既報の通り18日の臨時新潟県議会では柏崎刈羽原発の再稼働の是非をめぐる県民投票条例の制定が否決され、傍聴席は怒りの声とため息が交錯しました。市民団体「県民投票で決める会」の代表者の一人 寺田恭子さんは、「県民の意思を表明する機会が失われてしまった。14万3196筆の署名数が軽んじられた」と批判しました。新潟日報が報じました。
それとは別に臨時県議会開催前の15日、これまでに行われた2012年の静岡県浜岡原発の、2019年の宮城県女川原発の、また2013年の柏崎刈羽原発の、それぞれの再稼働を巡る住民投票のための条例制定の、直接請求の審議経過等に触れる記事をBSN新潟が出していますので併せて紹介します。
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[柏崎刈羽原発・県民投票条例案否決]傍聴席から怒り、落胆…市民団体
「14万3196筆の署名軽んじられている」飛び交うやじに進行止まる場面も
新潟日報 2025/4/19 10:30
14万3千人超の思いは届かなかった。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案が新潟県議会で否決された18日、傍聴席は怒りの声とため息が交錯した。条例制定を直接請求した市民団体のメンバーは「これが県民のことを考える政治なのか」と落胆した。
・柏崎刈羽原発再稼働巡る県民投票条例案、反対多数で否決
・13年前の請求をリードした故・橋本桂子さんの夫「今回の活動も無駄ではない」
市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」の請求代表者の一人、寺田恭子さん(24)=新潟市西区=は、傍聴席で採決を見届けた。「県民の意思を表明する機会が失われてしまった。14万3196筆の署名数が軽んじられ...
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柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる住民投票条例案を審議へ
「唯一責任を持てるのは県民自身」 “全国初の住民投票”を行った
元町長のメッセージ 新潟
BSN新潟放送 2025年4月15日
新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる県民投票の条例案が、16日から県議会で審議されます。これまでの経緯やポイントをまとめます。
『条例案の直接請求』が持つ意味
世界最大規模の原子力発電所、東京電力・柏崎刈羽原発。
福島第一原発事故を受けて2012年3月に6号機が停止してから13年にわたり、7つの原子炉全てが止まったままです。
この間、東電は6・7号機の再稼働を目指して安全対策工事などを進め、2024年6月、7号機が技術的に再稼働できる状態となりました。あとは“地元の同意”を待つばかりとなっています。
こうした中、2024年10月には…
「原発を動かすのに賛成の人が何人いたのか、反対の人が何人いたのか。そういったことが県知事に判断してもらう重要な材料になる」
「原発再稼働の是非を県民投票で決めてほしい」と市民団体が署名活動を始めました。
【県民投票で決める会 請求代表者 水内基成弁護士】
「(再稼働に)賛成でも反対でもそれはどちらでもいいと思うが、それを表明できることが民主主義にとって一番大事」
県民投票実施のための条例制定に向け、およそ2か月、県内各地で署名を呼びかけました。その結果…
【黒崎貴之キャスター】
「ずらりと並べられた段ボール、この中には県民投票条例制定を求める14万3000筆あまりの署名が収められています」
直接請求に必要な数のおよそ4倍の署名が集まり、3月27日に花角英世知事あてに提出されました。
条例案につける『知事の意見』
〈黒崎貴之キャスター〉
県政担当の横山風花記者とお伝えします。
原発を巡り、住民投票の実施を求めるこうした声は全国各地でこれまでも上がっていますよね。
〈横山風花記者〉
福島第一原発の事故の後、各地の議会で原発の再稼働や稼働延長を問う住民投票の条例案が提出されてきました。しかし、いずれも議会で否決されていて、住民投票は一度も実現していません。
条例案には、知事が自らの意見をつけて議会へ提出することになっていますが、その“知事意見”は様々でした。
例えば2012年、静岡県にある浜岡原発の再稼働を巡る住民投票では、当時の川勝平太知事は条例案の不備を指摘しながらも「賛意を表する」と明言しました。
一方で2019年、宮城県の村井嘉浩知事は「県民の多様な意思が正しく反映できない」などとして賛否は明言せず、さらに条例案に消極的な考えを示しました。
また、新潟県では12年前、当時の泉田裕彦知事が「修正意見をつけることは住民投票に反対であれば(修正の指摘は)しないということです」と述べ、投票を実施するうえでの課題など6項目について修正が必要と指摘。
賛否は明らかにしなかったものの、県民投票には一定の理解を示しました。
条例案に対する花角知事の“意見”は…
そして、今回の花角英世知事の意見はこうでした。
【花角英世知事】
「県民がどういう受け止めをするのか、原発とどう向き合おうと考えているかを探ります、見極めていきますと申し上げている。その見極めるという段階において、住民投票というのはやはり課題がある。二者択一で得られる情報というのは限られてくる」
これまでの多くの知事同様に賛否は明言しませんでした。そして県民投票そのものについて慎重な姿勢を示しました。
会見では「いずれ県民の意見を集約していくプロセスに入る」とし、公聴会や首長との意見交換などを検討していると説明。ただ、これまで繰り返してきた県民の「信を問う」という、その具体的な時期や方法はいまだ明らかにしていません。
〈黒崎貴之キャスター〉
花角知事の意見のポイントは「『賛成』『反対』の二者択一の選択肢では県民の多様な意見を把握できない」というものでしたね。
〈横山風花記者〉
花角知事は、再稼働に「絶対賛成」という人から「絶対反対」という人、さらにその間には悩んでいる人もいて賛否には「グラデーション」があるとしています。
強まる原発再稼働への“圧力”
〈黒崎貴之キャスター〉
県民投票に対する自らの賛否を明言しなかったという点では、12年前、当時の泉田知事と同じ意見ですね。
〈横山風花記者〉
はい、ただ12年前とは原発を取り巻く状況は前回と大きく異なっています。
【資源エネルギー庁 村瀬佳史長官】
「柏崎刈羽原発の再稼働は、東日本の電力供給上の脆弱性を補う観点から極めて重要だと考えています」
政府は“原発回帰”に舵を切り、同様の声は経済界からも。
【経団連 十倉雅和会長】
「最後は知事・県民のご判断になると思うが、それが一刻も早くなることを願っている」
【経済同友会 新浪剛史代表幹事】
「柏崎刈羽がもし再稼働できないとなると、日本の原子力は暗雲が立ち込める」
原発を巡る“条例に基づく全国初の住民投票” 旧巻町は…
〈黒崎貴之キャスター〉
経済界などからは「原発は国策だから県民投票はなじまない」という声も上がっていますが、過去に新潟県内では原発をめぐって条例に基づく全国初の住民投票が行われました。
新潟市の郊外に位置する旧巻町。
ここでの原発建設を是とするか、非とするか…町民が意思を示し判断されました。
当時の町長、笹口孝明さん(77)は「1人1人が自分の意思で票を入れた。『町の将来、自分たち自身の将来を決めた』と満足感と誇りを持てた」と振り返ります。
東北電力が1971年に発表した巻原発の建設計画について、笹口さんら町民有志は町民の意思を確かめようと『住民投票を実行する会』を立ち上げました。
1996年1月の出直し町長選で、笹口さんは住民投票の実施を公約に掲げ、当選しました。
同年8月に行われた条例に基づく全国初の住民投票には、有権者のおよそ9割が投票し、結果は反対が60%。原発建設に「NO」を突きつけました。
あれから28年。
16日から議論が始まる県民投票について、笹口さんは「実施すべき」だと断言します。
【旧巻町長 笹口孝明さん】
「たとえ国策だからと言っても自分たちの生命・健康・財産に関わることは自分たちが考えていい。『国策だから黙れ』『あなたたちの意見はいらないよ』と言う人は民主的な議論、考え方を停止させる」
人口3万人の町で実現した住民投票は、原発との向き合い方を今に問いかけます。
【旧巻町長 笹口孝明さん】
「テーマは再稼働するかしないか、その中間なんてない。主権者である県民の意思を確認して、県民の意思に従って結論を出すべき」
〈横山風花記者〉
笹口さんは「もし、議会で再稼働を決めたとして、万が一、原発事故が起きた時に知事も県議も責任を取れない。唯一、責任を持てるのは県民自身」だとしていて、再稼働に賛成でも反対でも「県民の意思に従って決めることが大切」と話していたのが印象的でした。