8日付の新潟日報に掲題の記事が載りました。
原発の再稼働を巡る住民投票条例の制定を審議する臨時県議会を16日に控えて、花角知事は「二者択一では民意を適切に反映できない」という意見を付けて県議会に提案する方針のようです。
再稼働の賛否にはいろんなニュアンスが存在するからというのが言い分で、実は2013年1月に同様な条例の制定を審議した際にも当時の泉田裕彦知事も、同じ見解を述べていました。 ⇒(13.1.24)柏崎刈羽原発 県民投票条例案を県議会が否決
原発には「稼働」か「休止」の2つの態様しかありません。再稼働を巡る県民投票は、知事が原発の再稼働に賛成するのを県民が認めるか否かを決めるものなので、「賛成」か「反対」かで意思表示するしかありません。
知事はこれまで再稼働については「県民の意向」を尊重する旨の発言を繰り返してきたのですから、ここで県民投票を拒否することはあり得ません。「賛成」は兎も角、「反対」の理由を知事が知りたいというのであれば、それは別途アンケートを取れば済むことです。
新潟日報と産経新聞の記事を紹介します。
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柏崎原発県民投票条例案 「多様な意見把握できず」花角知事 二者択-に意見
新潟日報 2025年4月8日
花角英世知事は、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案に対し、明確な賛否は示さず「再稼働の是非は『賛成』または『反対』の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できない」などの意見を付ける方針であることが7日、関係者への取材で分かった。近く発表される見通し。
賛否は明示せず
関係者によると、意見の中で花角知事は「県民投票条例の制定が約14万3千人県民の署名により請求され、意義を大変重く受け止める」とした上で課題があると指摘する予定。中でも再稼働の是非については、地域の経済や雇用、財政などにも影響があることから「広範で複雑な問題」と指摘し、賛成か反対の二者択一の投票には慎重な姿勢を示す。
ほかに、公務員を含む全ての人が県民投票運動を自由に行うことができるとの条例案の規定に対し「国家公務員法、地方公務員法に抵触する可能性がある」との見解も盛り込む見通し。条例案を執行する上で開票事務の主体が整理されていないことも課題に挙げるとみられる。
条例案は花角知事の意見が付された上で、16日に開会する県議会に提案され、3日間の日程で審議される。花角知事の意見を受けた各党会派の動向が注目される。
市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」(請求代表者・水内基成弁護士ら)は3月27臼、14万3196人分の有効署名を提出し、条例制定を直接請求していた。
柏崎原発県民投票条例案へ意見 知事、県議会に判断を委ねる
新潟日報 2025年4月8日
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を巡り、県議会の採決に影響を与える可能性がある花角英世知事の意見が7日、判明した。賛成か反対の二者択一では「県民の多様な意見を把握できない」とする内容。2013年に同様の条例案が県議会で審議された際に付された泉田裕彦知事(当時)の意見と共通する。ただ、県民投票の実施に向けて県議会に条例案の修正を求めた泉田氏とは対照的に、花角知事は県議会に判断を委ねた形となった。
関係者によると、花角知事は意見で「再稼働の是非はエネルギー政策上の必要性をはじめ、施設の安全性、避難計画の実効性、東電に対する信頼性など多岐にわたる観点から議論されている」と指摘。県には「条件付きの賛否」や「県議会で議論し結論を出すべきだ」といった意見が寄せられているとし、賛否の明確な表明は避けた。
13年の泉田氏も二者択一の投票方式について「県民の多様な意見を反映できない懸念がある」と指摘するなど6項目の課題を挙げた。花角知事と異なるのは「条例案を修正する必要がある」として5項目の修正点を提示し、県議会に対応を求めた点だ。審議過程では議案の修正を巡って、泉田氏と県議会側で責任を押し付け合う場面もあった。
一方、花角知事は意見で修正の必要性には言及しない方針で、県幹部は「県議会に審議してもらうことが基本だ」と強調。議論の方向性を示すようなことはしないと説明する。
知事意見を受け、16日に開会する県議会臨時会での各党会派の対応が焦点になる。県議会最大会派で過半の議席を占める自民党県議団の岩村良一幹事長は7日、報道陣の取材に「知事の意見を踏まえて質問を作っていく」と述べるにとどめた。第2会派で未来にいがたの上杉知之幹事長は「想定内だった」と受け止めた。
新潟県の花角英世知事「県民投票には限界ある」 柏崎刈羽原発の再稼働問題
産経新聞 2025/4/9
東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の是非を問う県民投票を行うための条例案をめぐり、同県の花角英世知事は9日の定例記者会見で、「かかるコストと手間を考えると、(県民投票には)限界があるのではないか」との考えを示した。
花角知事は「県民投票から得られる情報は限定的」と指摘した。県民には、条件付きで賛成という人もいれば、条件付きで反対という人もおり、こうした情報が「賛成か、反対かを問う二者択一の県民投票からは得られない」と述べた。
県民の多様な意見を聞く手段としては、「公聴会や県内首長との対話のほか、県民への意識調査なども考えられる」とし、「方法はいま検討しており、いずれ示すことができると思う」と語った。
知事は、条例案に自分の意見を付けて県議会に提出する。公表された意見書では、市民団体が約14万筆の署名を集めて条例制定を知事に直接請求したことについて「その意義を大変重く受け止める」とした。
一方で、県民投票の課題についても言及し、「(再稼働に賛成か、反対かの)二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できない」など、県民投票実施に慎重な考えを示した。
市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」が作成した条例案は、今月16日から3日間の日程で開かれる臨時会で審議される。