2023年7月15日土曜日

アンコウ輸出、半年でピンチ 処理水放出「海外1号店」に暗い影

 夏ごろとされる福島原発のアルプス処理水の海洋放出を巡り、香港政府実際に放出されれば福島、茨城など東日本10都県からの水産物の輸入を即時禁止すると発表しました。影響は漁業者だけにとどまらず関連業者に及びます。
 地元特産のアンコウ料理を売りにする茨城県の「まるみつ旅館は22年12月、海外1号店となるレストランを香港に開き、現地で日本食レストランを営むオーナーと3年間のフランチャイズ契約を結び、まるみつ旅館は無償で店の看板を掲げる権利を与える代わりに、アンコウ料理を店に輸出して利益を得ることで、オープンに合わせて、アンコウ鍋約4000食分、あん肝ラーメン約2000食分を香港店へ輸出し約1200万円を売り上げまし
 旅館側は現地のオーナーに、日本政府が発表している海洋放出計画の安全性について説明しましたが納得は得られず、「処理水が海洋放出されたら茨城産の食材を輸入できなくなるだろう。今から備えておいた方がいい」と言われました
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アンコウ輸出、半年でピンチ 処理水放出「海外1号店」に暗い影
                            毎日新聞 2023/7/15
 夏ごろとされる東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を巡り、香港政府が実際に放出されれば福島、茨城など東日本10都県からの水産物の輸入を即時禁止すると発表した。禁輸の対象は生鮮品のほか、冷凍品や海塩も含まれ、影響は漁業者だけにとどまらない。アンコウ鍋発祥とされる茨城県から世界を目指す輸出事業も、滑りだしから半年でピンチを迎えている
「処理水について香港で騒ぎになっている。緊急のオンライン会議を開きたい」。6月20日、北茨城市で旅館「あんこうの宿 まるみつ旅館」を営む武子(たけし)能久さん(47)に、海外部門の窓口となっている商社から連絡が入った。
 地元特産のアンコウ料理を売りにするまるみつ旅館は2022年12月、海外1号店となるレストランを香港に開いた。現地で日本食レストランを営むオーナーと3年間のフランチャイズ契約を結び、店舗開設などの費用はオーナー持ち。まるみつ旅館は無償で店の看板を掲げる権利を与える代わりに、アンコウ料理を店に輸出して利益を得る。
 オープンに合わせて、アンコウ鍋約4000食分、あん肝ラーメン約2000食分を香港店へ輸出し、約1200万円を売り上げた。武子さんは当初年3回ほどに分けて食材を輸出することを見込み、「アンコウ料理の魅力を世界に発信したい。その第一歩として、香港が海外拠点になると期待していた」と話す。

 しかし、6月ごろ、海洋放出に対する香港政府の強硬姿勢が明らかになると、香港店の客足が落ち込んだ。処理水は汚染水を多核種除去設備「ALPS(アルプス)」などで処理してほとんどの放射性物質の濃度を国の基準値未満に下げたもので、除去が難しい放射性物質のトリチウムも海水で薄めて濃度を国の基準の40分の1未満にしてから放出する計画になっている。
 武子さんはオーナーに、日本政府が発表している海洋放出計画の安全性について説明したが、現地とのズレは解消されなかった。
「処理水が海洋放出されたら茨城産の食材を輸入できなくなるだろう。今から備えておいた方がいい」。武子さんとオーナーらとの話し合いでそう決まった。香港店では、店内に掲示していた茨城産をアピールするポスターを外し、食材も禁輸の対象から外れた日本国内の地域から調達する方向で話を進めている。
「せっかく茨城推しの店を開いたのに助走の段階で足をすくわれた」と悔しがる武子さんはこう続けた。「日本政府が科学的に安全だと説明しても、他国の政治的な動きは止めようがない。ほとぼりが冷めるまで当面、香港への輸出は再開できないだろう」【田内隆弘】