2023年7月24日月曜日

原発事故の株主代表訴訟控訴審 24日に第1回口頭弁論

 福島第1原発事故を巡り、津波対策を怠ったために会社に損害を与えたとして東電の株主48人が旧経営陣5人に対し、総額約22兆円を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審第1回口頭弁論は24日午後3時から東京高裁であります

 一審判決(東京地裁)は、国の機関が02年に公表した地震予測「長期評価」の信頼性を認め、原発敷地高を超える津波の襲来を予見できたと指摘。主要建屋や重要機器室への浸水対策(水密化)工事を講じていれば、「事故を防げた可能性は十分あった」として、勝俣元会長清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の4人に計13兆円余の賠償を命じました。
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原発事故の株主代表訴訟控訴審 24日に第1回口頭弁論 「予見義務」どう判断
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 東京電力福島第1原発事故を巡り、津波対策を怠ったために会社に損害を与えたとして東電の株主48人が旧経営陣5人に対し、総額約22兆円を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審第1回口頭弁論は24日午後3時から、東京高裁である。昨年7月の一審判決は津波対策を指示していれば「事故を防げた可能性が十分にあった」として、勝俣恒久元会長ら4人に総額13兆円超の巨額賠償を命じた。一審判決が最新の科学的、専門技術的知見に基づき「万が一にも事故を防ぐ義務がある」とした点を、高裁がどう判断するかが焦点になるとみられる。
 訴訟の主な争点と、一審東京地裁の判断は【表】の通り。
 原発事故の株主代表訴訟控訴審 24日に第1回口頭弁論 「予見義務」どう判断
 判決は国の機関が2002(平成14)年に公表した地震予測「長期評価」の信頼性を認め、原発敷地高を超える津波の襲来を予見できたと指摘。主要建屋や重要機器室への浸水対策(水密化)工事を講じていれば、「事故を防げた可能性は十分あった」とした。

 津波対策を先送りした旧経営陣の判断について「重大事故が生じないよう最低限の津波対策を速やかに指示すべきだったが、取締役としての注意義務を怠った」と非難し、勝俣元会長と清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の4人に計13兆3210億円の賠償を命じた。小森明生元常務については常務、原子力・立地本部副本部長への就任が原発事故の1年前で、対策を講じる時間がなかったと判断した。
 旧経営陣側4人と、株主側の双方が判決を不服として控訴した。
 控訴審で株主側は小森氏を含む5人が責任を負うはずだと訴え、賠償の増額を求める方針。旧経営陣側は長期評価は科学的根拠に乏しく、津波は予見できなかったとする一審の主張を維持するとみられる。

■高い水準の重大事故回避義務 「一審同様認められるのでは」 識者
 株主代表訴訟の支援活動を行う「株主の権利弁護団」事務局長の前川拓郎弁護士は、一審判決の意義を「賠償命令額の大きさではなく、旧経営陣が取締役として求められる高度な予見義務に違反したと指摘した点にある」と強調する。
 前川弁護士は、事前予測が困難な災害に備えるため多額の費用を投じるのは「企業として最適解ではない場合がある」とした上で、一審判決が「過酷事故が発生すれば、わが国そのものの崩壊にもつながりかねない」と言及した点に着目。原発事故で引き起こされる結果の重大性から、「万が一にも事故を起こしてはならないとの見方に立てば、一審と同様に原子力事業者の取締役は他業種に比べて高い水準の予見義務や(重大事故の)結果回避義務を負うと認められるのではないか」と展望する。