2023年7月5日水曜日

漁業者・周辺国の理解見通せず トリチウム水放出、最後の難関

 政府は4日、福島第1原発の敷地内にたまるトリチウム水の海洋放出計画にIAEAの「お墨付き」を得ました。但し別掲の記事の通り、そこには海洋放出は日本政府による国家的決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも、支持するものでもない」と明記されています。

 これまで政府が放置していたため肝心の地元漁業者の同意はまだ得られておらず、周辺国の不安払拭し切れていないため、政府は難しい判断を迫られています
 時事通信中央日報(韓国)の記事を紹介します。
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漁業者・周辺国の理解見通せず 処理水放出、最後の難関
                             時事通信 2023/7/5
 政府は4日、東京電力福島第1原発の敷地内にたまる処理水の海洋放出計画に国際機関の「お墨付き」を得た。
 既に関連設備の工事は完了し、原子力規制委員会による使用前の検査にも近く合格が出る見通し。設備や安全面での準備は整いつつあるが、漁業者や周辺国の不安は払拭し切れておらず、政府は難しい判断を迫られている

「日本と国際原子力機関(IAEA)は廃炉、復興のために協力し、本日重要な節目を迎えた」。IAEAのグロッシ事務局長は、放出計画について「国際安全基準に整合的である」と明記した包括報告書を岸田文雄首相に手渡し、こう強調した。
 政府が処理水の海洋放出を巡り、IAEAに調査を要請したのは2021年の春。処理水の安全性について、科学的な根拠に基づいて証明してもらうためで、IAEAは約2年間にわたって調査を続けてきた。
 今後、政府は「夏ごろ」としてきた放出開始の具体的な時期について詰めの調整に入る。ただ、政府と東電は15年に福島県漁業協同組合連合会と「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束した経緯があり、地元の心情を置き去りにするわけにはいかない。
 政府は処理水放出に伴う風評被害対策として、21年度補正予算に300億円を計上。さらに、22年度第2次補正予算でも漁業者を支援するため500億円の基金を創設した。一部の漁業者は、基金について「信頼関係構築に向けた姿勢」と受け止めている。

 福島県漁連の野崎哲会長は先月、西村康稔経済産業相と面会。政府方針は覆りそうにないとの雰囲気が広がる中、「事業の実施に当たっては、国と東電の責任で実施してもらいたい」と要望しつつも、改めて放出反対の立場を訴えた
 近隣国の反対も根強い。中国は海洋放出に批判的な立場を貫いているほか、韓国国内でも懸念の声が上がる。グロッシ氏はこの後、韓国やニュージーランド、南太平洋の島国クック諸島を訪れ、報告書の内容を説明する見通しだが、理解を得られるかは不透明だ。


日本の汚染水排出が秒読み? 韓国政府「放出時期を注視」
                         中央日報日本語版 2023/7/3
日本政府が近く福島原発汚染水排出設備の安全性評価作業を終える見込みだ。これを受け、韓国政府は具体的な放出時期などに注目していると明らかにした。

朴購然(パク・グヨン)国務調整室第1次長は3日、政府ソウル庁舎で会見し、「日本原子力規制委員会(NRA)が先月30日、福島第1原発汚染水排出設備の使用前検査が終了したと発表した」とし「NRAは1週間ほど検討手続きを踏んで東京電力に(検査)終了症を交付する。そうすれば日本政府の安全性評価作業がすべて終了する」と伝えた。
日本の漁業従事者と内部の世論が悪化して放出が延期される可能性はあるのかという質問には「断定的に話すのは難しい」としながらも「日本政府が国際原子力機関(IAEA)報告書と各国の反応、内部の状況を考慮し、放出するかどうかやタイミングを決めるとみている。韓国はそれに合わせて対応することに力を集中している」と答えた。

政府は汚染水放出と日本産水産物輸入規制措置は別だと一線を画した。朴次長は「汚染水が放出されれば韓国が日本産水産物を輸入するしかないと一部のメディアが主張するが、これは事実でない」とし「日本産水産物輸入規制は原発事故以降に流れた放射性物質に対する懸念のためだ。日本政府が一連の過程を経て実行しようとする汚染水放出とは別」と述べた。
ただ、「日本が長さ1キロの海底トンネルを通じて汚染水を放出する理由が水産物の安全を担保に輸出しようということではないのか」という質問に対し「内部的にそのような部分を念頭に置いて、いくつかの形態について悩んでいる」としながらも「追加の解釈的な部分は留保する」と答えた。
朴次長は▼政府・与党は汚染水放出に賛成する▼政府がIAEA最終報告書前に海洋放出を唯一の代案として結論を出した▼IAEAが日本側に特定の汚染水処理案を提示した-などの報道について事実でないと反論した。また4-7日に訪日するラファエル・グロッシーIAEA事務局長の日程について「現在調整中」と述べた。

一方、専門家として同席したキム・ヒリョン蔚山(ウルサン)科学技術院(UNIST)原子力工学科教授は「日本が汚染水放出時にトリチウムの濃度を1リットルあたり1500ベクレルと設定した。日本の管理基準6万ベクレルの40分の1程度に低く設定した」とし「排出管理基準を満たせば放射線の側面で懸念されるほどの影響はない」と説明した。