終処分】(31)第5 福島県外の除染土壌 宮城・丸森㊤ 隣県なのに対応に差 町外搬出 訴え根強く
                           福島民報 2024/04/02
 相馬、伊達、新地の福島県内3市町に面する宮城県丸森町は東京電力福島第1原発事故に伴い、町内全域での除染作業を余儀なくされた。発生した土壌と廃棄物は約8万立方メートルに上る。今も町内の仮置き場25カ所と、学校や公園の敷地19カ所に保管されたままだ。
 町中心部から車を10分ほど走らせた山間部にある上滝仮置き場。2021(令和3)年11月から昨年10月まで、環境省の実証事業が行われた。深さ約2メートルの2カ所の穴に遮水シートと汚染されていない土壌を敷き、除染土壌など約180立方メートルを詰めて覆土し、空間放射線量や浸透水の放射性セシウム濃度などを測定した。作業員の年間被ばく線量が1ミリシーベルトを下回るのかも調べた。環境省は「安全な埋め立て方法の有効性が確認できた」と評価している。
    ◇    ◇
 福島県内で生じた除染廃棄物は、中間貯蔵施設への搬入開始から30年以内の県外最終処分が法律に明記されている。これに対し、県外の除染土壌や廃棄物に関しては、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針で「発生量が比較的少なく、汚染度も比較的低いと見込まれるため、各都道府県の区域内で処分を進めることとする」とされている。ただ、どのような手法を用いるのかは原発事故発生から13年が経過した現在も示されていない。
 環境省は今年度にも除染土壌を埋め立て処分する際の具体的な基準を公表する方針だ。同省環境再生事業担当参事官室・参事官補佐の山口裕司は「丸森などでの実証結果を踏まえ、検討チームで議論を進めたい」と語る。
    ◇    ◇
 一方、町は除染土壌の取り扱いに関して「国と東電の責任で町外に持ち出してほしい」と訴える。福島県と同様に原発事故で被災したにもかかわらず、県が違うだけで対応に大きな差が生じている現状は受け入れがたいとの思いが根底にある。
 原発事故さえなければ発生しなかった廃棄物だとして、町外への運び出しを求める声は町民にも根強い。上滝行政区長の宍戸政秀は「外への搬出を前提に仮置き場の設置を受け入れた。町内での処分には反対だ」と言葉に力を込めた。
 丸森町は福島市と相馬市を結ぶ東北中央自動車道「相馬福島道路」の一部区間が通る。福島県内の除染で出た土壌を中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)まで運ぶルートにもなった。町総務課長補佐の石田真士は「町内を通るなら一緒に持って行ってほしかった」と本音をこぼした。(敬称略)


【霞む最終処分】(32)第5部 福島県外の除染土壌 宮城・丸森㊦ 25カ所仮置き場集約へ 「福島の行方」を注視
                            福島民報 2024/04/03
 宮城県丸森町長の保科郷雄は昨年12月、町内25カ所に点在する東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌と廃棄物の仮置き場を、将来的に1カ所に集約する方針を示した。町議会一般質問で町外搬出への姿勢を問われ、「民有地や学校などの保管分も含め、町長任期中(2027<令和9>年1月まで)に1カ所への集約を検討している」と表明した。
 町は除染作業と並行して2012(平成24)年度ごろから仮置き場を各地に整備してきた。だが、保管が長期化する中で、自然災害の際に土壌流出などが懸念されるとし、一元的な維持管理によって安全を確保する必要があると判断した。町の担当者は「将来的に町外に運び出す際も効率化が図れる」と集約の狙いを語る。
    ◇    ◇ 
 町はこれから議論を進める考えだが、集約先の選定は難航しそうだ。除染を始めた当初、仮置き場は町内に1カ所とする計画だったが、町民から「よその地区の土を持ち込まれたくない」との声が上がり、25カ所に散らした経緯がある。
 既存の仮置き場はいずれも容量が足りず、町内の全ての除染土壌などを運び込むのは不可能だ。町は新たな整備を模索するが、担当者は「どこに造るかが一番頭の痛いところだ」と悩みを打ち明ける。
 保科が示した方針に対し、町議からは「将来的に町外に搬出するためにも1カ所にまとめるべきだ」との肯定的な声が出ている一方、「大きな騒ぎになっていないのだから、現状のままでいいのではないか」との意見もある。町議会議長の佐藤吉市は「除染土壌の安全面に対し、町民はさまざまな思いを抱いている。100%の合意を得るのは難しいと思うが、町と連携して理解醸成に取り組む」と心境を語る。
    ◇    ◇
 環境省は除染土壌の再生利用を全国に広げるために茨城県と埼玉県、東京都で実証事業を計画しているが、地域住民の反発を受けて実施に至っていない。除染土壌の再生利用を進め、最終処分量を減らす努力が求められる。自民、公明の両党は3月6日、再生利用などの取り組みを政治主導で実現させるように促す内容を盛り込んだ第12次提言を首相・岸田文雄に申し入れた。
 佐藤には福島県内の中間貯蔵施設にとどまる除染土壌の対応を最優先すべきとの思いがある。「福島の筋道が立たなければ、丸森は何も進まない」とみている。除染土壌を巡る議論の先行きが見えない中、「国の責任で明確な処分の流れを示してほしい」と切実な思いを口にした。(敬称略)


【霞む最終処分】(33)第5部 福島県外の除染土壌 東北・関東に広く点在 処分基準早急に示せ
                            福島民報 2024/04/04
 東京電力福島第1原発事故で大気中に放出された放射性セシウムは福島県外にも広範囲に飛散した。福島県以外で除染を実施したのは岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県。民家や学校、公園などの面的除染は2016(平成28)年度までに完了した。

 福島県外の除染により発生した土壌を保管しているのは2023(令和5)年3月末現在、7県の53市町村で、保管量は計33万198立方メートルに及ぶ。中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に一時保管している福島県内の除染土壌約1376万立方メートル(2024年2月末時点)の2・4%に過ぎないが、保管場所の数は2万8728カ所に上る。

 

 

保 管 方 法

保 管 量

 

 

福島県外

保管方法 2万8684カ所

31万1755m3

 

 

 

仮置き場    44カ所

1万8443m3

 

 

合  計

おおおお2万8728カ所

33万0198m3

 

 

福島県内

中間貯蔵施設に集約

1376万m3

 

   ※ 福島県外は岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県
     福島県外は2023年3月末時点、福島県内は2024年2月末時点。
 保管場所のうち、約9割を占めるのは個人宅の敷地内などの民有地だ。1カ所当たりの保管量は1立方メートル未満が約4割、2立方メートル未満まで含めると約7割で、地下に少量を保管している場所が多い。環境省の担当者は「福島県内とは保管状況が異なる。仮置き場を設置できたのはごく少数で、ほとんどが現場から動かせないままだ」と説明する。
    ◇    ◇
 福島県外で出た除染土壌は除染が行われた各県で処理するように、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針で定められている。除染土壌を最終的に埋め立て処分する際も、市町村は国が策定する方法に従う必要があるが、肝心の処分の規則は定まっていない。
 環境省は県外で出た除染土壌の安全な処分方法や管理期間などの基準をつくるため、2017年9月に「除去土壌の処分に関する検討チーム」で議論を開始した。翌年には茨城県東海村と栃木県那須町で除染土壌を埋め立てる際の安全性を検証する実証事業を始めた。
 2021年12月からは宮城県丸森町で除染土壌から草木類を分別し、処分する場合の安全性の実証に取り組んだ。昨年11月までに3県の実証事業で結果が得られた。いずれも埋め立て作業や埋め立て後の管理期間を通し、除染土壌の飛散・流出、放射性セシウムの地下浸透などによる周辺環境への影響は見られなかったとしている。
 検討チームは次回以降の会合で、各実証事業の結果を踏まえた処分基準の策定に向けた詰めの議論に入る。
    ◇    ◇
 環境省は今年度中に県外にある除染土壌の処分基準を策定する方針だ。一方、福島県内の除染土壌の再生利用や、減容化技術を踏まえた最終処分の基準も年度内に決定する。同時並行で進めることでそれぞれの基準の整合性を図る。
 環境省は福島県内の除染土壌の再生利用や最終処分の基準をつくる上で国際原子力機関(IAEA)の評価結果を踏まえる予定だ。福島県外で保管されている除染土壌の放射性セシウム濃度は、再生利用計画の対象とされる1キロ当たり8千ベクレル以下が99・8%を占め、県内の除染土壌より濃度が低い傾向にある。このため、県外の除染土壌の処分基準の安全性も担保できると考えている。自民、公明両党が3月に首相・岸田文雄に申し入れた第12次提言にも、除染土壌の最終処分に向けた取り組みの強化が盛り込まれている。
 県外で除染土壌を保管している市町村からは処分基準の早期策定を求める声が上がる。環境省放射性物質汚染廃棄物対策室長の林誠は「処分基準がないために自治体に迷惑をかけ続けるわけにはいかない。策定作業を急ぎたい」と話す。(敬称略)
       =第5部「福島県外の除染土壌」は終わります=


【霞む最終処分】(34)第6部 リーダーシップ 政府㊤ 政治主導に方針転換 除染土再利用動き滞る
                            福島民報 2024/04/23
自民党東日本大震災復興加速化本部の総会。除染廃棄物の県外最終処分の対応強化を盛り込んだ第12次提言について議論した=2月28日
自民党東日本大震災復興加速化本部の総会。除染廃棄物の県外最終処分の対応強化を盛り込んだ第12次提言について議論した=2月28日
 「政府・与党が一体となって、政治主導で実現していくことが不可欠だ」。自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部が取りまとめ、3月6日に首相・岸田文雄に申し入れた復興加速化のための第12次提言は、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た廃棄物の福島県外最終処分への対応の強化を求めた。提言の中で特に強調したのは最終処分量を減らすために欠かせない、除染土壌の再生利用を推し進める体制の整備を急ぐことだ。

 2012(平成24)年12月の政権交代以降、与党からの提言は、時々の政府の復興施策の根幹となってきた。自民党東日本大震災復興加速化本部長として、第12次提言の取りまとめを主導した根本匠(衆院福島県2区)は「提言に書くということは、役所の尻をたたくことになるんだ。政治がリーダーシップを発揮し、必ず再生利用を前に進める」と息巻く。
    ◇    ◇ 
 根本は昨年10月、前任の額賀福志郎の衆院議長就任に伴い、本部長を引き継いだ。最初の重要な任務が第12次提言の作成だった。
 年明けから精力的に動いた。復興庁や環境省など関係省庁の幹部らと週2回のペースで議論を重ねた。復興施策全般の課題を洗い出す中、特に気がかりだったのは除染土壌の県外最終処分に向けた動きが滞っている問題だ。ある「既視感」を覚えた。
 脳裏に浮かんだのは2012年12月に復興相に就いたころのことだ。県内の除染で出た除染土壌を集約・保管する中間貯蔵施設の建設が遅れていた状況と、最終処分の問題が重なった。当時の政府が中間貯蔵施設の整備を県に要請してから既に1年4カ月が経過していたが、建設地は定まらなかった。そこで、所管の環境省だけに任せるのではなく、復興施策の司令塔である復興庁も前面に出る対応を取った。政治主導によって難題を解決できたと実感した。
 除染廃棄物の県外最終処分は「2045年までに完了する」と法律で定められている。しかし、土壌の再生利用を実現するための県外での実証事業は、住民の反発を受けて頓挫したままだ。
    ◇    ◇ 
 第12次提言は結びで県外最終処分が完了するまでの法的期限に触れ、「残された時間は長くはない」とくぎを刺した。知事の内堀雅雄も昨年10月の講演で「たった22年しかない」との表現で時間的猶予のなさに言及した。与党と県の危機意識は一致している。
 提言から13日後の3月19日、政府は与党提言を反映させる形で、復興の基本方針の改定を閣議決定した。県外最終処分を政治主導で実現させる―。方向性が定まった。(敬称略)

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌の再生利用や廃棄物の県外最終処分を進めるため、政府・与党は「政治主導」の姿勢を鮮明にした。その狙いと、実現に向けて求められる取り組みを探る。

01- 前月までの記事は次のようにすれば

(昨年4月より記事の更新は原則として月、水、土曜日に致しました)

前月までの記事は次のようにすれば ご覧になれます

 画面右側の「ブログ アーカイブ」に表示されている例えば「5月」をクリックすると5月の記事のタイトルが表示されるので、ご覧になりたいタイトルをクリックすれば記事が表示されます。

 元の画面(最新の画面)に戻るには題字下にある「ホーム」をクリックします。

までの記事は・・・
 画面右側の「ブログ アーカイブ」の下端に表示されている例えば「2016年」をクリックすると、まず同年の最終記事が表示されます。
 次にそのタイトルにカーソルを合わせてクリックすると、右側のアーカイブ欄が「2016年」の「12月」場面に変わり、その下に「11月~1月」の月名が表示されるので、上記の方法によって任意の月の任意の記事のタイトルをクリックすることで記事が表示されます。

 平和・9条関連のニュースは下記で扱っています
        「湯沢 平和の輪」 ホームページ
         URL: http://yuzawaheiwa.blogspot.jp/ 
             
 どうぞそちらの方にもご訪問ください。URLをクリックすればそちらにジャンプします。

 ブログ内の記事の検索は次のようにすれば出来ます
 画面最上段の「原発をなくす湯沢の会」の黄土色のタイトル帯の左上にある白い長四角の欄が検索用のキーワードを入れるところで、例えばそこに「TPP」と入れて虫眼鏡マークをクリックすれば、「TPP」を含んだ記事のすべてが日付順に表示されます。
 一度に表示し切れない場合は、記事の末尾に「次の投稿」が表示されるので、それをクリックすると次の記事が表示されます。
 全ての記事を表示し終えると「次の投稿」の文字は表示されなくなります。
 元の画面(最新の画面)に戻るには題字下にある「ホーム」をクリックします。

 右欄の下の方に 「人気の投稿」 10件表示されています。
 これはアクセス数の多い順に自動的に表示されるもので、それぞれのタイトルをクリックすると原記事にジャンプします。
 いずれも元の画面(最新の画面)に戻るには題字下にある「ホーム」をクリックします。