2025年5月5日月曜日

柏崎原発再稼働の条件 緊急時対応取りまとめ 内閣府

 内開府の柏崎刈羽地域原子力防災協議会の作業部会が2日、県庁であり、柏崎刈羽原発で事故が起きた際の国や関係自治体の対応方針を定めた「緊急時対応」の最終案了承されたということで、内開府は今後、住民説明会を開いた後、副知事や関連省庁の審議官らが参加する「柏崎刈羽地域原子力防災協議会」で議論し、合意を目指すということです。

 しかしながら能登半島地震でクローズアップされた問題点は、地震で多くの民家が損壊する中で屋内退避は可能なのかという点であり、端的に言えば「民家の強度について考察しないで、屋内退避を決めるのは乱暴ではないか」という問題提起でした。
 今回大雪と地震の複合災害を考慮した点は前進と言えますが、その具体策が「暴風雪や大雪など外出で命に危険が及ぶ場合は、5キロ圈の住民であっても屋内退避を優先する」というのではあまりにも安易で、考え方が逆です。
 それは積雪荷重が屋根に加わった状態で地震が起きれば、積雪荷重の分家屋の重心が上に移動し 家屋に加わる水平荷重も垂直荷重も増大するので、家屋損壊の程度は増大します。従って屋内退避は一層危険になるし、仮に倒壊に至らなかったとしても、家屋の各部がより損傷しやすくなるので、「屋内」=放射能防護の効果″などほとんど期待できません。

 総じて今回の「対応方針」については 新潟日報が指摘している通り、「原発事故と自然災害が重なる『複合災害』への対応策はなお具体性に欠け」、「大雪時に確実に除排雪ができるのか」、「地震で家屋が倒壊(または損傷)した場合に避難や屋内退避は可能なのか」など、本県特有の課題に応じた実効性も不透明で、「全体的に原則論が多く、従来の説明の域を出ていない」、要するに 「具体策に踏み込まなければ実効性を担保できない」としか言いようがありません。
 規制委には「屋内退避」の問題に真剣に対処しようとする姿勢が感じられず、これではいつまで経っても「屋内退避」は解決しそうもありません。
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柏崎原発再稼働の条件 緊急時対応取りまとめ 内閣 住民説明会開催ヘ
                         新潟日報 2025年5月3日
 内開府の柏崎刈羽地域原子力防災協議会の作業部会が2日、県庁であり、東京電力柏崎刈羽原発で事故が起きた際の国や関係自治体の対応方針を定めた「緊急時対応」の最終案を了承し、取りまとめた。内開府は今後、住民説明会を開いた後、副知事や関連省庁の審議官らが参加する「柏崎刈羽地域原子力防災協議会」で議論し、合意を目指す。

 柏崎刈羽原発の再稼働は地元同意が焦点となっている。緊急時対応の取りまとめは、花角英世知事にとって再稼働を巡る議論を深める材料のつがそろったことになる。
 内開府が示した最終案では、原発炉心の冷却機能を失うなど全面緊急事態に陥った場合、原発から半径5キロ圈の住民約1万8千人は避難し、半径5~30キロ圈の住民約40万人は自宅などにとどまる屋内退避を原則とした。その上で、本県特有の課題で最大の焦点となった大雪と原発事故が重なる複合災害への対応を盛り込んだ
 具体的には、暴風雪や大雪など外出で命に危険が及ぶ場合は、5キロ圈の住民であっても屋内退避を優先する。除雪が困難になれば、自衛隊など実働組織が支援することを明記した。
 屋内退避が原則となる5~30キロ圈の住民は、屋根雪下ろしなど最低限の一時的な外出は可能と判断。方、大雪の予報で屋内退避の継続が困難と見込まれる場合、命に危険が及ぶ前に関係自治体の判断で避難できる方針も初めて示した。
 2日の作業部会は冒頭以外、非公開とした。内閤によると、出席者から異論は出なかった。
 終了後に記者会見した開府の高橋一幸・地減原子力防災推進は「取りまとめは前進だ。住民に丁寧に説明していく」と述べた。ただ、住民説明会の開催場所や回数、手法などにては「決まっていない」と繰り返した。
 県原子力安全対策謀の金子信之課長は作業部会の取りまとめは「重要なポイント」と指摘。内開府に住民説明会の開催を要望したと明らかにした。

原発事故の緊急時対応安の主なポイント

・原発5キロ圏内の柏崎市、刈羽村住民は自家用車や県が手配したバスなどで県内施設に避難
暴風雪や大雪時、PAZ内の住民は天候が回復するなど安全が確保されるまでは屋内退避優先
・原5~30キロ圈(UPZ)内の住民は放射性物質の放出前に屋内退避を開始。雪下ろしなど最低限の外出は可能
大雪の予報で屋内退避が困難な場合、関係自治体がUPZ外への避難指示を判断
複合災害に備え複数の避難経路を設定。陸路が制限される場合、海路や空路などで対応
豪雪時、道路管理者らによる道路除雪などが困難な場合、警察、消防、自衛隊の支援を要請

 

緊急時対応
 原発が立地する地域ごとに各自治体の避難計画や対応方針を取りまとめたもの。内閣府ぱ2015年に柏崎刈羽地域原子力防災協議会の作業部会を設置。内開府や県、市町村のほか、県警や自衛隊など関係機関が出席し、議論を行ってきた。緊急時対応の策定は事実上、再稼働の条件とされており、最終的には首相をトップとする原子力防災会議で了承する。


柏崎原発「緊急時対応」取りまとめ 再可稼働 知事判断見通せず
 東京電力柏崎刈羽原発で重大事故が起きた際の対応方針を定めた「緊急時対応」の取りまとめ作業が2日、終わった。再稼働の議論を深める材料を求めていた花角英世知事にとって、緊急時対応は残された材料の一つだった。「事故時の披ばくシミュレーション」も
県が近く公表するとみられ、議論の材料は全て出そろうことになる。ただ、花角知事は意見の集約に向けて公聴会や首長との対話などを実施すると明言してお、判断の時期は見通せない。

県、被ばく予測公表へ 議論「材料」近出そろう
 緊急時対応の取りまとめは事実上、再稼働の条件とされてきた。石破茂首相は昨年12月の参院代表質問で「各地域の避難計画を含む緊急時対応がない中で、原発の再稼働が実態として進むことはない」と説明。早期の再稼働を目指す政府にとって、緊急時対応の作業終了はソフト面のハードルを越えたことを意味する。
 これまで花角知事は一貫して、再稼働に関する議論を深め、県民の受け止めを見極めるとしてきた。その上で自身の判断を示し、県民の意思を確認すると再三述べている。
 花角知事は4月の県議会臨時会で、議論の材料でそろっていないものを問われ、緊急時対応と県が実施する「事故時の被ばくシミュレーション」の二つを挙げた。県は近くシミュレーション結果を公表する見通しで、議論の材料が出そろう局面を迎えそうだ。
 ただ、花角知事がすぐに自らの判断を示す環境はなお整っていない。県民の意見を把握するために公聴会や首長との対話、意識調査の実施を検討しており、どの程度の時間がかかるか見通せないためだ
花角知事は4月の定例記者会見で「議論が深まっていく中で、県民の気持ちを見極めていくためのプロセスを示したい」と説明しており、引き続き知事の動向に注目が集まる。

複合災害対応 具体性欠く
 内閣府が2日の作業部会で、東京電力柏崎刈羽原発での重大事故発生時の「緊急時対応」案を取りまとめた。政府は同原発の再稼働に向けた避難対策の「総仕上げ」としたい考えだが、原発周辺自治体が懸念している、原発事故と自然災害が重なる「複合災害」への対応策はなお具体性を欠く大雪時に確実に除排雪ができるのか、地震で家屋が倒壊した場合に避難や屋内退避は可能なのかなど、本県特有の課題に応じた実効性も不透明なままだ
 複合災害を巡っては、内開府が緊急時対応案に加えて質疑応答集を全国で初めて作成。本県ではとりわけ大雪への対応が重要だとして、項目の分量も割いた。
 今回取りまとめた緊急時対応案では、3月の修正案に、大雪予測で屋内退避の継続が困難な場合の説明を追加。質疑応答集にも屋根の雪下ろしや出入り口の除排雪に関する項目を加えた。
 ただ、全体的に原則論が多く、従来の説明の域を出ていない原発から半径30キロ圏内の自治体は、より具体的な対応策や指針を求めている。
 屋内退避の運用見直しを担う原子力規制委員会には、自治体から「民間事業者の協力を得るため、国の責任で行動基準を提示してほしい」といった要望が上がっている。
 作業部会終了後、内開府の高橋一幸・地域原子力防災推進官は「関係省庁、自治体で大雪など複合災害への対応をしっかりしていく」と強調したが、具体策に踏み込まなければ実効性を担保できない恐れがある。緊急時対応が最終的に了承されるまでの間に、どこまで議論を深掘りできるかが課題となりそうだ