原子力規制委員会は30日、北電 泊原発3号機の安全対策が新規制基準に適合し、安全審査に事実上合格したことを示す審査書案を了承しました。一般からの意見公募を経て、今夏にも正式決定する見通しです。
申請から12年近くに及んだのは、原発敷地内にある断層が将来動く可能性のある「活断層」か否かを巡る議論が長引いたほか、敷地内に到達する最大津波の高さや火山噴火の影響評価などに時間がかかったためですが、背景要因として北電の当初想定の甘さに加え関与者の人材不足などが挙げられます
また、基準地震動は当初申請の550ガルから693ガルに引き上げられましたがこれも非常に低く、余裕は殆どないと想定されます。
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泊原発3号機が規制委の安全審査に「合格」 議論12年、北電は令和9年の再稼働目指す
産経新聞 2025/5/1
原子力規制委員会は30日、北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)の安全対策が新規制基準に適合し、安全審査に事実上合格したことを示す審査書案を了承した。一般からの意見公募を経て、今夏にも正式決定する見通し。北海道電は防潮堤などの安全対策工事を令和9年3月までに完了し、地元同意を得た上で早期の再稼働を目指す。
再稼働に向けた規制委の安全審査に合格するのは、中国電力島根原発2号機(松江市)以来、約4年ぶり。国内ではこれまでに10原発17基が合格し、8原発14基が再稼働した。今後、具体的な工事計画や運用ルールを定めた保安規定の審査に移り、認可されれば再稼働に必要な手続きはすべて終了する。
北海道電は平成25年7月に1~3号機の審査を申請。審査会合は174回開かれ、議論は12年近くに及んだ。原発敷地内にある断層が将来動く可能性のある「活断層」か否かを巡る議論が長引いたほか、敷地内に到達する最大津波の高さや火山噴火の影響評価などに時間がかかった。
泊原発は東京電力福島第1原発事故後の24年5月から約13年間運転を停止している。審査が長期化し、3号機を優先して進めてきた。北海道電の斎藤晋社長は3月の記者会見で「3号機の再稼働スケジュールに支障がないと判断したところで1、2号機の審査を再開したい」と述べ、2030年代前半にフル稼働させる考えを示した。
想定甘さに人材不足も 泊原発、異例の長期審査 北海道電
時事通信 2025/5/1
原発再稼働の前提となる新規制基準が施行された2013年7月から始まった北海道電力泊原発3号機の審査は、敷地内にある断層の評価や津波高さの想定が途中で覆るなどしたため、申請から12年近くに及ぶ異例の長さとなった。
背景には、北海道電の当初想定の甘さに加え、原子力規制委員会から指摘を受けるほどの人材不足などが挙げられる。
異例の長期審査の中でも、地震対策に関する議論に時間を要した。規制委は15年、北海道電が示した耐震設計の目安となる基準地震動に対し「おおむね妥当」との評価を示したが、その後に同原発周辺の地盤が過去の地震で隆起した可能性があることが分かり、説明のやり直しを求めた。
また、同社が活断層ではないとしていた敷地内の断層について、主張を裏付ける根拠が薄いことが判明し、追加の掘削調査を余儀なくされた。基準地震動は結局、当初申請の550ガル(加速度の単位)から693ガルに引き上げられ、規制委が改めて妥当としたのは申請から10年近くが経過した23年6月だった。
想定される津波の最大の高さは、申請当初の7.3メートルから修正を繰り返し、最終的に17.8メートルに変更。14年に盛り土を地盤とする防潮堤(高さ16.5メートル)を完成させていたものの、液状化しない根拠を求められると、異なる構造の防潮堤新設へと方針転換した。
また、最短14分で押し寄せるとされる津波により防潮堤にぶつかる恐れのある核燃料用の輸送船の漂流対策も焦点となった。同社は当初、ロープでの係留を検討していたが、津波の負荷に耐えられない可能性があると判断。原発敷地外の泊村内に新港を整備し、同原発と結ぶ専用道路を建設する方針を示した。
こうした北海道電の対応について、規制委の更田豊志委員長(当時)は22年、「複数の原発を抱えている電力会社に比べ、北海道電は地震や断層、火山の専門家を抱えるのは難しい」と指摘。これを受けて同社は、他の電力会社から応援を受けるなどして体制を強化した。